ギムリの夜明けは明後日のほうへ   作:nicks

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チョコチョコ投稿していこうと思います。


プロローグ

 28歳、独身貴族♂の所謂、普通のサラリーマンだった。

 

 営業成績だって若手にしたらそう悪いほうでは無かったはずだし会社内での人付き合いもボチボチうまくやってたよ。

 昨日の晩だって会社の上司と日本の広告業界に夜明けは来るのかという話題で盛り上がり、家に帰ってきてそのままベッドに倒れてその後は……思い出せない。

 

 普通に会社行って、たまに恋して破れて、ガムシャラに下手なギターかきならして、アニメ観て寝る。

 

 そんな普通のボーイ……失礼ガイであった俺。

 

 そんな俺がこのセリフを発する日がくるとは―――

 

「おぎゃやぁあああああああああああああああぁ!!!!」

 

 

(目が覚めると俺は赤ん坊になっていたんだぁぁぁぁぁ!!!!)

 

 

 

 

 初っ端から取り乱して申し訳ない。

 

 とりあえず、自分の置かれた状況を把握するのに時間がかかったんだ。

 いや、激しく認めたくない事態なだけに受け入れるのに時間を要したと言ったほうがいいだろう。

 数年たって言葉もぼちぼち覚えたしやっと現状を把握できたさ。

 

 ここはトリステイン王国アッサンブルーム男爵領、アッサンブルーム男爵邸であるらしい。 乳母のおばさんが言ってたよ。

 

 私は風のラインメイジであるカリュー・ド・アッサンブルーム男爵と火のラインメイジであるメアリー・ド・アッサンブルーム男爵夫人の間に長男坊として生まれ、名はジミル・ド・アッサンブルームと名づけられたようだ。

 

 

『トリステイン』

『メイジ』

 

 

 うん。

 もしかして『ゼロの使い魔』ですかね。

 

 わかりにくいわっ!

 

 いや、認めたくないのもあるけどね。

 

 ジミル?

 えっと、呼び名的にはギムリかな。

 

 たしかギムリってあれだよな?

 原作1巻でキュルケ嬢になんやかんやでフラれて火達磨になって、えっと……たしか、コルベール先生の造った船をなんやかんや……。

 しらねーよ!

 

 スーパーモブキャラじゃねーか。

 

 しかも、母国は将来レコン・キスタやらガリアやらロマリアやら、何かと波乱続きのトリステイン貴族…将来駄目かもしれないライフカードプリーズ!

 

 

 物語自体はなんやかんで、原作組のおかげ盛り返すトリステインだが、盛り返す前に死んじゃいそうだよボーイ!

 

 

 とりあえず二次創作テンプレ通り、最低限自分が生き抜けるだけの力はつけようと思ったんだ。

 そして原作キャラとは極力係わり合いにならないようにしよう!

 

 何事も用法容量を正しく守ってお使うのが一番だかんな。

 

 なんとかなるはずだ!

 

 うんうん。

 

「ふふ、見てカリュ―!ギムリったらこんなに元気に泣いてるわ」

「うむ!この泣きっ面はアッサンブルーム男爵家を継ぐ器に相応しい貫禄だ! さっそく家庭教師を雇わねばな!」

「あらあら、あなたったら気が早いんだから」

 

 うむっ!

 頭の平和そうな今世の両親である。

 

 

 

 

 

 

 乳児期の様子については散々であった……とだけ言っておく。

 母や、屋敷のメイド達には一生頭が上がらないであろう。

 環境や習慣の変化で困った事はけっこう多かった。

 

 お風呂とかね。

 

 原作では貴族は普通に風呂に入っていたのだが、アッサンブルーム家の風呂は蒸し風呂だったのだ。

 まぁ、ヨーロッパ風のサウナのようなものだ。

 サウナに入った後水釜に入り汗を流すのだが、問題は風呂に入る時に必ずメイド達が世話を焼きに一緒に入ってくる事だった。

 

 もちろん私もメイドもスッポンポンである。

 

 羞恥心やら、裸の女性を見ても興奮しない自分の体を嘆いたりと、とりあえず大変だった。

 

 どうでもいいとか思うなよこのマザーファッカ―共!

 外国行くとストレスで10円ハゲできんだかんなっ!

