死後で繋がる物語   作:四季燦々

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急いで書き上げたため間違いが多いかもしれません。
これにて、影動乱編(勝手に命名)終了!


Come to an end

~ゆり side~

 

まるで夢のようだった。ふわふわと体が浮いているような感覚を感じながら私は目を開ける。さっき自分の手を掴んでくれた温かさはもうない。だけど、あれはただの勘違いではないことはなんとなく分かっていた。眠りから覚めるようにゆっくりと景色が見えてくる。やがて、そこにいる存在に気が付いた。

 

「へへっ。よっ!間に合ったみてえだな」

 

「日向君……?それに音無君も」

 

「僕もいるんだが」

 

直井君まで……。ああ、そうか。私――

 

「――戻って、来れたんだ」

 

……やっぱりあれは現実だったんだ。

 

「お前の声が――いや、お前の思いが爆発してるって奏がここまで連れてきてくれたんだ」

 

「奏ちゃん?」

 

「うん」

 

音無君の背後からヒョコリと顔を出してきた奏ちゃん。どこか怪我をしている様子もなく、疲れている様子もない。たくさんの影達と戦ったはずなのに、相変わらずすごい子ね。

 

「――ふふっ、そう。皆のおかげね。助けられちゃった」

 

私が皆のことを助けるつもりだったんだけど、結局はその逆になっちゃったわね。あのまま影に飲み込まれていたらどうなってしまっていたのかしら。……ゾッとしないわね。本当に感謝しなきゃ。

 

すると、奏ちゃんがポツリと囁くように小さい声で言う。

 

「笑うのもいいけど、とりあえず服整えたら?」

 

「へっ……?」

 

少しだけ言い辛そうに言う奏ちゃんの言葉に一瞬虚を突かれる。そして、今一度自分の様子を確かめてみた。制服は乱れて、おへそはチラ見、肩も露出状態。ぶっちゃけスカートもかなり際どい。なんというか、色々とマズい格好になってしまっていた。

 

「うわわわわわっ!?」

 

白紙のノートを見た時のような悲鳴を上げ、男共の目から逃れるように後ろを向いて乱れを直し、傍らにあったマシンガンを持ってスッと立ち上がる。

 

「さあ!行くわよ!」

 

ええ!何もなかったわ!私には今何もなかった!そんな私の心境を察してか4人はそのことについては何も言ってこなかった。その中で苦笑していた日向君が、今度は心配そうな表情になり私に問いかけてきた。

 

「なあ、ゆりっぺ。神乃知らねえ?俺達より先に中に入ったはずなのに見つからねえんだよ」

 

刀だけ落ちてるし。というか、いつの間にか増えてるぞ、と鞘の収まった2本の刀を私に見せてくる日向君の言葉に、思わず自分の横っ面をひっぱたきたくなった。

私の馬鹿……!!なんで彼の事を忘れてたのよ!

 

「どうしたゆりっぺ?神乃がどうかしたのか?」

 

私が影に飲まれる寸前、彼も私と同様に影に捕えられたのは見えた。その原因は言うまでもない、私の油断のせいだ。私が警戒を怠りあいつらの奇襲を受けてしまったせいで彼は無茶な事をしようと冷静を欠き影に捕まってしまった。ここにいないという現状を普通に考えれば、高松君と同様に影の中に取り込まれてしまったと言う結論にいきつく。

 

「ゆりっぺ、顔色があんまり良くねえぞ。まだどっか悪いのか?」

 

影に取り込まれてしまった者はNPCになり学園へと戻される。だが、元来NPCである彼は?そしてNPCは最終的にどうなった?……導き出される解は1つ。影に取り込まれた彼は同じく影になるということ。

 

「本当にどうしたんだゆりっぺ」

 

「ゆり……?」

 

「…………おそらく、彼は影に取り込まれたんだと思うわ」

 

「――はあっ!?どういうことだよゆりっぺ!?」

 

「ここに、私だけじゃなく彼もいたってことよ。私達は影の集団に襲われて……」

 

私だけが助かり、彼は行方知れず。滑稽ね。何も変わっていない。こんな状況とはいえ、私は生前から何一つ守り切れていない。そのことがたまらなく悔しい。無力な自分が憎らしい。リーダーとして大切な仲間を守れないことが情けない。

 

でも――

 

「――さあ、先を急ぐわよ」

 

私はすぐに気持ちを切り替えて4人にそう伝える。

 

「ゆり……」

 

「ゆりっぺ……」

 

ついてくる4人が今どんなことを思っているのか分からない。冷酷だの最低だの思っているのかもしれない。もしかしたら、私の気持ちを察してくれているのかもしれない。

 

ここで後悔に立ち止まるようであれば、それこそ私は神乃君に顔向けできない。彼は遊佐さん達と再会を約束したと言っていた。その未来をこのまま終わらせたりはしない。絶対に助け出してみせる。そのためには感傷に浸っている暇なんかない。少しでも早く解決の糸口を見つけ出す。それが私にできる精一杯のことなんだから。

