東方狸囃子   作:ほりごたつ

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地霊殿三部物おしまい。



第二十話 素直な地底それと太陽 ~参終~

 これでどこまでも続く夜空か、ちらちらと舞う雪でも振っていればとても風流だわ。

 ついでに鹿威しでもカポンと鳴れば雰囲気増すかしら?

 なんて思いながら少し浅めに座り湯船に背を預ける。

 湯船に浮かべたお盆の上でお銚子と少しだけ飲みくちの歪んだお猪口が、あたしの動きに合わせて揺れる。

 

 いや‥‥さっきの言葉は訂正しよう、景色は今でも十分だ。

 前方に浮かぶ、大小合わせた山三つ。

 左右の二つは重力に負け少し横に広がり、真ん中の赤い山は左右の山より少し低いが定期的に淡く輝く。

 鼓動のように光るそれを見ながらちびちびとお猪口を空けるのも十分に粋だろう。

 その横で揺れている二本の尻尾もいいだろう。

 塗れすぼみ細くなっている尾は湯から出されて小さく揺れており、立ち上る湯気のようだ。

 尾の持ち主も目を細め良い気分だと顔に出している。

 無言で湯船に浸かるだけでもこれだけ楽しめるのだ、頻繁に遊びに来てもいいかもしれない。

 ほら、今なんて山が沈んでいく。

 赤く輝く小山の方は山間に沈んでいくお天道様という感じかね。

 日が沈んでから対の黒く大きな翼がぷかり、おぉ今度は夜になった。

 左足のくるくる回る球、これはそう。お星様といったところか。

 あたしはこの子の評価を改めないといけないね、これほど粋だと思わなかったわ。

 

~少女茹で上がり~

 

「烏の癖に長風呂するから湯当たりするのよ、自分で沸かした湯だろうに‥‥まったく、熱くなったなら出なさいね」

 

 全身をピンク色にし湯気をたて、あたしの膝を枕にして脱衣場で横になる小粋な地獄烏をうちわで扇ぎながら優しく叱る。

 幼子をあやすような仕草と捉えてもらえればわかりやすいかもしれない。

 あたしはこの子には少し甘い、自分でもそうわかるくらいには甘いだろう。

 飼い主に『愛でるものですよ』と言われたからというわけではない。

 この子は少し純粋過ぎるのだ。

 あたしが何をやっても目を輝かせて喜ぶし、ほんの少し騙しても大げさに騒ぎ立てる。

 怒って騒ぎ立てるのではなく、自分の知らなかった不思議を見つけて大興奮といったところだ。

 何をしてもこの調子なのでそのうち騙したりする機会も減り、柄にもなく素直に接することが出来るようになった。

 ここの主にこの子に対する態度を見られ驚かれるくらいの素直さだ。

 てゐにでも見られたら泡吹かれるかもしれないね。

 

「すまないねぇ狸のお姉さん。お空、大丈夫かい?」

 

 冷水とタオルを取りに戻ったお燐が戻り、あたしとお空に気を使ってくれるがこの子も素直な子だと思う。

 お空とは少しちがう、自分に対しての素直さという意味だが。

 お燐の持ってきてくれた、底に蛙の描かれた黄色い手桶でタオルを絞りお空の首に当てる。

 気持ちが良いのか表情が多少穏やかなものになる。

 数回絞って拭ってを繰り返すと水も温くなり量も減ってきた。

 お燐に冷水のおかわりを頼むと笑顔で受け取り走っていた。

 

 この二匹は仲が良い。

 同じペットという立場もあるのだろうが、それを差し引いても親友のような雰囲気で互いを想い合っているようだ。

 そんな二匹を眺めているのは心地よかった。

 

「うにゅ、あっつぃ……」

「今お燐が冷水汲みに行ってるからそのまま、寝てなさい」

 

