「……あ、ありのままに今起こったことを話すぜ……! さっきまで俺の頭を噛んでいたちみゃが喋ったかと思うといきなり光りだして人間に進化した。な、何を言ってるか分からねーと思うが、俺も何が起きてるか分からない。あまりに突然の出来事に頭がどうにかなりそうだった。人体錬成とかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ――」
「落ち着いてください二見さん。それ、多用すると飽きられますよ。それにしてもなんですかこのロリ巨乳。どこぞの紐神様みたいじゃないですか。私にその乳少しください」
「お前が落ち着け」
「マスター、お腹が減ったのじゃ~」
「つーか、人間だったの……?」
実年齢は知らないし巨乳な事もまぁ、置いといて……他はどう見てもロリ。なんだよ、またかよ。どうせこうなるだろうなとか少しは思ってたよ。
「ぬ? ワシは幻獣種なのじゃ!」
「幻獣……? 綾瀬、分かる?」
「いえ、そんな事よりその乳をですね」
「もうお前引っ込んでろよ。で、その幻獣種ってのはそうやって喋れたり人間になれたりすんの?」
「はっは、そんな馬鹿な。魔力を持った古龍種でも無い限り出来るわけないじゃろ。そう言えば、なんでマスターはワシ達の言葉が話せるのじゃ?」
そう言って笑うちみゃに綾瀬が鏡を見せる。ちみゃは不思議そうな顔をした後、鏡に映った自分の姿を見て固まった。
「……あの、マスター。これはなんぞや」
「何って、ちみゃだけど?」
「ワシのあの素晴らしい機能美に溢れたあのこんぱくとぼでぃは!?」
「こっちが聞きたいよ」
「こんな体嫌なのじゃー! バランス取りにくいし、何か胸が重たくて邪魔だし、なんなのじゃもう……」
そんな駄々こねられてもなぁ……。あと、ジタバタするの止めなさい。パンツ見えるから。……いや、見ないからね?
「……? お兄ちゃん、ちみゃは?」
「なんか人型にジョブチェンジした」
「ほう。これなら僕の事をどう思ってるか聞けるね」
「お前、牛乳拭いて洗ってない雑巾みたいな臭いがするのじゃ。近づくな、臭い」
「な、がっ――!?」
散々な言われようだった。そしてフェイトは余程そう言われたのがショックだったのか、膝をついて呆然としていた。……まぁ、そりゃ嫌われてた理由が臭いからって言われたらなぁ……普通に傷つくわ。
「フェイト様ー!?」
「だ、大丈夫ですフェイト様! そんな臭いしませんから! あいつの鼻がおかしいだけですから!」
「む、失礼な! ワシの鼻はそこいらの種族より鋭敏じゃぞ!」
「しかし、どうしてこのような事態に……」
「だよなぁ……。なぁちみゃ、お前そうなる前に何か変な事した?」
俺を噛んでるだけだった気がするけど……それ以外に何かしてたのだろうか?
「マスターが寝てる時にポケットに入ってた飲み物もらったのじゃ!」
「あー、そういや後で飲もうと思って買ってたな。えーと何々『はいぱ~トランス! 変身を君に。』……ああ、これで変身したのか」
「なるほど、納得ですね。……あ、底面に注意書きがありますよ。『注意:どうなっても知りません』」
「なん……じゃと?」
さすがMAHORAドリンク! ……でも、なんでロリなの? いい加減にしろや。これ以上増やされたら……。いや、なんとなく増える気がする。だってずっとそうだもん。ロリか変態だもん増えるの。
「戻り方は記載されていませんね」
「ホントだ。でも、こんな姿のちみゃどうしろって……」
「おや、フタミン君。ついにロリ巨乳に手を出しましたか」
「出してねぇわ。あ、クーネルさんなら何か知ってるんじゃ?」
「勿体ないのでそのままで。出来れば少し触らせてくれませんか?」
誰かこの変態捕まえてくれ。そして手をワキワキさせるの止めろ。女性陣ドン引きだから。
「マ、マスター、怖いのじゃあ……」
「女性の敵です!」
「フタミン様! 変態です! 救いようのない変態がいます!」
「おやおや……フタミン君、その場所変わって頂けません?」
「あんたが発言する限り無理じゃね?」
でも、それにしてもみんな引っ付きすぎ……色々柔らかくて困るよ!!