 

 

 

 

 

「なあ、なんかあそこを守っている気がしないか?」

 

「奇遇ね。私もそう思うわ」

 

――ギルド連絡通路B20。私達がたどり着いたその先の道に大勢の影達が密集していた。今までの比ではないその数にもはや呆れるしかない。まったく、大したものね。あそこまでうじゃうじゃしてると逆に感動すら出てくるわ。いずれにせよ、あの先に何かあるって主張しちゃってるわね。

 

「しっかし、あんなの絨毯爆撃でもしないことには「――じゃあ、行ってくるわ」――へっ?うおおっ!?」

 

「奏ちゃん!?」

 

日向君の呟きに反応したからかどうか分からないけれど、突然奏ちゃんはその場で力強く跳躍すると、数体の影を蹴散らしながらその中心に着地した。というより、黒い塊の中に丸々突っ込んだって表現の方が正しいわね。いきなり現れた異分子に当然影達の無感情な視線が集中し、一斉に襲い掛かり始めた。小柄な彼女の姿はあっという間に黒に埋め尽くされて見えなくなってしまう。

 

「馬鹿な……!自殺行為だぞ」

 

「――いや、待て……!?」

 

しかし、音無君の言葉に合わせるように影達の塊が一度大きく膨れ上がり、まるで竜巻のように吹っ飛ばされて消滅した。もちろん、影達をなぎ払ったのはその中心でハンドソニックを両手に構えた奏ちゃん。寒気がするほど馬鹿げた力ね。

 

「いよっし!!」

 

「あれの戦闘能力は爆撃機並か……!?」

 

奏ちゃんはこちらに振り向くと、無言で親指を立ててきた。ナイスよ、奏ちゃん!

 

「行きましょう」

 

しかし、奏ちゃんのもとに駆け寄ると、止めどなく新たな影達が現れ始める。くっ!思った以上に沸くのが早いっ!このままじゃ倒しても先に進めない!

 

すると、銃を構える3人とハンドソニックを構える天使のようん少女が1人、私を庇うように陣形を組んだ。

 

「ゆり、先に行け。俺達はこいつらを片付ける」

 

音無君の言葉に、正直一瞬迷った。でも、私はすぐに結論を下す。

 

「……うん、お願い。もう誰1人やられるんじゃないわよ」

 

どの口がそれを言うか。自分で自分にそう思ったけど、どうしても言わずにはいられなかった。

 

「ああ、まかせとけ」

 

私は彼に背を向け、さらなる奥へと走り出す。背後から銃撃の音が不安を煽ったけど絶対に足は止めなかった。

 

そんなには走らなかったと思う。だけど、目的の場所にはたどり着いた。無骨な金属製の壁に同じような材質の扉。備え付けられたプレートには『第2コンピューター室』と、隠す気もなく堂々と書かれている。

 

「馬鹿にしてる。でも、今度こそ……!」

 

私は冷たい金属製のその扉のノブに手をおき、ゆっくりと回した。

――そして

 

 

 

 

 

~音無 side~

 

「堪んねえな、この数」

 

「ゆりを先に行かせて正解だったな。あとはうちのリーダーに任せようぜ」

 

時折愚痴の様な事を吐きつつも影達を1体1体確実に仕留めていく。影達はゆりのあとを追おうと次々に襲い掛かってくるが、奏の力もあり何とか拮抗――いや、俺達が押し気味に状況を保てていた。

 

傍らには件の奏が、というか明らかに俺達の立つ位置の方が()()なんだが、奏が俺達の数倍の数の影を圧倒している。直井はあれを絨毯爆撃と表現していたが、爆撃どころの制圧力ではないな。

 

「奏ちゃんがいればこっちの心配すらいらねえな」

 

「だな」

 

「そもそも貴様自体がここにはいらん。さっさと会長に微塵にされてしまえ。そのままリサイクルされてしまえ」

 

「紙パックかよ!というか、なんで俺が刻まれなきゃいけねえんだ。そんなに言うならお前が行け」

 

「貴様、神に向かって何てことを言うんだ!」

 

「だから、神じゃねえだろお前っ!」

 

ギャーギャーと日向と直井がまた言い争いを始めやがった。ったく、こいつらも時と場所ぐらい選べよな。というか、日向。いくらなんでも神乃の刀を振り回すな。扱いなれてないから飛んでこないか不安になる。

 

「――結弦」

 

「うおっ!?どうした、奏」

 

お世辞にもレベルが高いとは言えない2人のやり取りを聞き流しつつ影達の相手をしようとするが、いつの間にか1体たりとも影はいなくなっていた。そして、急に背後からかけられた言葉にビクリと驚いてしまう。

 

「一応、終わったわ」

 

「あ、ああ。ありがとう。悪かったな、なんか1人でやらせちまって」

 

「別に大丈夫」

 

「そっか」

 

