東方狸囃子   作:ほりごたつ

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EX その56 曲解

 最近肌を刺すようになってきた午後の日差し、気怠さが増す気候の中を進む。

 羽織っただけのシャツや長いスカート靡かせて。強めに吹く風に弄ばれつつ視線の先のゴロゴロ煩い辺りを目指して。遠くに浮かぶ灰色の雲に時折奔る稲光から、すぐに沛然とした雨模様になるとわかる中、一人ニヤつき飛んでいく。

 

 笑みの理由は朝聞かされた予言。

 今朝方も姿を見せた目覚まし兎詐欺が『今日は天気が良くなりそうだ』なんて淹れたてのお茶に浮かぶ茶柱吹きながら言っていたけど、その予言が外れる予定にあるのが目に見えてわかって、それがあたしの気を良くする理由になってくれていた。

 いつだったか『あたしゃこれでも名予言者なんだよ』なんて神話に出てくるイケメン神様の話を例えに吹聴されたけど、先程から数回横に奔っている稲光から鑑みるに、なんだよ神話の兎詐欺の予言も大して当たらんな、あの年増も存外テキトウな事いうものだと、そう感じられて。ソレがおもしろくて。お天気と比例してあたしの顔は晴れやかになっていた。

 まぁ、そうはいってもそもそもが山の天気、放っておいてもすぐに変わるものなのだし、あの兎詐欺の言い分も同様にコロコロ変わるのだから外れたからなんだって感じだが、そこはただの気分であるため深く捉えないでもらいたい。

 

 そんな風に今朝の小話を笑みつつ、行く宛目指して飛び進む。

 目指す辺りはその灰色方面だが育つ雲はまだまだ遠くに見えて、端っこがお山の頂きにかかるかなといった程度。薄く嗅げる雨の匂いからも後暫くは保つってのがわかるけど、それでも直に振り出してずぶ濡れるハメになるのだろうな。やっぱりてゐの言い草を鵜呑みにしなければ良かっただろうか、いや、育つ入道さんの勢いは結構なものだし傘一つで凌げるような雨脚にはならないだろうから、忠告無視して持ってきたところで手荷物を増やしていただけかね?

 どうでもいいか、どうにせよ降られる事には変わりないだろうし、最悪は馴染みの巣にでもお邪魔して雨宿りさせてもらえばいいだけだ。先の事は先の事として気楽に考え、そのうちに振り出すだろう空模様から未だ見えない鴉共の巣、そして遠くに小さく見える屋根瓦の景色へと、順に目線を流していく。

 

 視線の延長線上には並ぶ屋根、細く伸びる道、そこを行き交う人々。

 もう直訪れる雨に備え帰りを急ぐ町人や、端午飾りにでもするのだろう菖蒲の花束を抱えて歩く人が軒下に消えていく姿が見え、その奥には雲の大きさからこの先強い雨脚になると読んだ商人が軒からはみ出して並べている商品を店内に下げる様子や、編み紐片手に畑に向かって行く農民の姿も見えた。

 小走りで向かう誰かの背を追ってみると、その背は伸びかけの緑の中へ消えていき、すぐに見えなくなっていった。どうやら先に田畑にいる者らと合流し収穫するには早すぎる青麦やまだ若い稲穂なんかを束ねているようだ。

 そうさな、彼らの動きに習って言えばこの先降り出すのは三束雨(さんぞくあめ)ってところか。

 大事に育てている後の実り、それを奪うはサンゾクで、横取りされないようにするのもこの季節ならではで例年見慣れている光景だが、常々変わるお天気に合わせ働かざるを得ないのも大変な事だと思える。しかしサンゾクか、ならばあたしも少し急ぐか。唯でさえ少なめなあたしの温もりを怖い怖いサンゾクに奪われてしまっては大変だ、そうなる前に目的地へ向かうとしよう。

 

 眼下に見えた人間の里、ちょっと前まであたしが微睡んでいたところを尻目に動く。

 向かう先は先述通り、その(いただき)に雲を頂く高いお山。普段であれば山の麓から歩いて登りお山の神社の引っ越し騒ぎでおめでたくないツートンが駆け抜けた、もとい飛び抜けた、この時期益々茂っている妖怪の樹海を散策したり、もう一人のツートンカラーが荒らした未踏の渓谷で涼を取ってみたり。後は近くにある間欠泉地下センターに顔を出してせっせと働いているだろう愛しい地獄烏の様子を見に行ってみたりと、そんな事をしながらお山を登っているが、今日は寄らずに目的地へ向かっている。

 時期柄少し蒸すような、肌にまとわりつくような空気を感じるから、渓谷には立ち寄って涼みたいなって甘えた心もチラついたけど、ここで甘えて遅れれば唯でさえ口煩い依頼人達が更に煩くなりそうなので寄り道は諦めて先を目指そう。

 

