遊戯王GX お隣さんに縁がある   作:深山 雅

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4ヶ月以上も音沙汰なく、大変失礼しました。しかも時間が掛かった割に、今回はまともにデュエルしてませんし、割とグダグダになった感じです。


第6話 廃寮と闇のゲーム

 【神聖魔導王 エンディミオン】は、レベル7のモンスターである。闇属性魔法使い族だという部分は、今現在は何の意味も持っていない。あくまでも大事なのは、レベル7、という点である。

 

 【魔法都市】のカウンターを6個取り除く事で、レベル7の【神聖魔導王 エンディミオン】を特殊召喚。効果で墓地の魔法カードをサルベージ。そしてレベル1のチューナーモンスター、【サニー・ピクシー】を通常召喚。レベル7の【エンディミオン】にレベル1の【サニー・ピクシー】をチューニング。集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ。シンクロ召喚。飛翔せよ、【スターダスト・ドラゴン】……とか、出来たら面白いのになぁ。

 

 あるいは、【魔法都市】のカウンターを12個取り除くことで、レベル7の【神聖魔導王 エンディミオン】を2体特殊召喚。効果によって墓地の魔法カードを2枚サルベージ。レベル7の【神聖魔導王 エンディミオン】2体でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚。【No.11 ビッグ・アイ】……でもいいんだけど。

 

 それにしても、【スターダスト】は何故風属性なのか。名前的には光属性でも良かっただろうに。それなら【サニー・ピクシー】の効果でライフも回復するんだぞ。

 でも、どの道無理だったろうな。この世界における【スターダスト・ドラゴン】は特別な存在だから、たとえシンクロ召喚が世に出て来たとしても俺の手には来ないだろうし。Noも同様。

 手に持った【神聖魔導王 エンディミオン】のカードを見詰めながらふとそんな考えが頭に過ぎっていると、背後からエンディミオンが口を出してきた。

 

 『主よ、何やら不愉快な事を考えてはいまいか? 何かこう、我を速攻で何かの生贄やコストにでもしようとしているかのような』

 

 (そんなことは全く、全然、欠片も考えてないよ)

 

 生贄やコストだなんてとんでもない。ちょっと素材に出来ないかと考えていただけだ。

 だがしかし、シンクロ召喚は未だ世に出ていない。エクシーズ召喚に至っては影も形も無い。ならば何故【エンディミオン】のレベルがそれほど重要な話となるのか? その答えに基づいて頭を切り替えて正面を見るとそこには、少し怯えた表情の翔と隼人がいた。それを見咎め、俺は腹を括る。

 

 「これは、本当にあった話だ」

 

 そう言うと翔は唾を飲み込み、隼人は体を震わせた。そして直視はしていないが、俺の隣にいる十代が目を輝かせるのも視界の端に映った。

 

 「この間の月一テスト。それから少し経ったある夜、部屋に戻って宿題をしようとした俺は、筆箱を学校に忘れてしまったことに気付いた」

 

 明りが蝋燭1つという薄暗さの中、雰囲気作りのために声を潜め、淡々と続ける。

 

 「もう夜になってしまっていたから学校まで取りに行くのは面倒だし、筆記用具ぐらい予備がある。でも運の悪いことに、消しゴムを切らしていた。そこで俺は三沢に借りようと隣の部屋に向かったんだけど、ノックをしても声を掛けても、当の三沢は反応を返さない」

 

 俺が身を乗り出して続けると、他の3人も同じく身を乗り出して話に集中する。

 

 「留守にしてるのかとも思ったが、特に深く考えることなくドアノブに手を伸ばしてみると、鍵が掛かってなかった。『アレ?』と思って中を見てみると、そこには……」

 

 勿体ぶってタメを作ると、翔と隼人がゴクリと喉を鳴らす。しかし。

 

 「もの凄く真剣な顔で、机の上に広げられた数枚のカードを見詰めている三沢がいた」

 

 何のオチも無い結びに、身を乗り出していた3人はそのままこけた。

 

 「ちょっと優君! それがどうしたって言うんスか!?」

 

 「焦るな翔。本題はここからだ」

 

 ツッコんできた翔を制すると、3人は体勢を立て直して再び身を乗り出した。

 ふふふ、とくと教えてやろう。あの時の俺の恐怖を。

 

 「三沢はどうやら俺がドアを開けたことにも気付かないほどに集中しているみたいで、どんなカードを見ているのかと好奇心が湧いた……本当なら俺は、ここで引き返すべきだったんだな。見なかったことにしてそっと扉を閉め背を向けるべきだった。でも好奇心には勝てなくてゆっくりと近付いてみると、三沢はただカードを見詰めているだけじゃなくて、何やらブツブツと呟いている。まるで何かに憑り付かれているかのように。そして俺が丁度その背後に立った時、ヤツは広げていたカードの1枚を徐に手に取ってこう呟いたんだ……」

 

 再び勿体ぶってタメを作ると、彼らもまたゴクリと喉を鳴らす。そして俺はあの恐怖のセリフを口にした。

 

 「『いい! 魔法少女!』、と」

 

 それはさながら、『いい! バスケ!』とでも言っているかのような漢の顔だった。

 俺があの時の恐怖を思い出してブルリと体を震わせていると、3人がまたもやズッコケていた。

 

 「おい、優~。それのどこが怖い話なんだよ! それもレベル7の!」

 

 体を起こしながら文句を言ってくる十代をキッと睨み付ける。

 

 「お前に解るか!? あの時の俺の恐怖が!」

 

 「解んねぇよ」

 

 即答でバッサリと切り捨てられ、俺は頭を抱えた。

 

 「三沢があんな風になったのはあの月一テストで俺とデュエルしてからなんだ……もしかしたら俺が、アイツの開けてはいけない扉を開いてしまったんじゃないかと思うと、怖くて怖くて……」

 

 「それ、絶対に『怖い』の意味が違うッス」

 

 本気で思い悩む俺を翔がジト目で見ていた。隼人はというと、少し観点が違ったらしい。

 

 「その、『三沢が手に持っていたカード』って何なんだな?」

 

 「【黒魔導師クラン】……しかもその手に持ってるピンクの鞭を凝視していた……」

 

 「それは……」

 

 「怖いッスね……ある意味」

 

 十代と翔も事の重大さを認識してくれたのか、顔を引き攣らせていた。

 ちなみにあの時アイツの机の上に広がっていた他のカードは、【白魔導師ピケル】・【魔法の国の王女-ピケル】・【魔法の国の王女-クラン】・【マジシャンズ・ヴァルキリア】・【霊使い】・【憑依装着】etc.etc……見事に魔法少女ばかりだった。

 【ブリザード・プリンセス】……何て罪深き存在なんだ。

 

 「もしもアイツがある日突然ピケクラデッキとか使い始めたら、俺は魔術師使いとしても友人としても、どういった反応をすればいいのか……」

 

 割と本気で悩んでいたら、隣の十代が労わるようにポンポンと肩を叩いてきた。

 あれ? でもよく考えたら、そうしてキャラが立てばアイツ、エアーマン化しなくて済むんじゃね? そう考えたらそれもいいような気がしてきた。

 ちなみにあの日、見てはいけないものを見てしまった俺は、何も言わずにそっと引き返して静かに扉を閉めてあげたんだが……ここはいっそのこと、そっと優しく背中を押してやるべきだっただろうか。うん、もし今度そんな場面に出くわしたらそうしよう。

 人これを余計なお世話と言う。

 三沢が今後どうなるのか? それは神のみぞ知る。

 

 「にしても、レベル7の怖い話がそれか~。翔のレベル4もイマイチだったしなぁ」

 

 気分を変えるかのようにそう言った十代に、翔が少し口を尖らせた。

 

 「じゃあ今度はアニキの番ッスよ!」

 

 言われた十代は机の上に置かれた紙束……デッキでは無い、紙束だ……の1番上のカードをドローする。

 

 「【キラー・スネーク】か」

 

 ちなみに、【キラー・スネーク】のレベルは1だ。

 

 「ちぇっ。ネタが楽でいいなぁ」

 

 十代に高レベルが当たることを期待していたのか、翔は少し拗ねたようだった。

 

 

 この夜、俺たちはレッド寮の食堂で怪談話を楽しんでいる。みんなが持ち寄ったモンスターカードばかりで作られた紙束から1人ずつドローし、そのレベルに合った怖い話をするというものだ。一種の百物語に近いんじゃなかろうか。作法はかなり違うけど。

 さっき俺がドローしたのはレベル7の【神聖魔導王 エンディミオン】。その前の翔が引いたのはレベル4のカード。そして今、十代がレベル1の【キラー・スネーク】を引いたのだ。

 十代のレベル1の話は、小さなころにデュエルモンスターズの精霊の声を聞いたような気がする、というもの。しかも最近、また時々聞こえるんだとか。

 

 『くりくり~!!』

 

 おーい、十代。その話を聞いたハネクリボーがお前の横に浮かんで必死に自己アピールしてるぞ~。十代の周囲をパタパタと飛び回り、ちっこい体を揺らす。ハネクリボー、そんなに気付いてほしいか。十代が大好きなんだな。

 

 「みなさん何してるのにゃ~?」

 

 結局十代に気付いてもらえなくてしょげてるハネクリボーを慰めるフェーダ-という癒しシーンを堪能していると、いつの間にか現れた大徳寺先生に声を掛けられた。

 その大徳寺先生も翔に勧められてカードを引いてみると、何と出たのはレベル12の【F・G・D】……俺にとっては嫌な思い出しかないカードだ。

 さて、そんなカードを引いた大徳寺先生の『とびっきり怖い話』はというと。

 