まるで日直の仕事のようの和やかに会話しているが、やったことは殲滅だ。それをサラリと告げる奏の力に改めて感心しつつ、自分よりずっと低い位置にあるその頭を撫でる。ごくろうさま、という意味合いを込めてついしてしまいし、嫌がられるかと心配になったが彼女はその手を振り払うようなことはしなかった。

 

「それで、1つ気になることがあって」

 

「気になること?」

 

「うん。とりあえず来て」

 

「お、おい奏!?」

 

袖を引きながらどんどん進んでいく奏に慌ててついていく。そういうや、力がものすごく強いんだったなーと、呑気なことを考えながら、言い争いに夢中になっている日向と直井を置いていき、さっきの通路よりやや離れた拓けた場所へと来た。

 

この辺りにも戦いの痕が残っていることから、奏が一足先にこの一帯の影を一掃してくれていたようだ。ほんの少しの間姿が見えなかっただけなのに……とつい口に出そうになったが、その前に目の前にいる存在に言葉を飲み込む。何故奏がここに俺をつれてきたのか、すぐさま理解した。

 

「――気になるのはこれ」

 

「――なんだ、これ」

 

奏が疑問に思うのも無理はない。それは俺にもよく分からなかった。真っ黒に揺らめく()()。パッと見ただけでは影と大差ない。しかし、明らかに違っている部分があった。

 

「まるで、本当に人の影みたいじゃないか……」

 

影とは似ても似つかない()()。顔に、肩に、腕に、手に、足にと。形だけなら明らかに人だった。言うならば、本当に人の影を立体的にしたといった感じの存在がそこに静かに佇んでいた。

 

「戦っている最中、この子だけがまったく動かないし攻撃もしてこなかったから、最後まで放置しておいたのだけれど」

 

「なるほど。それにしても、何なんだこいつ?」

 

ジッと全体を観察してみる。どこかで見たことがあるようなシルエットだった。どこだ?うろ覚えだが確実に見たことがある。それもつい最近のはずだ。この中肉中背の体系、俺と同じぐらいの身長、すこしツンと逆立った髪型。

 

そこまで考えて、電流が走ったような衝撃が俺の中で起こる。もしかして……!

 

「お前――――神乃、か?」

 

「えっ……?」

 

ある意味確信めいたことを聞く。が、もちろん口すらないわけで返事などあるはずがない。しかし、俺にはそうだと分かった。予想外に出てきた名前に基本的に表情の変化がない奏すらも僅かに目を見開く。

 

「――たぶん、だけどな。顔が見えないからはっきりとは言えないけど、間違ってはいない、と思う」

 

「結弦の言うとおりこれが神乃君だとしたなら、何故こんなことになっているのかしら?」

 

「俺の勝手な推測だけど、影に取り込まれたらNPCになってしまうってことが関係しているんじゃないか?こいつは元がNPCだからな」

 

それならば、どうするか。あいにく俺には良いアイデアが浮かばない。というか、影のことを探りに来たのに仲間がすでに半分影化しているなんて状況をどうしろというんだ。

 

「あっ、いたいた。おーい、音無ー。ったく、置き去りなんて酷いぜ」

 

不意に聞こえた声に振り向くとそこには言い争いをしていたはず日向と直井がいた。直井は自分より先に俺へと話しかけた日向を射殺さんばかりに睨み付けている。もしかしたらさっきの言い争いの私怨も混ざっているのかもしれない。

 

「音無さん!!僕を置いていかないでくださいよ!こんな愚民と一緒にいるなんて屈辱を超えた屈辱ですよ!」

 

「あ~分かった、分かった。悪かったよ、次からは気を付ける」

 

「どうしたんだ?というかそれ、まさか神乃か?」

 

「あっ、お前もそう思うか?」

 

「まあな。あくまで形だけでなんとなくって感じだけど」

 

良かった。ということはこれが神乃である可能性が高まった。2人とも同じことを考えたのならばあながち間違いではないという事だろう。しかし、可能性が高まったところで状況が進展するわけもない。

 

「それで、これが仮に神乃君だとして、どうするの?」

 

「ど突いてみるか?」

 

「そんな一昔の方法でどうにかなるわけないだろう、馬鹿か貴様」

 

「言ってみただけだろ……」

 

しかし、方法が無いのも事実。思いついたことはやってみるべきかもしれない。少々手荒だが、非常事態なので仕方ない。

 

「……やってみるか」

 

「おい、貴様何をしている。音無さんのお手をわざわざ煩わせるつもりか。貴様がやれ」

 

「ものすげえ手のひら返し。……まあ、やれというならやってみるけど」

 

そう言って神乃の前に立つ日向。怪しそうにその姿をジロジロと観察した後、よしと意気込んで殴る構えをとった。その様子を背後から静観する俺達3人。

 

「先に謝っとくな。ちょっと痛いかもしれんけど我慢しろ――よっ!!」

 

最初に詫びを入れた後、日向は神乃の顔面に当たる部分を思いっきりぶん殴る。殴られた()()はそのまま後ろに倒れ込むように上体を傾けていき……

 