 体を起こそうとするお空を手で制し、はだけてしまった浴衣を直す。

 胸元を直す際にどうしても目に入る赤い瞳のような球体。

 お空の内に宿った八咫烏の目だ、その目は先ほど湯船で見た時と変わらず明暗を繰り返しながら灯る。変わらず灯るそれがお空の鼓動のように感じられて少し安心した。

 さきほど星と称した左足、装飾品ではなくお空の能力に関したもの。

 この世に目には見えないサイズで漂っている何かを模しているらしい。

 おぼろげな意識の本人とはちがい一定した周期で回っている。

 

 普段ならこれに、能力を制御するため右腕に着ける『足』と鉄のブーツ、内側に夜空柄をあしらったきれいなマント、長い髪を纏める緑の大きなリボンでお空の姿になるのだがそれはまた、元気を取り戻した頃に話そう。

 

「‥‥目つきも手つきも考えていることも、そうしていると母親のようですね」

「あたしの子にしては足が一本足りないわ、翼も余計で尻尾もないわね」

 

 黒く大きな翼を撫でながら、声の本人を見ることなく答える。

 黒い翼と言えばあの烏天狗を思いつくが、同じ黒翼持ちでもなぜこうまで素直な子と捻くれた者と違いが出るのだろう?環境もあるだろうがまぁ年齢だろうな。

 

「うにゅぅ‥‥さとり様?」

「この子はまったく、もうしばらくそうしていなさい」

「そう言えばこいしはどうしたの?」

 

 そこにいるのにいない妹妖怪。

 小一時間くらい前まで続いていた女子会で勇儀姐さんに飲まされて、潰れるように寝たこいし。

 本格的に寝潰れて仕方がないから地霊殿までおぶってきた。 

 潰れる妹を心配そうに見た後にいつもよりも冷たいジト目で睨んできたが、すぐにいつものジト目に戻ると妹を受け取り中へ招き入れてくれた。

 いつもの客間で少し待つと、妹を寝かせた姉が戻り風呂を薦めてくれたわけだ。

 妹の事を気にしてか風呂だけ薦めてすぐに去ったが、第三の目は少し毛並みの乱れた縞尻尾を去り際まで見つめていた。

 

「動くのもイヤなのか、素直に寝たようです。重ね重ねありがとうございます」

「お空はともかくこいしの方は止めなかったあたしが悪い、礼はいいわ」

 

 あの場でこいしが標的にならなければきっとあたしが狙われていただろう。

 パルスィは遅れて来たヤマメの方に逃げていたしキスメに任すのは無理だった。

 先に寝こけていたしね。

 まあ、いつもタダ酒タダ飯食わせていたツケだ。

 たまにはいいだろう、成りは幼いが妖怪だ。

 深酒でどうにかなる事もない。

 

「ここからは私が見るので着替えたらどうですか、さすがに気になります」

「あたしは別に気にしないけど、以前別の友人にも似たような事言われたし、浴衣くらい羽織ってくるわ」

 

 タオル一枚でいる自分の体を一瞥。

 いつだかてゐからありがたい助言をもらったことを思い出し、小さな思い出し笑いをしながら客人用の浴衣に袖を通した。

 着替えて戻るとお燐が先に戻っていた。

 さっきの黄色い桶よりも大きな木桶に冷水を汲んで戻って来たようだ。

 言われた以上の事ができるペット。

 少し感心した。

 

「後は任せて大丈夫そうね、なら落ち着いたら帰るわね」

「狸のお姉さん帰るのかい?それは困った、着物がないよ」

 

 背中側の肩口に少しだけど饐えたような臭いがしてさ、お姉さんがお風呂に入った時に軽く押し洗いをして干してあるところなんだ。

 そういえばこいしが少しやらかしたか、と道中を思い出し軽く笑う。

 あのウワバミに付き合って、許容量を溢れて周りが濡れるほど酒を飲まされたんだ、仕方ない。

 

「ならどうしたもんかね、浴衣もらっていいならこのまま帰るけど」

「部屋も余っていますし泊まっていってもいいですよ、妹の粗相が原因ですしね」

 

