東方狸囃子   作:ほりごたつ

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水々しい、そんな話


EX その44 水暇を辞せり

 ふらりふらりと与太歩き、今日の訪れ先は何処ぞだろうか?

 そう聞かれたところであたしからもここだとハッキリは言い切れない、それもそのはず、今日はなんとなく思いついたままに少女の後をつけているからだ。

 いい感じに秋らしい色に染まり始めた妖怪のお山で、衣かたしきしつつ紅葉見物と洒落こんでいたところ、不意に視界に入った玄武の沢。赤や黄の色合いに済んだ川の色が栄えるなと、そちらも合わせて眺めていた時に、不意に視界に入った川っぽい色をした少女連中。

 その後を色々と逸らしつつつけているのが今の動きで、大きなリュックを背負って、秋風をそれで切って歩く輩達の後をつきまとっている。これは、最近出掛けた外の世界ではストーキング行為と言うのだったか、愛してやまない、いや、病む程に愛してしまった相手を想って後をつけて回り、その一挙手一投足から全てを眺める行為ってのがストーキングってやつらしい。

 

 ふむ、相手の事を知りたいと思う心は理解出来る。

 相手が今何をしているのか、何をしようとしているのか、そこに興味が惹かれてしまって思わずついて回りたくなるというのもわからなくもない。けれどあたしには出来そうにない行為だと思えるな、後を付けて回っている間に眺めるだけに飽いてしまいそうだし、見ているだけよりも直接話して聞いてみたり、手を出したくなってしまいそうで、我慢が出来そうにないからだ。

 ならば今も我慢出来そうにないのか、そう問われればそうでもないと答えるだろう。

 先の言葉と矛盾するじゃないか、なんて窘められてしまいそうだがそれほど矛盾もしていないはずだ、だって相手が違うもの。世間一般で言われるつきまといの対象は狂おしいほどに愛おしいと思える相手になるのだろうが、今あたしが追いかけている相手はそういった手合ではない、なんて事はない唯の暇つぶし相手なのだから。

 

 誰に向けてでもない訂正を内心で考えつつ、先頭を歩く少女、何やら機嫌よさ気に鼻歌を歌う性悪河童、河城にとりに連なる河童軍団の後をチンタラと歩いて行く。

 玄武の沢から通じる穴蔵を抜けて、あまり見慣れない景色が続いた先へと結構な数の河童ちゃん達が向かっていく。その背、というか甲羅に似た色味のリュックを眺め、まだ着かないのかな、と感じ始めた頃合いに開けた場所に出た。

 着いた先はなんだかゴゥンゴゥンと煩い場所。入るな殺す、そう書き捨てられた張り紙が張られ、奥には薄ぼんやりと見える長い煙突が数本見られる場所。

 ここってば何処なんだろうか?

 目的地には着いたようだし、そろそろ聞いてみるかね?

 意識やらは逸らしたままで、発明仲間と会話する奴の頭に手を伸ばす。

 そうして帽子を深々被せ、ここは何処かと聞いてみた。

 

「煩いところね、こんな所で何を作ってるのよ?」

「ひゅい!!!?」

 

 声をかけると手が弾かれる。

 払われたわけではなく、素直に驚いてくれたようで、その場で軽く飛び上がるにとり。回りにいる河童ちゃん達も何やら驚いてくれたらしく、それぞれがかけている眼鏡をズラすほどに仰け反ってくれたり、おかっぱ河童ちゃんに至っては人の顔を見て嫌な顔までしてくれた。

 

「アヤメ!? なんでここにいるんだよ?」

「来たくて来たわけじゃないわ、ついてきたら着いたのよ」

 

「あん? 何かしに来たってわけじゃないの?」

「特に何も、ゾロゾロと何処に行くのかなって思っただけで、何かやらかそうって気はないわ」

 

 問いに対して両手を開き、何もないと語ってみると、それならいいやとにとりもテキトーに返してきた。こちらとしては開き直ったわけではなく、本当に暇で、なんとなくいたからついて来たってだけで、ココで何かしらをやらかそうって腹積もりはない‥‥が、それを言わずとも安心されるとは、なんだか癪に障る。

 もう少し怪しむなりして欲しいところではあるのだけれど‥‥先程提供した驚きに続いて、もう少しつついて楽しめる部分はないかなと、にとり達や辺りをちょいちょいと見比べる。その動きから何か察したのか、良ければ中も見ていくかと、やけに親切な河童ちゃん。

