今年もよろしくお願いしますっ!
三が日は投稿は微妙だと言ったな?あれは嘘だ。
い、いや、下書きだけするつもりだったのですが、できてしまったので投稿することにしました。
今回は球技大会の前半の話となっています。長くなりそうなので分割しました!
ある日、最近では慣れきってきたゆりの緊急召集に従い、オレは本部に向かっていた。いつものように刀を腰に差し、銃は制服の懐に。そして、まだ付け慣れていないインカムを首にかけた姿だ。最近はこの格好でいることが多くなっている。通信士としてはインカムの使い方など基本的な事を教わったり、ちょっとだけ作戦で使ってみたりと経験は浅い。中継ぎする時に若干もたついたりするので、もう少しスムーズにできるようになりたいもんだ。
「どうも~!ユイって言います!よろしくお願いしまっす!」
ガチャリと扉を開けて中に入ったオレの視界に入ったのは、何故かキラーンという感じでウインクをしながら自己紹介をするユイだった。戦線メンバーもわずかに顔を引きつらせている。お前なんかあざといぞ。
そんな中、こういう時は真っ先にツッコむなりなんなりする日向が上の空のような感じで言う。
「………誰こいつ?」
「聞いてなかったのか?ガルデモのニューボーカル候補だよ」
音無が日向に説明するのを傍らに聞きながら空いていた椅子に座る。とりあえず今は話を聞こうか。
「いいですか?ガルデモはロックバンドなんですよ?」
「アイドルグループにでもするつもりか」
「というか、ユイ。お前歌なんか歌えたのか」
「あっ、神乃先輩お久しぶりですっ!まあまあ、まずは聞いてから判断してください!」
今頃になってオレの存在に気付いたユイは、軽く挨拶をしてエレキギターをかまえる。元々歌わせる気だったのか、セッティングはすでに終わっており、誰が用意したのか分からないマイクの前に立つとギターを引きながら歌い出した。
―――――ジャーン
「イェーイ!皆、今日は来てくれてありが――ぐぇっ!?」
爽快にマイクパフォーマンスをするつもりだったんだろう。歌い終わったユイはマイク立てを勢いよく蹴り上げたまではよかったが、そのままマイク立てがバキッという音と共に天井を突き刺さってしまう。おまけにマイクのコードが首に巻きつき、背が低いせいかそのまま宙ぶらりん状態。早い話、首吊り状態になった。
「「「うおっ!?」」」
「デスメタルだったのか」
「Oh,crazy baby……」
「し、死ぬぅ……」
「なんか事故みたいだぞ?」
やれやれ、何やってんだか……。とりあえず顔色が乙女がなっちゃいけない色にまで変化してるし、なんかキモく痙攣しだしたから助けてやろう。ほら、お前らも手伝え。
「キュ~……」
ようやく首吊りから解放されたユイは、力尽きたようにその場に倒れ込む。歌うことだけに集中すりゃいいのにと内心思う。下手にパフォーマンスしようとするからそうなるんだ。
え?ちなみにユイの歌はどうだったかって?