 さとりから泊まっていけというのは珍しかった。

 普段はあたしが泊めてくれ帰りたくない外にでると鬼が怖いと強く思い込んで、しょうがないですねまったく。

 という流れで毎回泊まっている。

 妹の粗相を本当に悪かったと感じているのか、他に何かあるのかさとりの心は分からないが今は誘いをありがたく受けよう。

 

「じゃあもうひとっ風呂浴びて飲み直すわ、お燐付き合う?」

「嬉しいけどお空を見てるよ、また後でね。お姉さん」

 

 お燐に振られて一人で浸かり、水の起こすチャポンという音しか聞こえない広々とした露天風呂で周囲に望む旧都の灯りを肴に、ゆっくりと一人酒を楽しんだ。

 

 

 風呂から上がると皆の姿はなく、さっきまであたしの着ていた浴衣とは別の浴衣が置かれていた。

 そこまで気にすることもないだろうにと思ったが、珍しくお客様扱いされているのかと感じ、薄く微笑み袖を通した。

 

 脱衣場を出ると見慣れない鳥が一羽あたしを睨む。

 並んだらあたしと同じかそれよりも大きく見えるやたら目つきの悪い鳥。

 目が合うと振り返り歩き出した、随分愛想のない案内係だ。

 

 泊まる部屋へと案内されるかと思えばさとりの書斎へ案内された。

 扉に手をかけたのを見るとまた睨まれ、すぐに目を伏せ何処かへ行った。

 ごゆっくりとでも言ってくれたのだろうか。

 

「眼力のある案内係ね」

「とても気が効いて良い子なんですよ、あれでも」 

 

 お客様(仮)の案内係を任されるくらいだ、言うとおり気も利いて頭も良いのだろう。

 鳥のくせに飛ぶことなくあたしに合わせて歩くくらいなのだから。

 お客様(仮)に粗相を見せない出来た鳥だ。ん?鳥だからお客様(雁)のがいいかね。

 

「貴女は狸でしょう? それにあの子は雁ではなくハシビロコウです」

「そうね、狸だったわ」

 

 やはり口に出さずに会話をするのは慣れない。

 いつもの軽口が言葉として出る前に相手に伝わるというのに違和感があるのかね。

 タネと仕掛けを説明しながらやる手品みたいなもんか。

 手品師や詐欺師もさとり相手は分が悪そうだ。

 てゐや永琳なら言い負かす事も出来そうだが。

 

「どちらも会いたくないですね。心を読まれているのに論戦で勝つかもしれない、と貴女が言う相手なんて」

「おや、あたしはかわれているんだな、少し意外だ」

 

 態度も表情もいつ会っても変わらないさとり。

 対比で言われるほどかわれているとは意外だった。

 かってくれるなら何年ぶりか覚えていないが久しぶりに狸の姿に戻って甘えてみようか。

 

「そうやって、すぐに言葉を逸らして考えるのは貴女の悪い癖ですね」

「能力もあるが性分だ、勘弁してほしいわ」

 

 お空やお燐に見せるような素直さを見せてみろって嫌味かね。

 中々、この娘も口が減らない。

 千年以上も続いてる悪癖だ、染み付いてしまっている。

 すぐには素直になれそうにない。

 

「そうですね‥‥ですが、素直になれそうにない、と素直に考えられるくらいの素直さはあるようですね」

「やっぱりあたしじゃ口喧嘩で勝てそうにないわね」

 

 素直に負けを認めてみれば嫌味を畳み掛けられた、これは本当に勝てそうにないわ。

 負け惜しみに能力使って騒がしくしてやろうかしら。

 

「またそうやって、私も少しだけ素直な事を言ってみただけですよ」

 

 ふむ、では嫌味ではなかったと。

 ならなんだい?ああ、素直に褒めてくれたのか。

 意外と可愛いところがあるじゃないか。

 常にそんな感じでいてくれれば、あたしももう少し素直に接することが出来るかもしれないのに。

 