 

 

 

 

~神乃 side~

 

「つ、疲れた……」

 

何時間歩き続けただろう。もしかしたら数十時間かも知れないし、1、2時間かもしれない。時間なんてもちろん確認できないし、おまけに一切周りの光景が変わることがないため、余計疲れる。肉体的にも精神的にも。

 

「だあーー!!もう休む!いったん休む!」

 

ゴロンと床(?)に寝転がり、後ろに手を組んで枕代わりにし、疲れた身体を休めるように横になる。自然と上部を見上げる形になるのだが、やはりそこには延々と続きそうな暗闇が広がるばかりだった

 

「……はあ。ひたすら真っ直ぐ来たってのに、どこまで行っても辺りは真っ暗。ついでにオレのお先も真っ暗。……笑えねえぞ、おい」

 

とまあ、意味不明空間に思わず空元気しかでない。というか、最後のは本気で洒落になってない。下手したら永遠にここにいなければならないかもしれないからだ。

 

暗闇とは人のマイナスの感情、つまり悲しみや恐怖を極端に連想させる。夜の暗闇に幽霊などの存在を想起するのがいい例だ。オレだって今は必死に自身を奮い立たせているが、実は結構参っている。気をしっかり持たないと発狂しそうだ。おまけに他にも気になっていることがある。

 

「……あいつら、大丈夫かな」

 

音無達の事も気になるが、一番気がかりなのはゆりだ。あの状況だと無事ですんだと言うことは考えづらい。捕えられた状態で影達からの脱出は不可能だろう。つまり、今だにオレのように影に捕えられているかもしれない。

 

「――だったら、ジッとしているわけにはいかねえよな」

 

早くこっから出て助けに行かねえと。そう考えた時だ。何かがこの空間で聞こえたような気がした。

 

“――――――”

 

……やっぱり何か聞こえる。まさか、またあの野郎からの通信か?

 

“――間違ってはいない、と思う”

 

……違う、この声はあいつじゃない。

 

“――こいつは元がNPCだからな”

 

「この声は、音無か?」

 

何であいつが……?そもそもどこから、つかどうやって聞こえてきてんだ?

 

“――おーい、音無ー。ったく、置き去りなんて酷いぜ”

 

“――音無さん!!僕を置いていかないでくださいよ!こんな愚民と一緒にいるなんて屈辱を超えた屈辱です!”

 

“あ~分かった、分かった。悪かったよ、次からは気を付ける”

 

今度は日向と直井の声がする。一体どうなってんだよ。なんであいつらの声が聞こえんだ?

 

“それで、これが仮に神乃君だとして、どうするの?”

 

“ど突いてみるか?”

 

今度は立華まで。というか、今すごい不安を駆りたてる言葉が聞こえたんだが。えっ?もしかして今オレお前らの前にいるの?そして、一体何をしようとしてんの?ど突くってどういうこと?

 

“……やってみるか”

 

“おい、貴様何をしている。音無さんのお手をわざわざ煩わせるつもりか。貴様がやれ”

 

ちょっと音無さん!?なに了承しちゃってんの!?直井も乗っかってんじゃねえよ!えっ、本気で何するつもり?What are you going to do!?

 

“先に謝っとくな。ちょっと痛いかもしれんけど我慢しろ――よっ!!”

 

――瞬間、思わず悶絶しそうな痛みが頬に当たりに伝わった。

 

「――いってえええええええええええ!!おぶっ!?」

 

顔面に広がる痛み+受け身を取れず地面に後頭部をぶつけるというダブルパンチが襲う。隙のない二段構えとかどこの飛天御剣流だよっ!と痛みに悶えながら全力でツッコむ。しばらくのたうち回り、若干涙目になりながらこの事態を引き起こした張本人共も睨み付ける。

 

「うおっ……も、戻ってる?」

 

「殴っただけだよな、俺……」

 

拳を振り抜いた姿勢で固まる日向。その背後で驚いたように目を見開く音無と直井、そして物静かに佇む立華。どういう状況なのかいまいち捉えづらいが、1つだけ分かったことがある。だが、今のオレは無手。刀は……ああ、日向が腰に差してんじゃねえか。

 

「おい、日向。何も言わない。とりあえずその刀2本をオレに返せ」

 

「目が血走ってるっ!?い、嫌だ!お前返したあと何する気だっ!?」

 

「なに、ちょっと素振りをするだけだ。結構激しくするつもりだから、そのせいで間違って斬っても……オレは悪くないよな?」

 

「悪いわっ!思いっきり狙ってんだろ!」

 

「いいからとっとと刀返せっ!てめえを斬る!!」

 

「もう斬るって言っちゃってますからぁぁぁぁぁ!!」

 

全力で逃げ出す青髪野郎を追いかける。ここで会ったが百年目ぇ!!悪・即・斬!で牙突・零式してやらぁ!!