 「みなさんは森の奥に、今は使われていない廃寮があるのをご存知ですかにゃ?」

 

 どうやらあの廃寮の話らしい。

 微かな記憶、原作知識の中でもしっかり覚えている。大徳寺先生はセブンスターズの1人、アムナエル。そんな彼なら、何か有益な情報を持っているかもしれない。

 勿論、だからこそ決定的な情報を盛らずハズ無いが、雑談の中から何か小さな情報を引き出せないか試してみる価値はありそうだ。

 

 「散歩の途中で見たことはありますよ。もう結構ボロくなってましたよね?」

 

 そう答えると大徳寺先生は1つ頷き、そして語り始めた。例の行方不明事件のことを。そしてその収穫は予想以上だった。

 

 「何でも、あの廃寮ではかつて、闇のゲームに関する研究をしていたとか……」

 

 「闇のゲームを!?」

 

 思わず椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がってしまうと、周囲がギョッと目を剥いた。

 

 「な、何だよ優。そんなに興奮すんなよ。闇のゲームなんて、どうせ迷信だろ?」

 

 十代、今の内にそう思っておけ。

 詳細は忘れたけれど、お前が闇のゲームをしまくらなきゃならない運命にあるってことは流石に知ってるんだ。そう言っていられる内が華だよ。

 

 「……ああ、悪い。続けて下さい、先生」

 

 軽く深呼吸し、俺は椅子を起こしてかけ直す。

 にしても、闇のゲームを研究ねぇ。何だってそんなことをわざわざアカデミアでするのか。しかも先生によれば、千年アイテムについても調べていたのだとか……マジで? 何であんな物騒なモンにわざわざ関わろうとするのか。かつて痛い目を見まくった者としては、心底不思議でならない。

 つーか大徳寺先生。飄々と語ってるけど、それ研究してたのって多分アンタだよな?

 

 『フン。道理で闇の気配がするわけだ』

 

 エンディミオンが呆れたように鼻を鳴らした。気持ちは解る。あんなものを研究だなんて、どうかしている。けど、これは尚更調べる必要が出て来たな、あの廃寮。

 闇のゲームとか千年アイテムとかって迷信だろー、と十代が呑気なことを言っているが、残念。迷信じゃない。今お前の真横にいる人間がその生き証人だ。

 俺が話の続きを聞き流しながらそんなことを考えていると、大徳寺先生は怪談を〆ていた。

 

 「みなさん、もう寝る時間だにゃ。上野君もそろそろ戻らないと、門限が過ぎてしまいますのにゃ」

 

 「え? あぁ、そうですね」

 

 言われて気付いたが、確かにそろそろ時間である。

 自室へと戻って行く大徳寺先生を見送っていると、十代に「なぁ」と声を掛けられた。

 

 「その廃寮って、どんなだ?」

 

 どんな、って。

 

 「見るからに廃屋、って感じかな。ボロいし、いかにも何かが出そうな感じというか」

 

 思い出しながら伝えてから気付く。十代の目が好奇心で輝いているのに。

 

 「おい、お前まさか……」

 

 「なぁ、明日にでも行ってみねぇか? その廃寮に! 明後日は休みだしよ!」

 

 そう言う十代の顔は、明らかに冒険を楽しみにする子供のものだった。

 

 「えぇっ!?」

 

 一方の翔は乗り気では無いようだ。完全に腰が引けている。大徳寺先生の話にビビってるのかな。しかし隼人の方は興味があるのか、頷いていた……珍しい。

 って、ちょっと待て。もしもあそこに『何か』があったら、危険じゃないか? 

 十代がいつ精霊と通じる力を手に入れる……いや、取り戻すのかは判然としないが、少なくとも今は失われている。ハネクリボーの様子で解る。そんな十代が、万一のことがあった時に対処出来るのか? デュエルが強けりゃ何とかなるとは限らないんだぞ? ましてや、翔や隼人まで。

 

 「……十代、あの廃寮は立ち入り禁止だ。下手すりゃ退学ものだぞ」

 

 いくら十代でも、『退学』の2文字には少しぐらい躊躇するだろう。そう思ったのだがしかし、十代は純粋だった。

 

 「そうなのか? でもそれなら、入らなきゃいいんだろ? 外から見るだけでも雰囲気出そうじゃん」

 

 「それは……そうだな」

 

 見るだけなら、まぁ、いいのか? 明日香もよく行ってるみたいだけど何ともなさそうだし。俺はチラリと隣の精霊を見た。

 

 『闇の力は、あくまでもあの廃寮の中から感じたな』

 

 エンディミオンもそう言うなら、いっか。

 

 「よし。明日なら俺も行くよ。明後日だったら用があったけど、明日なら何も無いし」

 

 そんなわけで、俺たちによる廃寮見学隊が発足した。

 

 

 

 

 その日イエロー寮に戻ってから、俺はノートパソコンのテレビ電話機能を使いモクバに連絡を取ってみた。ちなみに、部屋には既に防音結界構築済みである。

 

 「廃寮で闇のゲームや千年アイテムに関する研究がされてたって噂、知ってたか?」

 

 『……何だそりゃ』

 

 どうやら全く知らなかったようである。画面の向こうのモクバは頭を抱えていた。その背後の光景を見るに、どうやら今は自宅の自室にいるらしい。

 

 『どうなってるんだ、アカデミアは。兄サマが聞いたら怒るぜ、きっと』

 

 「まだオカルトアレルギーなのか、あの人」

 

 あんな企画をやっちまったくせに。そんな思いを言葉に込めて呟いたのだが、その含みはバッチリ向こうに届いていたらしい。

 

 『だって兄サマだぜ?』

 

 ……何故だろう、その一言でストンと納得出来てしまうのは。でも気持ちは解る。闇のゲームを研究させるために学校運営しているわけもあるまいし。ましてや千年アイテムって、どんな因縁だ。

 けどまぁ、今は社長のオカルト嫌いについて議論している場合じゃない。

 

 「もしも本当だったとしたら、誰がしてたのかって話なんだよな。だって研究って、研究者と資金が無いと出来ねぇもん。ましてや闇のゲームだの千年アイテムだの、資料を集めるだけでも骨だろ? 誰がどういった意図で研究をしていたのか? いや、もしかしたら研究をしていたのは資金提供を受けただけの学者か何かで、そういったものについて知りたかったのはそのパトロンなのかもしれない。だとしたら……」

 

 『何でそれをデュエルアカデミアでやっていたのか。そしてその廃寮、当時は特待生寮だったけど、そこで大量の行方不明者が出たのは偶然なのか』

 

 続けられた言葉に、神妙に頷いた。

 何しろ『千年アイテム』と『大量の行方不明者』というワードを並べられると、ついついクル・エルナのことが頭を過ぎってしまう。流石にこの現代に、あんな惨劇は起こっちゃいないだろうとは思うけど。

 いくら何でも俺だって、大きな事件のラスボスぐらいは覚えている。三幻魔の事件の黒幕は理事長だった。となると研究を推進してたのは理事長で、研究者は錬金術師だという大徳寺先生なんだろうけど、それを今言うわけにもいかないんだよねぇ。何せ証拠も根拠も無い。

 

 「まぁ俺はとりあえず、その『闇のゲームについて研究してた』って情報が事実かどうかをまず確かめてみるよ。もしも本当だったら、また連絡する」

 

 『あぁ、頼む。けど本当に、無理はするんじゃねぇぞ』

 

 解ってるさ。俺だって、命は惜しい。

 かつての彼らの人智を超えた闘いを思い出し、思わず体が震えた。

 

 

 

 そして迎えた翌日。俺と十代・翔・隼人は暗い夜道を懐中電灯の灯りを頼りに歩き、廃寮へと向かっていた。ちなみに先頭は俺である。現場まで行ったことがあるからと、先導役を任されたのだ。

 

 「あれがその廃寮か~。本当に雰囲気あるなぁ」

 

 森の奥にデンと構える洋館風の廃寮を見て、十代が感心したような声を上げた。

 4人で廃寮を見ながらやいのやいのしていると、いつぞやのように明日香が現れた。俺たちがここにいるのに神経を尖らせていたが、門の外から見ているだけの相手を強く非難する資格は彼女に無い。

 だが物見遊山気分でいる部外者が気に食わないのも事実なのか、去り際にポツリと言い捨てて行った。

 

 「ここで何人もの行方不明者が出てるのは事実よ。その中には……私の兄もいるの」

 

 明日香に嘘を吐く理由は無い。一同は一気に真面目な表情になっていた。

 どうやら翔は行方不明者のことは噂だと思っていたらしく、余計に腰が引けていた。だが。

 

 「入ってみようぜ」

 

 おいこら十代。何やってんだお前は。

 すたすたと廃寮に向かうその腕を、俺は咄嗟に掴んだ。

 

 「待て。校則違反だっての」

 

 「でも聞いただろ、明日香の兄ちゃんの話。調べてみたら何か解るかもしれねぇぜ」

 

 いや、俺もいずれはまさにそうするつもりではあったけど。

 

 「調べるったって、とっくに学校側が調べてるにきまってるぜ?」

 

 「手掛かりを見付けられなかっただけかもしれねぇじゃねぇか」

 

 「それならそれで、上の方の人間が誰か専門家を呼ぶよ。探偵とか、警察とか」

 

 俺はそのどちらでも無いが。もっと言うと専門家でも無いが。

 

 「いいじゃねぇか。俺は行くぜ」

 

 あぁもう、言い出したら聞かないんだからコイツは! ……そうなると、1人で行かせるわけにもかないよね……これ以上行方不明者が出たりしたら洒落にならないし。モクバにも顔向け出来ない。