これが意外とうまかったんだよ。岩沢にはまだまだ及ばないと思うが、少なくとも素人じゃないはずだ。経験はそれなりに積んでいるということなのだろう。じゃないとガルデモのボーカルに立候補などしないだろうし。
「とんでもないおてんば娘ね。クールビューティーだった岩沢さんとは正反対」
「ガルデモのリードボーカルとしてはいかがなものかと」
「別の者を探すか」
「そうすっか」
元気があるのはいいことだが、ちょっと騒がしい奴だからな。ゆりの言うとおり岩沢とは真逆の奴だし。彼女の引継としては荷が重すぎるかもしれない。
「コラー!!ちゃんと歌えてただろっ!?これでも岩沢さんの大ファンで全曲歌えるんだからな!!」
「心に訴えるものがなかったな」
「ありませんね」
「ねえな」
「コォラァァァァァァ!!そんな曖昧な感性で若い芽をつみ取りにかかるなぁーー!神乃先輩も黙ってないで何か言ってくださいよ!!」
「ユイ、お前に一言だけ言っておこう」
「……?」
「せいぜい頑張れ」
「まさかの裏切り!?先輩ならフォローしてくれるって信じてたのに!!」
ハッハッハー!粉砕!玉砕!大喝采!の社長も言ってただろ。己のロードは己で切り開けって!でも、社長。学校の運営権利争いで生徒を出すのはどうかと思います。あと、嫁かっこいいです。
「ううぅぅぅぅ!!お前らそれでも先輩かーー!!」
「うるさい奴だな」
「すでに言動に難有りだぞ」
「どうするの?」
「やる気だけはありそうね」
「単にミーハーなだけだぜ」
さてさて、ユイへの判断はどうなることやら。
「私達だけで判断するのは難しいわ。一番大事なのはバンドだし、あとはガルデモメンバーにまかせましょう」
「本当ですか!?やったー!!ギターのひさ子さんと組める~!あの殺人的なリフ捌きたまんないっスよね~!あったまどうなってんスかね~!!」
「クビだな」
「クビですね」
「こりゃクビ決定だな」
「え、ええ~!?何か悪いこと言いましたか~!?」
自覚無しでそんなこと言っちゃうのかよ。ひさ子の前で言ったらどつかれるぞ。
「ハァ……。バンドがこんなんじゃ、球技大会じゃ大々的な作戦は行えないわね」
「球技大会?そんなものがあるのか?」
「そりゃ、あるわよ。普通の学校なんだから」
「この学校、死後の世界のくせしてそういうイベント事は充実してるよな」
音無も疑問ももっともだろう。だが、体育祭、文化祭なんて当然。部活対抗の水泳大会やらキャンプファイアーやらこの球技大会やらあるらしい。正月には餅つきもするし、クリスマスにはコンサートやパーティもある。あれ?これ学校?
「大人しく見学か?」
「もちろん参加するわよ」
ニヤリと笑うゆり。あっ、これは何か企んでるな。神乃君もう何となく分かる。
「参加したら消えてなくなるんじゃないのか?」
「もちろんゲリラ参加よ。いい、あなた達。それぞれメンバーを集めてチームを作りなさい。一般生徒にも劣る成績をおさめたチームは――――」
「チームは?」
「死よりも恐ろしい罰ゲームね」
「「「ええーーー!!」」」
恐っ!?何させる気だこいつ!
「……何もできねえからヤケになってねえか?」
「半分八つ当たり、もう半分暇つぶしだろ、これ。ゆりが罰ゲームを出すってなら、当然本人は除外するだろうし」
「日々の鍛錬も俺達の役目。それのチェックって思っとけ。で、だ。音無、神乃」
そう言ってポンとオレと音無の肩に手をやる日向。
「どうした?」
「俺にはお前らが必要だ」
「いつものコレか?」
「オレ、ノーマルだから近づかないでくれる?」
「ちげえよ!!チームのことだよ!」
音無が手の甲を頬に持っていくサインを出す。それを見たオレは全力で自分の性癖を訴えた。その対応に必死になって否定する日向。
「いや、分かってたよ。冗談だ、冗談」
「ったく、話が進まないだろうが」
「でも、神乃。時々それっぽい言動するぞ」
「――ごめん、日向。やっぱ近づかないで。具体的には3メートルぐらい離れて」
「だから、ちげえぇよ!!話が進まねえだろうがいい加減にしろよっ!」
いいからちょっとこっちに来いっ!とオレと音無の肩に手をやり、隅の方へと移動しだした日向。やめてっ!オレに乱暴する気なんでしょ!エロ同人のようにっ!