 

グルグルと辺りを駆け巡り、とにかく目の前の馬鹿を屠ることだけを考えていた。結局この命と誇りと、ちょっとした私怨を含んだ追いかけっこは音無に頼まれた立華のエンジェルストップ(物理)がかかるまでおさまらなかった。

 

 

 

 

 

「――で、結局何があったんだ?」

 

「それはこっちが聞きたいぜ。奏に連れられて来てみたら影になりかけたお前がいたし、どんなに声かけても反応ないし」

 

「そもそもお前って影に取り込まれたんじゃなかったのか?」

 

「影に……って、そうだ!!ゆりはどうしたんだ!?あいつ無事なのか!?」

 

不意にオレと同じく影に取り込まれたリーダーのことを思い出す。突然焦りだしたオレを宥めるように音無と日向が両手を前に出し、とりあえず落ち着けとサインを送ってきた。

 

「待て神乃。まずは落ち着け」

 

「これが落ち着いてられっかよ!!あいつも影に飲まれたんだ!早く助けねえと……!」

 

「いいから落ち着けって!!ゆりは無事だ!!今は1人で奥に向かってるから!」

 

――はっ?

 

「無事、なのか?」

 

「「ああ」」

 

ハモリながら答えた音無と日向の言葉に安心し、思わず腰が抜けそうになった。よかった、無事だったんだなゆり。まあ、あいつがそう簡単にくたばるとは思っていなかったけど。

 

 

 

 

「んで、そのリーダー様はここを進んで行った、と。」

 

音無達に連れられてゆりが向かったという通路の目の前まで来たオレ。なるほど。完全にオレが以前訪れた『第2コンピューター室』に向かう通路そのものだな。

 

「じゃあ、行くとしますか」

 

「そういや、結局お前は何でギルドに来たんだ?」

 

「えっ?あ、いや……」

 

うーむ、後で話すって言ったし話すか。今更な気がしないでもないが。

 

「まあ、実は――」

 

それから彼らに諸々を説明。以前の立華奪還作戦でここを訪れていたこと。その際に自分の正体を知ったこと。そして世界のこと。

 

「――とまあ、そういうこった。」

 

「つまり、そのいけすかねえ野郎とやらに色々教えられた場所ってのが、この先にある『第2コンピューター室』ってことか?」

 

「全く、まだ隠してたことがあったなんてな」

 

「うっ……すまん。一応色々教えてもらったし、その礼って言うか、借りって言うか。下手に教えて混乱させちまうわけにはいかねえと思って」

 

「分かってるよ。仲間思いのお前のことだしな」

 

真顔でそう言ってくる音無に思わず照れる。誤魔化すようにプイッと視線を逸らすとクスクスと立華に笑われてしまった。くそう、何なんだお前ら。

 

「そんじゃ、改めて行くとしますか」

 

「そうだな。ゆりも待ってるかもしれねえし」

 

黙ってオレと音無、ちょこっと直井のやりとりを聞いていた日向が先を促してきた。ゾロゾロと歩き始めるオレ達。しかし、あることを思い出し足を止める。オレが案内がてら先頭を歩いていたため自然と他のメンツも足を止めることになった。

 

「なあ、お前ら……」

 

「何だよ、まだ何か隠してることあんのか?」

 

「ちげえよ。そうじゃなくてさ……」

 

「「…………?」」

 

「いや、その、なんだ……――助けてくれてありがとな。おかげで戻ってこれた」

 

手段こそアレだったが、こいつらはオレをあの暗闇から救い出してくれたんだ。もしかしたら、永遠に続いたかもしれないあの空間から。本当は、こいつらの姿を見た途端ホッとしたんだ。感じていた恐怖が払拭されるように、先が見えない不安が晴れた。

 

「へへっ、神乃にしてはずいぶんしおらしい『ありがとう』だな」

 

「どういたしまして、だな」

 

「僕は音無さんの意向に従ったまでだ」

 

「いや、お前は何もしてないだろ」

 

「ふふふっ。皆仲良いわね」

 

ニヤニヤと笑う日向とは対照的に小さく微笑む音無。鼻を鳴らしながら答える直井に慈愛の眼差しでそれを見つめる立華。な、なんか余計恥ずかしくなったきた。さっさと行っちまおう。

 

何ともいえない視線を背後から感じつつ先頭に立ちながら奥へと進む。そのまま、『第2コンピューター室』の扉の前までたどり着く。途中何故か影には全く遭遇しなかった。

 

「影が見当たらねえな……」

 

「もしかしたらゆりが何とかしてくれたんじゃないか?」

 

「可能性はある」

 

じゃあ、何故ゆりは戻って来ないんだ?もしかしたら何かあったんじゃ……。

 

「――よし。じゃあ、入るぞ」

 

扉のノブに手をかけたオレの声に4人が同時に頷いた。滑りの悪くなっている扉を慎重に開ける。1度入ったことがあるはずなのに何故か鼓動が早鐘を打った。ギィィィと金属が擦れる音がギルド内に響き、開けられた扉によって内部の様子が明らかになっていく。