 因みに先に述べた箇所はどこも良い所で、妖怪の樹海は静かで何も考えずに過ごすのに素晴らしい場所だ。いい機会だし少し紹介しておくと、樹海はその季節になれば秋の神様が彩った紅葉に埋め尽くされてなんとも言えない景色になるし、その侘しさを浴びすぎて二つ名の通り人寂しいなと感じてしまったら、この近くに住んでいる厄神様の処にでも行けば楽しく世間話をする事も出来るから、機会があれば立ち寄ってみるものいいと思う。

 未踏の渓谷も同様に景観麗しい場所だ、むき出しの大きな玄武岩を眺めているとその力強さに圧倒される事請け合いだし、逆に渓谷を流るる川を見てみれば風に流されてきた落ち葉が水面を揺れていく雅な情景も見られる。さっくり言うなら力強さと風流な絵が一箇所で見られる、一粒で二度美味しいような場所って感じだろうか。

 

 勿論最後の間欠泉地下センターもいい場所だ。

 真っ当なエネルギー施設として稼働してはいないがそれでも年中暖かくて冬場の暖を取るには最高の場所だし、あそこには年中馬鹿明るいお空もいるから暖かな季節以外に訪れて心の暖を取る事も出来るしな。

 あたしから見れば後者がいるってだけで素晴らしいからこれ以上語る必要もないがそれでもそうだな、あの子の名誉の為にここは敢えて付け加えておくか。このセンターを建てた神様達は地底にある灼熱地獄跡のエネルギー盗用を既に諦めている、けれどもあの子は今でも炉の管理を続けているみたいだ。捨てられた施設を管理するなど無駄な行為に思えるかもしれないが、あの子が管理を続けているから地霊殿の温泉は素晴らしい湯を称え続ける事が出来ているし、何より与えられたお仕事に励み輝く汗を額に浮かべるあの子が可愛いので、管理する事自体に意味があろうがなかろうが些細でどうでもいい事だろう。

 ん? ここまで語っておいてなんだが話題が少し逸れた気がするな。観光名所の紹介をしていたはずがいつの間にか愛くるしいあの子の自慢話に筋が逸れているような気もする‥‥が、まぁいいな、ダラダラ考え事をしている間に目的としていた九天の滝に着いたのだから、細かい事は止め処なく落ち続ける水に流して忘れるとしよう。

 

「今時期は涼しくていい場所よね、ここは」

 

 誰に言うでもない独り言をポツリ漏らすも、その声は飛んでくる水飛沫と轟く落水に吸い取られた。あたしのぼやきを受け止めてくれたのはそびえ立つ水色、眼前いっぱいに広がるそれはもはや水彩の壁と言ってもいいか。そんな水の壁近くを滞空しているせいで飛び散る飛沫があたしの視界を滲ませてくれるが、それは気にせずシャツで拭って、目当てのモノを見つけようとやる気のない目に力を込める‥‥けれどそこはあたしのお目々だ、どれほど込めようと元がないのだからやる気で満たされる事はない。

 だがそこも当然自覚していて、目では探す振りをして、耳では別のモノを探す。素直に聞けば響き立つ水の音に邪魔されるけれどそこもあたしだ、ちょいと能力行使して滝の音だけを逸らしもう一つのお目当てが立てそうな音を探す‥‥が、生憎こちらも聞きとれなかった。これは読みが外れたかね、いつものこの時間ならパッチンパッチン聞こえるのだけれど。

 

「椛は‥‥いないか、にとりもいないのね」

 

 会いたい時にいないんだから。後に続けてしまいそうだった愚痴は飲み込み、誰もいない滝を前に留まる。いつもなら入山してすぐ、もしくはお山の敷地に入る寸前に不機嫌そうな顔を見せてくれて、貴女はまた勝手に入ってきてと千里眼を細めてくれる生真面目に会えるのだけれど今日はまだ会えていない。あの子ってばあたしの用事のない時はお小言を言ってくれるのに用事のある時には姿を見せないなんて、やっぱり強かな娘なのかもしれん。

 

 で、ここからはどうしたもんか。

 手っ取り早く済ませるならこの地を良く知る椛か山童仲間が多くいるにとりに聞くのが早い。

 そう案じてここに来たのに。

 普段はアッチから来るのに現れないのならきっとコッチにいるだろう、監視の仕事にかこつけてまた発明馬鹿と将棋でも指しているんだろうと、そんな読みで滝へ来てみたもののこっちにも彼女の姿は見られなかった。

 二人にちょっとしたお願いをするつもりでここまで来たのにいないとは。まったく、山住まいの妖怪だからって天気と同じく読みにくい動きをしなくてもいいのにね。そんなぼやきを漏らしつつ、とりあえずお邪魔するわと声には出さず唇だけを動かして、手土産に持ってきた包の一つをあの娘がよく佇んでいる辺りに置いておいた。

 

 で、彼女達はどこにいるんだろうか? 

