死後で繋がる物語   作:四季燦々

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UAが2000を超えましたっ!皆さんありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!

でも、内容はなんとなく暗いです(笑)
そして、前後半で分けたので少し短いです。


Doubt

ガシャンという重苦しい音を立てながら扉が開けられる。それを待ってましたと言わんばかりにぞろぞろと戦線メンバーが出て行った。もちろんオレもその中に含まれている。

 

「あ~~やっと解放された。あんなかってえ床で寝かされたせいで首痛いぜ」

 

「天使を失墜させれば私達の楽園となるんじゃなかったのですか、この学園は」

 

「高松君なんで服脱いでるの?」

 

「ふぁああ……。全く、寝心地最悪なせいで寝不足だ。どうしてくれる」

 

あくびを噛み殺し、生理現象の涙を拭う。結局、昨夜は捕まって連行されたあげく、事情聴取という名を監禁されてしまった。おまけに連れて行かれた部屋はというと、ベッドなどはもちろん無く、一晩固い床で過ごすこととなったのだ。ああー……全っ然寝足りねえ。

 

「ったく、一体何なんだよあの連中は」

 

「今度来たら天使同様返り討ちにしてくれる!」

 

「一般生徒なんだからダメよ」

 

ゆりを中心に、横に広がりながら歩きつつ不満を垂れるSSSメンバー。今一般生徒が通りかかろうものならすこぶる邪魔だろう。

 

「にしても変ね……」

 

「何がだ?」

 

「私達にこんな形で反省を強いる生徒なんて今までいなかったわ」

 

「天使が抑止力になってたんじゃないのか?」

 

「そうね……」

 

で、天使が一般生徒に成り下がったから動き出した、そんなとこか。

 

「NPCの行いは基本的に私達がすべき模範だけど、その感情は現実の人間と同じもの。どんな偏屈な奴がいても不思議じゃないってわけか」

 

「つまりは、模範的な奴らの中にもいき過ぎた奴もいるってことだな」

 

「それが生徒会長代理……」

 

「一般生徒なせいで返り討ちができない以上、天使より厄介だぜ……」

 

「なら、いっそのこと話し合いの場でも設けてみるか?」

 

「まっ、無理だろ。どうもあいつ俺達を敵視してるみたいだし」

 

本気ではなかった提案を持ちかけるが敢え無く却下。苦笑しつつ、だよなと呟く。そもそも話し合いができるならこんな拗れたりはしなかっただろうし。

 

「それで、どうするゆりっぺ?」

 

「色仕掛けいきますか!?」

 

一緒に捕まっていたユイがまたアホな事を言い出す。それを聞いた日向が呆れたように言葉を返した。

 

「お前のどこに色気があんだ?」

 

「んだとぉ!?見たことあんのか!!」

 

「上着越しでも十分分かるさ」

 

「揉んだことあんのかコラァ!?絶妙な柔らかさなんじゃーい!!」

 

「知るかよっ!?」

 

「あさはかなり」

 

解放早々うるせえ奴らだな。こちとら寝不足なんだよ。あんまり大声で騒ぐと頭に響くからやめてくれ。

 

しかし、日向とユイの言い争いは止まることを知らなったようで、本部に着くまでずっとやっていた。流石にイラッときたので抜身の刀見せて黙らせる。

    

ふっふっふ、今宵(朝です)の村正(銘などない)は血に飢えておるわぁ、とかやってみた。端から見てた他の奴らが引いてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、これからの活動はどうしますか?」

 

「やっと服着たか……」

 

本部へと戻って来たオレ達。各々で寛ぎつつ、これからどうするかゆりの指示を仰ぐことにした。

 

「――試しにちょっと動いてみましょう。とりあえずそれぞれ好き勝手に授業を受けてみて。あっ、それとあまり一般生徒の邪魔はしないように」

 

「それって消えたりしないのか?」

 

「真面目に受けなければ大丈夫よ。以上、解散!」

 

ゆりの出した指示は具体的な行動ではなく、現状観察だった。仕方なしにオレ達は教室へと赴き、聞きもしない授業に参加するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え~、であるからして、黒船は――」

 

黙々と行われる授業。戦線メンバーはクラス?何それ食えんの?と言わんばかりに、いくつかの教室に集中して参加。おい、お前ら自分のクラス行けよ。

おまけに、授業態度がヤバい。悪いとか酷いとかじゃなくてヤバい。学級崩壊ならぬ学級世紀末のようだった。

 

