東方狸囃子   作:ほりごたつ

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4日目夜→5日目朝


第百二十五話 裏付け調査

 真冬の銀世界の中で冬妖怪と遊んでいるわけでもないのに何処を見ても暫く真っ白で参った。

 閃光をまともに受けてから小一時間ほどたったが未だに視力が戻らず、今は座り慣れた誰かの墓石に腰掛けてまったりと回復を待っている。

 随分と騒がしくなったはずなのに寺の皆はまだ姿を表さない、聖と一緒に天邪鬼探しに出ている者もいるだろうが本尊様くらいは残っているはずだ、うっかり気が付きませんでしたというには派手な騒ぎになり過ぎていると思うのだが、あいつが煙管で逸らしでもしたのか?

 いやいや、さすがに物一つでそこまでは出来ないだろう。

 本人であるあたしなら兎も角、愛用品を使った所で能力の応用までは出来ないはずだ。

 あの煙管では意識や視線は逸らせないはず、初めてお山に入った時のように攻撃を煙管で受けて逸らすという使い方しかしていないわけだし、元の持ち主が使っていた以上の使い方は出来ないと思う、出来ても弾幕を受けて逸らすくらいにしか使えないはずだ。

 まぁいいや、考えていても答えは出ないだろうし思い悩んで立ち止まるよりは先にわかりそうなことから考えよう。

 

 まずはあの場にいた者の安否確認か、撃墜されたらしい亡霊姫は何時の間にやらスキマに回収されたらしい、あたしの近くにも回収用のスキマが開いていたようだが視力が戻るまでは能力を解くつもりがなく、そのおかげでスキマも逸れて回収はされなかった。

 折角のお迎えだったがまだここでやる事もあるし、回収されなかったのは都合が良かった。確実にあるとは言い切れないが、あたしをやり込めてくれた唐傘お化けから得られたネタ、それの再確認がしたいと思っていたし今帰れば多分消える。

 消えてしまう前に直に見て確認したいモノがあった。

 

 曇る視野でも気にならない慣れた動作で煙管を咥えて、早く晴れろと視界の靄を口から吐き出していく。病は気からというくらいで吐けば晴れるかと思い込んでみているが、実際のところは煙を纏い慣れた景色に包まれて回復を早めてみただけだ。

 怪我の回復やら外傷を癒やす事に宛がう場合は多々あったが、怪我ではなく麻痺に対しても効果があるとは気が付かなかった。自分に対して言う言葉ではないが気は心というくらいだ、気の持ちようでどうにかなる事も多いらしい。

 生命の神秘ってやつかね、狸としての生の理からはみ出して幾久しいがそうなってから生命の神秘ってやつを感じるなど、いくつになっても驚きや発見があり楽しい暮らしぶりだと感じられる。

 自分でも意識できるくらいに思考が逸れて随分と落ち着いた頃、視力の方も完全とは言わないが回復し、月のない暗い夜でも銀の瞳には十分に景色が映るようになった。

 

 ぱっちりお目目に戻った事だし早速確認しておこうか、探しものは何ですか?

 それほど見つけにくいものではない、あの時逸らした何かの衝撃。

 地を叩き砂利を爆ぜる程の大きな叩く力の跡地。

 墓石に腰掛ける前まで立ち尽くしていた辺りを見やる。

 数歩ほど歩いてすぐに見つけたのは結構な範囲に広がるクレーター。

 あたしの拳よりも随分と大きい何かで掘り起こしたクレータの中心地にアレがないかと探してみた、回復を待つ間に流れてしまうかと危ぶんだがどうにか見つけた魔力の残り香、逆さのお城が異変会場真っ只中にあった頃に逆巻いていた魔力の嵐。

 あれと同質の残り香が微かだが地に残っていてくれた、幽々子や娘々が気が付かなったのはあの異変のには関わっておらずただの魔力の残り香としか感じ取れないからだろうか。

 いや、幽々子は兎も角娘々は気がついているのかもしれない、が気が付いた所でだからなんだという話か。これが繋がる先を知らなければ大して気にするようなものでもないだろう。

  また少し逸れ始めた思考回路を正した頃、残っていた魔力が掻き消えた。

 

 小傘といい正邪といい、大妖怪と言うにはちっこい相手の二人にしてやられたがそのおかげで仮説に自信が持てた。あの天邪鬼は多分贋作打ち出の小槌を持っている、それも代償なしで気軽に振るえるくらいに扱えているはずだ。

