遊戯王GX お隣さんに縁がある   作:深山 雅

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 色々と捏造設定満載の幕間話。細かい部分は本編で追々明かしていきます。


幕間3 とある男と理事長

 清潔なベッドの上で幾多の生命維持装置に繋がれながら、その老人は生きていた。

 

 「そうか……やはり無理か」

 

 さして残念そうな様子も無く、彼はこともなげにそう呟く。言葉を返す相手は傍らのPC画面の向こうの旧友である。

 

 『やはり、初めの盗難未遂が効いたようだ。武藤遊戯のデッキの警備は格段に厳しくなっている。彼らには無理だろう』

 

 「構わん、アムナエル」

 

 老人……影丸は真実気にしていないのだろう、随分とあっさりとしている。

 

 「元々、三幻神を武藤遊戯から引き離すのが今回の最たる目的であった。しかしそれは武藤遊戯本人に拒まれ実現しなかった」

 

 影丸は画面から視線を外し、傍らに立つ男に視線を向ける。若く、どこか神経質そうな男であった。

 

 「決闘王のデッキを手に入れられればそれに越したことは無かったが、無ければ無いで構わんよ」

 

 それは事実であった。

 決闘王のデッキともなれば強い力を持ったカードも多々あったことだろう。それを手に入れられなかったのは少なからず惜しいが、どうしても欲しいというほどでも無い。

 しかし問題はそれ以外にある。

 

 「決闘王のデッキを盗み出した生徒と対峙したのは、お前の知り合いだったな」

 

 からかうようなその響きに、男はチッと舌打ちをした。

 

 「鼻持ちならんガキだ…………実力があるのが、なお性質が悪い」

 

 「アムナエルよ。そやつは尻尾を出したか?」

 

 再び視線を画面に向け、影丸は問う。アムナエルと呼ばれた通信相手は僅かに嘆息した。

 

 『いいや。元より、そう接点があったわけでも無いのでね。彼は私の寮生では無いし、私の授業も取っていない。険悪なわけでは無いが……打ち解けているという程でも無い。今の所はただの、もの凄く目立つ変人な優等生と言った所か』

 

 「…………」

 

 『もの凄く目立つ変人な優等生』とは、それはどんな生徒だという疑問が影丸の中に湧き上がる。しかし亀の甲より年の功、彼はその疑問を飲み下した。

 アムナエルは構わず続ける。

 

 『それが逆に可笑しいのだけれどね。もしも彼が何らかの理由でアカデミアに潜入しているのなら、むしろ目立たないように隠密行動を取りそうなものだが。都合の良い事に、彼の身近には遊城十代という隠れ蓑には最適な者がいるのだし……』

 

 しかしアムナエルの知る「彼」は遊城十代の影に隠れるどころか、相乗効果を以てして更に目立っている。本人に自覚は無さそうだが。

 

 「もうよい。以降もそやつの動向には注意しておけ」

 

 『ああ、解った』

 

 通信を切り、影丸は大きく息を吐いた。

 

 「……老いたものだ。この程度でこれほどの疲労を覚えるとは」

 

 隙間なく皺の浮いた己の手を見ながら、彼は自嘲する。ほんの僅かな時間、通信を行った。ただそれだけで体は悲鳴を上げていた。

 

 「だが、それももうすぐ終わる……三幻魔を手に入れ、今一度若さを取り戻すのだ……!」

 

 決意を語る影丸の目には、強い意志の力が宿っていた。それはその老いた肉体には些か不似合いな光だった。

 いや、人間とは本来、そういうものなのかもしれない。若きも老いも関係無く、その欲望は尽きることは無い。ただ、多くの人間は年を重ねるごとに諦めや妥協を覚えていくだけで。

 しかし影丸は諦める気などさらさら無かった。その一環として、今回の武藤遊戯のデッキの特別展示会を企画したのだ。

 

 彼の目的を端的に述べれば、『強い力を持ったカードを手に入れる』、ただそれだけだ。この場合の強いとはデュエルに強いという意味では無い、強い力を持った精霊が宿っているという意味である。

 