マシなのと言えば大山だろう。こいつはこっそりとお菓子を食べる程度だった。本人はかなり大胆な事をしていると思っているんだろうけど、基本的に真面目な大山だからこれが限界なんだろう。問題は他の奴らだ。

 

「通れば――オオイリ!」

 

「ざ~んねん。リーチ、チイトイ、ドラドラ、オヤマン!」

 

「なんだよくっそ~!?ひさ子の1人動きじゃねえか!!」

 

「I lose……」

 

「女相手になんて体たらくだ……!」

 

ひさ子、藤巻、TK、松下五段は教室の後ろの方で麻雀をしていた。オレには麻雀のルールや語句なんてさっぱりだが、ひさ子はそうとう強いみたいだ。机を何個か固めて授業中にやっている姿はかなりシュール。全国高校生麻雀大会でも目指してんのかお前ら。

 

「そこの一角、もう少し静かに」

 

「ああ、すんません。気をつけます」

 

そして軽い注意だけですませると授業を再開。いや、止めろよ教師。

 

「先生!!トイレっ!!」

 

「またお前か……行ってこい」

 

今度はやたら元気な声で挙手をしたユイだ。教師から許可をもらうと、言われるままにスタスタと教室から出て行く。

 

「あいつは何をしてんだ?」

 

「1分おきにトイレに行く生徒だとさ。アホだな」

 

「あいつに関しては思いっきり授業を妨害してるよな」

 

というかユイ。お前一応学年下だろうが。何でこの教室にいんだよ。

 

「んで?オレ達はどうする?」

 

「こうやって駄弁ってればいいさ。……ははっ、にしても異様だな」

 

苦笑しながらオレ達の真後ろを見る日向。麻雀を行っているその隣では椎名が集中力の特訓とやらをやっていた。

 

もっとも、現在指には箒、定規、ハサミが乗っているにも関わらず絶妙なバランスをとるという、技術的なレベルアップを見せていたが。

 

「ふんっ!!ふんっ!!ふんっ!!」

 

高松は席と席の間でものすごい勢いで腕立てをしていた。ちなみに上着はバッチリ脱いでいる。汗が周りに飛び散っているのが嫌なのかNPCの女生徒が心底嫌そうな表情をしている。関わり合いたくないけど、飛び散って嫌だから注意したいっ!でも、やっぱり関わりたくないっ!といった葛藤でもしてるのだろうか。

 

「…………」

 

そして、ど真ん中に寝転がる野田は、2つの机を合わせてそのうえで頭の後ろで腕を組んでがっつり寝ていた。もともとその机を使っていた生徒はどこに行ったのかが激しく気になる状況だが、聞くだけ無駄だしやめておくことにしよう。

 

最後に、オレと音無と日向は適当に話しているだけだ。あんな奇抜な事をわざわざやる必要ねえし、こうやって駄弁ってるのも案外楽しいしな。

 

それにしても、麻雀やって、トイレに行きまくる奴がいて、色々指の上に立てて、筋トレして、寝て、授業を無視して喋る……。うん、なんかもう色々とダメだと思う。ごめんなさい、先生。

 

「先生!トイレ!!」

「はい行ってこい」

 

席へと戻った途端また手を上げるユイ。そして再び立ち上がり扉へと向かう。

 

「「――アホだ」」

 

思わず日向とシンクロしてしまった、そんな時だ。ガラッと教室後方の扉を開け、待ち望んでいた人物が現れたのは。

 

「ヒィッ!?」

「――そこまでだ貴様ら」

 

「来たぜ、直井文人様が」

 

ユイが扉を開けたその先、廊下に数人の部下を連れた生徒会長代理こと直井文人が立っていた。

 

「あたしトイレですからっ!!」

「やっべっ!?失せるぜっ!!」

「I'll be back!」

 

その代理の姿を見た瞬間、蜘蛛の子を散らすように窓から扉からと次々に逃げ出すSSSメンバー。気が付くと、いつの間にか椎名も高松も消えており、残ったのはお菓子をせかせかと隠す大山とオレ達3人。そして今だにグッスリと眠る野田だけになった。何という逃げ足の速さ。赤ジャケットの大泥棒とタメ張れそう。

 

とまあ、感心している場合ではない。代理は眠り続ける野田を最優先に考えたのか、オレ達を無視して野田へと近づいていった。

 

「おいおい、いいのか?野田が捕まっちまうぜ?」

「シッ!」

 

日向に言うが、静かにしてろサインで返されてしまった。様子を見る、ということか。

 

「貴様……何のつもりだ?」

 

