暴君の家庭教師になりました。   作:花菜

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結構早く更新できました。

感想、評価ありがとうございます。

今回はお休みの過ごし方です。
あの方も出てきます。
たぶん、『原作』でもこんな感じだったんじゃないかなーと思っています。


坊ちゃんとお休みの過ごし方

 

 

 

「ザンザス、知ってるか?

 今日の昼食のオムライスは、好きな人には名前と『大好き!』ってケチャップで書かなきゃいけない決まりがあるんだぞー。

 前、俺はレオに『大好き!』って書いてもらったけど、お前はどうだろうなー?」

「…………(殺意の籠った眼差し)」

 

 …………まったく、大人げないですよ。家光さん。

 

 ただいま、子猫と若獅子の決戦中。

 と言いたいところですが、一方的に坊ちゃんが敵視し、家光お兄様がからかってからかってからかっているだけですが。

 ……本当に、いつもいつも。

 坊ちゃんと過ごす、お休みの日はこれで4回目なのですが、毎回毎回お昼時にはこのバトルが繰り広げられています。

 今日の一日のはじまりは平和だったのですが……。

 せっかくですので、説明致しましょう。

 

 

◇◇◇――◇◇◇――◇◇◇

 

 

 6時といういつもよりは遅い時間。

 腕の中には坊ちゃんがまだ、スヤスヤと眠っています。

 今日は日曜日。

 週一度のお休みの日です。

 

 もそもそとベッドから起き上がると、坊ちゃんの腕を外して、自分の部屋に戻ります。

 今日は、執事服はお休みで、私服に着替えます。

 緑のフレアスカートに、白のブラウス、胸元には青のリボン。

 髪はいつも通りですが、黒のサテンのリボンを飾ります。

 週に1回ぐらいは女の子らしい恰好を!

 という、9代目達の願い通りに日曜日だけは、スカート姿で過ごしています。

 といっても、外に出るときは執事服ですが。

 ひらひらとした真っ白なエプロンは、家光さんがプレゼントしてくれたものです。

 それを身に着けるとちょっと気分が違います。

 実用的とは言い難いのですが……。

 ともあれ、いつもより少し遅く起きる坊ちゃんにカフェオレを淹れるべく、台所に立ちます。

 どこの? といいますと、私の部屋になります。

 元々は小さなコンロがあったぐらいなのですが、私が以前9代目達に誕生日に何が欲しいかと聞かれ、『システムキッチン』と答えたところ、立派なものが私の部屋に供えられたのでした。

 ……実はその前に『安パイ(安全パイ)の株』と答えたところ、9代目達が雨の中で家に入りたそうな老犬の眼差しになってしまったため、慌てて考えた代案でした。

 あ、株もくれましたけどね。

 私の部屋は簡単に言って、リビングルームと、キッチン、バスルーム、トイレ、寝室はそれぞれ別についています。アンティーク家具付きで。

 しかも広いです。

 立地にもよるでしょうがこれだけで、東京なら十数万円はするんじゃないでしょうか。

 最初、私の部屋を決めるとき9代目達が女の子らしい部屋に!

 とかなんとか言って、壁紙は小花模様、レースのカーテン、眠り姫でもいそうな天蓋付きのベッドなど、はっきり言って私がじんましんを起こしそうなくらいの乙女チックな部屋にしてくれそうになったのですが、イラストを見た時点で断固阻止させてもらったおかげで、私の部屋は落ち着いた色彩になっています。

 白のシルクのカーテンが揺れる天蓋付きのベッドだけは、阻止できませんでしたが……。

 ……諦めって肝心ですよね……

 それはともかく。

 私がこのキッチンを作ってもらったのは、理由がありました。

 それは――どーしても日本食が食べたかったんです!!

 確かに、日本びいきのボンゴレのおかげか、近辺には日本食レストランが何軒かあります。

 しかし、私が一人でいくことを心配する保護者の方々と、どうしても外食では自分好みの味がないということで、自分で作りたかったんです!

 あ、勿論ここのシェフの料理が美味しくないわけではありませんよ。

 というより最高の腕を持つ人だと絶賛します。

 ですが、私の魂は日本人なのです!

 米、味噌、醤油をこよなく愛しているのです!!