 理由としてはさっきの残り香、本物と全く同じだと感じられた魔力の波動は、本来本物に戻るはずの魔力を横から掠め取って使っているから残せるのだろう。

 本物に戻るはずの魔力を奪っているだけで真作のように溜め込んで使っているわけではない。

 横からかすめ取るだけの正しくない魔力の供給経路、その違いが使い手の代償に関わってくるのかもしれない。小傘が贋作なら私でも扱えるというくらいなのだから、この考え方はそれほど間違っていないと思う。

 

 これが正しいのならあたしや紫さんの愛用品が追えないのにも説明がつく、打ち出の小槌に持ち主だけ変えろと願うか、全く同じ贋作を新たに創り出すかすれば、能力を保持したまま元の持ち主に気が付かれないなんて都合の良い物に出来るはずだ。

 あたしの説も都合の良いものだが、都合よく使う盗品を考えるための説なのだからこれくらい都合の良い発想で構わないはずだ…この考えがあっていようが間違っていようがそれはどうでもいい、正誤をつけるというよりも自分を納得させるための論だからだ。

 何処から見ても都合の良すぎる考えだが、これくらいに考えて納得しておいた方が後々で動きやすい、いざ対峙して惑うよりは不正解でも答えを持っていた方が迷いが少ないはずだ。

 いつか正邪が言っていたな。

 

 『詭弁を言ってなんだってんだ、例え姫がそう感じても言った私はそれで全てだ』

 

 それに習えばこれが今のあたしの答えで全てだ、答え合わせをするつもりもないしこう結論付けたのだからこれでいい。

 我儘さで勝てると思うなよ天邪鬼、こちとらお前よりも長く憎まれっ子を楽しんでいるんだ。曲げたりはするが折れることはない、古狸の矜持にかけて次は嗤う側になってやろう。

 

 さて、とりあえず帰るかね、自己完結してスッキリしたしお腹も空いた。

 迎えに出てから暫く経ってしまったが、幽々子に喰わせるつもりで作ったあの量なのだからさすがに完食されてはいないだろう、もしもないなら別の物を喰うだけだ。

 ドラムを主菜に琴それと琵琶の副菜がいるはず、よりどりみどりで堪らない。

 

~少女帰宅中~

 

 舌舐めずりして帰宅してみればそこにいたのは結構な数のお客様。

 留守番を任せたおかずの三人はわかっていたが追加でおかずが増えている、胃が凭れそうな八雲の賢者と亡霊姫が大きな卓毎持ち込んで五人並んで食事中。

 声を合わせておかえりなさいと言ってくれるのはいいがあたしの分は一体何処だろうか、お櫃は既に空になっていて含め煮が入っていたはずの鍋も綺麗に洗われて逆さで水切りされている。

 流しの前にはいつもの腕組み姿勢で立つ九本尻尾、気まずそうに苦笑しながら見てくるという事はまた主の悪戯でもはじまったのかね、隣であたしと主を見比べている二本尻尾の目が揺れていて悪戯の答えを教えてくれたが‥いいか、ここは少しだけ付き合おう。

 亡霊の姫と並んで座りあたしの茶碗を使い優雅に食事を済ませた形跡だけを残す妖怪の賢者、小さなハンカチを口元に宛てがい、言葉では言わず態度でご馳走様と言ってくるタダ食い妖怪。藍の隣に立ちジト目で睨むと更に煽ってきてくれた。 

 

「一緒に戻れば良かったのに、遅かったから幽々子が待ちきれなかったのよ」

「人のせいにするなんて酷いわ、先に戴きましょうって言い出したのは紫なのに。アヤメ、おかわりはないのかしら?」

「おかわりが欲しいの? それならあたしにもなにか欲しいわね」

 

 おかわりを求められるという事は気に入ってくれたのだろう、幽々子に振る舞うつもりで拵えたのだからそこは満足するところだが、迎えの牛車に乗らなかったくらいで夕餉のお預けをくらうとは思わなんだ。

 言葉に出さず尻尾を下げて今の心境を表すと二本尻尾の獣仲間が立ち上がり小さな包を出してきた、包を開けば小さなおむすびが二つ。

 

「あの、私の分なのでちょっとだけなんですが‥」

「橙はいい子ね、気持ちだけ受け取るわ」

 