 

 

 ちなみに言語や文字の習得は同年代の子供に比べると遅れ気味だったらしいとは乳母の言。

 「アレナニ?」「コレハ?」「ドンナモノ?」を連発して必死に覚えたよ。

 どうやら意識年齢のほうはそのままのようで、知識をスポンジのように吸収…とはいかなかったのだ。

 

 若さは偉大なのだよキッズ達!

 

 それでも、立ち上がれるようになった後は、それなりに体を動かすようにしていたし、魔法についても父や母に怪しまれない程度に子供の好奇心を装って聞き出したり精力的に活動していた。

 

 

 

 

 

 私の行動指針は決まっていた。

 

 

 学院入学前に目標トライアングルメイジ!

 前世の知識を生かした先を見据えた最低限の強さだね。

 

 後は原作組が頑張ってくれるだろうから、危なくない程度に消極的に協力!

 そんでもってフェードアウトだね。

 

 卑怯者と罵ってくれてけっこう!

 世の中生き残ってなんぼである!

 

 そんなこんなで駆け抜けるように過ぎた幼年期だったね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 カリュ―・ド・アッサンブルーム(ギムリの父)は思う。

 自分の息子ながら我が子は他の子供とはいい意味でも悪い意味でも少し違うと思うのだ。

 気がついた頃には自分の足で立とうと、壁に手をつきながらもフラフラと歩く訓練をしていた。

 

 なんと早熟な子だと、驚き喜んでいたのだが3年、4年と経ってなかなか言葉や文字を解するようにはならないので、心配になったり、言葉や文字を覚えたと思ったら大人ですら困難な計算問題を瞬時に解いたりと……珍妙で可愛い我が子という印象である。

 

 とりわけ体を動かす事が好きなようで、天気が良い日は「健全なる魂は健全なる肉体に宿るのだー」と叫びながら庭を走り回ったり、雪の日には「ヤッハー!スノーパラダイス!雪風になって~♪」っと奇声をあげながら庭を走り回ったり、誰かと共に風呂に入るのを嫌い、夜になるとメイド達に追いかけられながら「後生でござる!一人で入れるでござるよー!」と叫びながら走り回ったりっと……。

 

 本当に不思議な子供に恵まれたものだ。

 

「なぁ?メアリー?」

 

 

 

 

 メアリー・ド・アッサンブルーム(ギムリの母)は思う。

 我が子ギムリは変な子だと。

 あれは言葉をやっと覚えた4歳くらいの頃でしょうか―――

 

 

 

「母上!魔法が使いたいです! ご教授願いますっ」

 

 

とギムリが鼻息荒く私に詰め寄り、火のラインメイジである私は息子が魔法に興味を示したことに喜び、早速『ファイアー・ボール』や『フレイム・シャワー』を見せてあげました。

 

「母上…魔法ってすごいですね」

「ふふふ、カリューは風のラインで私は火のトライアングルだからあなたの系統はどっちかね」

「母上!せっかくだから全系統魔法の習得を頑張ります!」

「え?それはさすがに「イキマス!」…えっ」

 

 そういうと我が不肖の息子ギムリは杖も持たず両手を前に突き出し重心を低くし……。

 

 

 

「解き放て我が内なる魔力よ!精霊よ!我が呼びかけに答えよ!

 

 

最終究極魔法マ・ダ・ン・テェェェェェェェエ!!」

 

 

 

 

聞いたことも無い詠唱を行い、何かを吐き出すように前に突き出した両手を合わせ……

 

 

 

 

 

 

何も起きませんでした。

 

 

「あれ?」

「……………」

 

 

この子は大丈夫でしょうか?

杖との契約について教えなかった私が悪かったのでしょうか?

とりあえず将来が心配になったある日の出来事でした。

 

 

 

「カリューきっと大丈夫よ…………たぶん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は経ちこの体に転生しはや15年である。

 私は本格的に将来に向けて訓練をしていた。

 

 体のほうは、体格のいい父からの遺伝なのか180サント程まで伸び、

かなり恵まれた体格をしている。

 

 そして同じく父譲りの金髪碧眼。

 俺は外国人かっ! 日本人じゃないから当然だけどな。

 

 肌は日に程よく焼けた健康的な肌色といえる。

 あいにく、小さい頃から無駄に筋トレをしていたせいか、前世で憧れた『程よい細マッチョの外国人』ではなく。

 『筋骨隆々一歩手前の外国人』になってしまったのだが、それは生き抜く為には仕方ないと諦めた。

 

 普通に筋トレしまくって細マッチョとか夢見がちなんだよスケーターボーイ!