 知らず、大きなため息が漏れた。

 

 「ハァ。じゃあ俺も行く。危険だって言われてんだから、単独行動とったりするなよ?」

 

 「おう! へへ、何か楽しくなってきたな!」

 

 こっちはドナドナの気分だよ。どうか、何事もありませんように。

 こうして、廃寮見学隊は廃寮探検隊へとシフトした。

 

 

 ノリノリの十代と珍しく乗り気の隼人、そして腰が引けている翔というメンツと共に、俺は廃寮へと足を踏み入れた。いつかはつぶさに調べるつもりだったが、まさかこんな状況で入ることになるとは。

 廃寮の中は埃こそ被っているが、そうであってもその豪華絢爛さは滲み出ていた。十代なんかは、掃除してこの寮に越して来るか、と冗談を言っている。やめてくれ、お前にレッド寮を出られると、俺はあのボロアパートに入り浸る口実を失う。

 そんなこんなであちこちを見て回っていると、やがて1つの壁画を見付けた。何とそれは。

 

 「千年アイテム……」

 

 千年パズル、千年リング、千年眼、千年ロッド、千年タウク、千年錠、千年秤。ものの見事に全ての千年アイテムが描かれていた。

 

 『主よ。これは本当にアタリではないのか?』

 

 俺もそんな気がしてきた。ここまで正確に描かれているとなると、ここでは本当に闇のゲームについての研究をされていたのかもしれない。ってか、絶対されてただろ。

 

 「へー、千年アイテムって7つあるのか」

 

 俺が思考の渦に沈んでいると、俺と同じくその壁画をまじまじと見ていた十代がそんなことを呟いていた。

 十代がこうして呟いているように、千年アイテムに関する情報は本当に出回っていない。その存在は噂や眉唾物として有名でも、その個数ですら知らない者が殆どなのだ。そんな中でのこの壁画は……。

 

 「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 って、何今の!? 悲鳴? しかもあの声は。

 

 「明日香!?」

 

 真っ先に駆け出したのは十代だった。ほぼ同時に俺も動く。

 あの悲鳴はただごとじゃない。部屋の隅にゴキブリを見付けちゃいました、とかそんなレベルじゃなかった。明らかに恐怖や混乱を含んだ声音。しかも何故、その悲鳴がこの廃寮の奥からするんだ? 明日香は入って来ていないはずなのに。

 廃寮の奥へと進むと、食堂らしきスペースまで出た。何とも広いホールである。しかも置かれている机や椅子にまで高級感が溢れている。埃を被っているのが残念だが。

 そしてそのホールからさらに奥へと向かう廊下の手前に、1枚のカードが落ちていた。

 

 「これは、明日香の【エトワール・サイバー】!」

 

 これまでアカデミアで様々なデュエルを見てきたが、明日香以外に【エトワール・サイバー】を使っている人を見たことは無い。しかもこのカードは、これまでこの廃寮で見てきた品々とは決定的に違った部分がある。埃を被っていないのだ。

 しかも。

 

 「何かを引き摺ったような跡があるんだな!」

 

 隼人の言う通り、埃の積もった廊下の上に残る奇妙な痕跡。

 ひょっとして、明日香……拉致られたのか? と、なると。

 

 「行くぞ!」

 

 隼人の指摘を受けて十代が飛び出そうとするが、流石にこれ以上はダメだろう。

 

 「待った」

 

 勢い付けて走り出そうとした十代の襟首を掴んで引き寄せた。首が締まったのか十代が苦しそうに呻いたが、そんなことはどうでもいい。

 

 「猪のように突っ込むだけじゃどうにもならない。先生に知らせよう」

 

 「で、でも……それじゃあ明日香さんが……」

 

 ゲホゴホと咳き込む十代の背中を擦りながら、翔が不安そうに聞いてきた。俺はそれに肩を竦める。

 

 「何も見捨てようって言ってるわけじゃない。ただ、何事もホウレンソウが大事なんだ」

 

 「ケホッ! な、何がホウレンソウだよ! 野菜食ってる場合か!?」

 

 おぉ十代、回復遅かったな。

 

 「ポパイのホウレンソウじゃねぇよ。報告・連絡・相談でホウレンソウ……さっきも言っただろ、何も見捨てるわけじゃない。けど俺たちがただ突撃して返り討ちにあったら、今度こそ打つ手が無くなる」

 

 興奮している相手を落ち着けるために出来るだけ淡々と答えると、十代はグッと詰まった。否定はしづらいのだろう、事実だから。翔と隼人は既に納得顔である。

 よし、ここで押すぞ。

 

 「だからお前ら、大徳寺先生に連絡してくれないか?」

 

 「何で大徳寺先生なんだな?」

 

 「流石に先生のPDA番号は知らないから、直接知らせに行くしか無い。そしてここから1番近いのはレッド寮だ。それに俺たちにこの廃寮の話を聞かせたのもあの先生だから、説明も楽。『昨日の話を聞いて廃寮を見に行ったら、中から明日香のものらしき悲鳴が聞こえてきました』ってな」

 

 さり気なく廃寮の中には入っていなかったかのような言い回しをしているのにはツッコんではいけない。

 俺の提案に納得してくれたらしく、隼人は頷いていた。

 

 「でも、その間に明日香に何かあったら!」

 

 そんな中でも十代は納得していないようで、食い下がってきた。

 

 「ああ。だからその間に、俺が追う」

 

 「お前が?」

 

 「先生に知らせるのに、全員で行く必要は無いだろ? だから……」

 

 「だったら俺も行くぜ! 全員どころか、3人も行く必要は無いだろ!」

 

 いやそうだけど! それはそうだけど、俺はお前らを巻き込みたくなくてだな!

 

 「ここは危険だから単独行動はダメだって、最初に言ったのは優だろ!?」

 

 はい言いました。何というブーメラン。俺のバカ。

 でも俺には実は見えないお友達がいるから単独行動にはならなくてですね……って、言えるか!

 

 『我が付いているからな』

 

 えぇい、お前は自慢げに鼻の穴を膨らませるな!

 

 「二手に別れようぜ! 翔、先生に知らせて来てくれ! 隼人も!」

 

 って、いつの間にか話が纏まろうとしてる……どうしよう、上手いこと丸め込むつもりだったのに丸め込まれた気がする。

 しかもそこでナチュラルに翔をチョイスする辺り、これまでのアカデミア生活で兄貴分と弟分の関係に馴染んできてやがるな。で、単独行動はアレだから隼人もプラス、と。

 ははは、ぐうの音も出ねぇ。見事な采配だ。

 

 「任せるんだな!」

 

 言いながら、持って来ていたらしいデュエルディスクを十代に渡す隼人。もしもの時の備えらしい。

 俺? 俺は愛機を持って来てた。デュエリストの嗜みですので。

 

 「明日香さんは今も怖い思いしてるかもしれないッス! アニキ、優君! 早く明日香さんを助けてあげてほしいッス!」

 

 「ああ、任せろ!」

 

 グッと拳を突き出して誓う十代と、その身を翻して駆けて行く翔と隼人……え、話が纏まっちゃった?

 え~っと。俺としては、1人の方が色々(精霊実体化・魔力使用etc.etc)出来るから、むしろ戦術の幅が広がるんだけど。これはもう、十代を追い払う口実が無いか? どうしてこうなった。

 

 「よし! 行くぞ優!」

 

 「……ああ」

 

 もうなるようになれ。先生に知らせる係じゃなくて犯人を追う係になれただけマシだと思おう。

 願わくば、せめて人智を超えた現象が起こりませんように。敵がいたとしても、せめてデュエルで片が付く相手でありますように。

 

 

 

 辿り着いた先には、仮面を付けた黒ずくめの大男と棺に納められた明日香がいた。どうやら明日香の意識は無いらしい。

 

 「ククク……ようこそ、闇のデュエルへ」

 

 何故だ? 何だってこんな緊迫した空気の中なのにあの男が口を開いた瞬間、お魚銜えたファラオを裸足で追っかけるビジョンが頭の中に浮かんできたんだ? 何なんだ、この日曜夕方のようなもの寂しい気分は。

 くそ、落ち着け俺。こんなアホなことを考えてる場合じゃ無いだろ?

 

 「お前誰だ!? 明日香に何をした!」

 

 俺がブンブンと頭を振って妙な思考を振り払っている間に、十代が詰問していた。

 

 「我が名はタイタン。闇のデュエリストだ。この娘の魂は深い闇へと捕われている」

 

 ……何だと? 確かにこの客席の無い闘技場のような空間に出てから、俺にすら何となく感じられるレベルの闇の気配はしていたが。

 チラリとエンディミオンを見ると、彼は難しい顔で首を捻っている。

 

 『闇の力は感じる。これまででも最も強く。だが、どうも腑に落ちん……』

 

 何やら納得いかないものがあるらしく、ブツブツと呟いている。その違和感の正体が解ったら教えてくれ。

 だが、ヤツが本当に闇のデュエリストで明日香を人質に取っているのなら、デュエルは避けては通れないのだろうか。それならまだマシなんだが。

 

 「……それで? 明日香を助けたければ闇のデュエルで勝て、とでも言う気か?」

 

 俺が確認を取ってみると、横で聞いていた十代がギョッとしていた。そりゃそうだろう。昨日、闇のゲームなんて迷信だって言って信じてなかったしね。

 だが、向かい合ったタイタンはくつくつと笑った。

 

 「ほほぅ、話が早い。そうだ。この娘を助けたければ、遊城十代! 貴様が私とデュエルをし、そして勝つことだ! 勿論、闇のデュエルでな!」

 

 その宣言に俺は……。

 

 (よし)

 

 ちょっとホッとした。

 よかった、いきなり精霊を実体化させたりしてリアルファイトを挑んでくるような相手じゃなくて。パラドックスだのバクラだのゾークだのよりかはマシだ……思わず安堵のため息を吐いてしまってからふと、何かが可笑しいことに気が付いた。

 いや待て俺。ホッとしてどうする。闇のデュエルだって十分すぎる程に危険だろうが。冷静に考えろ。

 それにしても、十代を指名? いや、そもそも十代の名前を知ってるのが妙じゃないか? ヤツと出くわしてから俺たちは互いの名前を呼んではいないし、しかもフルネームときた。現時点の十代に、闇のデュエリストに狙われるような要素があるのか?

