楽×マリー『オネガイ』その後   作:高橋徹

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第8話「ツヅケテ」

ぶぶぶっ

 

 

「んん・・・ん・・・?」

 

 

朝。

 

 

楽の携帯がメールを受信した。

 

 

見てみると、橘からだ。

 

 

「楽様、昨日はどうもありがとうございました。あの後症状も良くなりまして、登校できることになりました♪今日もよろしくお願いしますね♪(ハート×200)」

 

 

「そうか・・・よかった・・・(ハート多くねえか・・・?)

 

軽く返信をして、携帯を閉じる。

 

 

「・・・すぐに顔を見れるのはなんか・・・安心するな・・・」

 

 

楽の頬は、少しばかり緩んでいた。

 

 

 

 

 

そして学校。

 

 

 

楽は昨日のことを思い返していた。

 

 

「ああ・・・昨日はどきどきしっぱなしで、気付いたらろくに話をしてなかったな・・・。出来たらもっと話したかったような・・・。

 

(鷲掴みのくだりを思い出す)あっ・・・」

 

 

ぼんっっっ

 

 

ひとり爆発する楽。

 

 

そこへ集がやってくる。

 

 

「よっ楽!・・・なんで爆発してんだ?」

 

 

「な、なんでもねえよ・・・」

 

 

顔を真っ赤にさせながらも平静を装う楽。全く隠せていない。

 

 

「(あぶねえあぶねえ・・・昨日のことは俺と橘しか知らないんだから、二人とも黙っておけば周りには・・・)」

 

 

「んで、その反応を見る限り昨日はなんか良いことあったみたいだけど、万里花ちゃんとはどうだったんだ?」

 

 

ぶふっっっ

 

 

盛大に噴き出す楽。

 

 

「ななな何のことかnrfz;lkjaaiegjk〇△□!!??」

 

 

「(もうちょっとがんばって隠せよ・・・)

 

昨日、放課後るりちゃんとちょっと話したんだよ。おまえが心揺れてることとか、お見舞いのこととか。るりちゃんは顔が険しくなるばっかりだったけどね~ん~なんでかな~♪」

 

 

妙に楽しそうな集。楽はるりの反応の理由が全く分かっていない。

 

 

「・・・?まあいいや・・・。まだ小野寺や千棘、鶫に知られてないだけ・・・」

 

 

千棘、鶫、小野寺、るりが教室に入って来た。

 

 

「ダーリンおはよー。ん、何の話をしてたの?」

 

 

「(あぶねえあぶねえ・・・)ん、いや宿題の話をちょっと、な。」

 

 

「・・・ふーん?まあいいけど。

 

 

そういや昨日はどこ行ってたの?」

 

 

「え、あ、いや・・・ちょっと、組の方で用事があってな!抜け出す訳にはいかなかったんで一緒に行けなかったんだわ。」

 

 

「ふーん、大変ねー。」

 

 

ふと楽が横を見ると、にやにやしている集と、集をどつきながら何やら怨念めいたものを発しているるりが。

 

 

「(うおおおおやべえ・・・!!)そ、そうなんだよ~。

 

(なんとかごまかし切れそうかな・・・)」

 

 

楽が安心した矢先、

 

 

「楽様ーーーおはようございます!」

 

 

どどどどどっ

 

 

だきっっ

 

 

ぎゅっ

 

 

橘が楽に抱き付く。

 

 

「うおお橘!!お、おはよう!あまり抱き付くなよ!」

 

 

昨日のこともあり激しく動揺する楽。

 

 

「(やべえ、良い匂いがまた・・・ってか胸がまた・・・いやいやいや)

 

と、取り敢えず離れよう!な!」

 

 

必死で振り払う楽。心なしかいつもより振り払い方が強い。

 

 

「あん・・・もう、いけず・・・」

 

 

少し頬を膨らませる橘。上目遣いで楽を見つめる。

 

 

ぷしゃーーーっっっ

 

 

その光景を眺めていた外野から鼻血が吹き上がった。

 

 

「(うう・・・かわいい・・・!だがここでにやけたら殺される・・・耐えろ俺・・・!!)