 

 

 それでも、幼少時から暇を見ては筋トレ(腕立て+腹筋)&ダッシュをしていた成果はあるとハッキリ言えるのではないだろうか。

 ちなみに父のダンディーな体つきはどう鍛えたのか?っと聞いことがる。 

 そしたら嬉しそうにアッサンブルーム家伝統のとかなんとか言いながらうさぎ跳びやら滝に打たれたりやらよくわからん訓練を誇らしげに説明してきたので軽く流しておいた。

 というか、絶対取ってつけたような伝統的な訓練もあったもんだなアッサンブルーム家。

 

 なので両親に頼み込んで、元王国騎士に所属していた人を家庭教師に呼んでもらった。

 

 土地持ち貴族なめんな!こちとらブルジョワジーだぜ。

 くたばれ共産主義者のプロレタリアン!

 

 

 

 

 

 家庭教師の先生からも「純粋な戦闘なら下手な傭兵よりは強い」となんとも言えない評価も貰っている。

 勝負は時の運を引き寄せた方が勝ちだし、やりようはいくらでもあるってことさ。

 

 ちなみに私の思う。

 トリステイン番付ではこうなっている。

 

烈風カリン>>虚無>>>>超えられない壁>王国騎士隊>俺>上級傭兵(アニエス)>へぼ貴族(魔法学院一般生徒)>ボンクラ傭兵>平民

 

 

 烈風カリンが強すぎないかって?

 いやいや、あの人はなんかもう怖いんだって! 色々先生に聴いたよ!

 

 烈風カリンが戦場に現れたら、味方だろうが的だろうが第一に全力で避難。第二に死んだふり。 運がよければ生き抜けるらしい。

 

 

 ルイズ母よ!あんたどんだけやんねん!

 まぁ、原作のスピンオフでもルイズより主人公してからなあの人……。

 

 

 貴族でなくてもいいから戦争経験のある家庭教師を雇ってくれないかと頼み込んだ時、なぜかあっさりと許可が貰えたのは驚いた。

 

 基本的にトリステインという国は魔法重視の社会であり、こってこての貴族万歳のヒエラルキー社会だ。

 

 実戦経験があれど、貴族でなければ基本的に評価されない。 そんな風潮があるのだ。

 

 ファックダワールドだね。

 

 典型的なトリステイン貴族の父は反対するかと思いきや、なぜか「またギムリの変な癖が始まったか…」と両親揃って生暖かい視線をおくられたのはいい思い出だ。

 

 その後、妙に使用人達が私を気遣うような態度に全俺が泣いたよ。

 

 変人認定やめろ! 泣くぞ!

 

 

 

 

 さて、見た目こそ体育会系全開な俺だが、実は魔法のほうは結構上達してたりするんだ。

 

 15歳現在で風のトライアングルにまで上がった。

 

 原作で云うタバサ嬢と一緒ですね。 天才と呼んでくれジーニアス!

 

 原作でギトー教師が風の魔法は最強だとかなんとか言っていたが、最強とは思わないが非常に応用の利く系統だと思う。

 風系統はエア・カッターのようなTHE風系統!っという魔法から『ライトニングクラウド』のような電気・雷系さらに『ウィンディ・アイシクル』のような氷雪系なども使えるからだ。

 ハッキリ云ってやりたい放題の系統じゃないか?と思ったのは俺だけでは無い筈だ。

 個人的には電気・雷系の魔法を中心に運用している。

 

 なぜなら・・・『ネタ魔法』の再現がしたいからである! ロマンがあるよね。

 

 雷属性をもたせた剣を振るう『神鳴流奥義・雷鳴剣(笑)』や

 ライトニングクラウドに全精神力を収束させた魔法『プラズマ・サンダー(笑)』っと某魔法少女が使える魔法の真似が出来たりするのだ。

 これが面白くないハズがないじゃないか!

 

 やっほーーーーい!

 

 ちなみにラインからトライアングルに上がった時は『プラズマ・サンダー(笑)』を初めて使ってぶっ倒れ、気がつくとトライアングルになっていたというオマケ話つきだ。

 

 まぁ、私の魔法の練習を見ていた母と使用人達が、奇行に走ってぶっ倒れるのはいつもの事だと特に騒ぎもせず、とりあえず「トライアングルに昇格おめでとう」とだけ言われた時は不覚にも目から心の汗が飛び出した。

 

 けっこう頑張ったんです。

 

 元典型的な日本人現代っ子が毎日精神力切れ寸前まで練習したんですよ?