 どこかをほっつき歩いている事も多いにとりは兎も角、頑なに山から出ない椛がいない理由がわからん。が、今日は素直に諦めるとしよう。出来ればあの目をお借りしてちょいと探してもらいたかったのだけれど態々探すほどでもないし、ここにいてお願い出来ていたとしても大概は断れられるわけだしね。

 余談だが、それでも土産物で釣ると少しだけ手伝ってくれたりするのが彼女だったりする。困ったようにちょっとだけはにかんで、毎回『今回だけですよ』と言って目を貸してくれるあの子は結構可愛い。今日は見られなかったがあぁやって真面目にお仕事をこなす姿も凛々しくて少しそそる、同時に疑問に感じる姿でもあるけどね。自慢の視界にはあたしが写っているはずなのに毎度注意力が逸れてしまい立ち入っても問題ないと思ってしまうのはどういった心境にあるのか、機会があれば是非共も聞いてみたい。

 

 ふむ、聞くといえば自分にも当て嵌まるか?

 今日のあたしも以外と素直に話を聞いてやったと思える、手間がかかる探しものなんてのはあたしらしくもない気がするのに何でまた引き受けて‥‥いや、そこを考えるのはやめておこうか、先の余談もあるしこれ以上余計な事を考え続けるのはちとマズイ気がする。こうなった場合のあたしの頭は面倒で要らぬなものまで考えてしまう事が多い、そうしてそこから逸れてまた違う物について思案し始める前にやめておこう、でないと面倒に拍車がかかりそうだ。

 

 湧いて出た自問に即答しつつ脳裏には依頼人の顔を浮かべる。

 今頃はあちらも忙しくしているのだろうなと、里の道具屋で買った荷を抱える教師の姿を夢想した。あたしに今日のヤマ(面倒)依頼して(押し付けて)きたのは里の顔とも呼べる誰かさん‥…が、代表で言ってはきたけど実際の依頼人はまた別人だったな。そうだね、目当ての物もすぐには見つからないだろうしうろ覚えのまま動くのは少し癪だし、こっちも軽く思い返しておこう、切っ掛けは確か――

 

 

「珍しい二人が並んで楽しそうだが‥‥お前は相変わらず暇そうだな」

 

 馴染みの甘味処で甘い物をつまんで悦に入っていたあたし達に届いた声。

 いつもいる店舗前の長椅子に根を下ろして。いつものように微睡んで。

 店先に飾られた金魚鉢の中身をゆらゆら目で追っていたらゆらゆら漂う竜宮の使いを見かけて。それから暇なら偶にはお茶でもしましょとナンパして、とっ捕まえた相手のパッツンパッツン具合とあたしのはだけ具合を比べて笑っていた時だ。ガールズトークに花咲かせるあたし達とは違う、締りのある声が聞こえた。

 

「そうね、おかげさまで変われず暇に弄ばれてるわ。それでも今日は衣玖さんが‥‥って、衣玖さん?」

 

 声の主の方は見ずに、視線は揺れ柳と揺れる羽衣を収めたまま、火種を落とした煙管を弄びつつテキトーに言い返し‥‥って、なぜに羽衣が視界に入るのか、今の今まで隣に座り軽い呆れ笑いを聞かせてくれていたのに。

 と、一瞬考えている間に何か悪い空気でも読んだのか静かに衣玖さんは飛び去った、いや既に飛び去っていた、だな。小さくなっていく背中に声をかけると顔半分だけ振り向いて清楚に微笑むパッツンパッツン。静々とお手々を振りながら緩めた頬には『私は関わりません』てのをデカデカ書き記して、その場にいなくて当然てな顔ですぐに見えなくなってしまった。

 

「あの人も変わらず自由なようだな、しかし変われずとはなんだ? 何か思う事でもあるのか?」

「特には、今のもただ口から出ただけよ」

 

 なんだよ、何か読めたのならソレくらい教えてくれても罰は当たらないのに、つれない天女様だ。そんな心を瞳に込めて高嶺の花を恨めしく見ていると、こちらもこちらで自然な流れでお隣さんが変わったようで、天上に住まうパッツンパッツンから地上で暮らすたわわな者に話相手が変化した。

 飛び去る天女を見送る教師がついでの口振りであたしに向かって問いかける、それに対してあたしも習い口をついて出ただけのモノを言い返す。当然それは伝わってお隣さんの眉間には勘繰るような皺が少し寄るが、あたしの言う事などほとんどが口先三寸で出たモノなのだから気にするなと、内面通りに言ってみる。

 するとお前はまたなんて小言と共に聞こえる小さな吐息。落胆から生じるものではなく本当にいつも通りなんだなって納得するような、そんな色味の吐息が整った口から漏れ出た。

 

「まぁでもこれから忙しくなるんだけどね」

 