 ますます可笑しい。何かが噛み合わない。

 だがそうして訝しがって考えている間に、十代が動いていた。

 

 「受けて立つぜ、そのデュエル!」

 

 デュエルディスクを腕にセットして前へと進み出る十代を、俺は黙って見ていた。これがもし本当に闇のデュエルならば、止めるべきなんだろうが……。

 

 『主よ、いいのか? 止めるならば今の内であろう?』

 

 デュエルのために向かい合う2人にチラリと視線を向け、エンディミオンが聞いてきた。

 

 (良くは無いけど、もう遅い。アイツが十代を指名している以上、俺が代役を願い出たところで受け入れはしない。十代自身もやる気で、承諾してしまった。止めようが無い……それに、どうも可笑しい。アイツ、本当に闇のデュエリストなのかな? 妙に緊張感が無いような気がする)

 

 闇のデュエルは場合によっては命すら賭ける。その割にはアイツはどこか雰囲気が軽いような印象がある。声は重々しいのに。

 最も疑問に思っていることを提示してみると、エンディミオンもウムと頷いた。

 

 『確かに可笑しい。闇のデュエリストにしては、それらしい力を感じられない……この空間には闇の力が漂っている。だがそれは奴から発せられるものではない』

 

 (あ、やっぱり?)

 

 それこそがエンディミオンの感じた違和感の正体らしい。俺も薄々そんな気がしていた。

 そして次の瞬間、俺たちは確信した。

 

 「「デュエル!!」」

 

 十代とタイタンが同時にデュエル開始宣言をした、その時である。

 

 (あいつ、偽物だな)

 

 『ああ、間違い無く』

 

 同時に悟り、頭が痛くなった。ぶちゃけて言うと、白けた。

 これは闇のゲームなんかじゃない。アレ特有の重苦しい空気が全く感じられない。例え最後にソレを見たのがもう何年も前であってもあんなことは鮮明に覚えているし、いくら何でもここまでの至近距離で闇のゲームが始まったというなら解らないはずが無いのだ。

 俺でもそうなのだから、エンディミオンなら尚更だろう。あからさまにイライラとしていて、舌打ちまで出た。どうやらあの偽闇のデュエリストが気に食わないようだ。俺も気に食わないので彼のイライラを止める気は無いが。

 どうやらデーモンデッキを使うらしいタイタンを生温い目で見ながら、どうしてこんなことになっているのか考えた。

 

 (前に、聞いたことはあるんだ。闇のデュエリストを騙って妙なことを仕出かすヤツは少なからずいるって)

 

 『あぁ。闇のゲームならば、そこらの一般人を脅しつけるのには最適であろうな。何しろ噂は伝聞しているというのにその実態は明らかでは無い。ヤツもそういった手合いか』

 

 (だろうね……忌々しい。アレはそんな風にお手軽に扱っていい代物じゃないだろうに。危険だし、手に負えないし)

 

 『そういった連中に限って、結局の所は闇のゲームを信じてはいないのだ。愚か者には付ける薬もあるまい』

 

 エンディミオンも辛辣だ。まぁ、仕方が無いんだろうけど。

 さて、そうなってくるとこのタイタンは何故このデュエルアカデミアにいるのか。それは恐らく……。

 

 (多分、クロノス先生なんだろうな。十代をご指名だったし)

 

 タイタンが無差別にデュエリストを襲っているというのならともかく、初めから十代しか眼中に無いであろうこの態度。

 となればこれは多分、クロノス先生が仕組んだことだろう。おそらくはこれも、十代がクロノス先生に目を付けられているがために巻き起こされたいらない騒動の1つってとこか。う~ん、そういった騒動がいくつか起こるのは何となく覚えてたけど、詳細までは忘れてるからなぁ。

 

 『偽ラブレターの次は偽闇のデュエリストか。ヤツは本当に教師なのか?』

 

 あ、エンディミオンの中でクロノス先生の株が大暴落している。

 しかしこうして事態の背景に思い当たると、何だか神経を張り詰めていた今までの自分が急にアホらしく思えてきた。

 さっきまでは警戒しまくってたのに、不審者を見つけた途端に気が抜けるとはどういうことだ。逆にさっきまで呑気だった十代は今は張り詰めているってのに。

 

 (一体何なんだ、この温度差は?)

 

 『慣れの差ではないのか?』

 

 的確な答えをありがとう。

 しかしそれで俺が肩の力を抜いた丁度その時、タイタンの攻撃が十代に当たりそのライフを削った。デュエルは着々と進行していたようだ。ゴメン、殆ど見てなかった。

 

 「うわっ!」

 

 それは本当に軽いもののようで、十代も少し驚いたような声を出しただけだったが、タイタンはそれにニヤリと笑った。

 

 「くくく……このデュエルは闇のデュエル。敗者には罰ゲームが待っている」

 

 その不気味な笑い声と共にタイタンが徐に懐から取り出したのは。

 

 「あれは千年アイテム!?」

 

 黄金に輝く逆三角錐のオブジェ……うん。

 

 (偽物だな)

 

 『贋作以外の何物でもない』

 

 恐らくは千年パズルのつもりなんだろうそれは、明らかに偽物だった。その表面は滑らかでパズルらしい継ぎ目が無いし、ウジャト眼のデザインも違う。

 

 「くくく……そう、これこそ私が闇のデュエリストである証だ!」

 

 いや、それはテメェが偽物だという証だ。

 闇のデュエリストであると騙るタイタン。先ほどまではその愚かさにいっそ呆れていたけれど、この瞬間俺の考えは変わった。

 よりにもよって……よりにもよって、千年パズルの所有者を騙るか。

 ふざけるな、それを持てたのは一度封印された3000年前からただ1人だけ。そしてその1人がかつて、どんな思いで『それ』と決別したと思ってる。

 当然ながら、タイタンはそんな事情は知るまい。これは一種の八つ当たりだ。

 けれどこの時、俺は一瞬にしてスゥッと心が冷えたのを感じた。思い出を汚された気分とでも言えばいいのか。

 

 『……主よ、何をしている?』

 

 (見て解らないか? 証拠映像を撮ってるんだよ)

 

 十代が慄いている中、俺はサッと便利アイテムPDAを取り出して録画を始めた。ちなみに、録音はしない。エンディミオンと話す俺の声が入ったりしたら面倒だし。

 ふふふ、最初からこうすれば良かったんだ。

 部外者が入り込んでいたという証拠映像。これを提出すれば、万が一ここでタイタンを逃がしてもいずれは捕まえられる。

 絶対逃がさない。落とし前を付けさせてやる。

 

 「貴様ぁ。何が可笑しい?」

 

 俺が楽しい未来を想像してくつくつと笑うと、タイタンがこっちを威嚇してきた。録画してるのに気付いたのか?

 

 「うん? いや、どうやってお前をボロ雑巾にしてやろうかと……いや、何でもない」

 

 「ハッタリはよせぇ。見ろ! 既に闇のゲームによって遊城十代の身体は消えかかっているぅ」

 

 はぁ?

 

 「え? どこが?」

 

 十代はどこからどう見ても五体満足じゃないか。まじまじと観察してそう告げると十代も、タイタンでさえギョッとしている。

 え? 俺何か変なこと言った? そもそもこれは本物の闇のゲームじゃないんだし、身体が消えるなんてことあるわけないじゃんか。

 

 「ば、バカなぁ! ヤツは私とのデュエルで闇に呑まれつつある! この闇に捕われ、貴様らの身体も上手く動かないはずだぁ!」

 

 この闇と言う通り、偽千年パズルからは確かに闇のような靄が溢れている。だがしかし。

 

 『ただの煙だな、あれは』

 

 エンディミオンさんはそう仰っておいでです。

 試しにその場で足踏みをしてみた。腕もぐるぐると回してみた。全く問題無し。

 

 「特にどこにも異常は無いが」

 

 「んなっ!?」

 

 タイタンは口をあんぐりと開けて固まっている。相当驚愕しているようだが、それはタイタンだけでは無かった。

 

 「え、ひょっとして十代は動けないの?」

 

 前方に立つ十代に聞いてみると、コクコクと頷かれた。えぇー?