「でもそれだとアヤメ様が」

「そうね、でも橙のお陰でわかってるから大丈夫よ」

 

 橙に包を戻して隣で苦笑する式の九本尻尾に手を突っ込む、一瞬ピクリと九尾が揺れたのは間違って尻に触れたからだろうか。主の命とはいえどつまらない悪戯に付き合った罰だ。

 少し揉むくらいの役得くらい寄越せ。

 少し弄り見つけた包、橙のそれよりも大きいのが二つくらい包まれているっぽい包物。幽々子に食い切られる前にお櫃を洗いながら取り置いてくれたものだろう、包を掴む前に再度尻を揉んでから包を取り出した。

 おにぎりを見て、あ、という亡霊の姫に包み毎手渡すとすぐに食べきった。気にせず笑顔で頬張ってくれてありがたいがあたしは何がもらえるだろうか、おかわり代わりに幽々子か紫さんから何か欲しい所だが。

 あたしと同じく頬張る幽々子を見ていた赤い頭の嫁に視線を移すと、スキマから見えない位置で両手を合わせていた。そこのスキマに丸め込まれたのだろうがそれはいい、ソイツをマトモに取り合うよりは丸め込まれて流されたほうが後が楽だ。

 腹の足りない分は後で満たしてもらうからそれはそれでいいとしよう。

 食事しながら考察開始と考えていたがないなら仕方がない、とりあえず一服でもしながら仮説の纏めといきたい所だがどうしたもんか、このまま黙れば不自然さ満開になるし姉妹相手なら考え事をしながらの会話でもなんとかなるが…雷鼓に八雲の二人と亡霊相手には無理な話だ、すぐにバレる。

 開き直ってずらずらと話し始めてもいいが、やられた幽々子とあまり動く気のない紫さんは兎も角、付喪神三人組にはまだ話したくないというのが正直なところだ。

 意地悪というわけではない、なにか考えはないかと問われればあたし程度の立てた仮説で良ければいくらでもお答えする。

 だがまだ問われていないし頼られてもいない、ご褒美に対して自力でどうにかしようとしているのだから、要らぬお節介をして押し付けがましい煙たい女だと思われたくない。妖怪としては煙たいがその辺りは言葉の綾だ、気にしないで欲しい。

 それに他者が頑張る姿を見られるのは面白いものだ、何かを求めて追いかける姿は美しく思える、それが愛しい者であれば尚更というもの。

 出来ればこのまま自力で手に入れて欲しいが、ダメならその時は頼って欲しい‥その時の為に色々と動いているという面もなくはないのだし。

 未だ頼ってこないあたしのモノを見ながら少し考える、ネタをばらさず煙に巻きつつスキマと姫からおかわりもらうにはどうしたもんか、悩みつつ吐いた煙を指で巻いているとスキマ組の四人が動き出した、楽器組との会話を聞く限りこの辺りで帰るようだ。

 食うもん食って悪戯して帰るだけとはやりたい放題で何様…

 大家様だったな、ならば仕方がないか。

 

「帰るならご馳走様くらい聞きたいわ、おかわり分は貸しでいいのね?」

「今は持ち合わせがないのよねぇ、御礼代わりといってはなんだけど忘れ物の場所まで送ってあげるわ。それでいいかしら?」

「忘れ物……そう言えば傘を持ち帰れと怒られたわね、届けてくれてもいいんだけど送ってもらえるならそれでもいいわ」

 

 帰りは知らないわ、そう言いながら先にスキマに消えていく八雲一家と腹の満ち足りないお姫様。雷鼓と姉妹にまた出てくると伝えると夜は戻るのかと問われたが、忘れ物を取りに行くだけでそう遅くなるつもりはないが、場合によっては遅くなるかもしれないから、泊まっていくなら好きにしろと話し軽く手を振りスキマへと歩みを進めた。

 

 三歩進んで出る先は寺の玄関もしくは墓場、ではなくて綺麗な枯山水が広がる顕界の外である白玉楼。わざとらしく誘ってくるのだからこうなるとは思っていた、付け足して遅くなると言っておいてよかった。

 綺麗に整えられた玉砂利を踏み荒らして亡霊屋敷の縁側へと腰掛ける、賢者と姫の並ぶ横に座り庭師がいないのを確認してからこうじゃあないかと論を述べてみた、大きな反応こそないが否定はされないのだから見当違いというものでもないのかもしれない。