 せっかく話しかけてくれた相手がこぼす息、里で人気の美人さんが物憂げに漏らす吐息を浴びるというのも乙なものだが、これをそのままにしておくのは友人として面白く無い。そう感じたのでなんともないネタを振ってみる。

 それでもそう言ったところで忙しくなるようなモノなんてなにもない。強いて挙げれば今はゆったりとお茶を楽しむ事に忙しいから既に忙しくなっているってのが正しいか。話して数秒過ぎても反応がないので気にせず湯のみの残りを煽る、そのまま飲み切ってお盆に湯のみを戻した頃に漸くの返事が聞けた。

 

「これから? また何かしでかすつもりか?」

「出会いから質問ばっかりね、というかまたって何よ? 里で悪さをした覚えはないんだけど?」

 

 質問に質問で返してみたが先生からのお叱りは飛んでこなかった。

 寧ろ静かになる慧音、動きが気になり見つめると見慣れた青いスカートに揃えた両手を添えていた。それから視線を上げていくとたわわな胸元の赤いリボンと長い髪を風に流す姿が映り込む。こうして隣に座ったり肩を並べて立ったりするとあたしよりも小さいのに、どうしてこうも一部分だけ成長著しいのか?

 問いかけた事よりも気になる部分、どうしても気になる部分をねっとり見つめていると、眉間の谷間と注視していた別の谷間が若干深くなった。こんなサービスしてくれるなんて珍しいと思うが‥‥単純に腕組みしたから寄っただけでその気はないらしい、あたしの熱視線にそんな目で見るなと熱弁で返してくれる里の守護者。

 

「なぁさっきから、ちょっと話にくいからやめてくれないか」

「見えるものを見てるだけで何もしてないじゃない、やめてと言われるのは心外だわ」

 

「その舐めるような目をやめてくれと言っているんだ、というより話を逸らさないでくれよ」

「舐めたら後が怖いわ、バレると燃やされたり叩かれたりしそうだから見るだけにしてるのに。それに、逸らしてるつもりもないわよ?」

 

「だからそうやって話の筋をだな‥‥いや、もういいよ」

「もういいなら最初から言わなきゃいいのに、それで慧音が言いかけたのは何よ?」

 

 あたしは本当に何もしていない、先に掛けられた声はただの世間話と思ったからそれらしくどうでもいいように返しただけだったはずだ。それなのに話を逸しただの話の筋を曲げただのと、好き放題に言われてしまう。

 これがあたしの能力故なのかそれとも性格的な、ものからくるのだろうな。なんというか自分自身の思考すら知らぬ内に逸れていってしまうのがあたしなのだから、口から出る文言もそれとなく逸れるような物が混ざるのかもしれない。

 降って湧いた疑問に一瞬で答えが出たのでふむ、と、一人頷き空の湯のみに手を伸ばす。それからおかわりを頼む、つもりが湯のみを置いたお盆に届くおかわり二杯。横目で見るとお茶を運んできた店の娘と目が合った、いつもより強く感じる看板娘の視線、なにか言いたげに見えるがなにがあるんだろうね?

 

「悪さとは言っていないさ。里の景色を眺めながら何か考えていたように見えたからな、また何かしでかすのかと思ってな」

 

 並んだ湯のみの片方を手に取った女教師、少し温くて甘みが強く感じられるソレを一口二口含んで舌を湿らし、新茶はいいなと切り出してそのまま残りも語り始めた。

 揃えた足に両手を添えて、持った湯のみの中に映る自分を眺めるような角度で言ってきたが何の事やら。騒ぎとはなんだったか、同じく腿の上に湯のみを添えて似たような姿を取りつつ思い出す。薄緑の水面に映る自分の顔を見返し考えていると、自答を得る前にヒントが示された。

 慧音の手が動き指先が丸くなる、それから右手は握って添えて、トントンとリズムを刻み始めた。見た目から手馴れている動きだが、慧音も一人暮らしが長いわけだし料理の仕草くらいは堂に入るように見えて当たり前か。

 それはそれとて、コレから繋がるとなると‥‥あぁ、読めた。が、何も理解していない、出来ていないと伝えるように呆けた顔は敢えて変えない。でないと面倒な流れになる、そんな匂いが新茶の奥から嗅げた気がするから。

 

「何の真似?」

「白々しいな。お前の方こそ隙間のモノマネでもしてるのか?」

 

「真似るならもっと不真面目な態度を見せてるわ。何か言われる前に言っておくけど、アレならあたしからはもうやらないわよ」

「そうなのか? ああいった騒ぎも好きそうだと考えていたのにもう執り行ってはくれないのか、うちの子供達も楽しんだようだったからまた機会があればと思っていたんだが」

 

