ちなみに2マリー目は無理でした。
一応、微グロ注意です。
17.
揺れる馬車の中。
キョロクから帝都への帰還中、僕だけは護送用に馬車が用意されており、当然のように向かいには僕を押さえ込めるエスデスさんが。
そして何故かというか、やはりというか、隣にはクロメちゃんが座っている。
「えへへ……キョウくん、これで一緒だね」
鈴の音が転がるような可愛らしい声と共に、クロメちゃんが僕の腕を抱きしめた。
柔らかな胸が僅かに潰れ、暖かな温度が伝ってくる。
魅力的というにも過ぎる感触に、頬が紅潮してゆくのを止められない。
シェーレちゃんシェーレちゃん、アカメちゃんアカメちゃん、と死んだ仲間と大好きな仲間を思い浮かべ、どうにか参ってしまいそうになる自身を引き留める。
そうでもしなければ、流されてしまいそうな僕なのであった。
僕、意志弱し。
「ん……キョウくんの匂い」
「ひょえ!?」
とか考えていると、クロメちゃんが僕の肩に顎を乗せて言った。
吐息が首筋にかかり、なんだか変な気分になってきそうになる。
そのままクロメちゃんは片手を僕の腰に、もう片手を僕の首に絡め、やや膝立ち気味になりつつ更に距離を縮めた。
「んと……えいっ」
続けクロメちゃんは、声と共に頭をさっと回転させた。
目の前がクロメちゃんでいっぱいに、同時唇に柔らかな感触。
硬直したまま数秒、ゆっくりと離れるクロメちゃんが、真っ赤な頬のまま微笑み告げた。
「キス……しちゃった!」
「へ? あ、え!?」
驚きに叫び、目を瞬き、次いで視線を彷徨わせるが、到底クロメちゃんの目を見られないほど恥ずかしいという現実が横たわるのみだ。
しかし、ジンクスに関しては伝えねばなるまい。
熱を持った頬を冷ます間もなく、ぽつり、と僕は告げた。
「その、クロメちゃん。僕にキスした子、今までみんな……アカメちゃん以外、死んじゃってて。だから、その……」
死なないで、と言いそうになり口を噤む。
僕は敵に何を言おうと言うのだろうか。
混乱し、言葉にならない言葉を漏らすしか無い僕に、キョトンとしていたクロメちゃんが微笑んだ。
両手を胸に、花弁の開くような笑みと共に告げる。
「大丈夫。私、死なないよ。少なくとも、キョウくんより先に死んだりは、しない」
「そ……そっか」
「仮に先に死にそうになっても、一緒に死ぬまでは絶対に生き延びてみせるから!」
「そっか……良かった! せめて、僕以外に殺されそうな時はそうしてみせてね!」
「うん!」
おい、と何故か突っ込みを入れるエスデスさんを無視し、僕は喜びと共にクロメちゃんに笑いかけた。
応え、クロメちゃんもうんうん、と頷いてくれる。
そのまま暫くクロメちゃんが抱きついてくるのに身を任せていると、ふと、クロメちゃんが呟いた。
「そういえば、キョウくんの実の父親って、オネスト大臣なんだよね」
「え? まぁ、そうらしいとは。実際に会ってから確かめるけど……」
と、そこで僕のお腹を撫で始めるクロメちゃん。
疑問符のままに首を傾げる僕に、ぴっと人差し指を立て、クロメちゃんが言う。
「キョウくん、食いしん坊だからといって、オネスト大臣みたいにお腹ぼーんになっちゃ駄目だよ!?」
「あ、うん……。気になるの、そこなんだ」
「重要じゃない!?」
そういえば、オネスト大臣は暇があれば何か食べている大食漢と聞く。
すると、僕が食いしん坊なのは父の血故なのか。
アカメちゃんとクロメちゃんとお揃いだと思って結構自分の好きな部分だったので、正直微妙な気分である。
と、そこまで思ってから、やっぱり僕はアカメちゃんだけじゃなく、クロメちゃんの事も好きなんだなあ、と改めて自覚した。
クロメちゃんはシェーレちゃんを殺し屍人形にし、僕に差し向けた。