 

「……というのがあたしの仮説。やられた幽々子に話ついでに聞きたいんだけど、あれって魔理沙の爆弾だけで落ちたの?」

「爆弾で弾幕を消された所を殴られたのよ、たんこぶなんて出来てたら困るわぁ」

 

 天冠付きの帽子を脱いで淡いピンクの頭を下げる、優しく撫でて探してみるとそれらしいのがほんのり膨らんでいる。

 亡霊なのに触れられてたんこぶまで出来るなんておかしな話だが、半分幽霊の従者も触れられるし大根足の全霊も撫でることが出来るのだった。

 常識に囚われてはいけない幻想郷だったな、気にならなかったことにしよう。

 

「殴られたって言うけど何で殴られたの? ちょっとくらい見てないの?」

「アヤメも見てたでしょ? 真っ白でなぁんにも見えなかったわ」

「そうなのよね、あたし達には見えなかったのよね」

 

 誰かの扇子で隠すべき笑みを盗み何も隠さず幽々子の奥に見せつけてみると、間に挟んだピンクの髪から益々似てきて可愛くないわという謎の呪言を吐かれるが、言葉の意味が理解できないのであたしに言われているわけではないとした。

 気にせず笑んで眺めていると眉をハの字にして困るわねぇ、とわざとらしく見せてくる割と困ったちゃん。ハの字に負けず笑んでいると小さく手の平を広げて見せて、蕾をつける庭桜を眺めて余計な事をのたまい始めた。

 

「もう少ししないとお花見できないわね」

「博麗神社が今満開なんだもの もう少し待たないとうちでは咲き始めないわ」

「梅でも植えましょうか‥‥いえ、梅は神社にあるし竹もアヤメの家にいけばいいわね。松にしましょうか」

 

「竹はともかく松じゃお花見できないわぁ、松ぼっくりも食べられないし」

「松の実なら食べられるわよ、手間が掛かるからあたしはパスするけど」

 

 それならいいかもと破顔するお姫様は捨て置くとして、紫さんから少しのおかわりはもらえたし用事は済んだ。

 一服してから帰るかと煙管と取り出すと、いつかのように紫さんに煙管を見つめられた。視線を気にせず葉を手の平から投げるとスキマで奪われ丸め損になってしまう、一服の邪魔してくれてまだ何か教えてくれるのかね?

 

「天邪鬼が持っているなんて、身内だけに答えを教えたりしたら公平な遊びにならないわ」

「あら、不公平な事なんてないわよ? 文に聞かれて答えたの、記事にでもしてくれれば皆も知るわ」

 

「記事にしてくれれば、ね。そうね、確かにそうなれば公平ね」

 

 いつもの扇子越しの笑みに向かい薄笑いを浮かべて返答する、言った通り記事にしてばら撒いてくれれば公平で何の問題もないはずだ。

 天狗衆が警戒態勢に入ってしまいお山から出られない状態だとか、記事に起こしても配りに回る事が出来ないだとかそんな事あたしには関係ない。

 狼女に問われた事を記者にも聞かれて素直に答えただけ、偶々近くに雷鼓がいて偶々問い詰められたからヒントとしてではなく信頼回復の為に答えただけだ。直接聞かれたわけでもないし直接話したわけでもない、故意的な不正ではないしこれで捕まえても褒美なしとは言い切れないだろう。

 そもそも組んではいけないという縛りもないはず、それぞれが動いてバラバラに足掻いているのを見るほうが面白い、その程度の腹積もりのくせに難癖を付けないでもらいたい。

 自分だって幽々子を回収したりして少しの贔屓をしているのだから、あたしがほんの少し贔屓するくらい見逃してもいいだろうに、あたし自身は幽々子と同じでご褒美には興味がないのだし。

 曖昧大好きな境界の妖怪に曖昧な物言いを返すとニンマリと嗤ってくれる、これに似ているなら確かに可愛さはないなと納得し、先ほど呪言を吐いてくれたここの主に見舞いの言葉を吐いて言い逃げする事にした。

 

「あらぬ言い掛かりを受けて傷心だからそろそろ帰るわ、既に事切れてるけどお大事にね、幽々子」

 