「フェイト君、君なら分かってくれますよね? 私のこの無念が……!!」
「……今僕はそれどころじゃないんだ。この心の傷を癒すために今から不思議ドリンクをヤケ飲みするんだ……」
「お前、そんなにメンタル弱かったっけ?」
「……君も謂れのない罵詈雑言を浴びせられたらこうなるさ」
「……なんか、ごめん」
そりゃそうだ。嫌われてた理由がまさか臭いから、だもんな。生理的に無理とかそんな感じだろうか? ダメだ、本気でフェイトが可哀想になってきた。
「その点マスターは良い匂いなのじゃ~」
「ちょ、おい、そんな引っ付くなよ……」
「む」
「……まぁ、ちみゃなら……お兄ちゃん、抱っこ」
「ちょ、ま、首はダメ! 絞まってる! 絞まってるから!!」
後ろからちみゃが、前からリアが首に手をかけてきている。あん? 女の子に囲まれて嬉しいか、だって? ガッチリ首ホールドされててそんな事考えてる暇ないわ!! 誰か、マジで助けて……。
「お二人共、その辺にしておかないとそこのロリコン野郎が死にますよ。別に構いませんが」
「なんて冷たすぎるお言葉!」
「フタミン、君もこっちへ来るかい……? 今なら『傷心ジュース―人生こんなもん味―』奢るよ……」
「……頼む」
ちみゃとリアに離れてもらい、フェイトとその場に座り込んで乾杯する。
「……はぁ。ただの冗談ですからそこまで落ち込まないでください」
「いや、だって……なぁ?」
「恋愛については良く分からないけど、普通好意を持っている相手からああ言われたら傷つくんじゃないかな?」
「うぐ……そ、それはそうなのですが、つい口が滑ったと言いますか……」
「ユエ……お兄ちゃん、嫌いなの?」
「なんと!? そんな……マスターの事が嫌いじゃったとは……」
え、俺綾瀬に嫌われてるの……? もう死ぬしかないじゃないか。
「ごめん、ちょっと死んでくる」
「私まだ何も言ってませんよ!? ……そ、その告白自体を嬉しく思うくらいには好きですから、そこは安心してくださいです……」
「……ユエ、顔真っ赤」
「計画通り、なのじゃ!」
「「タチ悪っ!!」」
このロリ組、揃って俺達弄りに来てやがる……! 成長したと喜ぶべきなのか、今後を考えて叱っておくべきなのか……。
side-クウネル
「いやぁ、青春ですねぇ」
「全くだ。クウネル、あなたも飲むかい? 『あるあるシリーズ~牛乳拭いて洗うの忘れてた雑巾~』」
「君も引きずってますね。そんな事では女の子にモテませんよ? フタミン君の様に」
本当に不思議な少年ですね~。どうしたらあんなにロリっ子を惹きつけられるのか知りたいものです。キティとも仲が良さそうですしね。
「……僕にそんな資格はないよ」
「ふふ、人を好きになるのに資格なんて必要ありませんよ。ただ好きかどうか、それだけです」
「ふむ……となると僕が好きなのはフタミンかな」
「…………えっ」
これはこれは……もしかしてもしかしなくても私は彼を変な方向に導いてしまったのでしょうか?
「そうと決まれば早速告白だね、うん」
「お待ちなさいフェイト君。それはいけない」
「? どうしてだい?」
「よくよく考えてみてください。彼はあの幼女が好きなのでしょう? それならフェイト君に告白されても困るだけではないですか?」
「……それは確かにそうだね。彼の困る事はしたくはない」
予想外過ぎて対処に困りますね……。フタミン君には常にロリっ子を堪能させてもらっていますし、助けてあげたいですね。と言うか多分フェイト君が言っているのは友人としてですよね? そうであってくれないと本気で困りますよ。
「……一応聞いておきますが、フェイト君はフタミン君にどんな感情を抱いているのですか?」
「……言わせないでくれ、恥ずかしい」
「………」
フタミン君、すみません……どうやら真性だったようです。
「……『親友』などと、言えるわけ無いだろう」
「はい?」
「なんでもないよ」
~今回のドリンク~
・『はいぱ~トランス! 変身を君に。』:飲むと変身出来る……かも知れません。どうなっても自己責任で!
・『傷心ジュース―人生こんなもん味―』:好きな人に冷たくされた時などに一杯。
・『あるあるシリーズ~牛乳拭いて洗うの忘れてた雑巾~』:雑巾はちゃんと洗いましょう。