「…………」

 

「聞こえていないようだな。まあいい、このまま反省室へ連れていけ」

 

代理が自分の連れてきた部下である生徒へと命じる。それに頷いた生徒達は野田を拘束しようと詰め寄った。そして、部下達の手が野田に触れる。その瞬間――

 

「何を反省しろと言うのだっ!!」

 

今まで寝ていたはずの野田がガバッと起き上がり、これまたどこに隠し持っていたのか分からないバルバートの刃を安眠を妨げた者へと向けた。しかしだ。

 

「キャッ!?」

 

「あん……?」

 

何を考えたのかは知らんが(いや……ただの間違いか)、野田はまったく関係ないNPCの女生徒へとバルバートを向けてしまっていた。何やってんだよ、バカ。

 

「授業中に堂々と眠り、あまつさえ罪無き一般生徒を恫喝しておいてよくそんな疑問が抱けますね。ある意味あっぱれです」

 

「んだとぉ「――強制回収っ!!」ぬおぉぉぉ!?離せ!貴様ら!邪魔するなぁぁぁぁぁぁ………」

 

挑発されて代理に刃を向けそうになったので、オレ達3人で無理やり教室から連れ出す。このままほっといたら代理に飛びかかりそうだし、それを黙ってたら後でゆりにあれこれ言われそうだしな。

 

結局、代理の奴はオレ達を追いかけてくることはなかった。逃げる間にチラリと振り返った時、代理は何も言わずただオレ達を鋭い目つきで睨みつけているだけだった。

 

しかし、オレはその瞳の奥に黒い影を見たような気がした。その目に宿っていたのは、逃げられたことへの苛立ちか、もしくは何か別のことか。そのことが気になり、何かを詰まらせたように違和感が拭えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、一体何なんだっつーんだよ」

 

教室にすら戻るわけにはいかなくなったオレは、野田を連れて行った日向と何かを思いついたようにどこかに行ってしまった音無と別れブラブラと校内を歩くことにした。

 

やがて行きついたのは、以前も訪れた屋上。自然と足を運んでいることから、無意識のうちにこの場所を気に入っているのかもしれない。手すりに寄りかかりつつ、買ってきたKeyコーヒーに口をつける。今日は気分的にブラックだ。

 

スチール缶を傾けながら、オレは頭のなかで考えを巡らせる。代理の瞳に見えた言いようのないもの。あれは一体何だったのだろうか。それに、あの冷たい視線、そしてNPCの行う模範的な行動にしては違和感のある行動。ゆりはいき過ぎた奴もいるって言ってたけど、どうも気になる。ああ、いや、そっちの気があるとかじゃなく。

 

「うーん、分からん」

 

「何がですか?」

 

「どわっひょいっ!?」

 

「気持ち悪い声出さないでください」

 

考えを巡らせていたオレはいつの間にか目の前にいた人物に気が付かず、思いっきり変な声を出してしまった。伏せていた視線を上げると、そこにはいつもの金髪のツインテールを風でわずかに揺らしながら立つ遊佐がいた。変な反応されたのが嫌だったのか、わずかに眉間に皺を寄せている。

 

「な、何だよ遊佐か。驚かさないでくれよ……」

 

「真正面にいるのに気が付かないあなたが悪いと思いますが?」

 

「まあ、それもそうか。すまん、気が付かなかった」

 

「分かっていただければいいです」

 

あれ?何でオレ謝ってんの?

 

「それで、どうかしたのですか?何か思い悩んでいるようでしたが」

 

「ああ、いや、ちょっと代理のことについてな」

 

「……神乃さんにそっちの趣味があるとは知りませんでした」

 

「ちげえよっ!そのネタはさっき自己完結したわっ!」

 

「それで、真面目な話どうなんですか?」

 

「お前、自分で話の腰折っといて……」

 

ゆらゆらとこっちの対応を受け流す遊佐。どことなく楽しそうな感じがする。おい、頼むからSに目覚めないでくれよ。今でも結構やられるんだから、これ以上狂暴化されたらかなわんぞ。

新たな世界にこんにちはしそうな彼女にため息をつきつつ、どうせなら遊佐の意見も聞いてみようと思って問いかけてみる。

 

「なあ、遊佐。お前代理のことどう思う?」

 

「それは気になる女の子に対する問いかけ的な意味でですか?」

 

「バッ!ち、ちげえからっ!つか、頼むから話を進めさせてくれ!」

 

「すみません。少しからかいすぎました」

 

いや、ホント自重してくださいよ。お前基本無表情だから本気なのかどうか分かんねえんだよ。……顔赤くなってないよね?