「神乃、さすがに気持ち悪いからやめてくれ」
「アッハイ」
音無の目がすごい冷たかった……。
そして、隅まで移動したオレ達に日向が向き直る。
「組もうぜお前ら。負けたらえらいことになるぜ。ゆりっぺは本気だ」
「まあ、それに関してはかまわねえけどよ。他にアテはあんのか?」
「ふっふっふっ……。まかせろ。俺は人望で生き抜いてきたような人間だ。最強のチームを作ってやるぜ」
日向の人望なんてと思うが、これでもSSSの創立メンバーでゆりに引き続く1番の古株だ。多少は期待できんだろ。
日向のアテ、その1
ひさ子の場合
「ええっ!?高松のチームに入っちゃったの!?」
「うん」
「わっけ分かんねえぜ!!なんで待っててくんねえの!?」
「あんたの誘いを待ってる方がわけ分かんないわよ。高松の方があんたよりマシでしょ?」
日向のアテ、その2
松下五段の場合
「ああ。それなら竹山のチームに入ったぞ」
「はあぁぁぁぁ!?」
「断る理由も無かったしな」
「ち、ちょっと待てぇぇぇ!何故だ!?お前だけは信じてたのに!」
「いや、この先肉うどんが当たった場合は全てまわしてくれるって言ったから」
「に、肉……うどん?」
日向のアテ、その3
TKの場合
ガシッ!(ガッチリと握手するTKと高松)
「ガッテム!!」(頭を抱えて身悶える日向)
人望、ね。人望って何なんだろう。そして、こいつどうしてくれようか。
――――ガチャ
「あらら、日向くぅ~ん?ちょっとイケてないんじゃなーい?何か言い残すことあるぅ~?聞くだけ聞いてやるよぉ」
「ちょ!?待て待て待てぇーー!!なに銃向けてんだよ!?つか、そのキャラなんだっ!」
「じゃあ何も言わなくていいから黙って撃たれろ」
「悪かった!謝るから撃つのはやめろ!死ななくてもやっぱ痛いから!」
「許してくださいってかァl?許してやらねえよっ!」
さっきまでの自信はなんだったんだこんにゃろー。試合する前に人数足りなくてゲームセットとか笑えねえぞ。罰ゲームまで一直線じゃねえか。
「まあまあ、そこら辺にしといてやれよ神乃。よくよく考えたら、人望無しってなかなか可哀想だぜ?」
「――確かに」
そう考えるとなんか日向が哀れになってきた。どうしよう、すっごく可哀想。
「ごめん日向、オレ言い過ぎたよ。許すよ、お前の事。だから頑張れ日向」
「同情すんな!余計悲しくなるだけだっつーの!!」
「人望が無いってことは認めるのかよ」
まあ、あんだけ思いっきりふられてるしな。もはや否定しようがない。
「なあ。そういや、種目って何なんだ?」
「野球だよ」
ややブスッとした感じで答える日向。人望が無かったのが意外とショックだったようだ。大丈夫だ日向。オレ達はお前の味方だからな。
「ってことはあと6人か。――無理じゃね?」
「うっ……」
野球ともなると、運動神経が意外とものをいうしな……。もうあまり良い奴は残ってなねえんじゃねえか?そんな感じにほぼ諦めかけていたとき、聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。具体的には数時間前に聞いた。
「ふっふっふっ。お困りのようですな」
「誰だよ、この忙しい時に――って、なんだ。悶絶パフォーマンスのデスメタルボーカルか」
声をかけてきたのは本部で解散したユイだった。最初こそドヤァといった感じで立っていたユイだが、日向の酷い言いようにドドドッ!とにじり寄ってきた。
「んなパフォーマンスするキャラに見えるかぁぁぁぁ!!」
「見えるよ十分。ていうか、何の用だよ」