 首を捻っていると、エンディミオンがフムと口元に手を当てて思案気な様子になった。

 

 『催眠術か何かを掛けられているのではないか?』

 

 あぁ、なるほど。

 

 (でも俺は、マインドスキャンや未来予知すら弾いちゃうもんな。だから効かないのか)

 

 『いや、この場合のこれは、疑り深い人間には催眠術が掛かり難いとかいうアレであろう。主は疑いどころか、この闇のゲームが虚構でありあの千年パズルが偽物であるという確証を持っているからな』

 

 うん、納得。魔力は関係無いわけだね。となると。

 

 「頑張れ十代、ヤツを叩きのめせ!」

 

 「おう!」

 

 タイタンが十代に叩きのめされるのを存分に堪能させてもらおう。

 俺の声援に十代が応え、再びタイタンに向き直った。タイタンは暫く口元を引き攣らせて俺の方を見ていたが、やがて気を取り直したのか十代に向き直る。どうやら、肝心の十代が自分の術中にいるのでそれでよしとしたらしい。

 

 2人のデュエルを録画……基、見守る中、タイタンは懲りもせずにライフが減るごとに闇のデュエルだとか何とか言って偽千年パズルを使う。その度に十代には自分やタイタンの身体がどこかしら消えていっているように見えるらしいが、俺の目には全く何の変化も無い光景が映っている。なので茶番以外の何物にも思えない。

 大体、何が【ジェノサイドキングデーモン】だよ。どうせなら【ジェノサイドキングサーモン】でも召喚してみろってんだ。そしたら「シャケ召喚(笑)」とか言って指差してやっからよ……いかんいかん、心が荒んでいる。

 

 そうこうしている間にもデュエルが進行し、十代のライフはかなり削られた。しかも催眠術にはキッチリ掛かっているようで、遂に膝を付いてしまった。実力的には負けていないだろうに、この状況はキツかったか?

 十代に丸投げしたことを少し後悔していると、ハネクリボーが十代のデッキから姿を現した。デッキから、ということはドローはされていないはず。十代が心配で出て来たんだろう。愛されてるなぁ、アイツは。

 ハネクリボーは暫し十代の周囲を飛び回り、やがて戻って行った。そしてハネクリボーが戻ると十代は顔を上げて立ち上がる。その表情を見てみると、どうやら吹っ切れたようだった……カラクリを見抜いたか?

 迎えた十代のターン、ヤツは華麗にコンボを決めてタイタンのライフを削り返す。しかも。

 

 「やっぱりな! コイツの闇のデュエルはインチキだ!」

 

 やっぱりタイタンの手口を見抜いていたようで、偽千年パズルにカード手裏剣を突き刺して秘密を暴いていた。しかもウジャト眼にジャストミートとか……おい、お前いつの間に習得したんだ、カード手裏剣。あのスキルは俺もまだ持ってないぞ。いや、練習したから投げることは出来るんだけど。コントロールが悪いから、上手く刺さらないんだよね。あぁそうだよノーコンなんだよ、何か文句あっか?

 

 「多分コイツはマジシャンか何かで、俺たちは……ってか俺は、催眠術に引っ掛かってたんだ!」

 

 鋭いな十代。何故その鋭さを日頃の授業で生かさないのか。

 

 「私は闇のデュエリストだぁ!」

 

 「じゃあ答えてみろよ! 千年アイテムはいくつあるんだ!?」

 

 あくまでも十代の推測でしかないためにあがきを続けるタイタンだったけれど、ノリノリで追及されて言葉に詰まった。

 

 「それは……な……な……」

 

 「ッ!?」

 

 「え!?」

 

 お、驚いた。十代があんな自信無さげな「7」に解りやすく反応したことに驚いた。

 

 「くく……なぁなだぁ!」

 

 ほら、タイタンが水を得た魚のようなしたり顔になってしまった。

 唇を噛みしめて悔しがるなよ、十代。

 あぁもう、しょうがないな。

 

 「じゃあ、他の千年アイテムの所有者が誰かも解るよな?」

 

 「んな!?」

 

 「!? 優!?」

 

 俺の横やりにまたもや詰まるタイタン。同時に予想外の援護射撃に驚いたらしい十代がこちらを見たが、任せとけと目線で訴えた。そして追い打ちをかける。

 

 「どうした? まさか、自分を含めても世界にたった7人しかいない闇のデュエリストのことを何も知らないなんてことは無いだろ?」

 

 「クッ!」

 

 タイタンは心なしか怯んだようで、一歩後退していた。

 

 とはいえ、俺のこの問いは見当外れもいいところだ。そもそも、既に封印されている千年アイテムの所有者なんて、この世にいるはずがない。

 例え封印されていなかったとしても、全ての千年アイテムに所有者がいるとも限らないし、1人で複数所有している場合だってあるのだから、「世界に7人」とは限らない。加えて、闇のデュエリストは何も千年アイテムの持ち主だけじゃない。

 第一、千年アイテムの所有者だからって他の所有者のことまで知ってる必要は無いんだ。遊戯さんやアテムさんは何も知らなかったし、ペガサスだってイシュタール家のことを知ってたとは思えない。バクラですら、実際に所有者を見付けるまでは正確な所在は解ってなかったはずだ。

 

 なので俺の問いに正解しようがどうしようが真贋の見極めに役立ちはしないのだが。

 ハッタリに引っ掛かったタイタンは、見事に墓穴を掘ってくれた。

 

 「ほ、他の千年パズルの所有者は……」

 

 「ダウト。失格」

 

 両手の人差し指で小さく×印を作って判定を下す。

 

 「千年パズルの所有者は複数いない。千年アイテムは7つあるけど、千年パズルが7つあるわけじゃないからな」

 

 「そういうことだ! お前は自分がインチキだって自白したのさ!」

 

 あ、セリフの後半を十代に持ってかれた。いいとこ取りしやがって。

 言葉尻を取られて追い詰められたタイタンは、ギリッと歯を噛みしめると唸った。

 

 「ぬぅ! バレてしまっては仕方が無い! ここは退散するとしよう!」

 

 それだけ言うと懐から取り出した煙玉で煙幕を張り、さっさと退散しようとする。決断早いな、オイ。

 

 「あ、待て!」

 

 十代が慌てたように呼び止めるが、古今東西、待てと言われて素直に待つ曲者などそうそういない。タイタンも例に漏れず、さっさと退散するつもりの様で待つ気配は無い。煙のせいで視界が狭まり定かではないけれど、何となく解る。

 しかし、俺としても逃がすつもりは無い。

 

 (と、いう訳で。行け、エンディミオン。アイツを捕まえてくれ)

 

 部屋中に広がる煙を吸わないように気を付けながら小声で頼む。

 

 『どういう訳だ。しかし、よいのか? ヤツを捕まえるとなると、実体化せねばならんぞ』

 

 そう言ってエンディミオンがチラリと目線を向けているのは恐らく、煙の向こうにいるであろう十代だ。ちなみに十代はもろに煙を吸い込んだのか、軽く咳き込んでいるらしい。

 

 (問題無い。どうせこの煙幕の中じゃ碌に見えないさ。煙が晴れる前にまた精霊化すればいい。タイタンには見られるかもしれないけど、あんなイカサマ野郎の言うことを真に受けるヤツなんてそうそういないだろうし)

 

 『心得た』

 

 頷き煙幕の中に飛び込むエンディミオン。うん、あいつ、時々頼りになるよなぁ。本当に時々。

 さて、俺はっと。

 

 「十代、大丈夫か?」

 

 PDAの録画をOFFにし、十代の様子を見に行った。どうやらこの煙には毒性は無いようで、十代は咳き込んではいるが特に問題は無さそうである。

 

 「ケホッ! ああ! それよりアイツは」

 

 「ぶるぁ!?」

 

 「え!?」

 

 視界の効かない中で視線を巡らせると同時、ガンという何かを床に叩きつけるような音とタイタンの悲鳴染みた叫びが聞こえてきて、十代はぎょっとしていた。

 俺はというと、願い事を叶えてくれるらしいドラゴンが頭の中で踊っていた。なにゆえ。

 

 「な、なんだぁ貴様はぁ!?」

 

 間違いなくこの場には何の関係も無いであろう映像は即座に脳裏から追い出し、現状を把握する。

 どうやら、エンディミオンがタイタンの捕獲に成功したようだ。

 

 「何か知らねぇけど、あそこにいるみたいだな!」

 

 混乱しているのか喚いてくれているお陰で、この煙幕の中でもタイタンの位置は丸わかりだ。そのため十代が勇んで足を踏み出す……が。

 

 「……え?」

 

 その時だった。

 理由など解らない。ただ、起こった現象自体は極めてシンプル。

 

 「ウジャト眼?」

 

 何の変哲も無かった筈の地面に、突如としてあのマークが浮かんだのだ。次いで漂ってくる、懐かしい……悪い意味で懐かしい空気。

 まるで、闇のゲームのような。

 

 「ッ!?」

 

 思い至った時には、もう遅い。

 突如吹いた怪しげな風に煙幕が浚われ、その向こうにいたタイタンとエンディミオンの姿が見えた。彼もいきなりのことに驚いているらしい。ちなみに十代も驚いていた。現在進行形で巻き込まれている事態にと言うよりも、実体化している見慣れたモンスターに、だろうけれど。

 だがそのことについて議論している暇など無く、今度は地響きが。そして不気味な光が溢れ。

 それに目が眩んで瞬いている間に、周囲の景色は一変していた。

 

 闇。

 今俺たちがいる場所を一言で言い表すなら、それしか無い。ただただ真っ黒な空間が広がるだけの世界。両足を付けているはずの地面ですら視界に捉えることが出来ない。

 多分ここは、座標としてはさっきまでいた廃寮ではあるんだろうけれど。それでも異空間の一種なんだろうと、何となく悟った。

 ったく……こんなタイミングでこんなことになるなんて反則じゃないのか?

