その名の通りのですが、今回は学校いってません。
というより、学校の場面ほとんど出てきません。
それでも学生編と言い張ります。
コメント、評価ありがとうございます。
次の頑張ります。
学校へ行こう!
今日の敵は明日の友。
そんな言葉が合ったような、なかったような。
ですが――昨日の友は今日の敵。
これはたぶん合った筈。
私の目の前にいる彼は、間違いなく私の敵でした。
私の前で威圧的に私を睨む、恩人であり同士でもある9代目は――
「レオ、これほど言っても引く気はないのかね?」
「これっぽっちもありません」
以前、彼の静かですが殺意の籠った視線を向けられた下部組織のボスが、一瞬で蒼褪めていたことがありました。
が、私には効きません。
何しろ、私はその手の恐怖は感じられないようなので。
その異常性に今は感謝しましょう。
この9代目と向き合うことができるのですから。
悲しげに溜息を吐き、彼はゆっくりと手を上げます。
「……ならば、これしかあるまい」
「……ええ。仕方ありません。
恨みっこなしです」
互いに睨みつけ、譲れぬ思いをぶつけあいます。
「「ザンザス(坊ちゃんの)の入学式に出るのは儂(私)だーっっ!!!!」」
「……アホなのか。アンタら……」
ガナッシュさんの悲しげな呟きだけが、ポツリと響きました。
◇◇◇――◇◇◇――◇◇◇
ことのはじまりは私がふと気づいてしまったことでした。
「……そういえば、坊ちゃんってお友達いましたっけ?」
その呟きが思いのほか重要なものに気付いた私は、9代目の執務室に駆け込みました。
「9代目大変です!!」
「どうした、レオ?」
「どうかしのか?」
ちょうどそこに坊ちゃんが居たため、私は今気付いた最重要事項を告げます!
「大変です! 9代目!
坊ちゃんにお友達がいませんっ!!」
「なんじゃとっ!?」
「……くだらねえことで、駆け込むんじゃねえよ」
呆れたような坊ちゃんに向かって私は抗議します。
くだらなくなんてありませんっ!!
「坊ちゃん!
坊ちゃんがこのままお友達が出来なくて、脳内のエア友達と恋愛相談とかするようになったら、私はどうすればいいんですかっ!?」
「誰がするか!! このドカスっ!!」
そんなことになったら私は、私は!
どこかにいるはずのお人好しで苦労性な銀髪のサメをハントしてこなくてはならないじゃないですかっっ!!!
「……いや、レオ。
ザン君にもお友達はいるじゃないか。
ほら、キャバッローネのディーノ君とか」
確かに。
色々縁あって、私も教師めいたことをやることになったディーノ君も、坊ちゃんと仲良くしてくれます。
「ですけど、9代目。
坊ちゃんはあまり自分と同年代の子たちと過ごしたことがありません。
昔は難しかったかもしれませんが、今なら坊ちゃんも冷静に対処できるのではないでしょうか?
それに、坊ちゃんをボンゴレの御曹司ではなく、坊ちゃん個人として見てくれる人がいた方がいいと思います」
「むう、確かにそうだが、ザン君も今は会社経営も何社か任せているし、そこまで学校に通う余裕があるかどうか……」
「そうだ。そう簡単に通えるわけねーだろ」
渋る9代目と淡々と事実を語る坊ちゃん。
そうなのです。
あれから坊ちゃんはメキメキと実力をつけていき、裏の社会を学ぶと同時に11歳にして会社の運営を任されるほどになっていました。
なにこのチート。
こういう存在こそチートっていうんだと思いますよ。
……ですが、私は引き下がりません!
これは坊ちゃんにとって重要なことなのです。
「……そうですか、残念ですね。
……せっかく学校に通ったら、坊ちゃんの制服姿なんてレアなものを見れたかもしれ――」
「――ガナッシュ!! 今すぐ、学校への手続きをとるのじゃ!!!」
「何考えてんだ! このカス親父!!!」
私の一言であっさり掌を返した9代目に、坊ちゃんが怒鳴りつけます!
ふふ。残念ですね坊ちゃん。
私の方が9代目の扱いには定評があるのですよ!!
「いますぐ、ザン君の制服を選ぶのじゃっ!!」
「ええ! 坊ちゃんに一番似合う制服を選びましょう!!」
「このドカスどもがっ!!!」
わめく坊ちゃんを横目に、全てを諦めた顔で手続きを始めるガナッシュさん。
それから私と9代目は坊ちゃんに一番似合う制服を選びはじめたのでした。
◇◇◇――◇◇◇――◇◇◇
――ということがあって、坊ちゃんが学校に(無理やり)通うことになったのでした。
そしてまた、私と9代目が争うことも必然的に起こってしまったのです。
……仕方がないですよね?