 しかしそれは一歩目から躓いた。

 最大の目的である三幻神の提出を武藤遊戯に拒否されてしまったからだ。実を言えば影丸は、三幻神が欲しかったわけではない。ただ彼はある理由から、例え短期間であっても三幻神を武藤遊戯から引き離したかった。だがそれは上手くいかなかった。

 ならばせめて【ブラック・マジシャン】を筆頭とした高名なカードを手に入れられないかと思っていた。既にアカデミアに紛れ込ませている黒蠍の連中に命じ、デッキを盗ませようかと考えていたのだが……それも影丸が行動を起こす前に発生した盗難未遂事件のせいで難しくなった。

 

 しかし、ならばそれでも構わない。

 

 あくまでも影丸の至上命題は、三幻魔なのだ。それ以外は『あるに越したことは無い』程度のおまけに過ぎないのだから。

 

 「若返りなどどうでもいい」

 

 しかしそんな影丸に、傍らに立つ男は吐き捨てた。

 

 「私は私の目的を果たすことが出来ればそれでいい……契約は忘れていないだろうな?」

 

 些か尊大な口振りであったが、影丸はそれを気にしてはいなかった。それは或いは年の功からくる余裕であるのかもしれないし、男が齎した情報が影丸にとって非常に有益であったために生まれた尊重であったのかもしれない。

 どちらにせよ、影丸はこの男の執念を買っていた。

 

 「構わんよ。儂の目的は三幻魔の復活。それ以外はどうでもよいわ。約束通り、機会は恵んでやろう」

 

 その素っ気ない口振りに、男は鼻を鳴らした。しかし決して不快なわけでは無い。何故なら彼らはギブ&テイク、ただそれだけの関係なのだから。

 

 

==========

 

 

 少し時を遡って話をしよう。

 

 アメリカのI2社に、とあるカードデザイナーの男がいた。彼は当初はペガサスにもそれなりに目を賭けられており、それ故にとある極秘プロジェクトに引き入れられることとなる。

 

 そのプロジェクトとは、『シンクロ召喚プロジェクト』。その名の通り、シンクロ召喚という全く新しい召喚法を取り入れるためのものであった。

 

 しかし男はそれに賛同しかねた。何故ならシンクロ召喚はその性質上低レベルモンスターが重要な意味を持つものであり、男は高レベル・高ステータスなカードこそが大事という考えの持ち主であったからだ。

 なので不本意ではあったが、敬愛するペガサスが主導するプロジェクトに関われるのだ。そう考えて作業に取り組んだ。

 

 だが違ったのだ。

 

 シンクロ召喚のプロジェクトは確かにペガサスの主導であったが、シンクロ召喚を始めに言い出したのは彼では無かった。たった1人の、何の実績も無い日本人の少年だった。

 それは男にとって受け入れがたい現実であった。いや、男だけでは無い。多くの者が異を唱えた……当時は。

 

 しかしその後、その少年が武藤遊戯の弟子であることが判明した。男と同じ、少年に異を唱えていた者はそれによってまず、少し減った。

 

 次いで、ペガサスはその少年を正式にシンクロ召喚の提唱者、そしてプロジェクトのアドバイザーとした。

 その後もその少年が直接アメリカに来ることは無かったものの、電話やメールなどを通じてその少年はプロジェクトに携わるようになる。

 それで少年の人柄を知り、また男の同士は少し減った。

 

 その後もその少年のシンクロ召喚に傾ける熱意、アイデアを出す発想力、疑問に的確に答える度胸、確かなデュエルの実力などは少しずつ知られていき、その度に男の同士は減って行った。少年が受け入れられていった、ということでもある。

 

 実を言えば男自身、その少年のことは憎からず思うようになっていた。しかしだからといってシンクロ召喚を認めることは自分の主義を曲げることのように感じてしまい、何とも鬱屈した感情を抱え込んでしまっていた。

 

 そんなある日、男は仕事帰りにバーで飲んでいた。その日はたまたま立て続けにトラブルに見舞われたために苛立っており、酒のピッチも早かった。

 バーを出て千鳥足になりながら自宅へ戻ろうという道すがら、男の前に見知らぬ人間が現れる。

 