 

「いくつか腑に落ちない点はあります」

 

「例えば?」

 

「そうですね。基本NPCは私達に注意こそするものの、実力行使に出ることはまずなかったです。あったとしても、それは天使の先導があったからです。それにも関わらずあそこまで突出した行動をするNPCは見たことありません」

 

「ふむ」

 

「そして、いくらなんでも他の生徒が従順過ぎるという点も気になります。神乃さん達は先程授業中から生徒会長代理から逃げてきたんですよね?」

 

「情報が早いこって……」

 

「それが私の仕事ですから」

 

続けますね、と遊佐が話す。

 

「生徒会長代理はそこに一般生徒を引きつれて訪れた。このことがどういうことか分かりますか?」

 

「――――そうかっ!」

 

「はい。()()()であるにも関わらずNPCである生徒会長代理や彼の部下である生徒が現れた。天使ならいざ知らず、ただのNPCが授業に出ず、校内を歩き回るなど不自然です」

 

「NPCは模範的な行動をとる、それなのに授業に出ていない、か」

 

「授業中に誰かが報告に行ったとかなら分かりませんが、そうではないのでしょう?」

 

「ああ。教室から出てたのはユイぐらいだし、あいつがわざわざ危険な事に自分から突っ込んでいくことは――あながち否定できないけど今回はないだろ」

 

球技大会の時に生徒会チームを煽っていたのを思い出すが、今回は違うだろう。

ということはだ。1つの仮定が浮上する。

 

「――遊佐、オレはゆりの所に行ってくる。お前はどうする?」

 

「私は他の通信班の方たちの下へ行ってきます。一応警戒はしておくべきだと」

 

「分かった。お前も十分に気をつけてな。何かあったらすぐに連絡しろ」

 

「随分と過保護ですね」

 

「茶化すな。いいか、何かあったら必ず助けを呼ぶんだぞ」

 

お前に何かあったら――そこまで言いそうになって慌てて口を閉じる。何を言おうとしてんだ、オレは。

 

「……そうですね。すみません、少々軽率な発言でした。神乃さんもお気をつけて」

 

おう、と答えてオレは屋上を後にする。急いだ方がいい。何か嫌な予感がする。

オレの心情を映し出すように、青空に灰色の雲がかかり始めた。どうやら一雨来そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!神乃君!」

 

本部へと向かう途中、不意に名前を呼ばれたので振り返る。そこにはSSSの良心こと大山がこちらに歩いてきているところだった。

 

「大山じゃねえか。どうした」

 

「どうしたって……突然皆いなくなっちゃうからビックリしたよ。僕も慌てて教室から抜け出してきたんだ」

 

あっ、やっべ。大山のことすっかり忘れてた。そういや一緒に授業受けてたんだった。

 

「そいつは悪かった」

 

「ううん、別にいいんだけどね。そういえばゆりっぺからメンバーの召集がかかってたよ。一緒に本部にいかない?」

 

「ゆりが?ちょうどいい。オレもゆりに話があったんだ。行こうぜ」

 

オレは、キョトンとする大山と一緒に本部へ向かう。本部に行くと、音無以外のメンバーがすでに集まっていた。

 

「皆集まった?」

 

「まだ音無が来てないぜ」

 

「あら?音無君が遅刻なんて珍しいわね」

 

「日向は知らないのか?」

 

「あいにく見てねえよ。お前こそどうなんだ?」

 

「同じくだ。別れてからはまったく」

 

おかしいな、真面目なあいつが召集をすっぽかすなんてまず無いし。

 

「しょうがないわね……。先に始めておきましょう」

 

「で、何事だゆりっぺ」

 

「生徒会長代理について分かったことがあったから報告するわ」

 

代理についてか。とりあえず先にゆりの話を聞こう。もしかしたらオレや遊佐と同じような考えに行きついたのかもしれないし、そうでないにしても何かしらの情報が得られるはずだ。

 

「驚かないで聞いてほしいんだけど――――おそらく生徒会長代理こと直井文人は私達と同じように魂を持つ人間よ」

 

『…………は?』

 

ゆりの言葉に、本部にいた戦線メンバーのほぼ全員が驚きポカンとなった。オレも全くの同意見だった。NPCらしからぬ行動、そこから導きだオレと遊佐の仮定。それは代理がNPCでなく、()()だということだ。

だが、仮に代理の正体が人間だったとしたら疑問が残る。

 