「ふっふっふっ。メンバー足りないんでしょ~~?私、戦力になるよ~」
「はあ?戦力?」
ユイが戦力?すっげえ疑問だ。
「いや、まてよ。デッドボールを顔面に受けて危険球、相手ピッチャー退場――――当たり屋か!!よし、採用!!」
「お前の脳みそ、とろけて鼻からこぼれ落ちてんじゃねえのか!?」
「ぐはぁっ!?」
日向の言い草に怒ったユイはジャンプして空中回し蹴りを繰り出し、日向の後頭部にクリティカルヒットさせた。おお、結構身軽じゃねえか。ナイスキック。
「おま……!?俺先輩だかんな……!!」
「おお~と、先輩のお脳味噌、おとろけになってお鼻からおこぼれになっておいででは?」
「んなわけあるかぁぁぁ!!」
悶絶する日向に、ユイは敬語ではない敬語を話しながら手刀を落とす。それにブチギレた日向はガチな勢いでユイを蹴っ飛ばした。つか、こいつらほとんど初対面だよな?なんでこんな乱闘してんだ。端から見たらじゃれ合ってるようにしか見えねえぞ。
「せ、先輩、痛いです……」
「俺だって痛えよ!」
「にしても、ユイ。結構運動神経良いな」
「確かに。良い蹴りだったと思うぜ。狙う場所も人体の急所だったし」
「音無も神乃も何言ってんだよ!おまけに神乃は言ってることがこえぇよ!!つか、こんな頭のネジの飛んだ奴の仲間だなんて思われたくねえぜ」
「痛いです……」
ユイ、それは身体的な痛みか?それとも貶されたことによる精神的な痛みか?
「そんなこと言っても目つけてた連中、断られまくってるじゃないか」
「うっ……。それを言われると……」
図星だから何も言い返せないわな。
「そうそう!見てましたよ。なので、ユイにゃんが加勢しにやってきたわけです」
すっかり回復したニヤニヤと笑いながらここへ来た経緯を話す。こいつ、あとをつけてやがったのか。そんなユイを日向がジロリと睨みつける。
「――――ああ?もういっぺん言ってみろ」
「ユイにゃん♪」
ユイにゃん発動っ!だがしかし、日向には効果が無いようだっ!
日向は関節締めを放ったっ!ユイに効果は抜群だっ!
「そ・う・い・う・のが一番ムカつくんだよぉぉぉ!!」
「いったぁぁぁぁ!?ギブギブギブ~~!!」
「1!2!3!!カンカンカーン!!」
「か、神乃先輩もカウントとってないで助けて下さいよっ!!てか、明らかにカウント終わってるのに何でやめないんですかぁぁぁ!ギブっつってんだろうがお前らぁぁぁぁ!」
「遊ぶのもそこら辺にしてとっとと次行くぞー」
容赦なく関節を締め上げる日向。痛さに悲鳴を上げるユイ。それに便乗するオレと先を促す音無。見事に日向チームはバラバラだった。
場所は変わって体育館倉庫。ちなみにユイはしっかりついて来ている。そして、なんだかんだでバッチリとチームに加わっている。で、なぜ体育館倉庫かというと、
「椎名っちーどこだー?出てこいよ椎名っちーー!」
なんでも椎名がいるからだそうだ。つか、倉庫で何してんだ椎名は。いつまでも反応が無いなと思っていたが、やがて、日向の呼びかけに倉庫の物品の影から気配も無しに椎名が半身だけ出すように現れた。
「何用だ?」
「探したぜ~。お前、運動神経いいじゃん?」
「計ったこともない」
実際椎名の運動神経は良い。つか、頭おかしいレベルで良い。もはや変態レベル。時折、それ物理的に無理だよね?と言う動きをすることがある。もはや超人だ。ぶっちゃけオレと椎名が勝負したら、0.1秒で負ける自信がある。
「絶対いけるって。野球、野球やろうぜ」
「……あの日から」
「んあ?」
「そこの新入り達に遅れをとってしまった理由をここでずっと考えていた」