 

「暇なんだろ? 何もしないなら見学してってもいいよ?」

「いいの? 素直にあたしの言う事を聞くなんて、普段の狡猾さが嘘みたいね」

 

「何かするなら別の事で来たって話を逸らすのがお前だろ? 何もないって言う時は大概何もないじゃないか、それなら信用してやってもいいかなって思ったんだよ」

 

 フフン、一言で例えるならそんな顔の河童。

 さっきの一言で言いたい事は全て言い切ったようで、収穫待ちの胡瓜に手を出さなければあちこち見てても構わないと言い残し皆と奥に消えていった。これはなんだ、切り替えが早いというのかなんというのか、よくわからんが、水平思考なんて二つ名らしく見方を変えてくれて、素直な物言いをしてくるにとりがちょっと可愛いなどと思ってしまった。

 このままだと本当にストーカーになりそうなので、勝手に理解してくれて、察しが早くて妬ましい、と別方向に思考を入れ替えておくとしよう。

 

 そうして人っ子、は元よりいないか、十人はいた河童連中の全員が奥の煙突が見られる建物へと消えた後、一人残されてウロウロとし始めてみる。まずは手前の手を出すなと忠告された辺りからと思い、全面が透明なビニールで覆われた中に足を運んでみた。

 中に入ると暖かで、なんとなく地底の温泉近くにいるような感覚を覚える。暫く眺めていると奥にいた河童ちゃんと目が合ったので、軽く手を振りつつ近寄ってみた。

 

「あ、野鉄砲」

 

 向かう途中で言われたお言葉。

 確かに狸は狸で大差ないが、そいつは違う狸さんで厳密に言えばあの子らはギリギリ動物の範疇に残っているはずだ、いつだったか誰かさんが『私が見つけて上手く処理しなければ、身内が退治されていたところだったのよ。感謝なさい』なんて言われた事があった気もしなくもない。

 そうだな、確かにそれなりには感謝すれども、その結果山童連中が巫女さんに退治されたって話で、そちらについては何のフォローもしないって辺りが、元お山の大将らしさに思えて、感謝よりもそちらに目がいってしまっていたな‥‥そうか、あの時の被害者か、こいつ?

 

「誰が野鉄砲なのよ、って‥‥あぁ、野鉄砲の犠牲者になった子?」

「そう、あの時は酷い目にあったよ」

 

 やれやれって表情で、長めの前髪を直す山童、もとい河童ちゃん。

 真ん中で分けられた前髪の右側にトレードマークなのか、ヘアピンをバッテンに通して見せてくれて、姿からあの時にドジ踏んで☓つけられたのは私だとでも言うような姿の河童に聞いてみた。

 

「貴女、山童になったんじゃなかった?」

「ん? 今は河童、格好も河童のそれでしょ?」

 

「そうね、山童の迷彩仕様ではなく雨合羽みたいな格好だけど、川を捨てたんじゃなかったの?」

 

 問うてみれば確かに捨てたと、で、また拾ったから戻ってると、調子のいい事を聞かせてくれた。なるほど、捨てても拾えば元通りってか、なんとも都合の良い思考回路だが、こいつらの住むお山には拾ってくれる野良神様も多くいらっしゃるはずだし、捨てる神あればと言われるくらいだ、ちょっとくらい捨てたところでなんちゃない事だったか。

 もうちょっと聞いて、サバイバルゲームに興じる時はまた山童らしい格好に戻ってから争うんだ、なんて話をした頃に他の河童に呼ばれて奥へと姿を消したバッテン河童ちゃん。

 それに習い、あたしもビニールハウスから抜け出て奥へと続く通路へと歩んだ。

 

 さして歩かず着いたは工場。

 どうやら煙が立ち上る建物の中のようで、あの煙はこの中の作業から生まれたものらしい。中に踏み入った瞬間から目に入ってくる大きな建造物、外の世界で語られているうまだかなんとか言うのを真似て作った巨大な‥‥可愛くない亀さん?

 にしては首が長いように思えるし、なんだ、これ?