これが仲間であるだけなら、報いだったと理解し、クロメちゃんに殺意を抱いても憎しみは抱かず、平易に好意と殺意を同居させられただろう。
けれどシェーレちゃんは僕に告白をしているのだ。
そのシェーレちゃんに報いを与えたクロメちゃんを好きだというのは、かなり駄目なのでは、という思いがある。
それでも心の中から沸き上がってくる想いは変えられず、故に僕としては内心シェーレちゃんに詫びるしか無いのだが。
「……ん? どーしたの、キョウくん」
首を傾げるクロメちゃん。
その愛らしい仕草に、胸を鷲掴みにされるかのような感覚さえ覚えて。
「――何でも無いよ、クロメちゃん」
僕は微笑み返すだけに止めるのであった。
*
広い宮殿の一室、向かい合うは大柄な白髪の男。
軍服の上にコートを纏い、突き出た腹と肥えた顔で、贅を尽くしているのが見目にも分かる。
オネスト大臣。
ナイトレイド最大の標的を前に、しかし僕は拘束された上に、大臣の側にはエスデスさんが居るという最悪の布陣であった。
何故か刀を取り上げられていないが、流石に弱った今の僕では、どうにか襲いかかろうとも刻まれる未来しか見えない。
そんな僕に、うさんくさい笑みを作りつつ、オネスト。
「やぁ、我が息子キョウよ。顔を合わせるのは、貴方が赤ん坊の頃以来ですねぇ」
「……はっきり言って、信じがたいけど。こんな嘘をつく意味が分からない、という意味では信じられるね……」
「やれやれ、やはり多少の説明は必要でしょうねぇ」
粘ついた、嫌味ったらしい声。
顔をひくつかせる僕を尻目に、椅子の上で足組みし、オネストが説明し始める。
「さて、まずは分かりやすい方……、リィンフォースの奥の手について教えてさしあげましょうか」
「……へぇ、随分サービスが良いんだね」
「えぇ。私ほど奉仕心に溢れた男など、帝都を見回してもおりませんからね」
ニヤニヤと笑うオネストの台詞に、さっきから僕の顔はひくつきっぱなしだ。
しかし、それも次ぐオネストの言葉を聞くうち、次第に収まって行く。
「さて、リィンフォースは番外帝具、初代ユビキタスが超級危険種を狩りまくり、その生き血を飲む習慣があったため、その体内でブレンドされた生き血によってできた物です」
「……あぁ」
「ユビキタスの血族にはレベル1のリィンフォースが自動発現、リィンフォース所持者が何となく分かるようになります。そしてリィンフォース所持者を殺してその血を啜ると、レベルが上がる。レベル2は味方の共鳴強化と一時的な強化率上昇、レベル3は基礎スペック上昇と敵意共鳴」
既知の事実を列挙していくオネストの言葉に、今の所僕の情報との齟齬は無い。
頷く僕に満足した様子で、続けオネスト。
「そしてレベル4は……、多少の基礎強化の他、奥の手の発現」
「……奥の手」
「えぇ。奥の手の名は……」
言葉を切り、僕の目を見つめるオネスト。
どろりと、今にもこぼれ落ちそうな滑りある漆黒の瞳。
黒い太陽のような、ぎらついた全てを焼き尽くす邪悪の瞳。
「”一斬全殺”。能力は、パスを繋いだ相手の状態を共有させる事」
名前と能力詳細に、僕はすぐにその効能を理解、目を見開いた。
そんな僕ににこりと邪悪な笑みを浮かべ、オネストは続けた。
「つまり、パスを繋いだ相手を一人でも殺せば……、残りのパスを繋いだ相手を同時に殺害する事ができるという事です」
「……だが、パスを繋ぐには触れないと……」
「レベル4には多少の強化もあると言ったでしょう? 帝具使い相手以外は、視線でパスを繋げられるようになります。効果範囲も伸びるようですね」
絶句。
現在、感覚的に僕のパスが繋げられる相手は100人以上。
更にそこからレベル4に到達し増えるので、最低でも一斬百殺が可能という事である。
実質、視界に居る人間全てを殺せると言っても過言ではない、大量虐殺に最も適した奥の手であった。