 直接口にはしなかったがやはり読みは当たったようだ。

 慧音が言うのはあれだろう、いつか里で開いた寺子屋で学ぶ社会科見学の事だろう。

 あの騒ぎを練っている間は確かに楽しかった、またやってもいいかもと思えるくらいに頭を使い企んだ。けれど同時に企みが成らずに凹んだ夜でもあったな、下手すれば友人を失うような事にも成り兼ねなかったし友人以上の者だって‥‥と、言われた晩を脳裏に浮かべていると無意識に手を動かしていたらしい。教師の目線に気が付いてそれを追うと捲り上げられたシャツの袖があり、残る傷の跡に沿って撫で動く指もあった。

 

「あぁ、そうだったな‥‥そんな事もあれば再度やろうとは思わないか」

 

 撫でる動きから察したのか、少しだけ気負うようなバツの悪い顔になる先生。

 そうやって気遣ってくれるのは嬉しいがコレはコレで悪いもんじゃない、寧ろ態々残してくれたモノとしてあたしはありがたいとすら感じているのだからそんなに気にしないで欲しい、というかあたし以上に気にしていそうな顔もやめてもらいたい。

 ならそうだね、ここは話の筋を戻すよう別の話題を振ってみよう。

 

「コレはコレで別口だからいいんだけどね、それより夜遊びを楽しんだって、そんな事教師が口にしていいの?」

「そこはまぁ、触れないでくれると助かるかな」

 

「あっそ。そう言うなら触れないけど‥‥変なところも柔らかいのね」

「何か言ったか?」

 

「なんにも、それで?」

「また一つ頼みがあってな‥‥先に言っておくが昼間の方での頼みだよ」

 

「言われずともそれくらいわかるわ、で、聞くだけ聞くけど何をどうして欲しいのよ?」

「簡単な話だよ、家庭科は私でも教えられるが音楽や喜劇鑑賞となると私だけでは難しくてな」

 

 先には逸らすなと言ってきたのにこのあたしに戻されるとは、この教師にも案外抜けた所があったものだな。軽く含んだ笑みを見せるとあたしの期ご機嫌が戻ったように見えたのか、姿を見せた理由を話してくれた。

 言われてなるほど、確かに簡単、ここまで言われれば理解は容易だ。そうしてやるのも簡単な事で頼られるのも悪い気はしない、けれどもプイと横を向く。正直イヤなわけでもない、毎度毎回煙たがられてばかりなあたしの心情としては友人からの珍しいお願いを聞いても構わないのだけれど、今回は嫌だとはっきりした態度を見せてみた。拒否の理由も単純だ、ここで断らないと次その次もと毎回やらなけりゃならなくなる、それは非常に面倒くさいのだ。

 

「そういった事なら雷鼓やこころに直接頼んだ方が早いと思うわ」

「そうも思ったんだがな、見かけてしまったらついつい。手っ取り早く頼むのならアヤメに話すのがいいと気が付いてしまってね」

 

「あのねぇ……最近多いんだけど、皆あたしの事をなんだと思ってるのかしらね」  

「そう言わずに、な?‥‥ダメか?」

 

 慧音の顔に書いてある『それで返答は?』という文字はあたしには難しくて読めそうにない、だから放置して、遠くの空を眺め煙管に火を灯しながらの返答をする。

 二三回ほど副流煙を撒き散らし流し目で伺うと、先とは違ったバツの悪さを浮かべた顔があたしの顔色を伺ってきた。上目遣いで、あたしよりも輝かしい銀髪をゆるく流して願い出てくる慧音、これはまた新鮮な絵面が見れたものだ。

 いつもなら同じ上目遣いでも目線は厳しいもので、またお前はって雰囲気をビンビン発してくれるのに、今日は甘えるような柔らかな視線で‥‥なんとも心地よくて可愛らして、思わず無言で見続けてしまう。

 

「なぁ、なんとか言ってくれないか?」

 

 放っておいたら言われたお言葉、無視されたのが少し障るのか、先よりも僅かに訝しむように綺麗なラインの眉が寄る。が、それもまたいい顔で、なるほど、あの焼き鳥屋が入れこむ愛らしさはこういう部分かと納得できた。勉学を教示する立場のくせにこんな顔も出来るとは、さては寺子屋でもこうやって教えているんだな? 厳しく教えて甘い顔も見せて、性格と顔つき通りムチとアメを使い分けるとか小器用で妬ましい。

 そうやって妬んでから暫くの間可愛らしい願い顔を眺め、内外共にニヤケていると本格的に焦れたらしい。少し前に口に含んだ一番茶でも揉むような動きで、合わせた手を小さくすりあわせ三度目の正直を聞いてくる。

 これにはちょっと感心した、この石頭がホトケ様なあたしに向かって三度頼み込んでくるなんて。これは少し洒落ていると思えるな、本人は狙っていないのだろうが悪くない冗談の一つかなと思えてしまって、同時に流石に引っ張りすぎた気もしてきたので、素直にダメだと伝えてみた。