 

――そこには。

 

「――ゆりっ!?」

 

荒れ果てた部屋の中心で床に倒れるゆりがいた。真っ先に気づいたオレがすぐにゆりの下に駆けつけ、その後に音無達も部屋へと入り、その惨状に驚いていた。

 

「ゆりっ!しっかりしろ、ゆりっ!!」

 

「ゆりっぺ!?」

 

床に倒れるゆりを抱え上げ、何度か呼びかける。呼吸は止まっておらずすぅすぅとリズムよく音を発していた。どこか怪我をしているという事でもない。それらの様子から、おそらく気を失っているのだという結論に行き着く。

 

「神乃、ゆりっぺは……」

 

「安心しろ。たぶん気を失ってるだけだ」

 

「そうか。……よかった」

 

にしても、改めて部屋の中を見渡してみると酷いな。いくつもあったパソコンは全て壊されてるし、床には薬莢やら銃やらが転がっている。と言っても、銃は全部ゆりの持ち物だろうし、そのゆり自身にも外傷はなかった。何かしら戦闘があったとは考えにくい。

 

「おい、貴様」

 

「どうした?」

 

「ここにあるパソコンがNPCを制御していたと言ったな?ということは、これらのパソコンが壊れた今、影は消えたのか?」

 

「……分からねえ。でも、ここに来るまでに影は見かけなかったから、たぶん消えた、と思う」

 

直井の問いかけに自信なさげに答える。仮にそうなのだとしたら、オレ達はギルドへ突入した目的を達成したことになる。つまりはもはやここに留まる理由がないという事だ。

 

「――とりあえずパソコンがぶっ壊れちまっている以上、長居は無用だな」

 

「ああ。上の様子もいい加減気になるし、ゆりも早くベッドのあるところで休ませた方がいいだろうし」

 

「そうと決まればさっさと戻ろうぜ」

 

ゆりを抱えている状態から、おんぶの状態に変えて立ち上がる。さすがにお姫様だっこをやる度胸も体力も無い。そして、今入ってきた扉から部屋の外へと出ようとした。

――が。

 

「――――っ!」

 

ザザッと何かノイズの様なものが頭の中に響き足を止める。

 

「どうしたの神乃君?」

 

「い、いや……!何でもねえよ」

 

「……?そう」

 

なんだ、今の感じ。音無達は気づいてねえみたいだけど、確かに感じた。あれは直井の催眠術による記憶探索の時や真っ黒な空間で感じた、言うなればプログラムの感覚。

 

――そうか、まだ言いたいことでもあるってのか。

 

「わりい日向。ちょっとゆりパス」

 

「どうした?重すぎでもうギブアップか?」

 

「日向君、それは女の子にとって禁句じゃないかしら」

 

そうだぞ日向。オレも似たようなことをコハクに言ってめちゃくちゃ説教されたから。あの時のコハクは怖かった……。って、思い出に浸ってる場合じゃねえな。というか、ゆりはどちらかというと軽めの方だ。

 

「まあ、ゆりの体重は置いといて、気になることがあるから先に戻っててくれ」

 

「気になること?何だよそれ」

 

「――けじめをな。つけてこようって」

 

「……よく分かんねえけど、それはお前がしないといけないことなのか?」

 

「ああ。オレが一番適任だ」

 

むしろ、オレじゃないとだめなのだろう。

 

「――分かった。でも、必ず戻ってくるんだぞ」

 

「大丈夫だよ。影も消えたし、今更襲ってくる相手なんかいねえよ。つーわけで、ゆりよろしく」

 

「……気をつけろよ」

 

ゆりを担いだ日向と音無達にそう伝える。皆は素直に頷き、やがて『第2コンピューター室』を後にした。その様子を見送り、その姿が完全に見えなくなったところで扉を閉めた。そのまま振り返ることなく、オレは口を開く。

 

「――いるんだろ?ガキじゃねえんだからコソコソ隠れてんじゃねえよ」

 

()()()()()はずの背後に向かって話しかけた。

 

『――やはりお気づきでしたか』

 

「白々しいんだよ。オレだけが気づくようなやり方しやがって」

 

『その察しも含めて、ということですよ』

 

聞こえてきた言葉に振り返る。そこにはあのいけすかねえ野郎が相変わらずの笑みを浮かべて立っていた。いや、正確には立っていたという表現は誤りだ。何故なら奴の身体は透けて反対側が見えていたからだ。足下に関してはほぼ見えない。浮いてるという表現の方がいっそ正しいかもしれない。

 

「で、何だよその身体。かくれんぼの次は幽霊ごっこか?」

 

『何も僕だって望んでこんな姿になったわけではありませんよ。これは僕の身体を構築するプログラムが崩壊しつつあるからです』

 

「崩壊?パソコンが壊れたからか?」

 

『とどのつまり、そういうことですね。この状態ももうすぐ維持できなくなり、僕は消えてしまうでしょう』

 