 

 「何だコレ……お前! また何かしやがったのか!?」

 

 突然の事態に驚いていたらしい十代だけど、割とすぐ復活してタイタンを詰問した。だがこればっかりは奴としても不測の事態に違いない。その証拠に、酷く狼狽した様子で否定していた。

 

 「闇のゲーム」

 

 そんな中で淡々と告げてやると、2人揃ってガバッという効果音が付き添うな程勢いよくこっちを見てきた。

 

 「良かったな、タイタン。お望みの闇のゲームが始まったみたいだぞ……覚悟した方が良い。1度始まった闇のゲームからは逃げられない」

 

 勝敗が付くか、どちらかが続行不能になるまではね。

 懇切丁寧に教えてやったってのに、それでもタイタンは信じきれなかったようだ。

 

 「馬鹿なぁ! 本物の闇のゲームだとぉ!?」

 

 「おい、優。いくら何でもそりゃ無ぇだろ?」

 

 信じられないのは十代も同じだったようで、呆れ顔になっていた……かと思うと、「あ」と言ってエンディミオンを指差す。

 

 「ってか、アレ何だよ!? あれってアレだよな、アレ!」

 

 「その『アレ』ってのが【神聖魔導王エンディミオン】って意味なら、YESと答えるしかないな」

 

 『アレ』扱いが遺憾だったのか渋面になっているエンディミオンをチラ見し、俺は頭を掻いた。

 

 「見ての通り、精霊だよ」

 

 「精霊! やっぱいたんだなぁ、デュエルモンスターズの精霊!」

 

 「『…………』」

 

 この時、間違いなく俺とエンディミオンの思考はシンクロしていたはずだ。

 十代よ。精霊のことはそんなにあっさり信じるのに、何故闇のゲームは疑う?

 

 「ん?」

 

 精霊がいるという事実に軽く感動しているらしい十代だが、すぐに疑問顔になった。

 

 「あれ? 俺、何で精霊が見えてるんだ?」

 

 いや、お前元々見える人のはずだから……と、言う訳にはいかない。それに今回に限って言えば、十代の素質云々は関係無い。

 

 「俺が実体化させてたからな」

 

 だからこそ、タイタンにも見えているし触れることも出来ていたのだ。尤も、さっきまでは、の話だが。

 

 「へー、実体化……実体化!?」

 

 納得しかけてから言葉の内容を理解したらしい十代が目を剥いていた。

 あれ、何だろう? 何か今、お前にだけは驚かれたくねぇ的な感情が俺の心に湧き上がってきた。

 

 「お前、そんなことが出来るのかよ!?」

 

 「出来るよ。人前ではやらないだけで。だって変な目で見られたくないし……でも、今は違う」

 

 事態の深刻さを伝えるためにも、出来るだけ深刻な表情で続ける。

 

 「ここは闇のゲームのフィールド。だから見えるんだよ」

 

 どうして闇のゲームのフィールドだと見えるのかって聞かれると困るが、とにかくそうなのだ。

 

 「闇のゲームって」

 

 一方の十代は困惑気味だ。さっきよりかは真剣に聞いてくれているみたいだけど。一方、タイタンは完全に置いてきぼりを食らっているらしい。エンディミオンが威圧しているせいで口を開けないだけかもしれないが。

 

 「さっきから何だよ、そんなこと言って。闇のゲームなんてあるわけないだろ?」

 

 そう言われるのも無理は無いんだろう。だけど今は、そんな状況じゃないんだ。俺は頭を振った。

 

 「あるんだよ。信じられないのは解る。でも確かに実在するんだ、闇のゲームは……俺はそれをよく知っている」

 

 「よく、って……」

 

 「……昔、やったことがある。他の人がやってるのを見たことは、もっとある」

 

 自分自身が生き証人である俺からしてみれば、闇のゲームは信じる信じない以前の問題だ。言外にそんな含みを持たせてみると、十代は目をパチクリさせていた。

 

 「闇のゲームをやったことがあるって、いつの話だよ、それ?」

 

 「お前ン家の隣に越して行くよりも前の話さ……詳しいことは後で話すよ。どうやら、俺のその当時の波乱万丈人生を話してやる時間は、今は無いみたいだからな」

 

 うわー、上から何か降ってくるんですけど。何だアレ、黒くてブヨブヨとした小さな塊が無数に……。

 

 「ん? 何だアレ?」

 

 十代も、会話中に上空を見上げた俺に釣られるようにして同じく視線を上げていた。そしてそれからすぐに、その黒い塊は落ちてきた。それらはまるで意志を持っているかのように蠢き、こちらににじり寄ってくる。うわー、これ絶対に良くないモノだ。

 

 からーん

 

 内心で引いている間に、俺のデッキからフェーダーが出て来た。

 

 『くりくり~』

 

 同じく、十代のデッキからもハネクリボーが出て来る。

 

 「相棒!?」

 

 突然出て来たハネクリボーに反応する十代。そんな十代をよそに、ハネクリボーは十代を守るようにして周囲のブヨブヨたちを牽制する。フェーダーも俺を守るように飛び回った。

 な、なんて健気で頼りになる奴らなんだ。

 ブヨブヨどもはそれで近寄って来れないらしく、俺たちから一定以上の距離を取る。ふむ。良くないもののようだけど、そこまで出鱈目な力があるわけでもなさそうだ。これならなんとかなるか?

 十代にはハネクリボーがいるし、俺にはフェーダーがいるし、タイタンにはエンディミオンが付いているし……。

 

 『主よ、大丈夫か?』

 

 ……はいィ?

 

 「え、ちょ、お前何でこっちに来てんの?」

 

 いつの間に俺の隣に来やがった?

 

 「ぶるぅああああああ!!! 来るなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 うわっ、いつの間にかタイタンが襲われてる!?

 身を守る術も無く、ブヨブヨに囲まれて今にも飲み込まれそうなタイタンにしかし、エンディミオンは冷たい視線を寄越すだけだった。

 

 『フン。何故我があのような下種を守ってやらねばならぬのだ』

 

 いや解るけど! 気持ちはスゲー解るけど! むしろ俺も同意見だけど! 流石にマズイって!

 

 「あぁもう、このバカ王! 効くかなコレ……えぇい、ままよ! 【光の護封剣】!」

 

 咄嗟にデッキからドローしたカードを使うと、その効果に従って実体を持たない聖なる光の剣がタイタンを取り囲んでブヨブヨのそれ以上の進行を防いだ。良かった、効いた。

 

 「うぉー、凄ぇ! 優、そんなことも出来んのか!?」

 

 十代が目を輝かせて興奮してるみたいだけど、俺の中の『お前が言うな』感が半端ない。人々を避難させるためとはいえ、かつて、軽くテロ行為を行っていた姿を目の当たりにしたことがあるだけに……否、今の十代には多分出来ないんだろうし、深くツッコむのは止めよう。

 

 「一応。でも、よく止まったな……俺も流石に、もう始まった闇のゲームに干渉するってのはそうそう出来ないと思うんだけど」

 

 そこまで人間止めてないぞ、俺は。そんな規格外じゃないんだからな。

 

 『こやつらの力が弱いせいであろう』

 

 うん? 

 

 「こやつらって、このブヨブヨっとしたやつらのことか?」

 

 『然り』

 

 質問したらしたり顔で頷かれました。

 

 『こやつらは、この廃寮に残されていた闇の力の残滓。本来のものとは比べ物にならぬほどの脆弱な力に過ぎぬ。主の力でも抑えられるほどにな』

 

 「……え、それじゃあこの闇のゲームそのものを止められたりとかも出来たりする?」

 

 『いや、それは無理であろう』

 

 微かな希望を口にしたものの、あっさりと却下されてしまった。

 

 『1度始まった闇のゲームは止められぬ。それは破れぬ理だ』

 

 ……俺、役立たず。しかも。

 

 「これって3ターンしか持たないんだけど、3ターンって時間にしてどれくらいなんだろうな?」

 

 タイタンを一応守っている【光の護封剣】を見ると、溜息が出て来た。

 根本的な解決には至ってないからな、これ。

 首を捻っていると、十代とタイタンの間に先ほど中断されたデュエルのソリッドビジョンが現れる。今のこれもソリッドビジョンなのかは解らないが。

 えーっと、これってつまり……。

 

 「まさか、このデュエルで3ターンを数えるってのか?」

 

 え、それいいの? 【光の護封剣】発動したの俺なんだけど? いいの?

 

 「お、続きか? へへ、望む所だ! 中断なんて冗談じゃなかったからな!」

 

 十代はノリノリだけど。おい、お前闇のゲームの危険性解ってないだろ。

 

 「十代」

 

 闇のゲームは止められない。止められないが、忠告はしておこう。

 

 「何度も言うけど、これは間違いなく闇のゲームだ。それだけは覚えておいて欲しい」

 

 場合によっては命に関わることなのだ、これは。

 

 「あぁ、任せとけって!」

 

 ニカリと気持ちのいい笑顔で請け合う十代。頼もしいのは頼もしいんだけどさ。事の重大さを本当に解ってんのか、こいつ? 何となく不安だ。

 あぁ、不甲斐ない。いづれは避けられない事だったんだろうけど、あまりにも油断していた自分に腹が立つ。帰ったらちょっと、本気で原作を思い出す努力をしよう。

 俺が内省していると、タイタンが口を挟んできた……が。

 

 「ま、待てぇ!! 私はまだやるとは」

 

 「うっさいな、もうお前に選択権は無いんだ。精々、闇のゲームを騙ったことを後悔しろ」

 

 「な、何だとぉ!」

 

 「【サイクロン】で今すぐ【光の護封剣】を壊してもいいんだけど?」

 

 すぐに静かになりました。

 

 「よし、行くぜ!」

 

 再開されたデュエルはしかし、すぐに決着が付いた。

 メンタルの差が出たのだ。ノリノリでデュエルを再開した十代に対し、タイタンは明らかに腰が引けていた。おそらく、実力をまともに出せてはいない。幕引きは呆気ないもので、十代の勝利に終わった。