 

「ダメか‥‥それは残念だ‥‥」

「そもそも順番がおかしいのよ、寺にでも行けばこころがいるだろうし、鈴奈庵で待ち伏せしてれば雷鼓だって来るでしょ? まずは本人に話を通してからあたしに言いなさいな」

 

 見上げてくれていた顔に言い切って最後にらしくない事まで付け加えると、こちらを見つめていた目線が下がり手元の湯のみに落とされる。

 なんだ、今度は憂う姿も魅せてくれるってのか、美人さんはどんな姿を見せても美人‥‥と、そうじゃないな、これは素直に落胆しただけだ。肩まで落としてうなだれる慧音、とまではいかんがその見た目から気落ちしたのは十分わかる。

 言い過ぎた気なんて毛頭ないが見た目にわかってしまうくらいに気持ちが沈んだ美人教師、あたしとしてはただの世間話の延長、慧音のお願いってのも世間話の話題の一つ程度に感じたのだが、ふむ、先に見せた顔は真剣味があったからこそ見せた顔色だったのかね?

 気になってきたし、少しつついてみる。

 

「しかしなんでまた? 里での騒ぎなんて喜ばしい事じゃないでしょ?」

「話しただろう、昼間の方の騒ぎでお願いしたいんだ」

 

「聞いたけど、お祭り騒ぎをするには時期が悪いんじゃないの、子供らだって家の手伝いとかあるでしょ、ねぇ?」

「確かに忙しい季節だが今回は私が言い出したわけではないから、なぁ?」

 

 視線を流して返答すると慧音も同じ方を向く。二人で見つめる先には子供、この店を営む爺の孫で慧音の開く寺子屋に通う娘がいた。先に問いかけたあたしからの「ねぇ?」には視線を逸らされてしまったが、慧音からの『なぁ?』には反応しお盆と店の前掛けを握ったまま小さく頷いた。

 そうかい、言い出しっぺは慧音ではなく寺子屋のガキ共だったってわけか。それなら少しは考えてやらん事もない、あたしの事を手抜きの姉ちゃんだの抜かすガキ共に喜んでもらおうなんて思わんがこの茶屋には手土産だなんだとお世話になっているし、その世話返しのつもりと思えば手を貸す理由にならんでもない、将来化けるかもしれん看板娘に恩を売りつける事になるなら吝かではないが、そうだな、やるなら次は何をしようか。

 気は乗ったがこれといって思いつくものもない、かといって前のような、下手なお祭り騒ぎをすればこの忙しい時にやらかしてと避難を浴びるのも必然だ。あたしは浴び慣れているし憎まれっ子としては願ってもない事だが、今回は子供らの発案でなにかあった場合に矢面に立つのは慧音か。里の守護者が里の保護者からやっかみを言われるのもまた楽しい絵面かもしれんが、そうなると子供らは叱られるだけで笑えないか。では騒ぎにならん程度の遊びならいけるか、ちょっとした子供の悪戯位なら何を言われる事もなかろう。

 

「それでなんだがアヤメ、次も――」

 

 考え事を始めた頭に次もと聞こえた気がしなくもない、けれど二回も同じ事をする気はない。

 しかしネタは浮かばない。なんともなしに拝む空、何も浮かばない自分の頭に似た上の空を見やる。そこひ広がるのは青色だけで後は遠くに雲があるくらいのなにもない里の空。殺風景で飾り気のない見るのに慣れきった‥‥か。ふむ、それならここにちょっとした変化をつけるか、あたしらしいと思えなくもないし丁度そんな時期でもあるしね。

 

「そうねぇ、家庭科も音楽もやったし次は図工でもやりましょうか‥‥あたしは画材探しに行ってくるから、慧音は大きな布と膠でも探しておいて」

 

 何かにつけて物臭なあたしからモノ作りなんて出ると思っていなかったのか、傾いでしまう教師の頭。それを笑って再度伝える、次の遊びは図画工作、皆でお絵かきでもしましょと。ネタをバラしても先生の傾いた頭は戻らなかったけれどそこには気が付かなかった事にして煙管咥えて煙を吐く。それからわざとらしく、視線を集めるように煙を吐いて、ちょっと動かし形取った。

 似せた姿は空を泳ぐ大魚、門を登って天へと向かう一尾の雌鯉―― 

 

 

「あ‥‥マズったわね」

 

 軽く舌打ちして我に返る。

 これはどうにも、ちょっと思い出すつもりが回想が長すぎたようだね。

 気が付くと山の天気はしっかり荒れていて、聞こえていた音なんかもすっかり変化していた。遠くに見えていただけの雨雲は今では頭の上に覆い被さり、そこからもたらされる物も当然にして降り注いでいた。