 

か、快復して良かったな。」

 

 

「ええ、ありがとうございます!これも楽様の献身的な介護のおかげです・・・」

 

 

がたたたっ

 

 

千棘と鶫と小野寺が同時に立ち上がる。千棘と鶫はただならぬ殺気を発しており、小野寺は立ったもののどうしていいか分からないのか口を開いて固まっている。

 

 

「万里花・・・今なんて・・・?」

 

「おい・・・一条楽・・・貴様さっき、組の用事があると言っていたはずでは・・・?」

 

「あの・・・一条くん・・・それって・・・」

 

 

「(あ、これは死んだな俺・・・)あ・・・いや・・・その・・・ね・・・?みなさん取り敢えず落ち着きましょう・・・ね・・・?」

 

 

「た、橘、それは・・・!」

 

 

小声で必死に橘に呼びかける楽。

 

 

「あら、言わない方が良かったですか?」

 

 

「そ、そりゃそうだろう!なんとかしないと俺が殺される・・・!」

 

 

「わかりましたわ!」

 

 

立ち上がる橘。

 

 

「みなさん、楽様は私の自宅までお見舞いに来てくださり、お粥を作ってきてくださったのですよ!何も悪いことはしていませんわ!」

 

「え、おまっ」

 

「その上全てあーんして食べさせて下さったのです!」

 

「いや、ちょっ」

 

「なにより、転びそうになった私を抱え込み、そのまま胸を鷲掴みになられたときの楽様の腕のたくましさは・・・それもう、熱が一気に吹き飛ぶほどでした・・・。

 

ですから、楽様は何も悪くなどないのです(どやあああ・・・)!!」

 

「」

 

 

演説家の如き語調で話す万里花。

 

 

橘が言葉を重ねる度、目の前で発火現象が起きている。

 

 

「・・・組のみんな・・・元気でな・・・俺のこと、忘れないでくれよ・・・」

 

 

楽の脳裏には鮮やかな走馬灯が見えていた。

 

 

ところが。

 

 

ちらっと横を見ると、千棘が意外と冷静なことに気付いた。

 

 

「あ、あれ・・・千棘・・・さん・・・?」

 

 

「・・・ふう。万里花の言葉もここまで来るともはや清々しいわね。いくらバカもやしでも、そこまでする訳・・・」

 

 

楽を見る千棘。汗をだらだらと流しながら、一向に千棘と目を合わせない。

 

 

「・・・」

 

 

「・・・ふいーふいー(鳴らない口笛)」

 

 

「・・・・・・ダーリン?」

 

 

「・・・ふいいいふいいい(鳴らない上に震えている口笛)」

 

 

「・・・(にこっ♪)」

 

 

「・・・(にこっ(濁った笑顔)♪)」

 

 

これ以上無い程気まずい時間が流れる。

 

 

 

・・・こくっ

 

 

わずかに、ほんのわずかに頷く楽。

 

 

「・・・ハア!!?ちょっ・・・したの!!?」

 

 

「い、い、いや、まあ、不可抗力で・・・ね?」

 

 

楽の言葉を聞いた瞬間、千棘と鶫が再び発火する。

 

 

「お~~~の~~~れ~~~は~~~~~・・・!!!」

 

 

「あっ」

 