 

 愛をください。ギミチョコメタル!

 

 

 最後に領地についてだが、うちのアッサンブルーム領はトリステインの南東に位置した狭い領である。

 平地の土地に1本の大きな川がある。 人口は大体300人くらいのこれは村じゃないか?っとさえ思う程のド田舎である。 

 東の森を越えるとすぐゲルマニアで、南の山を越えるとガリアである。

 トリステインとゲルマニアかガリアが戦争になったら即殺間違い無し。

 

 戦いは数だかんな。

 

 将来、私がアッサンブルーム家家を継いだときゲルマニアが攻めてきたら即降参しようと思っているのは内緒だ。

 

 降参した振りして指令部諸共自爆してやっから絶対攻めてくんなよっ!

 ゲルマン魂みせんなよっ!ラームにシュバインシュタイガー!

 

 まぁ、重要拠点にはなりえないほどの田舎領なのであまり心配はしていない。

 

 

 だが、俺自身、自然が溢れるこの領はなかなかのもので好きだ。

 

 こういう西洋風の森でギターを弾いたりして「なんか絵になる男っぽい」と悦に浸りながらついつい激しい曲まで大熱唱してしまうのはもはや趣味である。

 

 

 いいじゃねーかナルシストで! 誰にも迷惑かけてねーんだから!

 

 心の声は下衆でも外面は取り繕ってるし、言動には気をつけてんだぜ! 貴族だかんなっ!

 

 

 

 

 

 さておき領民というかアッサンブルーム村の民とは、残念ながらあまりコミュニケーションをとっていない。

 二次創作なんかでは領民と親しくなって領民に愛される次期領主みたいな感じになるのだがテンプレなんだけどなっ。

 

 ぶっちゃけ自分の事(訓練や将来設計)で精一杯だった。

 あれこれも出来ると思ってんじゃねーよ。

 そこまで出来た人間だったらとっくに内政TUEEEEEしてるっつーの!

 俺なりに楽しめればいいんだよ人生みじけーんだから!

 

 そんな感じに日々を楽しく逞しく過ごす日々。

 この世界での生活もなかなかいいもんなんだぜ!

 

 

 

 

 そんなこんなで、今日も訓練に明け暮れ、くたくたの体で家に帰ると父が威厳の篭もった表情で1枚の羊皮紙を私に渡してくる。

 

「ギムリ、お前ももう15歳だ。 そろそろ魔法学院に通いなさい。 そして同年代の貴族子弟達と触れ合って貴族社会の常識と社交性を学んでくるのだ」

「魔法学院ですか?」

 

 魔法学院とかすっかり忘れてたわ。

 

 なんかこう日々が楽しすぎて原作の事とか頭になかったわ。

 こういうのを故事でなんとかって言うんだっけ?

 

 忘れたけどなっ!

 

 

 でも、さすがに急すぎて焦るわ。 

 そういえば父とは最近トリステイン経済の悪化に伴いアッサンブルーム領の治世もうまくいっていないと、随分カリカリしてたのであんま話してなかったもんな。

 

 でも、もうちょい心の準備とかしたい。

 出来れば戦争が終わるくらいまで待ってくれるとサンキュー。

 

 

「父上、できればもう少し家で修練を積んでいたいのですが……」

「ならん!お前も男爵家の貴族として社会を学ばねばならん!」

 

 なお追いすがろうとする俺に今まで父の隣で黙って話を聴いていた母が視界を塞ぐように俺を抱きしめる。

 

「ギムリ学院を卒業して、立派な貴族となって帰ってくる事を母は祈っていますよ」

 

 ……。

 視界だけでなく逃げ道を塞がれた。

 

 

「わかりました。 父のように立派な貴族になれるよう。 魔法学院で勉学に励んできます」

 

 

 その場の雰囲気だけでまわるこの口がうらめしい。

 貴族教育に順応したこの口がうらめしい。

 

 誰が貴族の狗だよ!

 モノホンの貴族だっつーの! 外面くらい取り繕うわっ!

 

 

 そして、俺はとうとうダイブの瞬間がきたようだ。

 これから始まるゼロの使い魔へ




1話へ続くよっ!

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