男子生徒はそのことに微塵も表情を曇らせることなく、微笑を浮かべてみせた。

 

『まあ、僕としては、あなたが戻ってこないことだけが危惧することだったので、今となっては構いませんが』

 

「はいはい、そうですか」

 

っと、無駄話してるわけにはいかねえな。こいつの話が本当なら、こいつ自身の時間はあまり残ってねえみてえだし。

 

「んで、お前はゆりに一体何をしたんだ?」

 

『僕は何もしていませんよ。ただ選択肢を与えただけです』

 

「選択肢?何だそれ」

 

『あなたもお分かりだと思いますが、この部屋はNPCを、プログラムに縛られている存在を制御している部屋です』

 

んなこた、もう分かってる。お前はそれを統括するプログラムなんだろうが。もっとも、できることには限りがあるみたいだがなという皮肉を、こいつはふっと笑うだけで受け流した。

 

『これがどういうことか分かりますか?』

 

「はあ?」

 

『考えてみてください。この世界ではありとあらゆる物を生産、複製できます。そこにNPCを含んだプログラムの制御権まで手に入ったとしたら……』

 

――なるほどな。つまりこいつが言いたいことは……

 

「ここのプログラムを掌握してしまえば、この世界を支配できる。それこそこの世界の『神』になれるってことか」

 

『ご明察、そのとおりです。僕は同じことを彼女に問いかけました』

 

腕を組み(その腕も透けていたが)、男子生徒は話す。その間にも徐々に奴の身体が薄れていくのが見て取れた。しかし、依然として表情に変化はなく微笑を保っている。

 

「で、ゆりはなんて答えたんだ?」

 

『なんて答えたと思いますか?』

 

「さあな。オレはゆりじゃねえからあいつの考えを100%言い当てることなんざできねえよ。だが、言うならば――」

 

『言うならば?』

 

「――今、この部屋の状態が答えだ」

 

全てが破壊されたパソコン。徐々に消えつつあるこいつ。それだけ考える材料があれば、もうゆりの出した答えは分かったようなもんだ。

 

『そのとおりです。彼女は神になる選択肢を拒否しました』

 

「理由は?」

 

『ええ。おっしゃってましたよ。僕の口からはいいませんが』

 

どういう意図で奴がそう答えたのかは分からない。自分が言うとゆりの言葉が軽くなる、とでも思ったのだろうか?いや、考えすぎだな。こいつはただ面白がってるだけだ、うん。

 

「じゃあ、そのことはゆりから直接聞くことにする。で、聞きたいことはまだあるぞ。まず、影はどうなった?」

 

『全て消滅しました。ご覧のとおり、パソコンが全て壊れてしまい、プログラムも破損してしましたから』

 

「なら、NPCもこの世界からいなくなるのか?」

 

『いいえ、それは大丈夫でしょう。現にあなたが今こうして僕と話しているのですから。理屈は分かりませんが』

 

「なら、そもそも何故急に影なんて現れたんだ?」

 

『――この世界で愛が生まれたからです』

 

 

 

 

 

 

 

――はい?今なんつった?

 

『ですから、この世界で愛が生まれたからです。だから僕はプログラムを起動させたのです。そうプログラミングされていましたから』

 

『愛』が生まれたから?愛ってあれだよな、Loveのことだよな。えっ、意味分かんねえんだけど。

 

「……もっと分かりやすく説明しろ」

 

『そのことを説明するならプログラマーについてお話ししなければなりませんね。長くなりますが、お聞きになりますか?』

 

「ちょっと待て。お前、プログラマーについては知らないんじゃなかったのかよ」

 

確か前にそんな感じのことを言っていたはずだ。以前にここを訪れた際に。

 

『ええ、知りませんよ。プログラマーの素性について、は。ですが、彼がどんな思いでこの『Angel player』を作り上げたかは知っています』

 

面倒くせえ奴、とぼやく。わざわざ知らないみたいな言い回しをしやがったせいでその時に聞けたことを聞き逃していじゃねえか。オレのそんな態度にもクスクスと笑いながら男子生徒は答えた。

 

『お褒めの言葉として受け取っておきましょう』

 

こんにゃろう、オレをおちょくってんのかよ。無茶苦茶薄くなってるくせに。

 

『ではお話ししましょう。そもそも、このプログラムを作り上げた人物――男性の方でしたが、彼はこの世界である女性と出会い、愛し合うようになりました』

 

まるで、絵本に書かれている物語を読み聞かせるようにゆっくりと語り出す男子生徒。その表情には相変わらず薄笑いの顔を張り付けていて、何を考えているのか読みとることはできない。語り部のように話す男子生徒へと視線を向けながらオレは適当に座れるところに腰を下ろした。

 

『ですが、この世界では愛は芽生えていけない。もし芽生えてしまったら、ここは永遠の楽園に変わります。……あなたもご存知でしょう?この世界は卒業しなければならないことを』

 

「……ああ。いてえくらい分かってるさ」

 

脳裏に浮かぶはオレにとって大切な存在。それを承知でオレはあいつらを引き留めなかったんだからな。

 

『ただ、誰かのために生き、報われた人生をおくった者が記憶喪失で迷い込んで来ることがあります。そういった時にそのようなバグが発生します』

 

報われているから、例え愛することを知ったとしてもこの世界を去ることができない。いや、むしろ愛することを知ったからこそこの世界を去らずにいたい、と言う方が妥当かもしれないな。なんという因果だろうか。愛を知ってしまったがゆえに永遠にこの世界に縛られることになるなんて。

 

――待てよ。こんなことを話すってことは……!