 

~~~残酷な表現が含まれるため、割愛させて頂きます~~~

 

 

 

しゅううううう・・・

 

 

ぱら・・・ぱら・・・

 

 

 

「ほんっっっとうにもう、信じられないわこんのスケベもやし!!」

 

 

「お嬢という相手がいながら・・・なんという不埒な輩なのだ貴様は・・・!!」

 

 

ハチの巣になったまま壁にめり込んでいる楽。

 

 

「あらら、楽も大変だね~♪」

 

 

「傍観を決め込むあなたも中々ね・・・あれ、小咲・・・」

 

 

るりが小野寺に目を向けると、既に身体の輪郭だけ仄かに残し、灰になっていた。

 

 

「小咲・・・あんたすっかりこの役目が板に付いて・・・」

 

 

小野寺に対し悲しげな目を向ける親友、るり。

 

 

 

 

その頃、壁にめり込んだ楽は

 

 

「橘と触れ合う度に俺はこんなことになるのか・・・ぐふ・・・」

 

 

真っ白な灰となった。

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

放課後。

 

 

「ふう、さて今日は別にどっかに寄る用事も無いし、真っ直ぐ帰るかな・・・

 

おーい、集、帰ろうぜ」

 

 

「おー、いいよー・・・あれ、万里花ちゃん?」

 

 

集が話す方に楽が目をやると、プリントを持ってこにこしている橘が立っている。

 

 

「楽様、もうじき中間テストですよね♪」

 

 

橘が持っているのは各科目のテスト範囲表だった。

 

 

「ん、ああ、そうだったな。」

 

 

「私、このテスト範囲をざっと眺めたところ、自学だけではとても進級できそうにないのです(どやあああ・・・)!!」

 

 

「いやなんでどや顔なの!!?」

 

 

「ですから楽様、ぜひ今から楽様のご自宅で勉強会を!!」

 

 

「いやいやいや急すぎるだろ!?さすがにそれは・・・」

 

 

楽が戸惑っていると、橘が不意に楽に顔を近付ける。

 

 

「うふふ・・・昨日の続き、してもいいんですよ・・・?」

 

 

そう言うと、小悪魔のような笑顔を浮かべた。

 

 

「・・・!!!そ、そういうことをしたい訳では、ない、けど・・・橘が勉強したいって気持ちに水を差すのも悪いしな、しゃあねえ、勉強会、するか!」

 

 

橘の顔が一気に明るくなる。

 

 

「!ありがとうございます、楽様!」

 

 

楽に抱き付く。

 

 

抱き付かれた楽の顔は、平静を装っているものの緩み切っていた。

 

 

「友よ・・・本音と建て前がもうめちゃくちゃになってるぞ・・・絶対なんかしでかすだろおまえ・・・」

 

 

虚しさ溢れる表情で楽を見つめる集。

 

 

「じゃ、俺は今日は帰るとするよ」

 

 

集はそう言って帰ろうとする。

 

 

「あ、集!ナイス・・・じゃなくて!来ないのか?」

 

 

集の言う通り、楽の本音と建て前はもう混ざりっぱなしである。

 

 

「いいよいいよ。二人で楽しみ・・・」

 

 

集が言いかけた瞬間、

 

 

がららららっ

 

 

ばーーーーーんっっっ

 

 

教室のドアがものすごい勢いで開いた。

 

 

「ちょーーーっと待ったーーー!!!」

 

 

千棘がものすごい勢いで乗り込んでくる。その後ろに鶫、小野寺、るりと続く。

 

 

「ちょっと万里花、なにあんたうちのダーリンの家に行こうとしてるのかしら・・・?」

 

 

「あーら桐崎さん、プライベートの時間をどう使おうと勝手でしょう?」

 

 

「ぬぐぐ・・・じゃあ、私たちも行くわよ!!」

 

 

「ええ!?」

 

 

若干意味深なトーンで叫ぶ楽。

 

 

「・・・ちょっとダーリン、今のはどういう気持ちで言ったのかしら・・・?」

 

 

「い、いや・・・(少し残念だって思ったなんて言えないしそう思った自分のことがまず信じられないいい!)び、びっくりだなーって思って・・・」

 

 

「文句は無いわね!?」

 

 

「い、イエス、マム!」

 

 

軍の上官と部下のようなやりとりをする千棘と楽。

 

 

「あら、残念ですわ・・・まあお邪魔虫さんが居てもやれることはたくさんありますしね、楽様・・・♪」

 

 

つつー・・・

 

 

楽の背中をそっとなぞる橘。

 

 

「うおおおお・・・!?お、おいい橘あ・・・!」

 

 

「はったおすわよあんた!!!」

 

 

 

 

 

3人のやりとりを見ながら、るりが集にそっと話しかける。

 

 

「舞子くん、今の橘さんは油断してたら本当に何をしでかすか分からないから、あなたも見張るの手伝ってちょうだい」

 

 

「うーん・・・面白そうだからいいよ♪」

 

 

根回しを進めていた。

 

 

「それでは楽様のご自宅へ行きましょー♪」

 

 

 

 

 

 

 

「うふふ・・・さてさて・・・楽様のこと、どうしちゃいましょうかねえ・・・♪」

 

 

 

 

 

続く。

 

 

 

 

 

 

 

 




年末年始は一日1~2話を目標に書いているのですが、今日は紅白を見るのでお休みします。感想を書いて頂けるのは本っっっ当に嬉しいです!!ので、ぜひ感想(リクエスト等ありましたらぜひそれも)を書いて頂ければと・・・!

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