お待たせしました。
なんか知らないうちにお気に入りと評価が目茶苦茶増えていて、正直ビビりました。
何があったの?
いえ、嬉しいです。ありがとうございます。
しかし、感想で指摘されてしまったのですが、アルコバレーノの周期は10年だそうで、リボーンたちはこの時代ではまだ小さくないようです。
うろ覚えで書いてしまってすみません。
……ですが、初めから直すのはちょっと無理なので、このままの設定でいかせてもらいます。
「仕方ねーな見てやるよ!」的な広い心をお持ちの方はこれからもよろしくお願い致します。
「――気持ちいいですねえ。どうかしましたか、坊ちゃん?」
「その傷、なんでついた?」
あれから、なんとか逃げ出そうとする坊ちゃんを丸め込んで、大浴場に連れていき、一緒にお風呂に入ることに成功しました。
「テメエには恥じらいってもんがねーのかっ!?」とか叫んでいた坊ちゃんも今は大人しく、私の横でお風呂に浸かっています。
恥じらいと言われましても……。
5歳児と一緒にお風呂に入ることに何か問題でもあるんでしょうか?
仮に外見上が10歳の女の子と5歳の男の子が一緒にお風呂に入っても、問題はありませんよね。
それに一応坊ちゃんの身体が傷ついていないか見ておきたかったので。
痩せてはいますが、その体に目立った傷跡はなく、ほっと胸を撫で下ろしました。
あとはご飯をいっぱい食べてもらうことにしましょう。
広すぎる大浴場にたった二人でのんびりと浸かっていると、まるで別世界にきたような気分になります。
大浴場といっても、銭湯や健康ランドのような庶民的な作りではなく、大理石を惜しげもなく使った豪華なものです。
古代ローマのような彫刻が柱には彫られ、獅子の口からお湯が出ています。
形式は日本の風呂場と変わらないのは、日本びいきなボンゴレならではでしょうか。
私としては大歓迎ですが。
あまり、こちらの人にはお風呂に浸かるというあまり文化がないようなのですが、やっぱり私にとってお風呂は魂に染みついた習慣です。
温めのお湯はいつまでも浸かっていたくなる心地よさです。
ふと、坊ちゃんから視線を感じとると、私の背中や腕に集中しています。
「……この傷が気になりますか?」
「……普通の生活で付く傷じゃねえな」
「ええ。名誉の負傷ですよ」
笑って言えば、微妙な表情をする坊ちゃん。
ナイフで出来た切り傷、爆薬が炸裂して破片が飛んだ時にできた傷、銃創などなど。
確かに子供が受ける傷としては随分と不似合でしょう。
それでも必要だったので、仕方がないのです。
着飾る必要は特にはないので。
それに、大人になるまでには多少は薄くなるでしょうし。
「女がつけていい傷じゃねえ」
「……お優しいですね、坊ちゃんは」
私が微笑めば、そんなんじゃねえ、と横を向いてしまいます。
手を伸ばし、その痩せた頬を撫でます。
「……この傷は私が目標を成し遂げるためには、どうしても通らなくてはならない道だったんですよ。だから、同情は無用ですよ」
私が断言すれば、坊ちゃんは胡乱げにこちらを見つめてきます。
真っ赤なルビーのような瞳はオレンジの柔らかな光の中で強く燃え上がっているように見えます。
「女、なのにか?
女は傷を作ることを嫌がるもんだろう?」
「普通の女性はそうですね。
ですが私は、普通でいることを自分に許すことをやめてしまったので」
そう。
強くならなければこれからの目標を遂行することは難しいでしょう。
愛情や友情で全てが解決すれば素晴らしいことですが、大人として人生を生き切った私としてはそれが不可能だとわかっています。
やはり力、財力、知力、権力、という生々しいものが必要となってきます。
少年漫画の『原作』で言ったら怒られると思いますが。
しかし、私はボンゴレの秘書の仕事を手伝わせてもらえる中で、この組織がいかに巨大なものか理解してしまいました。
経済、政治、司法――ありとあらゆるところにボンゴレの息がかかっており、その力は世界に影響しています。
そう世界!