 そんな訳で、週に1度お休みの時は自分の腕が鈍らないようにしたい、という建前で、自炊させてもらっています。

 坊ちゃんには初めシェフにお食事を作ってもらった方が良いかと思ったため、どうするか尋ねたところ、私の料理で良いと言われたため、一緒に食べています。

 案外なんでも食べますよ、坊ちゃん。

『原作』では高級な料理でもブン投げていた気がしますが……。

 朝食はハムエッグを挟んだイングリッシュマフィンに、フルーツサラダといった簡単なものを用意します。

 朝はご飯でなく、パンなのには理由があるのです。

 メインは昼になります。

 ちなみに夕飯はいつも通りシェフのパオロさん(趣味:サッカー観戦)の料理を食べます。

 一通り準備し終えたので、坊ちゃんを起こしに――

 

「――おはよう」

「おはようございます、坊ちゃん」

 

 って、あら、起きてきてしまいましたか。

 寝顔をもう一度みたかったのですが。

 きちんと着替え、ちょっと眠そうな不機嫌な顔ですが、挨拶はあれから欠かすことがありません。

 感心、感心。

 朝食が置いてあるアンティークのテーブルの前に着くと、一度あくびをしてから、カフェオレを飲み始めます。

 私も席に着き、朝食を食べ始めます。

 この時ばかりは、マナーについては何も言いません。

 堅苦しいばかりでは疲れますし、特別なマナーが必要な訳ではありませんしね。

 大口を開けて、マフィンを頬張る坊ちゃんは、ジャンガリアンハムスターのように愛らしいです!

 休みの日は特に何かすると決めてはいません。

 サンルームで花や野菜の世話をしたり、庭でひなたぼっこしたり、ボールで遊んだり、ゲームをしたり、本を読んだりと様々です。

 初めのうちは遊ぶということが良く分かっていなかった坊ちゃんでしたが、今では私よりゲームの腕が上になっています。

 

「今日はどうしましょうか、坊ちゃん? こないだのゲームの続きでもしますか?」

「それはやるけどな……今日もアイツは来るのか?」

 

 そんな思いっきり眉をしかめないでください。

 跡が付いちゃいますよ。

 坊ちゃんには悪いのですが、私は頷きました。

 

「ええ、お昼は食べにくるっていってましたよ、家光お兄様は」

 

 瞬間――坊ちゃんの顔は苦虫を千ダース噛み潰したようになったのでした。

 

 

◇◇◇――◇◇◇――◇◇◇

 

 

「よー、エレオノーラ、ザンザス元気か?」

「お疲れ様です、家光お兄様。ええ、坊ちゃんも私も息災ですよ」

「……また、来やがったのか……」

 

 坊ちゃんのものすごーく嫌そうな顔にも全くめげず、家光さんが真夏の太陽並の明るさで、流します。

 

「まあ、そう邪険にするなよ、ザンザス!

 だーい好きなレオとの時間を邪魔されて、腹立たしいかもしれねえが、レオは俺にとっても可愛い妹なんだぜ?」

「認めねえ」

 

 毛を逆立てた猫のごとく、睨みつける坊ちゃんの頭を気楽そうに叩き(すぐによけられましたが)、ニヤニヤ笑っている家光さんを見て、私は思わずため息をついてしまいました。

 理由については語る必要もないでしょう。

 私が自炊を始めたときから、時々「日本食が懐かしくてなー」と言って、食べに来ていたのですが、坊ちゃんが来てからというもの欠かさず昼食を食べに来るのです。

 まだ4回目とはいえ、前は1月に一回という様子を見に来ているのかなーというような頻度だったのですが、ここまで来るということは、やっぱり坊ちゃんのことが心配だったのでしょうか?

 

「ザンザス、知ってるか?

 今日の昼食のオムライスは、ケチャップで好きな人には名前と『大好き!』って書かなきゃいけないんだぞー。

 前、俺はレオに『大好き!』って書いてもらったけど、お前はどうだろうなー?」

「…………(殺意の籠った眼差し)」

 

 ……それとも、坊ちゃんをからかうことで、息抜きしているのでしょうか……?

 

 ……残念ながら、後者の方が確立は高そうですね。

 チキンライスを作りながら、野菜スープの味付けを済ませます。

 

 

「家光お兄様。いい加減にしてください。

 そんな調子でいると、結婚して子供が出来た時にウザがられますよ」

「そんなことないもーん」

 

 もーんって……アナタ幾つでしたっけ。

『原作』通りなら、息子が生まれるはずの彼ですが、『星になった』とかいって姿晦ましたせいで、あまりというか、かなり信頼度が低くなっていたような……。

 自業自得なのでほっときましょう。

 温めたフライパンにバターを落として溶かし、卵2個を割りほぐしたものを流し込みます。

 黄色の薄焼き卵に、チキンライスを適量入れて、綺麗に包み、お皿に落とします。

 うん、成功!