「ちょっ!ちょっと待ったゆりっぺ!!そいつはいったいどういうことだ!?」

 

「どうもこうもないわ。まだ絶対的な確証があるわけじゃないけど、ほぼ100%の確率で彼は人間よ」

 

藤巻の驚いた様子に冷静に答えるゆり。

 

「しかし生徒会長代理だぞ?そうでなくても副会長だというのになんで消えてないんだ?」

 

五段がオレも引っかかっていた疑問をゆりにつきつける。そう、確かに代理はNPCらしからぬ行動をしている。しかし、奴が所属するのは生徒会だ。あいつ自ら風紀を乱している証拠がない以上、消えずにいるのは何かしらの手段があるはずなのだ。

 

「私もそこだけが気になって彼を独自に調べたのよ。そしたら謎は簡単に解けたわ。彼、影で一般生徒に暴力を振るっていたの」

 

「暴力、だと?何も関係ない奴らにか?」

 

「なるほど。そうやって模範的な行動と不良紛いの行動を行うことでこの世界での存在のバランスをとっていた、ということですか」

 

「何て野郎だ……普通そこまでやるか?」

 

「酷い……。一般生徒の人達が可哀想だよ」

 

高松の分析に日向と大山が苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべる。オレはそこまで聞くと、何も言わずに座っていたソファから立ち上がった。

 

「神乃?」

 

「どこに行くの神乃君?」

 

「決まってるだろ?代理の奴に直接問い詰めに行く。あいつの行動は許せねえ」

 

「ダメよ。相手はNPCを従えているのよ?そして私達はNPCには手出しはできない。もし武力を使わざる得ない事態が起きて、NPCを引き合いに出されたらどうするの」

 

「んなことは分かってる!だからってこのまま関係ねえ連中が巻き込まれてるのを黙って見てるわけにはいかねえだろうが……!」

 

ただ自分がこの世界に留まるためだけに、無抵抗な奴らに一方的を暴力をふるう。人としての心を持っているなら分かるはずだ。それは絶対にしちゃいけないことだって。

 

「……やっぱりダメ。許可できないわ」

 

「なんでっ!?」

 

「危険すぎるわ。言ったでしょう。私達はNPCに手を出すことはできない、出してはいけない。それはあなたも重々承知でしょう。盾にでも利用されたら私達には打つ手がないのよ」

 

「だけど……!!」

 

「落ち着きなさい。焦っていては冷静な行動はできないわ」

 

ちくしょうっ!!

 

「……どうするゆりっぺ?」

 

「――彼を抑える方法が1つだけあるわ。だけどそれは私達にとって異例中の異例な方法よ」

 

そうかっ!その手があった!

 

「――天使かっ!!」

 

「天使だとっ!?本気かゆりっぺ!?」

 

野田が驚愕の表情を浮かべながらゆり問いかける。ゆりはというと腕を組みながら無言で頷いた。相手が生徒会長『代理』だというのなら、こっちは抑止力である生徒会長を出せばいい。

 

「俺達が天使と共闘するってか……?」

 

「Oh…with Angel?」

 

「あさはかなり」

 

「ええ、確かに今までほとんど無いやり方よ。でも彼と直接戦えない以上、方法はこれしかないわ」

 

皆が皆まだ完全に納得したわけではなかったが、他に方法が浮かばないのか渋々頷いた。自分達で失脚まで追い詰めといて虫が良いにも程がある。あとでいくらでも制裁を受けよう。いくらでも謝罪しよう。だから、今だけは天使に縋るしか……。

 

「そうと決まったらすぐに天使を探そうぜ!」

 

「そうね、それじゃあ「――ゆりっぺはいるかっ!?」どうしたの……っ!?」

 

ゆりが指示を出そうとした途端、本部の扉が勢いよく開く。そこには頭や腕に傷を負い、血を流している戦線メンバーが転がり込んできた。

 

 

「生徒会長代理が――

 

 

 

 

――武器を持って攻めてきたぞっ!!」

 

 

代理によるSSSへの宣戦布告に本部内に衝撃が走る。

 

窓の外ではドス黒い雲に覆われた空が雨を落としていた。

 

――――まるで、世界が泣いているように、冷たい雨が降り続けていた。




はい、ということで10話でした。皆さんどうだったでしょうか?

ついに直井君の話です。ラジオでのキタエリさんの声マネは最高でした。緒方さんに土下座してましたが(笑)

今回はまだマシですが、次回はシリアス展開満載になると思います。
感想、評価、アドバイスもお待ちしています。
ではでは。

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