私のような元一般人が、世界を股にかける組織にいるなんて夢みたいな話です。
夢だったら良かったのに、とはもう言いません。
その中で私が発言権を得ようとするには、相応の努力と彼らが信頼できるだけの実績を残さなくてはなりません。
単に9代目のお気に入りの少女だからという理由で意見すれば、無視されるだけではなく、組織に疎まれる可能性もあります。
叔父さま達に迷惑を掛けないためにも、私がボンゴレにとって役に立つ人材であるということを示さなくてはなりません。
強さはその第一歩であり、私の目標の足掛かりです。
だから、こんな傷など大したことではないのです。
「フン。変な女だ」
「ふふ、よく言われます」
いい加減にふやけてしまいますね。
上がることを提案すれば、坊ちゃんは、今度は抵抗することなく、頷かれました。
ちなみにお風呂に一緒に入るというのは、正当な護衛なんですよ。
まあ、本来は外での護衛がベストなんでしょうけど。
風呂場は完全に丸腰になりますから、私のように炎の扱えるものは護衛としてはうってつけなんです。
「そのブレスレットは外さねえのか」
「ええ、とても大切なものなんです」
私の右手首に巻いてある、色とりどりの宝石をつなげた繊細な細工のブレスレットに今気付いたようです。
これは実は私がタルボさんに創って頂いた、リングの代わりのものです。
私の炎を調べたところ大変珍しいことに『大空』と『雲』が半々で、残りの『嵐』『雨』『晴』『雷』『霧』も少しずつ適性があるそうです。
要するに私は全ての炎の性質を持っているということでした。
やだなにこの無駄なチート性能。
うっかり主人公フラグなんてイヤなんですけど。
これには9代目達も驚いてどうすべきか悩んでいたところに、タルボさんが訪ねてきたのでした。
なんでも石がここへ来たいといったのだとか。
そして私にこのブレスレットを作ってくれたのでした。
お値段は……無人島(結構立派なもの)が3個買えてしまいました。
それでも、タルボさんに月1度お金を届けるついでに会いに行くという条件で、2個まで値段を下げてくれました。
そんな訳で私は今、借金を抱える10歳児でもあります。
坊ちゃんの家庭教師として破格のお給金を9代目はつけてくれましたが、それでもざっと計算して返済には10年は掛かります。
ワオ。
某風紀委員長さんの口癖があの時は思わず出てしまいましたよ。
9代目が支払うと言ってくれたんですが、私なりのけじめなのでそれはお断りしました。
元々衣食住付きという超好待遇ですから、お金を使うことも今のところそうはありませんし。
それと今、株を代理で購入してもらい、資産を地道に増やしていますので心配されることもないんですよね。
風呂から上がり、豪勢な食事を終えるとすぐに、坊ちゃんはうとうとし始め、頭を揺らしていました。
食事のマナーはお世辞にも良いとは言えませんでしたが、初日からぎゃあぎゃあいうほどのことではありません。
歯を磨き、シルクのパジャマに着替えてもらい、天蓋付きベッドに寝かしつけます。
キングサイズのベッドの中でにちょこんと顔を出す坊ちゃん。
ああ、愛らしい!
「それじゃあ、坊ちゃん今日はお疲れ様でした。
ゆっくりお休みください」
そう告げて、踵を返した途端、私のジャケットの裾を何かが掴み、思わず足を止めてしまいました。
振り返れば、起き上がり、不機嫌というよりは困惑しているような顔でジャケットを掴んだ自分の手を見つめている坊ちゃん。
自分でもなんでこんなことをしてしまったのかわからないようです。
「……坊ちゃん、どうかされましたか?」
「……なんでもねえ……」
そういっても、一向にその手を離してはくれそうにありません。
まあ、初日からこのだだっ広い部屋に一人で子供が寝るのは、心細いですよね。
私だって来た当初は流石に戸惑いましたし。
3日でなれましたけど。
まあ、いいですよね。
「坊ちゃん、よろしければ今日は私と一緒に寝ますか?」
「……オマエがどうしてもっていうなら、寝てやる」
口を尖らせて言っても、ちょっと赤くなった頬が全てを物語っています。
ああ、もう可愛いですね~。もうそれでいいですよ。
「はい、一緒に寝てくれますか、坊ちゃん?」
「仕方ないから寝てやる」
ふてぶてしく答える小さな主人に少し待ってもらい、叔父さま達の贈り物である真っ白なネグリジェに着替えてから、もう一度坊ちゃんの部屋へ戻ります。
私の恰好を見て、驚いたのか少しだけ、眠そうな目が見開かれます。
そこまで反応しなくても。
さっきお風呂入ったでしょう?