「私は、その奥の手が欲しかったというのが、貴方を捕縛させた理由の一つです」
「……だが待て、僕にもう身内は居ない筈……だ。貴方が僕の実父だとして、リィンフォースは持っていない」
言いつつも、僕は確かに城内に、薄くともリィンフォースの気配は感じるのである。
苦虫を噛み潰したような僕の顔に、僕がリィンフォースの気配に気付いているのを理解したのだろう、楽しそうな顔でオネスト。
「さて、その話は最後にしましょう。次は、私が貴方の実父である証拠……、まずはトモエ・ユビキタスとの馴れ初めから話しましょうか」
告げるオネストに、エスデスさんさえも興味津々と言った様子で視線をこちらに向ける。
僕とてどんな言葉が飛び出すか予想外、集中しオネストの言葉を待った。
対しオネストは、何とも言えない顔でこう告げた。
「簡単に言えば、私はトモエに性的に襲われました」
「……え?」
「……は?」
吃驚な台詞に、僕とエスデスさんが疑問符を漏らす。
数秒思考が停止、先にエスデスさんが硬直を解き、告げた。
「……襲われた?」
「はい」
「性的に?」
「はい」
両親の馴れ初めが逆強姦だと、父親から聞かされる僕って、一体何なんだろう。
このまま昇天しそうになる脳髄ごと頭を振り、どうにか正気を維持する僕。
何処か煤けた顔で、オネストが続ける。
「トモエは正義狂で、より強い正義の子を産む為に、最も強固な精神を持つと認められた私の子を宿したかったそうなんですよ」
「しょ、そうですか……」
相づちを打っただけのつもりが、あまりの衝撃に舌を噛みそうになってしまった。
エスデスさんでさえもが僕に哀れみの視線を送っているのだが、それはそれで痛々しいので止めて欲しい。
内心涙目の僕を尻目に、しかしオネストは続きを口にする。
「正義狂とは言え、トモエは中々有能でしたからね。子を成す事自体は吝かではなかったのですが、私もトモエも自身の所に子を置きたくて、結局子は2回作りました。長男を私が、次男をトモエが引き取る形となりましたよ」
「……つまり、その次男が僕」
「えぇ、そうです。貴方を生んだら、もう私には興味が無くなったのでしょう、トモエは宮殿を下りてしまいました」
別にオネストと母さんの間に熱愛を期待していた訳ではないのだが、それにしてもアッサリし過ぎでは無いだろうか。
まぁ、母さんがオネストを殺せなかった理由は分からないでもない。
間違いなくオネストは、僕と母さんに対して何らかの切り札を持っている。
それも、恐らくは複数。
でなければ、いくらエスデスさんが居るからと言って僕を目の前に連れてきたりなんかしないし、息子として利用しようなどとは思わないだろう。
しかも、母さんと子作りをしたと言う事は、行為中に殺意を見せた瞬間に母も殺せただろうぐらいの切り札。
多分、何らかの帝具の類いを持っているに違い無い。
それにしたって、そのオネストの子を孕もうなどとは母さんらしいぶっちぎれた発想である。
多分、殺せないなら殺せないなりに利用しようという発想なのだろうが。
あんまりにもドライな関係の僕の両親に、タツミくんへの愛でいっぱいの様子のエスデスさんでさえ面白く無さそうにしている。
いや、あれは単に大臣の弱味を握りたかっただけなのかもしれないが……。
「で、トモエは私の血が間違いなく強固な精神を引き継いでいるか確かめるため、適当な小物の悪を捕まえて子を産み、どちらが先に悪を見破るか試験したそうです」
「……待て、それって……!」
「見事貴方は、セリューより先に義父の悪を発見、密告により実質殺害。それを称え、貴方を連れて辺境に行き、貴方を鍛えたとの事でした。セリューは後に貴方が殺してレベル上げに使えるよう、帝都で後見人に引き渡しておいたと」