 周囲を洗い流していく雨。身を打つ雨脚は小洒落て五月雨だの麦雨だの言えるような余裕もない、鶴瓶を井戸毎引っくり返したような雨で見える範囲全てを覆っている。これはあれか、里で空を泳ぐ魚の話なんてしてきたからこんな状態になってしまったって‥‥うん、これもやめておこう。いらん事考えてこうなったのだから、今は案ずるより動くが易かろう、とりあえず雨を凌げそうな場所を探そう。

 見えにくい周囲を見回すとふと目に入った小さな岩場、洞窟とまでは言わないが身を寄せられそうな雰囲気がする場所が目に留まる。あたしが身を寄せるにはちょいと狭そうだが濡れないならそれでいいし、ちょっとお邪魔しよう‥‥と、顔を突っ込み伺うと、少し動いて固まるナニカ。

 

「先客がいたのね。ちょっとお邪魔するわよ」

 

 見えたナニカ、もとい誰かに声をかけるも返事はない。

 静かに、長い垂れ耳を時折跳ねさせるのみで、様子見するような雰囲気だけが伺えた。

 それならソコは合わせてやるか、あたしとしてもただの時間潰しだ、長居するつもりはないのだから特に絡まず無言で過ごそう。歩を進めると動く耳、さもこちらを気にしていますって中々に可愛い反応を見せてくれてちょっと絡みたい心も湧くが、ソコは我慢しまずは脱ぐ。着続けるには気持ち悪いシャツを脱ぎ一払い、ピっと周りに飛沫を振りまいてそれから近くに伸びている枝にかけようと‥‥って、枝じゃないなこれ、節くれ立った金物のコレはなんというか昆虫の足っぽいか?

 でも虫にしては幾何学的な雰囲気も、ん? 洞窟内に生える足ってのも気になるがその奥のアレは‥‥

 

「お、こんなところにあったの――」

「気安く触らないでもらいたいな」

 

 目に留まった物に触れようと差し向けた手は彼女の冷えた言葉で遮られた。

 思わず止まるあたしの動き。伸ばしている手は大きな節足の奥、山積みにされた金属片の影に見られる青いやつに向けていたつもりだが、どうやらこの兎ちゃんには金属に手を伸ばしているように見えたらしい。勘違いも勘違いだが場の空気からすればそう見えて当然だろうし、何やら機嫌も悪そうなのでここは一先ず言う事をきこう。

 止まった形そのままに声の主を見返すと目が合う。生やす兎耳に似合いの赤眼、何処かでよく見る真っ赤なお目々に似てはいるが、あたしがよく知る相手の雰囲気はもっと柔らかでこの子からはまた別の空気が臭う気もする。言うなればそうだな、この子の視線はもう一人の兎詐欺がよく見せる目で、懐疑心ってのがたっぷり含まれているような目に感じられる。

 

「手は止めたけど、まだ何か言いたげね」

「あぁ、もう一つあるんだ、いい?」

 

「言うだけならお好きにどうぞ、でも出てけってのは勘弁よ?」

「それさ、勘弁出来ないって言ったら出ていってくれるのかな?」

 

 最初に譲歩したせいか、強気に出て行けとを言われてしまう。

 くれる目線とは間逆な緩い口調で出て行けと、随分冷たい事を言ってくれるが、もう少優しくしてくれてもいいんじゃなかろうか?

 お前さんの上司に当たるあいつ(てゐ)だって偶には優しい事を言うもんだぞ?

 ソレを習ってもうちょっとこう見た目通りの柔軟さを見せてくれてもいいんじゃないかい?

 その袖の緩い橙色のシャツやゆったりしたかぼちゃパンツみたいにあたしにも緩い対応をしてくれてもいいんだぞ?

 

「聞いているのかな? 出て行かないなら‥‥いや、あれ?」

 

 思い悩んで傾いでいると、あちらもあちらで何かを思い悩む仕草。

 被る茶色の帽子に手を伸ばし上から抑えて悶々とした顔で洞窟内をウロウロし始めた。

 

「……前にも何処かで……でも何処で?」

 

 暗い穴蔵彷徨いて、聞き取れないくらいの声でブツブツ漏らす妖怪兎。

 何か考えているのならそうやって口にしないほうがいいと思うのだけど、妖怪化して日が浅いからそこまで頭が回らないのかね。それとも思考が漏れても問題無い相手だとでも思ってくれているのかな。だとしたらありがたい、偶に毛繕いしたり餅搗きの手伝いをしてやった甲斐があるというものだ。

 ちょっとだけ嬉しくなり、ふふっと漏らすと彼女の足音が消える。あたしの笑みに何か引っかかったのか、素足でペタペタ歩きまわったかと思えば不意に立ち止まって忙しい兎さん、ポツポツ漏らした単語の『姫様』ってのを最後に、餅搗き好きらしい足音は消えた。

 

「で、スッキリ出来た?」

「なんの事?」

 