 正直に言えばそれは、不審者と言っても過言では無い風体の人物だった。しかし完全に酔っていた男はそれに気付かず、ただ急に目の前に現れたその人物を『邪魔だな』と思っただけであった。

 しかしそんな相手の横を通り抜けて先に進もうとした、その時。その人物は男にこう囁いたのだ。

 

 「シンクロ召喚こそこの世で最も不要なもの……そうは思わんか?」

 

 ピシリ、と男の体が硬直する。その通りだったからだ。

 いや、『この世で最も』というのは流石に言い過ぎであろう。しかし不要なもの、それは彼が常に心の片隅で思っていることであった。

 

 弱小と呼ばれるモンスターにも活躍の機会を与えられる……ペガサスや少年はそう言うが、男にしてみれば何故弱小モンスターに活躍の場を与えてやらねばならないのか、まるで意味が解らなかった。

 世間を見てみろ、持て囃されるのは強いカードばかりではないか。

 

 男は初めて目の前の人物をちゃんと視界に入れた。

 顔は解らない。フードで隠れている。しかし声からするとおそらく、若い男だ。白いローブのようなマントのような不思議な衣装を纏っていて、体格もよく解らない。

 しかし男は何故か、その人物を怪しまなかった。極秘情報であるはずのシンクロ召喚を何故知っているのか、そんな疑問すら抱かなかったのだ。

 それは酔っていたせいなのか、それとも……何か別の『力』でも働いていたのか。

 

 「シンクロ召喚はまだ世に出てはいない。今なら止められるかもしれん」

 

 その人物が発する言葉はゆっくりと、しかし確実に男へと染み込んで行く。だが……。

 

 「しかし、今更私に何が出来ると……」

 

 つい先日、シンクロ召喚は翌年度に発表されることが決定した。最早それを止める手段など、早々ありはしない。プロジェクトの主導者であるペガサスか、或いはそもそもの発端である少年が何か不祥事でも起こせば簡単だが、両名ともそこまで脇の甘い人間では無い。

 そう考えて自嘲する男に、1枚のICチップが差し出された。顔を上げて見ると、フードの下からそれだけを覗かせている男の口元が弧を描いていた。

 

 「これをやろう。どうするかは貴様次第だ」

 

 「あんたは一体……?」

 

 「シンクロ召喚を憎む者。それ以上を貴様が知る必要は無い」

 

 ほぼ反射的にICチップを受け取ると同時、目の前にいたはずの人物はまるで初めからいなかったかのように消え去ってしまっていた。

 

 1人残された男は酔って見た夢かとも考えたが、しかし手の中のICチップがそれを否定する。

 男は帰宅せずに会社へと戻り、受け取ったチップの中身を確認することにした。現在地では自宅よりも会社の方が近かったのだ。

 

 そしてそのチップに込められていた情報は、彼にとって驚愕に値する内容だった。

 デュエルアカデミア本校が建つ島に封じられた三幻魔、それを解き放たんとする計画……目を通した男は、急速に理解した。

 

 そうか、この計画を利用してあの少年を亡き者とすればいいのか。

 

 シンクロ召喚の提唱者にしてプロジェクトのアドバイザー。そんな人間がその発表の直前で不慮の事態に遭えば、何らかの影響が出ないはずが無い。

 その後の男の行動は早かった。

 

 

 しかし一夜が明け冷静さを取り戻した時、男は己自身が解らなくなってしまった。

 

 自分は何故あんな事を考えたのだろう。そして何故、あんなことをしてしまったのだろう。

 

 男はシンクロ召喚は認められなかったが、少年のことは決して憎んではいなかった。それが、あんなにあっさり死を願ってしまうなど。

 ましてやその後の己の一連の行動を思い返すと、ゾッと身震いがする。

 男は思い立った直後に影丸にアポイントを取り……その方法まであのチップ内のデータにあった……協力を申し出た。しかもそれで見返りを求められると、社の極秘データを送ってしまったのだ。

 

 だがそれらの事を終えた後、男は急に恐ろしくなった。

 酔っていたから、などという理由では済まされない事を仕出かした。まるで自分が自分でない何かになってしまった、或いは操られてしまったような気分だった。

 

 しかも最悪な事に、影丸に送ったデータの中にはとんでもないものが紛れ込んでいたのだ。それを見付けた影丸は男との共犯関係を認め……しかし、当の男は尻込みしていた。

 

 (私はそんな人間では無い! あれは気の迷いだ!)