「割にあわないと思うので今まで通り変わりませんね」

「それは、残念ね」

 

 話の途中からあたしを一切見ることがなくなってしまった第三の目。

 どうにか目を合わせてやろうとくねくねと体をくねらせるあたしは、知らない人から見れば幼女を視姦する変態に見えた事だろう。

 

〆〆

 

 宿泊用のベッドで目覚め見慣れない天井に目をやると、地霊殿の庭に面する窓から光が差していた。

 ここは地下、お天道さまの光ではない。

 いつもの調子に戻ったお空が元気に燃やしている光だろう。

 ベッドの上から周囲を見渡すと、ベッドに備え付けられたチェスト横のソファーには見慣れない、白地に赤の薔薇刺繍をあしらった着物が畳まれ置かれている。

 どうやらあたしの着物はまだ陰干しされているようだ。

 折角用意してくれたのだしと、起きだし着替え部屋を出る。

 扉の脇には昨晩の気が利く案内係が待っていた。

 

「おはよう」

 

 挨拶を聞くとまた先に歩き出した案内係、今度は何処へ案内してくれるのだろう。

 廊下を曲がりお空の灯りを窓越しに見ながらついていくと少し奥まった場所に作られた扉の前で泊まる。

 中へと入ると大きめのテーブルが部屋中央に収まり燭台が飾ってある。

 周りには八脚の椅子。

 食堂かねと案内係に聞いてみたが返事はない。

 案内は済んだと言うように睨み、案内係はまた何処かへと歩いて行った。

 あいつは飛べないのかね。

 

「飛べますよ、得意なようです。おはようございます」

「てっきり飛べない種類なのかと思ったわ、おはよう」

 

 食堂奥の通路から出てきたのはさとり、その手にはトレーにのったティーセット。

 朝からお茶を淹れてくれる人がてゐ意外でいるとは思わなかった。

 

「まだお客様ですからね、着られるようでなによりです」

「ありがとう、後で洗って干してから返すわ」

 

 とても綺麗に仕立てられた上等な着物だ、刺繍もきれいな仕上がりで肌触りも良く上品。

 さとりやこいしが和服を来ている姿は見たことがないが、きっと館の誰かの物だろう。

 二人が着るには少し丈が長い。

 

「良ければ差し上げます、私達は和服は着ませんし」

「いいのかしら、良い物だと思うけど」

「構いません、着られない所で寝かせているよりも着てくれる人がいるほうが着物も喜ぶでしょう」

 

 どうしたんだろうか、昨晩といい妙にさとりが優しく思える。

 なにかあたしはしでかしたかね、最近は大きな迷惑をかけたりしてはいないはずだが。

 思い当たるフシがなくて困るのは久しぶりだ。

 

「素直にありがとうと言ってくれてもいいんですよ」

「そうね、ありがとう。大切にするわ」

 

 折角だ、少し科でもつくって見せればさとりも褒めたりするのかね?

 昨晩の素直さが残っているなら正直な意見が聞けそうで面白いだろうな。

 

「ええそうですね、良く似合っていますよ」

 

 きっと素直に褒めてくれているんだろうが、今までを思うと素直に喜べないのはなぜだろう。

 また何か言われるかと思ったがそれ以降何かを言われることはなく、静かに朝のティータイムは過ぎていった。

 通した袖を眺めてみたり、刺繍を指で追っていると第三の目があたしを見ていた。

 いつもよりは優しそうな瞳に思えたが、誰かが元気よく玄関を開け放った音が聞こえるといつものジト目に戻っていた。

 

 

「さとり様おはようございます!」 

「おはようお空、お客様がいるのだから静かにね」

 

「お客様? おぉアヤメ! おはようございます!」

「おはよう、今朝も元気ね」

 

 昨晩の弱り具合が嘘のように元気なお空、立ち直りが早いのもこの子の良いところだろう。

 昨晩は着けていなかった『足』やマントを振り挨拶とともに寄ってくる。

 

