楽×マリー『オネガイ』その後   作:高橋徹

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ニセコイ人気エピソード投票で、この小説を書くきっかけになった『オネガイ』が一位を取った記念にさらりと書いてみました。


第68話「ヒサビサ」

1.

とある日。

万里花から一足先に帰ると言う連絡を受け、楽は何事だろうと思いつつも一人で自宅に帰って来た。

「ただいまー」

「はーい。らっくん、おかえりなさいまし♪」

玄関の扉を開けると、私服に着替えた万里花がぱたぱたと駆けて来る。

楽の家に当たり前の様に居る万里花。もはやこの家の住人であるかの様である。

この場面だけ見れば、ただの新婚さんだ。

「らっくん、この後はどうなさいますか?

私にしますか?それとも私にしますか?そ・れ・と・も、私になさいますか?♪」

「選択肢3つ出した意味あんのかよ……」

分かりやすいにも程がある万里花の態度に、楽は呆れつつもにこやかに微笑む。

「あら!ちゃんと意味はあるんですのよ?一つ目の私は今の私服姿、二つ目の私は裸エプロン、3つ目は悩殺下着姿ですわ♪」

「ぶふぅっ!!?」

完全に油断していた。手に持った鞄を肩に掛けるようにした状態で、派手に噴き出す楽。

「げほっ、ごほっ……お、お前なぁ……どんだけ誘惑したいんだよ……」

むせながらツッコミを入れる楽の腕を、万里花がそっと抱き寄せる。

「あら……別に、今すぐ押し倒しても良いんですのよ?いくらでもご奉仕しますから……」

そう言って、淫靡な笑みを浮かべる。

「……あら、どうしましたか、らっくん?」

「……頼むから、帰って早々そんな色気全開で迫らないでくれ……」

右腕に万里花の胸が押し当てられたまま、左手で顔を押さえる楽。

思い切り、鼻血が垂れている。

「あらまあ!急いで処置しませんと。……これ以上の事、いっぱいしているじゃないですか、もう……♪」

楽の耳元で、息混じりの色っぽい声で囁く。

「……!ちょ、ちょっと、本当にやばい!本当に!!」

万里花の猛攻に、楽の鼻血が止まらない。

「(……ああもう、こんな事されてたらそりゃ毎日押し倒しちまうっつうの……!)」

……押し倒していたらしい。それも、毎日。

 

 

2.

万里花に大広間に呼び出された楽は、いつもと違う雰囲気のこの空間に違和感を覚えて、そわそわと歩き回っていた。

「……これ、何なんだ?」

楽の視線の先にあるのは、台の上に並べられている、テーブルクロスの様な物で隠された何か。

白い布で隠されたそれは、大広間にいくつもある台全ての上に置かれている。

こんな状況になる理由にさっぱり覚えの無い楽は、首を傾げてばかりいた。

と、ここで万里花がやって来た。

何やら、妙に達成感を得た様な顔をしている。

「ふう、やっと支度が終わりましたわ♪」

額の汗を爽やかに右腕で拭う万里花。CMのイメージキャラクター狙いなのだろうか?

「万里花、今日早く帰ったのってこれの為か?連絡貰った時は何事かと思ったぞ」

楽は完全にでは無いものの、合点の行った様な顔で万里花に質問をする。

「あら、私が居なくて帰り道が寂しかったのですか?♪」

「……」

楽の頬がほんのり赤く染まり、そっぽを向く。

「……あ、そ、そうでした、か……えへへ……」

いつもの軽い冗談のつもりで言ったのだが……楽の予想外の反応に、万里花は面食らって逆に照れている。

頬を朱に染めながら、手の平をもじもじとすり合わせる。

……ただの、バカップルである。

 

「あ、きょ、今日はですね、お祝いしたい事があったのです!それで……じゃーん!」

「うおっ!?」

万里花がテーブルクロスの様な物を引っ張ると、バフォッと言う布がたなびく音と共に、台の上いっぱいに並べられた料理が姿を現した。

「えええっ!?な、なんつう豪華な……って言うか、これって……」

「流石らっくん、よくぞお気付きになられましたね♪そう、満・漢・全・席ですわ(どやぁぁぁ……)」

「」

思わず絶句する楽。

「実は1週間程前から下準備をしていたのです!それで、少し遅れてしまいましたが今晩お祝いをしようと思いまして♪」

「そ、そうだったのか……。って、んん?何のお祝いなんだ?俺たちのどちらかの誕生日でも無いし、付き合った記念日でも無いし、組の者の誕生日……でもないし」

「(組の方の誕生日まで把握されているとは……流石ですわ、らっくん……!)」

変なタイミングで万里花の関心が逸れた。

 