 

 男は迷いに迷った末、ペガサスに全てを明かして謝罪しようとした。

 

 しかし……。

 

 「ユーのデザインしたシンクロモンスターをエラッタすることになりまシタ」

 

 そう決意した矢先、男はそのペガサスに宣告される。

 

 「な、何故ですか!?」

 

 想定外の事態に、男は思わず叫ぶ。己の罪に関しては、頭から吹っ飛んでいた。

 

 男はシンクロ召喚に良い感情は抱いていなかったが、それでも仕事は仕事としてやっていた。低レベルのチューナーモンスターをデザインすることは自尊心が許さなかったが、強力なシンクロモンスターをデザインするのは苦では無かった。

 しかしペガサスは悲しそうに首を振る。

 

 「ユーのカードは力に頼り過ぎていマース」

 

 「強いカードを作ることの何が悪いのです!?」

 

 「……あれではゲームバランスが崩壊してしまいかねまセーン」

 

 結局ペガサスとの話はそれで終わり、男は罪を告白する機会を失った。しかも……。

 

 「エラッタ要請を出したのは……あの少年だって?」

 

 男は肩を震わせた。

 何故だ、何故力のあるカードを認めない。あのカードは、【ダーク・ダイブ・ボンバー】は男にとって傑作だった。それをエラッタ……弱体化させるだと?

 その時、男の中のそれまでの負の感情が一気に爆発した。

 

 (私を認めないというのか!? ならば……私も貴様を認めない!)

 

 それは逆恨みであっただろう。男が作ったシンクロモンスターはペガサスの言う通り、ゲームバランスを崩壊させかねない代物だった。もしも少年が何もせずとも、すぐに禁止行きとなるかエラッタされるかだったに違いない。そう考えれば少年が事前にエラッタ要請を出したのは、むしろそのカードに世に出て欲しいからこそと言える。

 しかし、男にはそれが解らない。己の才能に自信を持っていたからこそ、強いカードこそが世間に望まれていると心から信じているからこそ、理解できない。

 

 そして男は、行き着くところまで行くことを決めた。それが本当に彼自身の意志であるのか、そんな疑問ももう男の脳裏には過ぎらなかった。

 

 

 これは、昨年末に本当にあった出来事である。

 

 

==========

 

 

 時は戻り、影丸の部屋を出た男はあるカードたちを思い浮かべた。

 

 (私は間違っていない……力こそが全てだ!)

 

 男は影丸にあるカードたちを渡していた。それは彼の信念に沿った、強い力を持ったカードである。

 男が初めにデータを影丸に送った時に、それに関するデータも偶然紛れ込んでしまっていた。それは男にとっても想定外の事態だった。しかしそれを見付けた影丸は強い関心を示し、実物を望んだ。

 だが男は当初、それを断る気だった。自分から持ちかけておいて可笑しな話だが、本当にそうするつもりだったのだ。

 しかし昨年末の一件で男の気は変わり、未だ未完成だったそのカードをこっそりと持ち出して自ら完成させた。彼自身カードデザイナーである、仕上げをする程度は造作も無かった。

 

 (待っていろ……私は復讐を遂げる……・復讐? 何の復讐だ……? いや、そんなことはどうでもいい……)

 

 既に男は、自分というものを見失っていた。そんな彼は時々己の記憶が飛んでしまっていることも、かつてフードの男から受け取ったICチップが見当たらなくなっている事実にも、最早気付けなくなっていた。

 

 

==========

 

 

 デュエルモンスターズ界には、生まれるべくして生まれるカード、というものが存在する。

 その最たる例は、言わずと知れた3枚の神のカードだろう。

 

 【オシリスの天空竜】

 【オベリスクの巨神兵】

 【ラーの翼神竜】

 

 1度は製作者のペガサス自身が『これらのカードを生み出したのは最大の過ちだった』とまで思い詰めて封印したカードだが、紆余曲折を経て現在は決闘王・武藤遊戯によって束ねられている。