「アヤメ可愛いね! どうしたのその格好!」

「ありがとう、さとりがくれたの。似合うでしょ」

 

「うん可愛い! さとり様! あたしも欲しいです!」

「お空、仕事の途中でしょう。続きは仕事が済んでから」

「はい、さとり様! 行ってきます! アヤメもまたね!」

 

 キラキラした目であたしを褒めて、そのままさとりにお願いをする。

 頭のリボンを揺らしながら主人に願い事をする姿がとても可愛くて笑ってしまった。

 笑ったあたしを第三の目が見ているがなぜか気にならず素直に笑うことが出来た。

 今のあたしはどんな風に笑っているのだろうか、昨晩さとりに言われたことを少し思い出した。

 

「お母さん」

「わかってるから言わないで、恥ずかしいから」

 

〆〆

 

 気怠い朝を過ごし、そろそろお暇するかと考えて、地霊殿の外に出て煙管を咥え空を眺む。

 地下なので正確には空ではないのだが、地面から見上げて遠くまで空間が広がっているように見えるなら空と言ってもいいだろう。

 見上げたままで煙管をふかし背後の相手に声をかけた。

 

「見送りまでするなんて、本当にどうしたの?」

「なんとなく、ですよ。意味はありません」

 

 たまに泊まってもさとりが見送りなんてした事はなかった。

 してくれるのはお空とお燐ばかりだったし。

 

「お空が気になりますか、もう少し待てばまた来ますよ」

「気にならなくもないが、本当にどうしたんだい? 何が言いたい?」

 

 さとりにしては歯切れが悪い、普段はもっとズケズケと言ってくるのに。

 あたしの思考を読んでいるんだ、どうするべきか分かるだろう?

 あたしにはどうしたらいいのかわからないのだから、言葉にされないとわからん。

 

「そう、そうですね、素直に言いましょう。少しだけ羨ましいと思ったんですよ」

 

 羨ましい、か。

 何が羨ましいんだろうか?

 昨晩あった事と言えば寝こけるこいしをおぶってきたのと、お空がのぼせてピンク烏になっていた事くらいしかない。

 面倒事しか起きてないなそういえば。

 後は何があったか。

 ああそうか、お空を快方している時あたしはタオル一枚でそれを注意されたっけか。

 大丈夫、さとりもまだ見た目だけは子供だこれから成ち……

 

「それ以上はいいです、そこではないですし。吐くほどに酔いつぶれるこいしを私は今まで見たことがありませんでした。それにお空を見る貴女、ペットに優しいのは嬉しいのですが、あんな風にペットを見ることも私はなかったので‥‥羨ましい、そう思ったんですよ」

 

 なんだい、そんな事か。

 なら言うが、こいしに対して心が読めないからと少し距離を取り過ぎだ。

 こいしは酒の席で楽しそうに姉やペットの話をしてた。

 きっとさとりが考えているよりもあの子はお前を見ているよ。

 お空もそうだ、のぼせてぼんやりした頭でも最初に呼んだ名前はさとりだった。

 お前がペットをどう見ていようがあの子達はお前を慕っているよ。

 こいしとは違って心が読めるんだからそんな事はわかるだろうに。

 

「そうですね、貴女の言うとおりだと思います。ああもう、わざわざ能力使ってくれなくても一度読めばわかりますから‥‥ありがとうございます」

 

 こいしはともかく、お空の方では少しだけさとりに嫉妬したんだ。

 恥ずかしいから言わせないでほしいのに。

 そんなだから覚りは嫌われるのよ。

 そういえばこの着物も何か理由があってついでに話してくれるかと思ったが、そんなことはなかったね。

 

「それは、お空の介抱をしてくれたお礼と少し悪かったなという‥‥いえ、母のような目で見つめられるお空が少しだけ妬ましかったのかもしれませんね。身内を妬んだ。それに対する一人よがりの謝罪の品、といったところです」

 

 お母さんが膝枕してあげようか?

 なんだよ、そんな目で見るなよ、妬ましい。

 





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