「考え事してたみたいだから」

「ああ、それならなんでもないよ、忘れていいわ」

 

「出てけって言われたり忘れろって言われたり、今日はお願されてばかりね。そういう日なのかしら? 厄日だわ」

「私のは願いではなく‥‥いや、いい。それこそ忘れて」

 

「はいはい忘れてあげるわ、でその代わりなんだけどソレ、頂戴」

 

 地獄の誰かがするように笏の代わりに煙管で指す。真っ直ぐに兎ちゃんの腹を指し示すと抵抗のある顔で睨む彼女。モヤモヤ悩んだりフワフワ命令してきたりと、どうにも歯切れが悪いな。兎なら兎らしく、丈夫な前歯があるのだから出来ればそれらしく言ってもらいたい。

 そんな気分が前に出てついついあたしから切り出してしまった、流石に強引、突拍子もないタイミングだと自分でも感じるが、元々九天の滝に物探しに来たのだから急転直下な会話の流れになってもやむ無しだな。

 そう納得し頷くと、向かい合う子もあたしの動きを気にするように同じように首を動かす。この子もやむを得ないと思ってくれたってか、んな事はないしどう思おうが構わんか、あたしがそう思えたのだから今はこれでいい。

  

 そのまま暫し睨み合うもすぐにあたしが飽いた。

 ここらで少し気晴らしするかと煙管に火を灯すと、先ほどと同じように帽子をかぶり直す彼女。それは癖かい、それともそうして見せてくれているのかい?

 目深に被りそのまま固まる金髪兎、持ち上げた腕にシャツが引っ張られて捲れ上がる、するとそこには可愛らしいオヘソが見えた。ほう、洋装のあたしは出しっぱなしでそれも良いと思っているがこうやって偶に見えるのも中々に甘美だ。きっと成り立てなんだろうにそういった事も知っているとは、流石は旺盛な種族だな‥‥って今見るべきはそこではないな。

 何を考えこんでいるのかはわからんがそうやって悩むってのはどういう事だ、言いたい事言ってすっきりしてるんじゃないのか?

 それとも何かね、そんなに大事な物だっていうのか?

 悩むほど大したもんでもないと思うぞ?

 お前さんの後ろにあるのはただの岩で、絵の具の材料くらいにしかならんからな。

 

「どう? 頂けるなら退散するけど」

「あんた、コレがなんだかわかってて言うのか?」

 

「知らん物をくれなんて言わないわよ、いいからその藍銅鉱? 孔雀石かもしれないけど、ソレ、譲ってもらえない?」

 

 再度煙管を差し向けて、そいつを寄越せと述べてみる。

 それから煙管の先を少し弾いて目の前で仁王立ちを続ける子の顔前で揺らす。どうにも伝わっていないと思えて、それならそこを退け、そうしてそこをよく見てみろと、あたしが欲しているものへ視線を誘導させていく。

 

「ランド‥‥クジャクイシ?」

「そうそう孔雀石、その後ろのガラクタの奥に転がってるやつよ」

 

「‥‥こんな物、何に使うのさ?」

「絵の具にするのよ、知らないの? ってまだ知らないか。それならそうね、気になるなら帰ってから上司か姫様にでも聞いたら? あそこの連中なら知ってるはずよ」

 

 あ、でも鈴仙は知らないかもね、と、あたしが最後まで口にする前に動き出す彼女。くるり振り返りあたしが指した辺りにある石を持ち上げて、こちらに向かって放ってきた。

 ふむ、何か含みのあるような顔で投げられたがこの石にどんな意思を込めたのだろう。少し気にならなくもないがまぁいいな、求めていた物は手に入ったし後は話した通りにしてあげよう。

 

 放られたソレを受け取って、感謝の心はウインクで返しておく。

 けれどもその感謝は正しく伝わらなかったみたいだな、さっきと同じような懸念する顔で見返されて終わってしまった。これも知らない仕草の一つだったかね、よくやる輝夜との挨拶だけれどこの子には伝わらなかった模様。なんだ、姫様なんて口にするものだからこの子が姫に付いていた兎さんかと思ったが、どうやら違うらしい。

 でもまぁいいか、この子が永遠亭に行けばまたこの子に会えるのだろうしその時にでも詳しく聞いてみればいいだろう。ついでに輝夜やてゐの前で新人教育がなっていない、あんな勘違いをするような思い込みの激しい子を一匹で縄張り外に出すなんて可哀想だ、なんて説教でもかますかね。

 

 お手々に収まる石ころ転がし、ニタニタしながら穴を出る。

 笑いのネタをコロコロ変えて。

 短時間の雨宿りだったがその簡に雨脚は弱まってくれた事に笑い。

 お願いしたりされてみたり、コロコロ変わった今日の立場ってのも笑って。

 それから後にあるだろう永遠亭でのお楽しみも笑って。

 そうやって笑んだまま里へと戻った。


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