 

 以来、世に三幻神と呼ばれるこの神々は決闘王の象徴として人々に認知されてきた。

 デュエルをやらない一般人であっても三幻神のことは知っている、それほど知名度を誇るのだ。

 

 しかし一方、世間には全く知られていない『生まれるべくして生まれたカード』というものもある。

 それは例えば三幻魔であったり、6体のシンクロモンスターのドラゴンであったり、様々だ。

 そもそも、三幻神だとてかつてデュエルマフィア・グールズが封印を解き放たなければ、そのまま封じられていただろう。

 

 何故か? 答えは単純、危険だからだ。

 

 例に挙げた6体のドラゴンのような「シンクロ召喚そのものが未だ発表されていないから」という少々特殊な事情を持った物もあるが、大多数は危険だから秘匿されている、これに尽きる。

 事実、かのバトルシティにおいては城之内克也が【ラーの翼神竜】の攻撃(実際には効果だが)を受けて現実に心停止にまで陥ったという事例もある。

 

 さて、本題に入ろう。

 

 かつて三幻神という強大過ぎる力を持ったカードを生み出してしまったペガサスは、もしもの時にはその対抗勢力となるべきカードの作成を試みたことがある。

 しかしその試みは結果として、半ばで潰えた。

 ペガサスは途中で気付いたのだ。その対抗勢力となるべきカードを生み出そうとしているのが己の意志ではなく、三幻神を生み出した時と同じ抗い難い引力のようなものに導かれてのものだったということに。

 そして生み出そうとしていた対抗勢力が、本質的に三幻神以上の邪悪さを持ち得ていたことに。

 だがそれに気付いたからと留まれるのならば、そもそも三幻神を生み出そうとしていた時に留まれている。

 だからこそ解っていた。このままではそのカードたちもまた、生み出してしまうということに。

 

 故にペガサスは決断した。三幻神を封印することを。そうしてしまえば対抗勢力を生み出す必要など無くなる。

 ペガサスが三幻神を生み出したのが最大の過ちと述べたのには、実はそういった意味合いも含まれていた。

 

 そして三幻神を封印したと同時に「対抗勢力を生み出さなければ」という衝動も綺麗に霧散し、彼はそのデータと未完成のカードたちを自社の奥深くに隠した。

 本来ならばそのような危険物は破棄するか、三幻神のように封印するのが最善であっただろう。だがペガサスはそうしなかった。

 未完成のカードを封印までする必要があるかは判然としなかったし、破棄をするには彼はカードを、デュエルモンスターズを愛してしまっていた。

 三幻神が封じられている限りは心配はあるまい、そう高を括っていたのだ。

 

 しかし三幻神の封印はグールズに解かれてしまう。

 

 不幸中の幸いだったのは、その当時のペガサスがとてもでは無いが動ける状態では無かったということかもしれない。

 デュエリスト王国で武藤遊戯に敗れた直後、彼はとある人物によって重傷を負わされてしまっていた。そんな状態では三幻神の対となるカードなど生み出せるはずも無い。

 そして体調が万全となった頃には、三幻神は武藤遊戯……或いは名の無きファラオによって正しく束ねられていた。

 

 以降、三幻神は武藤遊戯に委ねられ、その力を正しく行使されてきた。

 三幻神が正しき状態にあるならば、それもまた対抗勢力が生み出される理由など生まれるはずもなく、ペガサスにそのような衝動が沸き起こることも無かった。

 

 故にペガサスは忘れ去ってしまっていた。かつて三幻神の対抗勢力として生み出そうとしたカードたちがあったことを。

 そしてそのカードたちのデータはI2社の奥深くで眠り続けていた。

 三幻神が武藤遊戯の手にある限り、それが表へ出て来る必要など欠片も無かった。

 

 無かった、はずだった。

 

 ペガサスが三幻神の対抗勢力として生み出そうとしていたカードたち。

 彼はそれを、三邪神と呼んでいた。




捏造満載です(前書きでも書きました)。
細かい部分は今後補完していきますので、ご容赦ください。

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