Fate/electronic wizard 作:skyfish
ドスッ
バキッ
ブチブチッ―――ブチ
「カ―――ハッ」
深夜。神聖な教会に不釣り合いな音が木霊する。そこにいるのは神父と、スーツ姿の女性。神父は女性の左腕を捥ぎ取った。女が倒れる。それを空間から現れた青い何かが受け止める。
「バゼット! おいバゼット!? 一体何があった!?」
主の危機に現れた男。だが、一足遅かった。
「っ、これは……」
「マスターの危機を察知して舞い戻ってきたか、ランサーのサーヴァントよ。だが、いささか遅すぎたようだな」
「……誰だ、テメェは」
ランサーは神父の男を睨み付ける。それに全く動じない男はふっと笑う。
「言峰綺礼。君にとっては、新たなマスターでもある」
「何だと……ッ!! 貴様、その令呪は!?」
神父の右腕に刻み込まれる複数の令呪の文様。それにマスターが持っていたものと同じ気配をランサーは感じ取った。
「そう。君のかつての主、バゼット・フラガ・マクレミッツから奪わせてもらった」
言峰の右腕を見て、ガリッと悔しさに歯を噛みしめる。本来、令呪は1人に着き三つ。令呪はサーヴァントへの絶対命令権として存在するが、聖杯戦争の参加権でもあるため使用できるのは二つのみである。だが、彼のマスターの令呪は言峰綺礼に奪われ、さらに彼がすでに持っていた令呪と同化している。その数は10以上。つまり、言峰はランサーに事実上3回以上の絶対命令権を持っているのだ。ここで奴を殺そうとしても令呪の重ね掛けで阻止されてしまうだろう。
「ランサー。いや、英霊クーフーリンよ。お前は契約者を失った身。このままでは魔力は枯渇し、ただ消滅を待つのみだ。聖杯を求めて召喚に応じた英霊であればそんな末路は不服だろう?」
言峰はランサーに語る。遠まわしに言っているのだ。“私を新たなマスターとして認めろ”と。
「……バゼットを殺した貴様に、おめおめと尻尾を振れっていうのか?」
「彼女を未練に思う必要はない。迂闊な油断をするマスターに、この聖杯戦争を勝ち抜くことは不可能だ。いずれ遠からず同じ結末になっていただろう」
言峰の言う事にランサーは否定しなかった。彼の言ったことは正論だったからだ。戦争はあらゆることが正当化される。騎士道を重んじていたランサーの時代でも何が起こるか分からなかった。一瞬の油断が命取りになる。故に、言峰の言うことは一理あり、反論できない自分が嫌でもあった。
「真の勝者たろうとすれば、この私こそマスターに相応しい。どうするかね? ランサー」
「…………いいだろう。まあ、このまま消えるだけってのも寝覚めが悪い」
かつての主、バゼットを冷たい床にゆっくりと寝かせ。ランサーは言峰に近づき、正面で向かい合う。
「だがな、言峰綺礼。俺にまともに指図したいと思うなら、まずはその手の令呪を一画、使っておきな…………何かの間違いで後ろから刺さないとも限らないからよ」
ランサーの言葉に言峰は唇を歪ませる。一応の主従関係は成立した。
「では命じよう。ランサー……………ほう。あれを喰らって生きているとは」
ランサーに令呪を命じようとした言峰はそれを止め、ランサーの後ろに目を向ける。
「はあ!―――はあ!――――げほっ!!」
「バゼット!?」
「確かに心臓を潰したはずだが、運がいいのか。悪いのか」
言峰の一撃は確かにバゼットの心臓を捉えていた。それなのに生きているのか疑問に思うと彼女の胸ポケットから何かが落ちた。
≪――、―――――。―――?≫
それは近年になって世に出始めた携帯電話というものだった。おそらくこれが言峰の凶拳を吸収したのだろう。だが、重症に変わりない。画面はひび割れ、スピーカから雑音しか聞こえない。
「はあ、……はあ…………だ、れ?」
吐血しながらバゼットは声を出す。それは誰に対して言ったのだろうか?
「科学の産物に防がれるとは、私も衰えたものだ。だが、ちょうどいいだろう」
言峰は右腕をランサーに向ける。それを見てランサーはより一層表情を歪ませる。
「言峰、貴様……!!!」
「そうだ。令呪を持って命じる。彼女を殺せ」
言峰の右腕に刻まれた令呪の一角が赤く光る。同時に、ランサーは深紅の槍を出現させバゼットに迫る。それをバゼットは見つめる。
ランサーの槍が眼前に迫る刹那の瞬間。壊れた携帯電話の雑音が彼女に語りかけた。
≪―――? ―――――――!≫
「わ゛たしは……いぎたい゛!!!」
――――そう。これも何かの縁だ。……あなたの願いに応えよう
瞬間。ファン。という音と共にバゼットは光に包まれた。同時に彼女に迫っていた槍の切先は振るわれた何かに弾かれる。
「何っ!?」
「…………」
突然の出来事にランサーは数歩下がり槍を構えなおす。言峰はじっと光を見つめる。
光が弱まる。そこには彼女を守るように、一人の女の子が立っていた。だが、ただの女の子ではないとすぐに感じ取った。
「まさか……新たなサーヴァントだと!?」
「ほう。これは、なかなかに面白い」
「はぁ……はぁ……、あなた、は………?」
3人の視線が彼女に集まる。腰まで伸ばしたウェーブのかかった茶色の髪、薄茶色の瞳。金色に近い黄色いコートを着、赤いスカート、黒ブーツを履き、真っ赤なマフラーを首に巻いている。両手には白と黒の、一対の中華剣が握られている。その彼女は初めにため息をついた。
「ひどい話。まさか、私が
女はちらりと後ろにいるバゼットに目を向ける。
「ふむ、どうやらこの場で死にかけているのは貴女一人のようね。一応確認しておきましょう」
あなたが、私のマスターですか?
アニメ見てたら書いてしまった(汗)
もう後戻りはできない(汗)