 

「……もしかして、プログラマーもそれに該当する人物だったんじゃないか?」

 

『……これは驚きました。ずばりそのとおりです』

 

あれ?もしかしなくても、オレバカにされてる?殴っていい?むしろ斬っていい?

 

『プログラマーとなる人物はそのバグに気づき、修正を施しました。それが、あなた方が影と呼ぶ存在によるNPC化……要するにリセットです』

 

「待てよ。その話が本当ならもう完全にNPC化した人間もいるってのか?」

 

『ええ、います。1人だけ』

 

「そうかよ……」

 

1人だけ。その人物はどれだけの年数を数え、何を考え、何を望んでいたんだろうか。ある意味牢獄のようなこの世界で何を……。

 

『――そのプログラマーですよ』

 

「なっ――!?」

 

『彼は待ち続けました。愛を知り、1人で去っていった彼女を』

 

「そう、か。そうだったのか……」

 

『天文学的数字ではありますが、可能性は0ではありませんから』

 

正直な話、プログラマーの気持ちはよく分かる気がする。どんなに無理な可能性だったとしても、例え世界が違っていたとしても、もう1度めぐり逢いたい。オレだってそれを望んでいる1人だし、オレ以外にも望んでいる奴なんて今までに何人もいただろう。

 

『ですが、彼女を待つ時間はあまりに長過ぎました。彼はもう正気ではいられなかった。耐えられなくなった彼は自身をNPC化するプログラムを組んだのです』

 

「肉体が平気でも精神が堪えられなかったのか……」

 

『そういうことです。人間の心というものはあまりに脆い。起こるかどうかも分からない奇跡にすがるには、彼は長い年数過ごしすぎてしまった。摩耗し、限界まで擦り減った精神で下した決断でした』

 

こいつが心を語るとは意外だった。もしかしたら、いやありえない話ではあるが、もしかしたらこいつにも……。

 

 

 

 

 

『――どうやら時間のようですね』

 

「お、おい!?」

 

思考に耽っていたせいで、こいつの身体がほぼ見えなくなっていることに気づかなかった。今ではもう目を凝らさなければ見えず、ほとんど透明人間の状態だ。

 

『僕のことはお気になさらずに。それよりもあなた自身のことを』

 

「……分かってるよ」

 

くそっ……!なんか後味悪いじゃねえか。ああっ!もう!

 

「――絶対お前になんか言わねえって決めてたんだけどな」

 

『何でしょうか?』

 

 

 

 

「――なんだかんだで色々世話になった。礼を言わせてくれ。……ありがとよ」

 

すると、相手は今までで1番の笑みを浮かべた。それはいつもの何を考えているのかわからないような笑みではなく、満開の笑みだった。そう、まるで()()()からの。

 

『――こちらこそ楽しいものをありがとうございました』

 

それだけを言い残し男子生徒は完全に消滅した。部屋に残されるのは今度こそ本当にオレ1人となる。

 

「楽しい……か」

 

ったく、最後の最後まで減らず口だ。どこが楽しんだっつーの。内心呆れたように言う。

 

だが、そんな不変的な態度に何故か少しホッとした自分がいた。もしかしたら、何かボタンの掛け違えでもあれば、オレはあいつと仲良くできたのかもしれない。それこそ、同じ――

 

いや、考えるだけ無駄だな。過ぎてしまった過去はもう戻らない。オレ達はただ、先を見据えるしかできないのだから。

 

争いにまみれた長い1日は、こうしてようやく終焉の時を向かえた。世界にはいつもの平穏が訪れ、オレ達も自分達の居場所へと帰って行った。




はい、第31話でした。

長かった!ようやくここまで書くことができました。思ったよりも文章が長くなってしまったのが少し後悔。もう少しスッキリまとめたいなあ。

謎の男子生徒、原作でもその正体は結局はっきりとしませんでしたが、僕なりの解釈を今回加えてみました。NPCなのに他のそれとは明らかに違う雰囲気。やはりただのNPCではなかったのでしょう。まるでどこかの誰かのように……。

さて、次回はとうとう原作の最終話に当たる話です。なので次が最終話――にはならないと思います。おそらく前後半で別れるのではないかと思います。

それでは、感想、評価、アドバイス、誤字脱字報告等お待ちしています。
ではでは。

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