 と、眺め悩んでいると、ソレの裏手から何やら言い合うような声が聞こえた。

 

「だから遠距離攻撃だっての、相手の間合いの外から狙撃して派手にぶっ飛ばす、大艦巨砲主義にこそしびれるロマンがあるんだって!」

「いいや、接近戦こそがロマンの代名詞だよ、にとり! ドリルで一撃必殺! そこに憧れるのが発明家ってもんじゃないか?!」

   

 やいのやいのと聞こえてくるのは、先に消えたにとりとオカッパ頭の河童ちゃんが言い合う声。

 その騒ぎ声に引かれるようにグルっと回って奥へと向かうと、聞こえた通りの激論が交わされていた。丁度近くで眺めていた眼鏡仲間の河童ちゃんに、なんでまた言い合いなんてと訪ねてみれば、今作っている最中の亀さん、正しくはネッシーとかいう生き物を真似た機械に搭載する武装について熱く論じているらしい。

 

「全く、わっかんないやつだな。ドリルなんて他にもいるじゃないか、あのパッツンパッツンと被ってちゃ目立てないっての!」

「そんな事言い出したらにとりの言う一発ってのも花や魔理沙と被ってるじゃないか! 二人もいるのと被ってる方が目立てないって!」

 

 互いの意見をぶつけ合う河童達、どちらの意見もなんとなくだが、同じような部分でダメ出しがされていて、両者ともに言われてはぐぬぬなんて唸っている。それでも反論されたところで自分から引き下がろうとはしない二人。

 ふむ、これはまた面白い状況が見られたものだ、水を操り水に生きる河童たちが水掛け論に興じている姿を拝めるとは、何の気なしについて来ただけだったというのに、こいつは存外面白い。

 二人を眺め、薄めの笑い声を漏らしていると、隣の眼鏡ちゃんも闘論に混ざっていく、このタイミングで混ざるのだから、二人の内のどちらかについて場を終わらせるつもりかな。なんて考えがあたしにはあったが、聞く限りではそうとも言い切れないな、こいつは。

 

「私はチェーンソーがいいと思うんだけど‥‥」

 

 少し身体を逸らせ、何を言うのかと思えば別の武装がいいと語り出す眼鏡っ娘。

 工場のライトでレンズを反射させ、キラリと光らせながらの横槍、解決のためにどちらかの意見に上乗せするなんてのとは逆で、私はまた別の物が言い出した。これでまた荒れるかなと一人笑って見守っていると、騒ぐニトリと之幸いと利用するオカッパちゃん。

 

「選択肢が増えた!? しかもまた接近戦仕様か!」

「お、わかってるね! やっぱ近接で蹴散らしてこそロボだよね!」

 

 そうだそうだと頷くオカッパ、そういうわけじゃと否定するも勢いに飲まれる眼鏡っ娘、そうして煮え切らなくなってきたにとり。この流れはにとりの負けか、そう読んだ頃に発明馬鹿と目が合った。何やら言いたげな表情であたしを見て、それから他の二人にバレないように器用な指の先だけを折って見せてきた。

 なんだ、なんか言って寄越せってか、こちとら発明やらロボットなんて物にはとんと疎くて、言える事なんて何もないぞ?

 傾いでいると目が細まる。

 そんな目で見ないでくれ、地底でキュンとキテからというものの、そういった目線にも少しだけ、本当に少しだけ反応してしまうのだから。

 この場にいると多分マズイ、そう理解できたので逃げる算段を企てる、けれども巻こうとした尻尾が眼鏡っ娘の裾に触れてしまい、それをキッカケに振り向かれ、視線を集めてしまった。余計に強くなるにとりからの視線、水を操る少女に見られ湿らせるというのもまた乙だが、今は相手もいないしいいか、テキトーに返そう。

 

「全部載せ、じゃダメなの?」

 

 ポツリ漏らしたあたしの文言。

 それを聞いてから数秒、にとりに向いていたやかましさが今度はあたしに牙を向いた。言うに事を欠いて全部載せとはどういう事だ、一点特化するからロマンがあるんだ、などとオカッパと眼鏡から続けざまに言い切られ、終いにはこいつにロマンなんぞわからんと、助け舟を出したはずのにとりからも言われてしまう。

 さてはあれか、こうやって槍玉に挙げる先を変える事が狙いだったな。先程までは劣勢で意見が水泡に帰す寸前だったくせに、立場が変わると水を得た魚のように活き活きとして喧しい。全く、相変わらずの狡猾さでそこは中々好ましいが……どうやってこの雰囲気から逃げ切ろうか?