 しかも、ちゃんと3ターン以内に。そのおかげか【光の護封剣】は消えずに済んだ。実にありがたい。

 何故なら、闇のゲームに敗れてしまったタイタンを引き込もうと闇がより活発に蠢き始めたからだ。

 タイタンは気に食わないけれど、この闇のゲームに巻き込まれた被害者でもある。これが本当の闇のゲームになってしまった原因はこの廃寮、引いては嘗て廃寮で怪しげな研究をしていた連中なんだ。それなのに問答無用で闇に引き込まれるなんて流石に哀れというか、黙って見ているのも寝覚めが悪いことになる。

 

 「マジで優秀だな、【光の護封剣】」

 

 『いや、それはあれを発動したのが主だからこそだ』

 

 「ん? なんか言ったか?」

 

 頼りになる魔法をしげしげと眺めている時、傍らのエンディミオンが何やらボソリと呟いていたみたいだけど、小声なせいでその内容は聞こえなかった。何だろう、何か腹立つことを言われたような気がするんだが。

 

 「でも実際、どーっすかな……俺たちは普通に出られそうなんだけど」

 

 デュエルの決着が付いてすぐにこの空間の一部に亀裂が走り、そこからは一筋の光が差し込んでいる。多分、外に通じているんだろう。十代マジ感謝。

 その十代もアレには気付いているようで、指をさしながら首を捻っている。

 

 「なぁ、ひょっとしてアレが出口か?」

 

 「多分。問題は、アイツをどうするかってことなんだけど」

 

 『アイツ』の所でタイタンを顎で指すと、十代も困ったような顔になっていた。

 

 「アイツなぁ。放っておいたらダメなのか?」

 

 「前例が無いから確証は無いけど。多分、俺がこの空間を出ちまえば【護封剣】の効果は切れるだろうぜ。そしたら速攻で終わるな」

 

 「うへぇ」

 

 もの凄く嫌そうな顔をする十代。うっかり想像してしまったんだろう。

 でも、嫌そうな顔で済んでいる十代なんてまだマシだ。襲われてる本人なんて、今にも卒倒しそうになってるし。おかげで静かなのはありがたいけど。

 タイタンの処遇を決めかねていると、見かねたのかエンディミオンが嘆息した。

 

 『ならば、何らかの効果で強制退出させてしまえばよかろう。既に闇のゲームが終わった今ならば、不可能では無いはずだ』

 

 逆に言えば、闇のゲームが終わるまではどうあっても脱出出来なかったということでもあるよな、ソレ。

 

 「へー、そんなことも出来んのか?」

 

 十代はしきりに感心しているが、俺としてはむしろお前に心底驚く。よくもまぁ、そんなにあっさりとエンディミオンに適応出来るもんだ。おい、お前の目の前にいるのは精霊なんだぞ? 非ィ科学的存在なんだぞ? 何でそんな往年の知己のようにナチュラルに受け入れてるんだよ。

 だがそれはそれとして、エンディミオンの言には一理ある。

 ふむ……この状況で使えそうなものは……。

 

 「何もしないよりはマシか。んじゃ、【強制脱出装置】発動」

 

 デッキから1枚のトラップを抜き取って発動させてみた。使い勝手良いんだよな、【強制脱出装置】。特に融合モンスターになんかモロに刺さるし。

 

 「ま、待てぇ!! まだ心の準備が」

 

 タイタンは何か言おうとしていたようだけど、次の瞬間には何処かへと消え去っていた……あれ? どこ行った? ……え、ちょ、やり過ぎちまったか? ヤバくね?

 守る対象が無くなっても【護封剣】はその場に残り続けていたけど(永続魔法だからか?)、襲う対象を失った闇は蠢くのを止め、溶けるようにゆっくりと消えていく。

 

 「? アイツ、どこ行ったんだ?」

 

 「……知らん、そんな事は俺の管轄外だ」

 

 「お前が飛ばしたんだろ?」

 

 「地球上のどこかにはいると思うけどな。無理矢理あの闇から引っ剥がしたから、勢いついちまったみたいだし。どこに飛んでったのかは俺にも解んねぇ。けどまぁ、闇に呑まれるよりはマシだろ」

 

 闇に呑みこまれるよりはマシな結果になったはずだと思いたい……後で今回の件を報告する際、タイタンの捜索も頼んでおこう。幸い、アイツの映像はあることだし。大丈夫だよ……ね? 見つかるよね? 天下のKCに頭下げて頼もう。何だかんだ言って、もしものことがあったらマジでシャレにならん。

 

 「そ、それより行くぞ! こんな物騒な所、早く出るに限る!」

 

 若干の焦りを誤魔化すように十代を急かしながら出口に向かう。

 

 「ま、そうだな。デュエルも終わっちまったし」

 

 ……お前はお前で、割とドライだよな。

 

 

 

 

 

 罅を割り開いて脱出すると、そこは元いた廃寮の一室だった。振り返って見てみると、俺たちがいた闇の空間は小さなドームのように見えた。中にいる時は無限に広がる闇だったのに、外から見るとこんなサイズなのか。質量がまるで釣り合ってない。

 

 「……ッ!?」

 

 脱出してわりとすぐに、闇のドームが急速な収縮を始めた。それだけならいい、むしろそのまま消えて欲しい。

 問題なのは、バチバチという不穏な音もすることだ。まるで爆発の前兆のような音である。

 しかもブラックホールの如く、周囲を吸収するかのような風まで巻き起こっている。

 

 「明日香!」

 

 明日香が収められた棺……縁起が悪いがそれ以外の何物にも見えない。タイタンの趣味はどうなってんだ……がその強風によって引き寄せられそうになっているのを見咎め、咄嗟に庇う十代。

 俺はというと。

 

 「ぶっ!?」

 

 何だかよく解らない紙が飛んできて、それに顔面を直撃されていた。何だコレ?

 どんどんと収縮して行き遂に限界が来た闇が爆発して霧散していくその爆風の中、身体を丸めて顔を伏せながらそれをやり過ごし、コッソリと紙面を見やる。

 何々、『領収書   クロノス・ド・メディチ様   闇のデュエリスト タイタン』? ……証拠頂きましたー。やっぱりクロノス先生かよ。

 これは俺が責任を持って預からせてもらおう。いざって時に使えるかもしれないし。

 

 「はぁ~。何だったんだ?」

 

 諸々の厄介事がやっと終息したからか、十代は溜息を吐いていた。

 

 「闇のゲーム、だろ? 尤も、どうしてあんなことになったのかは解らねぇけど」

 

 俺は手に持った領収書を気付かれないようにこっそりとポケットに仕舞い、十代と明日香に近付く。

 

 「それだって!」

 

 そんな俺に対し、十代はビシッと指を突き付けてきた。

 

 「そもそも、闇のゲームなんて本当にあることだったのか!? ってかお前、それをやったことがあるって何だよ!? しかも色々とスゲーことするし!」

 

 ああ、うん。そりゃ聞かれるよな。当然の疑問だろう。

 

 「落ち着けって、説明はするから。ただその前に、1つ確認しておきたいことがあるんだけど」

 

 そこで一度言葉を切り、俺は自身の傍らを手で示す。

 

 「俺たちは無事に元の場所に戻って来られたわけだ。お前、今でも精霊は見えてるか?」

 

 「へ?」

 

 俺の示す先にいるのは我が精霊、エンディミオン。十代はその姿を上から下までジロジロと見る。うん、明らかに見えてるな、コレ。見られているエンディミオンは多少居心地が悪そうだけど、それはどうでもいい。

 

 「……とりあえず、ここから出よう。歩きながらでも話は出来る」

 

 

 

 気絶している明日香は俺が背負うことになった。鍛えてるし、エンディミオンの魔法で少し軽くしてもらったし。

 そして廃寮から出る道すがら、俺は十代とO☆HA☆NA☆SHIすることとなる。

 まぁ、流石に全ては話せないけど……と言うよりむしろ、話してたら夜が明けるまで時間使いそうなくらいに濃い過去なので色々と端折らざるを得なかった。

 

 「つまり、こういうことか?」

 

 一通りの説明を終えると十代は纏めに入った。

 

 「優は俺ん家の隣に越して来る前、色々と事件に巻き込まれた。その中には闇のデュエルもあって、やったことがある。しかも事件に巻き込まれ続けた結果、精霊を実体化させる能力も手に入れた。んでもって、精霊は元々見えた」

 

 「うん、そう」

 

 何か端折り過ぎた気もするけど、細かい所をツッコまれても面倒だし、流石の十代も混乱しているであろう今の内に話を纏めてしまいたい。

 ちなみに、当時の仲間のことだの事件の詳細だの現時点での俺の立場だのは話してない。友達に嘘は吐きたくないが、話さなくても済むことならば出来れば秘匿しておきたい。特に遊戯さんと交流があることなんて、十代が知ったら絶対騒ぐし。ピンポイントに聞かれない限りはぼかす作戦である。

 

 「へー……なぁ、ひょっとして俺も精霊を実体化とか出来るようになれるか?」

 

 「…………」

 

 むしろ俺にとってお前が元祖です。

 闇のゲーム中でもないのに精霊が実体化したのって、俺の記憶の中ではお前とパラドックスが初だぞ。

 そんな感想は心の奥底に飲み込み、十代の期待に満ちた顔を見る。多分今のコイツは純粋に、ハネクリボーに触れたらいいなとか、生身のHEROたちを見られたらいいなとか、そんなことでも考えてるんだろう。

 

 「さぁ、どうだろうな。俺はいつの間にか出来るようになってたし。練習すれば? 感覚的にやってるからアドバイスは出来ないけど」

 

 「何だよそれ~」

 