「……女らしい恰好したら、ちゃんと女なんだな……」
「ふふ、お褒めに預かり光栄です」
「褒めてねーよ」
そっと坊ちゃんの横に身体を滑り込ませます。
温かな体温と柔らかな羽布団の中は、急速に私たちを眠りに誘います。
既に目を閉じそうな坊ちゃんを抱き寄せ、背中をぽんぽんと叩いてやれば自然と坊ちゃんの瞼が落ちていきます。
「貴方が大人になるまで私が貴方を護ります。
だから、安心してお休みください、坊ちゃん」
私の言葉が聞こえるか、聞こえないかのうちに、すぐに密やかな寝息を立てて、眠りについてしまいました。
眉間に寄った皺を指で伸ばすように撫でてやれば、皺が消え、穏やかに年相応な寝顔になります。
ふふ。可愛い。
これから様々な試練が彼には降りかかるかもしれません。
それでも楽しい毎日が送れるよう、私も及ばずながら力になります。
だから――幸せになってくださいね、坊ちゃん。
SIDE:ザンザス
夜中に突然目が覚めた。
どこまでも柔らかく自分を受け止めるベッドと豪奢な部屋、そして――隣に眠る一人の女。
俺はここが俺のいたあばら家とは違うことを思い出した。
父親と名乗る男の家に連れて来られた中で出会ったのは、一人の女だった。
黒髪に緑の瞳に白い肌。美しいと言える容姿に自信に満ち溢れた態度。
苦労を知らない女だと思った。
腹立たしさとともに拒絶すれば、容赦なく人の頬を伸ばしやがった。
俺がボンゴレ9世の息子だと知っても、まったく躊躇わなかった。
しかも俺を放り投げやがった。
父親だという男の腕の中に。
あのスラム街では、炎を持つ俺は恐れられ、悪魔の子だと呼ばれていた。
誰もが恐れ、忌む存在だった。
それを父親だという男は『可愛い』といった。
俺の家庭教師だという女は『良かった』と笑って、頭を撫でた。
変な奴らだった。
特に女は一緒に風呂にも入るし、マナーがいいとは言えない食事風景を見てもニコニコしているし、あげくに俺を守るなんていいやがった。
隣で寝息を立てている女の鼻を腹いせに摘まんでやる。
「ん、あん、ぼ、ちゃん、うに……」
意味の分からない言葉の羅列とともに、どこか幸せそうな笑みを浮かべる。
風呂で見た白い肌は意外なほど傷ついていた。
それでも宝石のような瞳に決意を湛え、後悔などなく不敵に笑ってみせる女は、思った以上にただの女ではなかった。
ほんの少しサイドテーブルに置いてある電燈の細い明かりの中で、淡くオレンジに染まる頬を撫でる。
小さく呻いて何か探すように手が空を掻くが、その腕が伸び、俺をしっかり抱きかかえると満足そうな顔をする。
温かな胸の中に抱き込まれて、また眠気が襲ってくる。
ふん。俺が大人になるまで俺を守るだと。
仕方ねーから守らせてやる。
呑気に眠り続ける女の腰に手を回して抱き付くと、俺も目を閉じる。
――イヤな夢は見ない。そんな気がした。
ザンザスSIDEも書いてみました。
威嚇してもまったく通じない相手に、ちょっぴり心を開いた未来の暴君様。
ほのぼのしてたり、主人公が暴走しまくったりして振り回される予定です。
ちゃんとした子供時代を送るザンザスはありでしょうか?
思いっきり少年漫画とは相反する道を突き進む主人公ですが、彼女は大人なので現実的です。
ちょっぴりシリアス的なこともそのうち書きたいなーと思っていますので、タグ増やします。
早く、他の彼とか彼とか彼女とか出していきたいです。