 このままではにとりに変わってあたしが言われたい放題となってしまう、水掛け論に水を差して、そこから火傷していては格好がつかん上にペテン師としての名が廃る。このままでは気に入らんし、何か切り出せるような部分はないだろうか、あたしにとっての誘い水となるならなんでもいい、から見つけたい。

 

「黙ってんじゃないよ、口を挟んだんだから何か言い返してきなって」

「挟ませといてよく言うわ。言い返せと言われても、対して興味もない事で特に思う事もな‥‥」

 

 思いつかないから素直に返す、それがまたしても火種となった。

 興味もないって言い様がネッシーを整備していた他の河童ちゃん達の耳にも届いてしまったらしい、私達の作品に対して興味ないだとか、ブサイクだとか酷い言い草しやがって、と、アチラコチラから文句とともに集まってくる。

 だがしかし、ちょっとだけ待って欲しい、確かに興味は持てないが、ブサイクとまでは言っていないぞ。それを言ったのはあたしではない、他の河童連中の誰かのはずだ‥‥けれど、特徴のない奴も中にはいて、どの口から吐かれたのかまでは問い詰めきれん。

 奏功する間に囲まれる、本当になんだ、この寝耳に水な場況は?

 

「おい、アヤメ、なんか言えよ」

 

 何か脱するネタはないか、結構真面目に考え耽っていると、ちょいと詰め寄り下から覗き込んでくる水棲の技師。そうだそうだって声援を受けて、得意げな顔で見てくれるが、大元を返せばこいつのせいで今のような、水に絵を描くような思いでいるというに、いけしゃあしゃあと微笑んでくれて、全く以て気に入らない。

 そもそもお前が始めた水掛け論が切っ掛けで始まったことだろうに、その私は完全にこっち側ですって顔が面白く無い‥‥ならどうするか、こうなっては致し方がないので、心を入れ替えて開き直る事としよう。

「何も言う事なんてないわ」

 

「あん? 言うに事欠いてなんもないの?」

「ないわ、興味も、言う事もなぁんにもない」

 

「あ! またそうやって‥‥」

「そうやって? なに? 何を言えばいいの? にとりの推す大艦巨砲主義ってのに乗っかって論じればいいの? それとも接近して一撃必殺が気持ちいいと、別のに乗っかればいいの? どうしてほしいの?」

 

「どうしてって‥‥」 

 

 ズケズケと詰め寄って来た顔に、ズケズケと言い返す。

 もうどうにでもなれ、そんな勢いが感じられるように、散々感じた水っぽい思いに例えるなら蛙の面に水、若しくは立て板に水ってな感覚で、正面切って開き直り、にとりの言葉を遮ってかぶせていく。案がないなら勢いでちょろまかす、そう考えればこれも化かし合いと言える物で、化かし合いなら狸が河童に負けるわけがない。開き直って思いついた、考えのない勢いだけの思い付き。

 ソレに任せて語ってみれば、少しだけ静かになる工場内。

 これは存外悪くない空気になってきた、静まるって事は「言う」から「聞く」に立ち位置を変えようとしているって事だろう、ならそこを使わない手はない‥‥後はここから何を語るかだが、こういう雰囲気の時は相手を立てて煽てるのが定石ってやつだろうな。

 それでも覆水はお盆に返らないし、そうだな、我を通しつつこいつらを立ててみるか。上手くいったら重畳で、やっぱりダメなら案の定とでも思っておけばいいだろう、取り敢えずだ、何かしら言っておく事とするかね。

 

「なによ、じゃあなんて言えばいいのよ? もう面倒臭いから全部載せなさいよ」

「なんだよ、結局それか!」

 

「そうよ、河童のロマンなんてあたしにはわからないもの。だからわからないなりに別の視点から考える事にしたの」

「別ぅ? なんだってのよ?」

 

「単純な事よ、にとり。あたしは建造物には興味ないけど河童の技術ってのは評価してるの。だから遠近対応出来るように、全部載っけて作り上げて、それからしてやったりって顔をしてみせてほしいのよ」

 

 ズラズラとそれっぽい事を口にしてみる、すると、にとりではなく外野の連中からなるほど、なんて単語が聞こえ始めてきた。

 その中には眼鏡っ娘やオカッパ頭、いつ合流したのかは知らないがバッテンヘアピンの彼女まで合流していて、同じようにそれも悪くないなと頷き始めてくれた‥‥いい流れだ、人の事を尻子玉ならぬ槍玉に挙げてくれた河童を流すいい流れが訪れた。