 よしよし、日頃の特訓の成果でフライパンぐらいの重みは楽勝で使いこなせますね。

 えーと、ケチャップで書くべきでしょうか?

『ザンザス様大好き!』って書いたら、逆に怒りませんかね?

 前は、家光お兄様に『書いて』コールを延々と受けたため、まあいいか、と思い書いただけなのですが。

 ……ん?

 視線を感じて後ろを振り返ると、もの言いたげな坊ちゃんと目があいます。

 

「坊ちゃん、『大好き!』って書いていいですか?」

「……オマエがしたいなら、書いてもいい」

「素直じゃねーなあ。『レオが『大好き!』って書いてくれなきゃ、ザンザス泣いちゃう!』とか言えば、いいじゃねーか」

「死ね」

 

 それもう、坊ちゃんとは違う生き物になってますよ。

 坊ちゃんはツンデレなところが魅力なのです!

 男のツンデレなんてウザいだけじゃないかと思っていましたが、撤回します!

 うちの坊ちゃんは最強の萌えキャラなんだ!!

 ……いえ、流石に冗談ですけど。

 じゃあ、書きましょう。

 ケチャップで『ザンザス坊ちゃん、大好き♡』と書いて、坊ちゃんの前に皿を置くと、一瞬、口元が緩みますが、仏頂面のまま食べ始めます。

 

「レオちゃーん。お兄ちゃんのは?」

「はい、どうぞ」

 

 シンプルにケチャップを波型に書いたものを、渡すと、ショックを受けたかのように、ハンカチで目元を拭きます。

 わざとらしいですよ。

 

「……ひどい、お兄ちゃんへの愛はどこへやったんだ、エレオノーラ?」

「ちゃんと入ってますよ(たぶん)」

 

 それでも、家光さんは手を合わせてからオムライスを口に運びます。

 坊ちゃんが、ドヤ顔しています。

 ああ、可愛い! 

 

 

「ふん。ザンザスこれで勝ったと思うなよ!」

 

 坊ちゃんは家光さんの宣言にちらりと視線を寄越しただけでした。

 勝利者のみが持てる優越感に見えないこともないです。

 スプーンを振り上げながら、立ち上がる家光さん。

 

「なんせ俺は、昔レオに『家光お兄ちゃんのお嫁さんになる!』って言われたんだからな」

「――!!!」

 

 ああ、坊ちゃんの顔が無表情にっ!

 また余計なことを。

 だいたいその台詞は私から自発的に言ったわけじゃなく、『一度くらい、可愛い妹に言われてみたい!!』と床を転げて足バタバタしたせいで仕事が進まなくて、しょうがないから言ったのですが。

 あの時のラル教官の眼差しはマイナス千度超えていましたよ。

 妹に対してどんな夢持っているのですか。まったく。

 

「はっはっはっ!! まだまだ俺の勝ちは揺るがないな!

 それじゃレオご馳走さん!

 今度は日本の土産を持ってくるぜっ!!」

「二度と来るなっ!!!」 

 

 あっという間に食べ終わり、事態の収拾もつけずに嵐のように立ち去る家光さん。

 ああ、坊ちゃんの顔が冬眠前のリスより膨れています!

 ここで、弁解してもあんまり効果ないんでしょうねえ。

 もう! 今度から立ち入り禁止にしますよ、家光さん!

 

「坊ちゃん、あの……」

「……どっちが好きだ」

「はい?」

「オレと家光、どっちが好きだ?」

 

 真剣な眼差しで問われ、即答します。

 

「勿論、坊ちゃんに決まってますよ」

「本当か?」

「本当ですよ。私は坊ちゃんが世界で一番大好きですよ」

 

 笑顔で答えれば、満足そうに口の端を上げ、残りのオムライスを食べ続けます。

 どうやら、機嫌が直ったようです。

 私も、食べ進めながら、今日の予定を考えます。

 

「坊ちゃん、今日はどうしましょうか?」

「アレを見る!」

「またですか。そんなに気に入りました?」

「アレがいい!!」

 

 アレとは何かと申しますと、某風の谷の物語です。

 こっちの世界にもあったジ○リ。

 ちょっと坊ちゃんには難しいかなーと思いつつ見せたのですが、思った以上に気に入ってくれたようで何よりです。

 ただ――

 

「○蟲欲しい!!」

「……人類が腐海に沈んじゃうからやめましょうね」

 

 9代目が愛する息子のために、腐海を創造しかねませんからやめましょう。

 

「じゃあ、巨○兵!!」

 

 ……キングモスカで我慢してくれるでしょうか……?