 期待外れだとでも言わんばかりに拗ねる十代だが……うん、とりあえず闇のゲームの有無と精霊の存在に関しては納得してくれたようで何よりだ。

 

 「たださ、他のヤツにはあんまり言わないでくれよ。頭の可笑しいヤツを見る目で見られるのは嫌だからな」

 

 この釘差しが1番肝心な部分である。その辺の心情は解ってくれたのは十代も二つ返事で請け負ってくれたので凄くホッとした。

 と、そうこうしている間に廃寮の出口も見えてきた。

 

 「アニキ!」

 

 「優!」

 

 そこには既に翔と隼人が戻って来ていた。大徳寺先生も一緒である……その腕にファラオまで抱かれているのには少しイラっとしたけど。猫抱いて来るんじゃなくて、腕振って全速力で来いや元凶その1。

 

 「2人とも、大丈夫ですかにゃ~?」

 

 あ、更にイラっとした。何だこれ。

 思わず口元が引き攣った俺とは違い、十代は即座に反応した。

 

 「おう! 俺たちは大丈夫だぜ!」

 

 その返事に翔と隼人がわっと歓声を上げた。ふぅ……俺も落ち着こう。

 

 「ただ、明日香がまだ目を覚まさないけどな」

 

 身体を傾けることで背負った明日香を見せながらそう告げて近付くと、大徳寺先生が覗き込んできた。

 

 「これは……気絶してるだけみたいですにゃ。多分、大丈夫ですにゃ」

 

 「そうですか、それは良かった。自称闇のデュエリストに攫われかけていたみたいでしたけど、十代が助けたんです。こんな事が起こるなんて……闇の研究は碌なことになりませんね」

 

 さり気なく皮肉を言ってみました。尤も相手は俺が『知っている』ということを知らないわけだから、皮肉と気付いてくれる可能性は限りなく低いけど。

 気付いているのかいないのか、大徳寺先生は相変わらずの内面が読めない細目のまま頷いていた。

 

 この後、俺たちは廃寮の中で何があったのかを取りあえず大徳寺先生に報告した。その結果先生は、今日はもう遅いので明日になったら学校側に報告しようと言った……おい、それでいいのかデュエルアカデミア。不審者が入り込んでたんだぞ? まぁ、今はもうこの島にいないだろうけど。主に俺のせいで。

 俺たちはというと、勝手に廃寮に入ったことは注意されたものの、状況が状況だっただけにそこまで怒られはしなかった。ちなみにこの際さり気なく、『廃寮に忍び込んだら不審者に遭遇しました』ではなく『女性の悲鳴が聞こえたので緊急事態かと思い廃寮に入りました』という表現をしておいた。

 それから更に暫くして明日香が目覚め、事のあらましを彼女にも説明する。十代は廃寮の中でいつの間にか天上院吹雪の写真も拾っていたようで、それと【エトワール・サイバー】を明日香に渡していた。よく10JOINのサインで天上院だって気付けたな、十代。

 

 何はともあれ、明日……時間的にはもう今日だけど……になったら学校側に報告しようということで話は纏まり、俺たちは解散した。俺はイエロー寮へ明日香は女子寮へ。そしてその他はレッド寮へとそれぞれ戻り、ようやっと長い夜は終わる……わけが無かった。

 

 

 

 

 「とまぁ、こういうことがあったんだ」

 

 『随分と濃い夜だったってのは解ったぜぃ』

 

 そう、俺にはまだやることが残っていた。

 学校側への報告は明日でも、こっちの報告はすぐにしなければいけない。こんな時間に申し訳ないとは思うが、何しろ事は急を要する。

 

 「そんなわけで、悪いけどタイタン、探してくれないか? 本当に悪いけど」

 

 『……お前が行方不明者出してどーすんだ』

 

 「だから! ゴメンって! 非常事態だったんだよ!」

 

 『ったく、しょーがねぇな』

 

 大きな溜息を吐かれました。面倒増やしてゴメン……あ。

 

 「ひょっとしてこの行方不明事件、俺のように何らかのカード効果で相手を飛ばしてしまったヤツが原因だったりしてな」

 

 『それは無い』

 

 ……俺も冗談のつもりで言ったけど、そこまでアッサリバッサリ切り捨てなくてもいいじゃんか。

 

 『お前みたいなヤツがそうそうその辺に転がっていてたまるか』

 

 「え」

 

 どういう……ことだ……? 何だか今、凄く貶されたような気がする。

 でも。

 

 「とにかくだ。本当にゴメン、こんな時間に。あ、これそいつの映像な」

 

 深くツッコむと俺の精神衛生上良くない事態になりそうだったので、スルーすることにした。頼み事をしてるのはこっちの方だし。俺は頭を振って先ほどまでの会話を忘れると、PDAに撮影した動画を見せた。いやー、まさかこんな使い方をすることになるとは。

 

 『それはこっちに転送しろ。俺はまだ起きてたし、時間のことはいいんだ。それより問題は、廃寮のことだぜぃ……』

 

 疲れたようにぼやくモクバの気持ちも解る。アカデミアの廃寮で闇のゲームや千年アイテムに関する研究をしてたみたいだよ~って、社長に報告すんのはモクバだもんな。あの社長(ブラコン)がそれでモクバに当り散らすとは思えないが、絶対に機嫌は急降下するだろう。

 しかもお前、まだ起きてたってことは、絶対に仕事が忙しいんだろ。マジでゴメン、余計な仕事(=タイタン捜索)増やして。

 

 「ま、まぁ……頑張って」

 

 俺としては激励を送るしかない。廃寮の過去、これに関しては俺が何とか出来ることじゃないしね。そっちの方で調べてくれ。

 

 『あぁ……ただ、それが行方不明事件の原因だって決まったわけでもないからな。引き続き頼む……それと、もうそのタイタンみたいなヤツ、出すなよな?』

 

 「善処します」

 

 ゴメン。本当にマジでゴメンなさい。ただ、場合によってはまた何かせざるを得ないかもしれないので、確約はできません。

 

 

 

 

 モクバとの通信も終わり、次いで俺は、遊戯王GXを思い出す努力をしてみた……が。

 

 「駄目だ。わっかんね」

 

 こっちは何とも芳しくない結果に終わった。

 暗い部屋の中、ベッドに潜り込んで天井を睨み付けつつ唸る。どうやっても、断片的な場面や大まかな流れぐらいしか思い出せないのだ。くそぅ、どうでもいいネタ要素なら覚えてるのに。

 これでもし、タイタンが本当に見付からなかったりしたら洒落にならない事態だ。個人的にはアイツは天罰を受けて然るべきだとは思うが、俺は天では無いからそれを執行する権利は無いし、今回は色々とヤバかった。廃寮に残っていた闇の力がもっと強ければ、対処できなかったかもしれないのだ。

 だからもう少し、情報が欲しかったんだけど……無理っぽい。

 

 「あ~、もう。その時その時で対処していくしかないのかな、これからも」

 

 何それ疲れる。でも今の所それしかないっていうね。何でこんなことになってるんだろうね!

 むしろ中途半端に記憶があるのが悪いのか? 何も知らなければもっと気楽に構えられたんだろうか?

 

 そんなことを考えながらぐるぐると悩んでいると、俺はいつの間にか睡魔に誘われていたらしい。深い眠りに落ちていたのだなと気付いたのは、もう夜も明けた後。枕元に置いたPDAがピーピーと鳴り続けているのに隣室の三沢が気付き、わざわざ起こしに来てくれた時だった。彼によると、随分と長いことコール音が響いていたらしい。気付かすに爆睡し続けるとは、何だかんだで俺も昨夜は疲れていたようだ。

 だが、その疲れも眠気もすぐに吹き飛んだ。

 

 『優君、大変ッス!! アニキが倫理委員会に連れてかれちゃったんスよ!!』

 

 「………………はぁ?」

 

 TV電話を起動した直後、通信相手の翔に叫ばれ、俺は呆けた声を上げることしか出来なかった。

 え? どうなってんの?

 




<今日の最強カード>

優「ありません」

王『言い切ったな』

優「だってデュエル描写無いし。ゴメンね皆」

王『それよりもまず、更新が遅れに遅れたことを謝るべきでは?』

優「それは筆者がすべきことさ。俺の仕事じゃない」

王『まぁ、その通りだが。にしても、随分と長ったらしくなったものだ』

優「それも更新が遅れた理由の1つらしい。デュエルを書かない方が筆の進みは遅いんだって」

王『デュエルが全てな世界であるしな』

優「もう1つの理由……ってか言い訳は、1度全データがトんだってことらしい。それで1度燃え尽きたんだって」

王『ほう』

優「頑張ったらしいよ。何せタイタンの出番はこれで終わりだから、魔改造十代とそれなりにデュエってもらいたかったんだって。だから、微妙なチェスデーモンデッキにも改造加えたり」

王『待て。果てしなく待て。タイタンの出番はこれで終了だと?』

優「うん」

王『……セブンスターズはどうなるのだ』

優「え、何のこと? 俺ってば原作知識曖昧だし~」

王『ええい! 散々メタ発言をしておいて、この期に及んで惚けるか!』

優「(完全にスルーして)ま、これはこれで良かったのかもね。デュエルかなり端折ったのに結構な長さになっちゃったし。おまけにグダってるし」

王『……主の人外っぷりが光っていた1話であったな』

優「何言ってんの、あれくらいで。それより次だよ、次。次はちゃんとデュエル入るし。またデータがトんだりしても、今度は諦められない局面だからね……セーブは細目にしようぜ!」

王『無理矢理纏めおって』



本当に色々と申し訳ありませんでした by筆者M・M

 

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