「……うふふ、私たちが近付くきっかけになった、初めて一緒に遊園地デートをしたエピソードが一位になったのです(どやぁぁぁ……)!!!」

「え、マジか!!!……エピソード?一位?それ、一体何の……」

「はいはい」

「むおっ」

自分の胸に楽の顔を埋めて黙らせる万里花。巨乳は思わぬ所で武器になる。

「そう言う訳で、お祝いとしてこしらえたんですわ♪沢山作ったので、皆さんで食べましょう!」

「(どう言う訳だ……?)まあ、折角作ってくれたんだし……そうするか♪……ありがとな、万里花」

納得が行かない感は全開にしつつも、楽はにこっと微笑んでお礼を言った。

「うふふ、いえいえ♪」

こうして、集英組で凄まじいクオリティのお祝い兼晩餐会兼宴が繰り広げらた。

 

「……これ、どっから予算持って来たんだろう……?」

変なタイミングでお金の心配をする楽。

後で万里花に聞くと、父親から予算を出してもらったと言う事を聞き、これは後でお礼を言いに行かないとな……と、思う楽であった。

 

 

3.

2時間後。

「ぷはー……食った食った。万里花、最高だったよ。ご馳走様」

自室で布団に寝そべりながら、満足げに目を細めて楽が言った。

「うふふ、お粗末様です♪はい、お茶をどうぞ♪」

「ああ、ありがとな」

上体を起こしてお茶を受け取り、二人仲良くお茶を啜る。

特に言葉を交わす訳では無かったが、ふと目が合っては微笑み合う。

二人で過ごす事に随分と慣れた事が分かる、優しい時間だ。

 

「らっくん」

「万里花……んっ」

万里花が幸せそうな表情で楽に身を寄せると、楽は彼女の右肩をそっと抱き寄せ、唇を重ねた。

「……んっ……。らっくん、これからも、どうぞ宜しくお願い致しますわ♪」

「ああ、こちらこそよろしくな、万里花♪」

そして、互いににこりと笑った。

 

「なあ、万里花?」

「はい、何でしょう?♪」

「何で気付いたらショーツ1枚だけになってんだ!?」

楽の言葉の通りである。

良い雰囲気で仲睦まじく肩を寄せ合っていたかと思っていたら、楽がほんの数十秒目を離した隙に万里花はほぼ裸の状態になっていた。

「あら、だってここからはもうお互い一糸纏わぬ姿でそりゃもうばんばんと……はぁはぁ」

「目!目の光り方怖いから!息荒げるのやめろっての!」

「ああ、もう……我慢出来ませんわーーー!!!……んむっ……」

「おわぁっ!?……んんっ……」

何故か楽が万里花に押し倒された。

 

こうして、二人の穏やかな(?)夜は今日も過ぎて行く……。

 

 

 

続く。

 




いやもう、本当にお久しぶりです。感想の方でもお書き頂いた方は本当にありがとうございます。
ついさっきニセコイ17巻の予約限定版を読んでテンションが上がったので、1時間程で書きました。

何も書いていなかった訳では無く、『ToLOVEるダークネス』の小説を書き始め、更に2週間程前から『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の小説も書き初めまして、そちらに現在力を入れております。

中途半端にこちらを書くよりも、ある程度他の(特に俺ガイルの方)小説で書く力を養ってから書いた方が良いかな、と考えて、現在比重を偏らせています。

今回の単発のお話はリハビリを兼ねています。本当にリハビリでした←
書き方が少し変わっているのが皆さんに伝わったかどうか……。
もっと精進したいと思います。

こちらはまた週末にでも更新出来たらと考えています。

次はエロの方で楽とマリーのお風呂。そしてその後小野寺の家でバイト、更に千棘とのデート……と続きます。本当は3月中にここまで終わらせるくらいのつもりだったんですが、延び延び×15くらいになってます。お待ち頂いている方には本当に申し訳無いです……。

今後も、どうか長い目で楽&マリー、そして千棘・小野寺・鶫、集&るり、その他のどたばたラブコメを見守って頂ければと思います。

ああ、久しぶりに楽マリーを書いて、何か原点回帰した気分です。書き始めてまだ3ヶ月強しか経ってないのに何言ってんだとは思いますがw

感想への返信も追い追いやって行こうと思います!本当にありがとうございます!!

それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!

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