「……これが、歴代最凶のボンゴレⅨ世と『ボンゴレの魔女』と呼ばれるエレオノーラの実体だと知れたら、皆泣くぞ……」
ガナッシュさんの嘆息と悲しみに溢れた呟きもなんのその!
――っていうか、皆気付いてますよ。きっと。
いざ私と9代目の手が全ての運命を委ね、突き出されます!
「「じゃんけんぽん!!」」
9代目がパー。
私が――チョキ。
即ち――
「勝ったあああああああっっっ!!!」
「………………くぅっっ!!」
私が勝利の雄たけびを上げ、9代目がショックのあまり崩れ落ちます。
ああ、萌え神様ありがとう!!
貴方のおかげで超直感を上回ることが出来ました!!
「……おのれ、こうなったら学校長がなんと言おうと、出席者は2人まで増やすよう脅迫――いや、説得を!!」
「もう、叔父さま。
そんなことしちゃだめですよ~」
「レオ!
自分が行けるからって、そんな余裕をぶちかまして!」
涙目になっている9代目には悪いのですが、勝負は勝負!
今回、坊ちゃんが学校に12歳にして初めて行くことになり、私と叔父さまはその付き添いが1名と知った時から、敵となったのでした。
お察しの通り、マフィアの子息たちが通う、マフィア専門の学校です。
本来入学式という制度はイタリアにはないのですが、今回大スポンサーであるボンゴレ9代目が『ザン君の晴れ姿を見たい!!』という理由で、急遽作られた制度でした。
ですが、初めてのことですし、くる人数が多すぎて諍いが起きても困るということで、入学者1名に対し、保護者1人という規則が出来たのでした。
その前は坊ちゃんがどんな制服が似合うか、私と9代目は睡眠時間を削って夜通し話し合い、最高の一着を選び出すまで仲良しだったんですが。
坊ちゃんへの愛の前には、色々脆くなるものですね。
「なんの騒ぎだ?」
「ああ、坊ちゃん!!」
「ザンザス!!」
私たちがデザインした制服に身を包んだ坊ちゃんが、執務室に踏み込んだ瞬間――世界がバラ色に染まった気がします!!
ベージュを基調にした上下に、胸には学校の紋章。
白のシャツとベストまでは普通ですが、敢えてネクタイではなく、リボンタイにしてみました。
坊ちゃんを象徴するような赤が似合いすぎています。
ああ、坊ちゃん! カッコよくなって!!
「坊ちゃんそのままでお願いします。
今すぐ、写真を撮りまくりますから!!」
「いったいどれだけ撮るつもりだよ?」
「ほんの百万枚ぐらいです!!」
「そんなに撮る時間ねえよ! ドカス!!」
吠える坊ちゃんに私は宣言します。
「大丈夫です!
最近、1秒間で100回シャッターを押しても壊れないデジカメを開発させましたから!!」
「無駄なとこに技術と能力使ってんじゃねーよ!!」
「無駄じゃありません!!
坊ちゃんの愛らしさを永遠保存するためには、必要な技術と能力ですっ!!」
「そうじゃっ!!
絶対必要なんじゃっ!!」
断言する私に、援護する9代目を見て、坊ちゃんが嘆息します。
あ、これは諦めて写真を撮らせてくれるようです。
坊ちゃんてば、お優しい。
心行くまで満足するまで、9代目と坊ちゃんを360度撮り切ると、重要なことを思い出しました。
「あ!
坊ちゃん! 明日の入学式は、私が行くことになりましたから!」
「明日?
ああ、それならオッタビオを来させる予定……」
――おのれ眼鏡!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
突如私から噴き出した闇オーラに、坊ちゃんの顔が引きつっていますが、そんなことは問題ではありません。
私が9代目の超直感を上回る程の奇跡でもぎ取った権利を、いともたやすくあの似非インテリ金髪眼鏡は!!!!
おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡おのれ眼鏡!!!!!!!!!!!
――くっ!
かくなる上は!!
「叔父さま!!
今すぐあの学校を買い取ってください!!」
「おい!!」
「え? そうだね、その手が合ったか!!」
「オイコラ、このドカスどもがっ!!
恥ずかしいからやめろっ!!」
「じゃあ、恥ずかしくないように衛星打ち上げましょう!!」
「そうじゃ!
これならばザン君の雄姿を邪魔されることなく見れるぞ!!」
「いったいいくら掛ける気だあああっっ!!!!」
「や、やめてください!!