絶句。
つまりセリューは僕の試験と後のリィンフォースのレベル上げの為に生まれたと言うのか。
問いただしたくなる気持ちを、しかしオネストは母本人では無いのだと噛み潰す。
そんな僕の感情などお見通しなのだろう、にやり、と歪んだ笑みを浮かべ、オネストは続け言った。
「……しかし、トモエも私と似たような事を考える物ですねぇ」
「ぇ」
「トモエすら知らない筈の事実ですが。キョウ、貴方には、双子の弟が居るのです」
告げ、ぱちん、と指を鳴らすオネスト。
すると部屋の奥の扉が開き、そこから1台のカートが運ばれてくる。
その上には蛍光緑の液体でいっぱいの、中に一人の人間が浮かぶポッドが。
僕と瓜二つの痩せぎす男が浮かぶ、生体ポッドが。
「……長男シュラに適合する帝具が無かった場合、リィンフォースをレベル2にして利用可能にするため。キョウ、貴方の双子の弟を、生まれてからこれまでずっと、培養液の中で知性無き肉として育ててきたのですよ」
「……な、んだって」
言いつつも、僕はもう一人の僕とさえ言える知性無き生きた肉塊に、釘付けになっていた。
双子だったという僕と彼。
どちらが生きて外に出てこられたのか、恐らくは運以外の要素が関わっていないだろう2人。
自分と同じ容姿を含め、ぞっとするほどの親近感が急に彼へと沸いてきて。
「シュラには別の帝具が適合して、用無しではあったんですが、念のため養殖し続けてきたのですよ。……さぁ、キョウ」
告げてオネストは両手を広げ、にたり、と左右非対称の笑みを浮かべ。
「お父さんからのプレゼントです……斬り殺して、その血を飲んでいいですよぉ」
気付けば、エスデスさんが僕の拘束を解いていた。
一瞬オネストを斬れるか、と思いはするものの、弱った身体でエスデスさん相手では不可能。
すぐにその欲を捨て、目前のポッドへと視線を固定し、ふらつきながら近づく。
ぺたり、と掌をポッドの硝子に当てた。
下からライトの当てられた蛍光緑の液体の中、僕と同じ顔をした男が目を閉じ、静かに浮いたまま眠っている。
理屈から言って、この男を殺す事は必要だ。
僕がナイトレイドの一員として今からすべきなのは、大臣の言う通りに振る舞い、隙を見つけて大臣を斬る事。
その為には力が必要であり、初対面の双子の肉塊を斬る事に躊躇など必要無い。
だが。
――なんだ、この殺意は!
僕自身でも驚くほどに、僕は目の前の双子の弟を殺したかった。
理屈の分からぬ殺意、イフの僕に対する親近感がある相手に、何故。
しかし戸惑いこそすれど、剣を止める理由にはならない。
弱った身体に鞭打ち、僕は刀を一閃。
まずは下部から培養液を抜き、遅れ蹴りを入れて硝子を割る。
そのまま座り込みそうになる弟の頭蓋をつかみ、持ち上げて。
一閃、首を切り落とす。
溢れる血飛沫を逃さぬよう、すぐに口を弟の生首の切断口に持って行く。
「はぐ、ごく、ぐちゅ」
寒い外気に湯気の立つ、血まみれの生人肉を多少食いつつ、血管から流れる血液を飲んで飲んで飲みまくる。
やがて血飛沫が収まると、次は胴体の方だ。
僕はポッド内部から弟の死体を引きずり出し、その心臓付近を脇から切り裂いた。
遅れ吹き出す血を、ごくごくと喉を鳴らしながら飲む。
そんな光景の背後、とても嬉しそうな声で、オネストが言った。
「貴方、邪悪を斬る為に生きる男と聞きましたが……」
それさえも無視し、僕は喉を鳴らしながら血液摂取に必死だった。
そんな僕を嗤うように、オネスト。
「貴方、私よりもずーっと邪悪じゃないですか。肉親を斬って、愉しそうに嗤ってますよ?」
言われ、ふと僕は床に広がった培養液に目をやった。
溜まりを作り、ある程度光を反射するそれに、僕の顔が映る。
それで、初めて気付いた。