 

 

 ~オマケ~

  <家光さんの苦労>

 

 

 9代目が子供を引き取ると聞いたときは驚いた。

 一人目は女の子。

 冷静で将来は美人になりそうな、聡明な少女は俺の妹として大切にしようと心に決めた。

 二人目は男の子。

 目つきの悪い野良猫みたいな少年は、妹の生徒になった。

 中々からかい甲斐のあるヤツで、構って楽しいのでオレとしてはまあまあ気に入っている。将来のことはともかく。

 それにザンザスが来て、俺の大事なレオが随分と表情が子供らしく明るくなった。

 大人ばかりに囲まれていて、やっぱり気が張るところもあったんだろう。

 ちいさな弟分を手に入れて、喜んで構い倒しているのをみれば、まあ俺としても嬉しい。 

 ……若干、入るスキがねーくらい仲が良いのはちょっと焼けるけどな。

 まあ、いいんだ。この二人は。

 問題は――

 

「――家光。儂の子供たちは元気だったかね」

「……ええ、とても仲良く過ごされていました。

 ご安心ください9代目」

「……儂を差し置いて二人と昼食をとるなんて、ズルい!!」

「……………………」

 

 問題はこの俺の目の前にいるボンゴレのトップである9代目である。

 ……そんな恨みがましそうな、羨ましそうな目で睨まれてもこっちも困るんだが……。

 ザンザスとレオの様子を見に行ってきてほしいって言ったのは、アンタなんだからな!?

 まったく、信じられんほど親ばかになっちまって……。

 レオが来たときは、彼女が冷静で大人な対応をとっていたせいか、そこまで子供自慢は酷くなかったんだが、ザンザスが来てから超加速で親ばかっていうか、バカ親っつーべきか病気が悪化してくれて、本気でどうにかしてほしんだが。

 

「家光。ザンザスが王○を欲しいと言っているのは本当か?」

「まあ、本当ですけど」

「今すぐ、ボンゴレの敷地に腐海をつくるのじゃ!!」

「無理です!! 人類を滅亡させる気ですかっ!?

 おい、この親バカなんとかしてくれよ、コヨー……」

 

 たまらず、守護者の秘書的存在に援護を頼むが、彼の姿を見て思わず俺は黙ってしまった。

 

 胃を抑え、うずくまる守護者の一人を……。

 

 ……ああ、うん。

 俺と違って四六時中このバカ親といるんだもんな。

 胃の一つや二つ消滅しそうになるよな。

 ……同情心から涙が零れ落ちそうだぜ。

 

「ならば、巨○兵の代わりにモスカの作成を急がせるのだ!!」

「あれは危険だから、制作は禁止されたでしょうが!!」

「ザンくんのためなら、禁止事項の一つや二つ破ってみせるのだ!!」

「あほかっっ!! 

 つか、そんなデカいの動かす死ぬ気の炎なんてどうする気ですかっ!?」

「儂自ら、乗るに決まっているだろう!!

 ザンくんが喜ぶのならば、この身を捧げても――」

「いい加減にしろ! このバカ親!!!!」

 

 まあ、こんな風に俺は苦労しているわけで。

 ちょーっとくらい、ザンザスをからかいまくってもどこからも文句はでねーよな?

 な?

 

 

 






実は苦労していた家光さん。
自分が苦労しているのに、いちゃいちゃしやがって!
とか思っていたり。
ついでにザンザスにいらんこと吹き込んで、レオにそのうち殴られそうです。

守護者さんたちが加速的に胃が消滅しそうなのはお約束で。
ハンカチを用意しながら、見守ってあげてください。

ゲームはマ○カーとかみんなでやれるものとかをやっていそうです。
ボードゲームはレオがあっという間にザンザスに追い抜かれると思います。
久々にコミック見たら、意外と9代目の守護者がゴツくてびっくりしました。
一応、ガナッシュは口調からして幼馴染とかでもいいかなーと思ったりしています。

巨○兵とモスカネタはなんとなく前から思っていたことでした。
……大丈夫ですよね、これ?



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