本気でとんでもない金額なんですからああああっっっ!!」
◇◇◇――◇◇◇――◇◇◇
「――と、まあこんなワケで入学式出られないことになったんですよ。
ひどいですよね。あの眼鏡」
「……いや、酷いっていうか」
ガナッシュさんに泣いて止められ、坊ちゃんの意志を変えることも出来なかった夜。
私はキャバッローネファミリーにお遣い兼、愚痴りに来ていました。
え?
以前の態度を見てれば、当然の反応ですって?
何言ってるんですか。坊ちゃんを見ればああなるのは必然ですよ。
……まあ、でも坊ちゃんもお年頃ですし。
親が来るのは恥ずかしいんでしょうか?
ロマーリオさんが淹れてくれたお茶を飲みながら(申し訳ないのですが、クレイさんの淹れてくれたお茶は格が違います)、ディーノ君に愚痴れば、困ったように金髪を掻いています。
金髪というとあの眼鏡を思い出すところですが、ディーノ君の髪はもっと淡い色でこういうのがハニーブロンドとかいうんですかね。
キラキラと照明の下で輝いて、ちょっと眩しいです。
色々縁が合って、出会って、ちょっと教師めいたことをやることになり、彼の立場は私の弟弟子兼生徒?みたいなものでしょうか。
一応、『死ぬ気』で特訓したせいか、ディーノ君は何もない道で転ぶことと、食事を零すことを部下がいなくてもしなくなりました。
『ディーノ様はドジなところが魅力なのになんてことしてくれんのよっ!!!』
――と、突っ込んだアナタ。
すみませんが、もう私はあの時限界だったんです。
だって、何もないところでいきなり転んだ挙句、走ってきたトラックに引かれそうになったこと3回もあったんですよ!!
しかも私の目の前で!!
そんなの3回も見れば十分です。
もう、私の寿命の方が絶対縮まりますので、問答無用で鍛えさせてもらいました。
その特訓風景を見ていたリボーン先生が、
『俺もまだまだ甘いな』
とか呟いていましたが、そんなに厳しくはなかったと思いますよ?
教官とあの坊ちゃんの誘拐事件の後で始めた特訓に比べれば優しいですよ?
……たぶん。
手加減ってどれぐらいすればいいのか分かんなくなってましたけど……。
ま、まあそれはともかく。
「ディーノ君のところは誰が行くことになったんです?」
「あ、それは俺に決まりました」
「ああ、やっぱりロマーリオさんになったんですか?
誰が、行くのか揉めませんでした?」
「レオ姉のとこじゃないんだから、そんなわけ――」
「――はい。あともう少しで血みどろの抗争が起きるところでした」
――ブハッ!
さらりと部下が吐き出した真実に、ディーノ君がお茶を噴き出しました。
あらあら。大丈夫ですか?
「な、何やってんだ!
オマエら!?」
「……ボス。
ボスの晴れ姿を近くで見たいと思うのは当たり前でしょう?
皆、ボスの成長をみたいんですよ。
それが一人しか出れないとなると、死闘を繰り広げそうになるのは必然です。
最終的にはくじ引きにしましたが」
ディーノ君は米神を指で抑えながら、手を振って必死に否定しようとします。
「いや、待て待て待て待て!
言ってる事なんかおかしいからなっ!!」
「あら、おかしくないですよ。
私だって可愛い坊ちゃんのためなら、9代目とだって対立するもの」
「その通りです」
深く頷く私とロマーリオさんに、混乱した表情のディーノ君。
そんなに不思議なことでしょうか?
成長したボス=可愛い我が子のようなものですし。
「そういえば、レオさん。
良ければ、カメラの扱いをもう少し詳しく教えてくれませんか?
皆のためにもベストショットを撮ってこなくてはならないので」
「もちろんですよ。
ああ、あの眼鏡にも今夜きっちり教え込もうと思うので、良ければ一緒にどうです?」
「お願いします!」
そのやり取りを呆然と見ていたディーノ君が何かに思い当たったような顔をしました。
「どうかしました?」
「――そうか。
レオ姉の親バカがうつったのか」
「失礼な」
人を病原菌みたいに。
皆さん最初から素質があったんですよ。
……たぶん。
いつの間にか主人公に二つ名がついていました。
インテリ眼鏡はこの後徹底的に、写真の摂り方を強制的に学ばせられます。
さりげなく、出てきたディーノさんと主人公の出会いもそのうち書くでしょう。
あと、ロマーリオの口調がよくわかりません。
もっと砕けてたような……
ここから登場人物かなり増える予定です。