僕は、オネストの言う通り、心の底から愉しそうに嗤っているのだ。
外道の、悪鬼の笑み。
今まで斬ってきた、邪悪達と同じ……、否、それ以上に邪悪な笑み。
「ぁ……」
瞬間、天啓。
僕はようやくの事理解した。
――僕は、邪悪なのだ。
僕は、信じて斬ると教わってきた。
けれど実は、信じるが故に斬りたかったのだ。
その人を知り、その人の行動を理解し、深く知るが故に。
いや、それさえも正確ではない……、僕は愛するが故に斬りたいのだ。
僕は、斬りたくて母を斬った。
僕は、斬りたくて妹を斬った。
僕は、斬りたくて妹の人形を斬った。
僕は、斬りたくて仲間の屍人形を斬った。
僕は、斬りたくてエスデスさんを斬ろうとした。
そして僕は。
今までずっと、見ない振りを、聞かない振りをしてきたけど。
ナイトレイドの皆を斬りたい。
タツミくんを、マインちゃんを、レオーネちゃんを、ラバくんを、ナジェンダさんを、スーさんを。
そしてアカメちゃんを斬りたい。
クロメちゃんを斬りたい。
「あ、はははははは」
僕は、生まれ変わったかのような感慨と共に、嗤った。
けらけら。
けらけらと。
嗤った。
そしてタイミング良く、感覚がリィンフォースの奥の手を使用可能になったと告げる。
奥の手”一斬全殺”。
アンチ物量能力、強化により視認パス接続が可能になり、加えパスの最大接続数も千を超えた。
まだ血が馴染みきっていない今でさえ、一斬千殺が可能な最悪の能力。
これさえあれば。
皆、皆を殺せる。
皆を一緒に殺せる。
そんな歓喜に溢れた僕を、現実に引き戻すオネストの声。
「……キョウ。貴方に、これを用いて反乱軍を殲滅せよ、とは言いません。そこまで言うと、私の首を狙って表向き帝国についた振りすらしなくなるでしょうからね」
「……すると、僕へのオーダーは?」
ぐるりと振り向くと、とても嬉しそうな笑みを見せるオネストと、愉しそうに僕を見るエスデスさん。
――僕にこんな大切な事を教えてくれたオネストも、友人として素晴らしい相手であるエスデスさんも、勿論殺したい相手だが。
この場では流石に無理だ、殺意をどうにか抑えてみせる僕。
「今の所は、リィンフォースを馴染ませる事が先決。その肉塊、ステーキにして食べていいですよ。少しは馴染む速度が速くなる事でしょう」
「なるほど。美味しいステーキを所望しますよ」
にこりと頷くと、満足した様子のオネストは、続けこう言って見せた。
「今こちらでは、貴方の子を孕ませ、次代のリィンフォースを継ぐ子を産ませる母体を選定中です。一応、貴方の希望を想定して、クロメは候補に入れてありますよ」
「それは魅力的な話ですね。是非、クロメちゃんを推して欲しいものです」
と告げるオネストの思惑は単純、クロメちゃんを僕の花嫁候補とする事で、僕の人質として扱っているのだろう。
さほど効果があるとは思っていないのだろうが、僕としても嬉しいので承諾の意を伝えた。
「では、早速貴方の弟は調理させましょう。私も人肉を一回食べた事はありますが、料理人の腕が良ければ思ったよりはいける物ですよ」
「くす……、そうですか。ありがとうございます」
微笑む僕。
そんな僕に、ニコニコと歪みながらも笑みを浮かべるオネスト。
首と胴体が別れた、地面に転がっている弟。
あぁ、まるで家族団欒のような光景だな、と思って、初めて僕はオネストを父として認めている事に気付いて。
満面の……恐らくは歪んでいるだろう笑みを浮かべるのであった。
キョウさん、カニバリっ(2回目?
そしてようやく発狂しました。
短かったですが、Scene3は終了です。
Scene3:双子の弟を斬る でした。唐突キャラですが。
次のScene4から起承転結の転と結に入っていく事になるかと。
次更新もまたちょっと時間空きそうです。