 ピンクの髪に手櫛を通して立ち上がり尻尾を腰に巻いてみせるとあたしの前にスキマが開く、帰りは知らないなんて言ったくせにお優しい事だ。疑惑も持たずにスキマへと足を伸ばすと予想していた竹林ではなく、お香の匂いが立ち込める何処かの玄関先へと吐出された。

 

 宙に開いた瞳の空間からぺっと吐き出されて砂利の敷かれた庭先に捨てられた、もう少し静かにポイ捨てしてくれれば音を立てずに回収出来たものを。唐突になった砂利の音と庭先に現れたあたしの妖気を探し当てたのか、大きな丸耳のネズミ殿に見つかってしまった。

 笑んで手を振り近寄るとロッドを携えた右手を軽く上げて寺の中へと戻っていった、あっちもあっちで何かを探している最中のようだが探しているのはお尋ね者かね、それとも主の失くしたナニカだろうか。

 あれに宝塔でも盗まれたか? いや、ないな、盗んで贋作にしようともあれは扱えないだろう。持ち主こそ代理だが宝具自体は天部衆の物だ、あたし達の愛用品なら正邪の妖気でなんとかなるかもしれないが神気によって悪を裁く宝塔が小悪党に扱えるわけがない。

 それならまたなんでもない探しものの最中かね、探しものはなんですか?

 見つけにくいものだったとしてもあのダウザーならすぐ見つけるだろう。

 ん? 太鼓も煙管も失くした時にネズミ殿に聞けばよかったのかね?

 今更気が付いたところで後の祭りか、文字通り騒いだ後だし気にすることでもないな。

 

 そういえばなんでこの寺に吐出されたんだったか、何かを忘れて取りに来たはずだが一度忘れた物を記憶に捉えておくのは難しいらしい、すっかりと抜け落ちてしまった。

 まぁいいさ、そのうち何を忘れたのかすら忘れるだろうしそうなったらまた小傘に怒られればいいだけだ。

 怒られても万年腹ペコ傘に何か奢れば済む話だし、それはその時考えよう。

 三下は懲りない、これも相場で決まっている。

 

~少女再帰宅~

 

 帰ってみれば誰もおらず静かな我が家で少し寂しい。

 泊まっていっても構わないと言っておいたはずだが今日は帰ったようだ。動けるようになったのだし明日辺りからまたかくれんぼの続き再会ってところか、それなら姉妹の住処である逆さのお城にいるのだろうし迎えに行くこともない。

 一人静かになったわけだし折角だから話を纏めるか、教えてもらったおかわり分。

 松と言っていたか、おかげで仮説が正しいものだと裏付けできてありがたい。

 仮説として立てた打ち出の小槌、多分とは言ったがほぼ確実に持っているとわかり安心だ。

 今は虫籠に括りつけられている真作の側面には松が描かれているはずだ、あれに似せた贋作なら同じく松が描かれているはず。絵柄一つで確信を得るなんて無理な話だが先で述べた通り、思い込みを強くするための理由付けだ、あたしが納得出来てほくそ笑むことが出来れば正誤はどうでもいい。

 しかしまだ弱いな、さすがに強引すぎて納得出来ない面がある。なんでもかんでも小槌のせいにしてみたが本当にそれでいいのか怪しい、贋作を使った事がありそうな誰かから裏でも取れればいいのだが小傘も作れないというし、そう都合良くはいかないか。

 素直に今の持ち主に聞ければ早いが巫女を化かした手前あの神社には近寄りにくい、何食わぬ顔で行ってもいいが怒りの鬼巫女になっていては困る。鬼といえばあの幼女は何処をほっつき歩いているんだろうか、天界かはたまた地底か。

 天界なら我儘天人が探しまわっているだろうし探しに行くなら地底かね、千鳥足で旧都をふらついては難癖つけて探しまわる姿が目に浮かぶ、もう一人の鬼に豪快に止められて一騒ぎ始まるまでがお決まりだろうな。

 ふむ鬼か、鬼も小槌の持ち主だったか。

 腰にぶら下げたあたしのバッグも元を正せば鬼の秘宝か、秘宝を貯めこんでいる姉さんならまかり間違えば持っているか知っているくらいでもおかしくはないか?

 他に宛もないし行ってみるか、あっちの人らは不可侵で今回も関わっていない。話した所でお叱りを受けることもないだろう、地霊殿の主の背を流す約束もしたしそっちにも顔を出してみるか。




考察回は楽しいけど表現が難しい

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