「ギルド降下作戦のことか?確かに音無と神乃2人が生き残ったのはありゃ伝説ものだよな」
「あれは運がよかっただけだ」
「というか、他の奴らが生かしてくれたって感じだけどな」
実際TKがいなかったら天上に潰されたり、落とし穴でも皆がいなかったら落ちてただろうしな。それでも、椎名としてはあの作戦はかなり悔しかったみたいだ。
「全ての力において、私はお前達をはるかに凌いでいたはずだ」
「だろうな」
「ただ一点劣っていたとしたら、それは集中力」
「いや、それもあんたの方がはるかに上だろ?」
「音無に同じ」
音無とオレがそこまで言った時、椎名は物陰から体全体見えるように出てくる。その手に何かを
「あの一件以来、私はこの竹箒を指先の一点で支え続けている」
シーン………
倉庫に、はい?なにそれ?的な空気が漂った。アレだ。授業中に厨二病者が突然意味不明な発言をしてクラスの空気を凍らせる感じのアレだ。意味が分からないよ……。
「……アホですね」
「ああ、アホだな」
「おいおい2人とも、アホでも戦力なんだぜ?」
日向、それはフォローとは到底言えない。なぜならフォローすべき部分にまったく触れてないからだ。
「いい頃合いだ。勝負だ、お前達。2人まとめてかかってこい」
「箒立てて何の勝負だよ……」
「もちろん野球だ。勝負つってもちゃんと個人成績で勝負しろよ。仲間同士で戦うな!」
「――いいだろう。あと、お前」
「ん?なんだ?」
「近いうちに手合わせ願おう。そう約束しただろう?」
おい、待てや。誰が、いつ、どこで約束したんだよ。つか、ぜってえ嫌だ。手合わせという名の虐殺が始まるだけだし、オレだって一々死にたくない。
「これで5人だけど……。日向、他にあては残ってんのか?」
「一応あるが、って悩んでも仕方ねえな。アイツを入れるか」
「アイツって?」
「ついてくれば分かるさ」
日向はそういうと、オレ達がいつも銃の訓練をしている川の方に向かって歩き出した。あと残ってそうなのは――――もしかしてアイツか?
「はっ!たぁっ!へいっ!でぇぇぇぇい!!!」
河原の岩陰から覗き見る先にはハルバートの特訓、だろうか?なんかそれをブンブン回しているゆり教信者こと野田がいた。半裸に汗だくでハルバードを振り回す姿は正直暑苦しい。
ちょっと、だーれ?ここに炎の精召喚したの誰ー?ちゃんと面倒見なさいって言われたでしょうー。
「アイツを誘う奴はいない。直情的でゆりっぺ以外の指示には従わないからな」
「つまりあの人もアホなんですね」
「ああ、凄まじい程のアホだ。でも、アイツなら力はありそうだよな。いつもハルバードを振り回してるし」
「そうだ。アホは利用できる。見てみろ、長い物を持たせたら右に出る奴はいない」
ハルバードと野球のバットを同じ扱いってのはちょっと違う気もするが、まあ戦力になるのなら何でもいい。とりあえずオレ達は特訓の流れ弾ならぬ流れ斧を受けないように野田へと話しかけた。
「フッ、ついに来たか。今こそ決着の時だ」
そう言いながら音無とオレにハルバードを向ける野田。
「待て待て。俺達はお前を野球のチームに誘いに来たんだよ。別に個人的に勝負しに来たわけじゃないって」
「そんなことはどうでもいい。俺はお前達が気に入らないだけだ」
「またオレもかよ……。オレがお前に何したってんだ?」
「貴様はゆりっぺにやたら期待されていた。というか、名前をもらえるなど羨まけしからんっ!!」
結局ただの嫉妬じゃねえかっ!?確かにゆり信者の野田にとってはかなり問題なんだろうけど!
