暴君の家庭教師になりました。   作:花菜

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長かった……。
我ながらもっと短くできないのかと思ったのですが、ここまで漸くきました。

ザンザス坊ちゃんと家庭教師のエレオノーラの物語がやっとはじまります。






幼少期編
やっと本編のはじまりです


 

 まあ、そんな訳でいよいよ、ザンザス坊ちゃんがボンゴレの本邸に来る日がやってきたのです。

 ガナッシュさんに連れて来られた坊ちゃんは、高級な服に小さくやせ細った身体を包み、目だけがギラギラとした野良猫のような子供でした。

 世の中すべてに喧嘩を売っているような眼差しでこちらを睨む坊ちゃんに、私は思わず、

 

 ――キュンとなってしまいました。

 

 私実は猫が大好きなんです!

 無邪気に懐いてくれる子猫とかも好きですが、それ以上に目つきの悪くふてぶてしい、いかにも『野良猫です!』みたいな猫が懐いてくれた時の感動には変えられません!

 坊ちゃんはまさしくニャンコ!

 絶対に黒猫な感じ!

 あの毛を逆立て威嚇してきそうな感じも愛らしいです!

 にゃーとか言ってほしい!!

 弾む心を抑えて改めて、挨拶します。

 

「初めまして、あなたの家庭教師を務めるエレオノーラと申します。

よろしくお願いします、坊ちゃん」

「失せろ。ドカス」

 

 とまあ、そういう訳で私はザンザス坊ちゃんの家庭教師として任命されたのでした。

 長い間お付き合い頂き、ありがとうございました。

 

 ――と言ってもいいんですがもう少し続きます。

 

 

  ◇◇◇――◇◇◇――◇◇◇

 

 

 その後、ほっぺ伸ばしの刑を振り払って、私から逃げようとする坊ちゃんを(無理やり)抱きかかえて、ボンゴレの一番奥の部屋――つまり9代目の執務室に向かいます。

「はなしやがれ」とか、ジタバタしている坊ちゃんは愛らしかったです。

 後ろからついてくるガナッシュさんがもの言いたげな顔をしていますが、それはスルーします。

 重厚な古いドアをノックし、飾り細工がしてある金のドアノブを回します。

 

「9代目、ザンザス坊ちゃんをお連れしました」

 

 その台詞に、ビクリと坊ちゃんの身体が大きく震えそのまま固まってしまいました。

 浅い呼吸を繰り返しています。

 緊張しているのでしょうか。

 

「エレオノーラ、よくきてくれ――どうしたのかね?」

「9代目になるべく早く会わせたかったので、失礼ながら抱っこさせて頂きました」

 

 嘘つけ!とかいう目で坊ちゃんが睨んできますが、嘘じゃないですよー。

 あのままだったら、坊ちゃんが逃亡して時間が遅くなってしまいますから。

 だったら、頬を伸ばさなきゃいいだろう、って?

 だってやりたかったんですもの。うふ。

 坊ちゃんを床に下ろし、立たせてやります。

 9代目が椅子から降り、こちらに近づいてきます。

 坊ちゃんの目線に合わせ腰を曲げます。

 

「やあ、ザンザス。

 会うのは2度目だね。

 このボンゴレが今日から君の家となる。

 そして、彼女は君の家庭教師兼護衛兼身の回りの世話をすることになっている。

 困ったことがあれば、彼女になんでも言うといい」

 

 その言葉に坊ちゃんがすごくイヤそうな顔をします。

 やですよー、そんな顔をされるとかまい倒したくなるじゃないですか。

 いえ、構いまくりますけど。

 

「……エレオノーラ、何かしたのかい?」

「教師と生徒のコミュニケーションを」

 

 しれっというと、ガナッシュさんが何か言いたげな顔をしますが、結局黙っていました。

 別に言ってくれても構わないのですが。

 坊ちゃんはぶすっとして、そっぽを向いています。

 ああ、ぷくっとしたほっぺをつつきたいです!

 

「まあ、ザンザス。これからは私が君の父親となる。

 父親となるのは初めてなのでな。

 どうかよろしく頼むよ」

 

 そういって、手を差し出す9代目をじっと鋭い眼差しを向けていた坊ちゃんは、ぷいと横を向きます。

 その坊ちゃんの行動に9代目は些か落ち込んでしまっているようでした。

 しょーがないですねー。

 

「9代目、手を広げて立ってください」

「え? とこうかね?」

 

 手を広げ、立ち上がる彼の胸の前に私は迷わず坊ちゃんを持ち上げ――放り投げました。

 

「なっ!」

「わっ! エレオノーラ! 何を!!」

 

 ぽすっ!

 必然的に坊ちゃんを9代目が受け止め、腕に抱きかかえるはめになります。

 まるで、どこにでもいる親子みたいですねえ。

 私が微笑みかけると9代目は、初めは驚いていたようですが、腕の中の重みに気付き――そっと抱きしめました。

 

「ザンザス、大丈夫だったかい?」

「……」

 

 坊ちゃんは下を向いてしまい、言葉を発しようとはしません。

 ですが、その耳が赤く染まっているのに気付き、9代目は目を細めて彼の髪を撫でます。

 

「可愛いな。儂の息子は」

 

 その言葉に坊ちゃんがジタバタと暴れ出し、9代目の腕の中から抜け出し、飛び降りると私の後ろに隠れてしまいました。

 少し残念そうな顔をしていましたが、9代目は私に笑いかけてきます。

 

「エレオノーラ、儂の息子を頼むよ」

「はい、かしこまりました。行きましょうか、坊ちゃん」

 

 その手を握り、執務室から坊ちゃんと二人出ていきます。

 小さな歩幅でちょこちょこ歩く彼に合わせてゆっくりと、長い廊下を歩いていきます。

 しばらくお互い無言のままでしたが、ふいに彼が立ち止ります。

 

「坊ちゃん?」

「……な……し……やがった……?」

「はい?」

 

 声が小さくて、聞こえません。

 キッと赤い瞳がこちらを睨みます。

 

「なんで投げやがった!」

「なんで、と言われましても……」

 

 あのままだと今回もすれ違いそうでしたし。

 

「坊ちゃんと9代目に仲良くなって欲しかったんですよ。

 お互い初対面なので緊張を解そうと思いまして」

「嘘つけっ!!」

 

 本当ですってばー。

 まあ、投げる必要はなかったかもしれませんけど。

 ふしゃーと毛を立てた猫のような坊ちゃんの頭をぽんぽんと撫でると、心から告げます。

 

「良いお父様で良かったですね、坊ちゃん」

「………………」

 

 ぷい、と横を向いてしまいますが、その頬が赤く染まっています。

 良かったですねえ、本当に。

 

「これからお願いしますね、坊ちゃん」

「フン」

 

 仕方ないからしてやる、といわんばかりのふてぶてしい態度が愛らしいです。

 

「さ、じゃあ坊ちゃんこれから一緒にお風呂入りましょうね」

「ハ!?」

 

 

 

 






これから小さな主人を主人公が可愛がりまくります。
しばらくはほのぼの話が続くと思います。

そして、これから9代目が壊れていきます(笑)

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