 後は放っといてもあたしから発明の方向に意識が向くだろう、始めはどうかと感じたが、こうしてある程度の流れを得られた後になってみれば、悪くない化かし合いだったと思えるな。

 そうは感じないだろうかにとりちゃんよ‥‥感じてないな、その顔は。他の皆とは違って一人だけあたしを睨んだままだ、折角褒めてやったというのに、そんな視線を寄越してくれるのはなんでだい?。

 

「さっきの、また法螺吹いてるんでしょ?」

「どれのことを言ってるのよ?」

 

「評価っての、あんたが誰かを褒めるなんて‥‥」

「結構多いわよ? 少なくともにとりは買っているわ、ビジネスパートナーに選ぶくらいだし、椛との勝負でもあたしはにとりが勝つ方に毎回賭けてるんだから。出来ればそっちでも期待に応えて欲しいんだけど?」

 

 期待しているなんてらしくない事をぶつけてみれば、あまり見られないような、気恥ずかしさの混じる自慢気な笑み、とでも言うのか、そんな顔を浮かべてくれて、それなら応えないわけにはいかないなと、胸を張るにとり。

 あたしが期待し賭けているお陰で毎回にとりが負けて、その度にあたしもあの天狗記者に種銭取られていたりするのだが、そこはそれとして黙るとして、今はこっちの場を収めよう。

 水魚の交わりというには仲がいいってわけでもないが、ビジネスのパートナーとして選出するくらいには水心で魚心な部分もあると思える相手だ、そんな輩が気を良くしたのだから、先の言われっぷりは水に流して忘れた事にしよう。

 存外楽しめたし、悪くない暇つぶしだったのだから。

 

 

 そうして河童のアジトで過ごした日から数日。

 完成したという虫の知らせを耳にして妖怪のお山、正確にはその麓にある置いてけ堀に足を運んでみた。そこで見られたのは萬歳楽と一緒になって水辺に浮かぶネッシーとやら、姿形は先日の建造途中と何も変わらず、本当に全部載せたのかと疑いの眼差しで見つめていたが‥‥そんな視線に気がついたのか、こちらの方面を狙ったように、高速回転する頭から結構な量の放水が始まった。

 激しく回る水龍っぽい頭、そこから吐かれるは激しい水流。

 当然のように全身ずぶ濡れにされ、咥えていた煙管も火を消されてしまった。

 それでも何もせず、静水な心でその場を眺めた。視界に映るは弾幕戦、ずぶ濡れにされた見物客の人間少女達が巨大な水棲生物に札やら星やらナイフやらをぶっ放し、完成したばかりの物を滅多矢鱈に破壊し尽くしていく光景を、暫くの間見つめていた。




 後書きを利用しまして少しお知らせを。

 今回ありがたいお話を頂きまして、番外編として以前に書かせてもらいましたお話の主人公、白桃橋刑香さんが活き活きと描かれる本編『その鴉天狗は白かった』そのお話の一節にて『東方狸囃子』の主人公である囃子方アヤメが登場するお話を掲載して頂きました。
 ご興味を持たれた読者さんの中で、お時間の許される方は、よろしければ足をお運びくださいませ。そしてお手数ではありますが、ご拝読される際の注意事項を一点だけ記載させて頂きます。

1:世界観や設定などは『その鴉天狗は白かった』でのモノであり『東方狸囃子』内の流れや設定とは異なります。文章もほりごたつではなく、ドスみかん様執筆となります。投稿前に文章の再確認などもさせて頂いておりまして、何も問題ないという判断の元での掲載となっております。
  ですので、多少の違いなどが感じられてもソレも楽しみの一つかな、くらいの緩い見方で捉えて頂けるとありがたく思います。

 更に、コラボのお知らせと合わせまして、もう一つのお知らせも。
 拙作『東方狸囃子』の推薦文までもドスみかん様に書いて頂けました。
 色々と冗長で面倒臭い拙作を、簡潔でわかりやすい文章に起こしつつも丁寧な、素敵な文章でご紹介をして下さいました。
 あらすじに入れ替えたいくらい素晴らしく、同時に妬ましい推薦文だと感じております。
 ご興味を持たれた方はこちらも合わせてご拝読くださいますと、非常に嬉しく感じる次第です。

 それでは、暖かな目線でお読みいただけたなら幸せです。

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