すまん、日向。このバカをなんとかしてくれ。
「まあ待て、野田。2人との勝負の前にまずは球技大会で小手調べといこうじゃねえか。お前とこいつらのどっちが運動神経が上か見せてもらうぜ」
「何故そんなまわりくどいことをしなければならない?」
「――ただ単に強いだけじゃ、ゆりっぺは振り向いてくれないぜ?」
おいおい。いくらアホな野田でもそんな適当な勧誘じゃ頷かねえだろ。
しばしの沈黙。ほ~ら、やっぱりダメ――――
「フッ……いいだろう。球技大会でも何でもやってやろうじゃないか」
――じゃねえのかよ!?なんか納得しちゃったぞ、こいつ!?そして、自信満々で日向とガッチリ握手してるし!?野田のゆりへの忠誠心を侮ってだぜ……。
「アホだ。利用されていることに気づいていない……」
ユイに激しく同感だ。さすが野田と言うべきか、ゆりのこととなるとさらに極端になるな。
と、まあこんな感じで野田が野球メンバーに加わり、椎名と合わせて凄まじい戦力を日向チームは手に入れた。
さて、あと3人か……。
「悪いな、もう別のチームに入っちまったんだ」
「ごめん、他のチームに入ってるんだ」
「すみません、チームはもう決まっちゃってるんです」
「そうか……。分かった、引き止めちまって悪かったな」
あれから時間は過ぎ、いつもの戦線メンバー以外のメンバーにも声をかけてみたりしたが、いずれも入るチームが決まっていてダメだった。時間はあまり残されていないし、はてさてどうしたものか。
「やっぱ戦線メンバーは残ってねえな」
「まだ6人だぞ。どうするつもりだ?」
「椎名っち、その指先の箒下ろせないのか?真面目に喋っててもギャグにしか見えねえぞ」
「それは私の集中力が途切れた時だ」
「じゃあ……これでっ!どうだっ!!」
いきなり椎名に回し蹴りを放ったユイ。しかし椎名は箒のバランスを崩すことなくヒョイヒョイと躱す。おおっ……すげえ。本当に落としてない。
「なにぃぃぃぃぃ!?普通によけられたーー!?」
「何をする」
「おいおい、仲間割れしてる場合じゃねえだろ。日向、お前なんとか……って、日向?」
ユイと椎名に苦笑していると、音無の戸惑った声が聞こえてきた。それに違和感を覚えたオレは日向を見てみたが、何やら様子がおかしい。音無の呼びかけも聞こえていないようだし、騒がしいユイのことなどまったく気づいていない。ただボーっと、少し雲のかかった青空を見上げていた。
「日向?どうかしたか?」
「……………」
「日向?」
「おい日向!」
「――――っ!」
「どうした?なんかあったのか?」
「い、いや。何でもねえ……。ちょっとボーっとしちまった」
「「……?」」
音無が肩を掴んで揺らすことでようやく我に返った日向。誤魔化すように笑みを浮かべるが、わずかに引きつった笑いだった。
明らかにさっきの表情はおかしかった、よな……。
あれじゃまるで――――
―――――頭の中で、岩沢が消えた瞬間がよぎる。
「――――っ!」
一瞬浮かんだ想像を頭を振ることで振りはらう。気のせい、だよな……?そんなの、あるわけない。
「しゃあねえな!んじゃ、あとは一般生徒でまかなうか!」
楽しそうに笑う日向は、今度こそ自然な笑みを浮かべていた。霧散してしまったかのように、さっきまでの不自然な笑みは見らえない。日向、お前は――――
結局残りはNPCの連中、それもユイのファンの奴を加えることとなった。なんでもストリートライブをやってたときにいつの間にかできたらしい。だが、それでも加わったのは2人。本当はもう1人いたらしいが、他のチームに入ってしまったそうだ。オレ達のチームは9人制の野球なのに8人で参加することとなった。
人数もそろっていない上に、懸念材料がさらに増えてしまった。今度の球技大会。本当にどうなってしまうのだろうか……?
はい、ということで第6話でした。
今回は試合前の仲間集め回ですね。次回は試合の方に入っていきます。
今回神乃君のキャラが若干壊れてるのはご愛嬌ということで(笑)
では、また次話で!
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