あの後再びロリ談義に戻った変態二人を放置し、俺達はのんびり学祭を回っていた。のだが。
「やぁ、先日の件考えてくれたカナ?」
「……?」
「え、なんだっけ?」
「超鈴音か。何の用だい?」
「まぁそう来るだろうとは思っていたヨ。私達の同志に、と言う話を先日させてもらったのダガ」
あー、そう言えばそんな事もあったなぁ。今日色々……本当に色々あったからガチで忘れてたよ。
「……ヤ」
「むぐ、ロリみん!」
「いやー、生憎俺忙しくてさぁ」
「さっきまでのんびり学祭回ってたネ!?」
「学祭をのんびり回るのに忙しいと言う意味だよ」
フェイト、今回はナイスフォローだぜ。
「意味が矛盾してないカ!?」
「まーまー、これでも飲んで落ち着けって」
「ヒッ!? そ、その手には乗らないネ……。先日飲んだ『涙腺崩壊―玉ねぎ千個詰めました―』のせいでトイレに数時間程篭るハメになったり、涙と鼻水垂れ流しすぎてみんなから心配されすぎてまともに活動が出来なかった事は忘れないヨ。おかげで計画にズレが生じてちょっとピンチネ……」
「えー? 面白いと思うんだけどなぁ」
「……面白い」
「うむ。実に興味をそそられるね」
「君達頭と舌は大丈夫カ!?」
酷い言われようだ。でも、麻帆良の最強頭脳でもこの味の理解は出来ないのか。非常に残念だよ……。それこそ同志が増えるかと思ったのに。
「で、もう祭りに戻って良いかな?」
「むぅ……本音を言うと是非同志になってもらいたいガ、嫌々なられても意味がないからこの辺で失礼するネ。一応、リアにこれを渡しておくヨ。ネギ坊主にプレゼントしたものと同型ネ」
「……?」
「ああ、タイムマシンか」
でも学祭中しか使えないみたいだからあまり意味ないけどなぁ。学祭何度もやり直したってしょうがないし。ネギ君みたいに超がつくほど忙しいならともかくとして。
「ほう? 時間跳躍とは随分規格外なものを。超鈴音……君は一体何者だい?」
「私カ? 私は……100年後の未来から来た火星人ネ!」
「……火星人?」
「まぁ、今時火星人くらいで……」
そんなに驚く事でもなくね? だって見た目普通の人だし。実は男でした。って言われる方が驚くわ。
「あれ!? 何か思っていた反応と違うヨ!? そこはもっと驚くところではないカ!? 火星人ヨ火星人!」
「超鈴音。彼の周りには悪魔幼女・変態悪魔・すらいむ幼女・吸血鬼(見た目は幼女)。他にもまだまだいるが基本的に人間。と言う括りでは周りに一握りしかいない。今更火星人一人くらいで驚くと思うかい?」
「……妙に幼女が多いのが気になるガ、ロリみんなら納得できるね」
「つーか、お前ずっとロリみんって呼んでるよな? いい加減にしないと殴るよ?」
「……お兄ちゃん、チャオは人外……?」
「それは失礼だから言っちゃダメだぞー?」
人外と言われて喜ぶ奴がいるだろうか? いや、いないだろ。
「あ、アハハ……一応れっきとした人間ヨ? 火星人なだけで。さて、あまり長居するわけにも行かないからそろそろ行くヨ。味方に引き込めなかたのは残念ダガ」
「理由教えてくれよ。納得出来る理由なら考えるからさ」
「フ、ム……まぁ確かに何も言わずに仲間になれと言われても無理カ。君が聞いて理解出来るかは分からないが私の目的は――」
面倒だったのである程度聞き流したけど、要は未来を変えたい。そのために魔法の事を世界中にバラす、と言う事らしい。
「へぇー。魔法をバラす、ねぇ」
「ウム。この計画は私の全てネ。世界樹の22年に一度の大発光に合わせて私は100年後から来て二年の歳月を費やした。まぁ、異常気象の影響で予定より早まったガ」
「全て、か」
「フェイト?」
「いや、僕も一時期計画が全てだ、と言う思いがあったのだが……ここに来て、フタミン達とドリンクの研究をしているうちにそれもなくなった」
こいつの言う計画って物凄く軽いもんじゃないだろうか? と思ったりしてるんだけど、実際どうなんだろう? 学祭終わったら教えてくれるって話だけど……。
「……何が言いタイ?」
「そうだね、僕は君じゃないから君の事は分からないけれど、他に夢中になれるものがあればその『全て』と言うのは案外簡単に崩れ去るものだよ?」
「夢中になれるものカ……。私にとってはそれがこの計画ネ。それ以外には何もナイ」
「そう言っている人間ほどあっさり堕ちるものさ。別に聞き入れる必要はないし、そうして欲しいとも思っていないから気にしなくていいけれど」
「……いや、フェイト・アーウェルンクス、君のその言葉……覚えておこう」
超はそれだけ言って消えた。もう消えた事については驚かない。クーネルさんも消えるし。
「超も色々大変そうだなー」
「ま、彼女がどう出ようがこちらに直接危害を加えて来ない限りは問題ないだろう」
「……この時計、邪魔……お兄ちゃん、どうすればいい……?」
「それ、超に言ってやれよ……。まぁ、それなら次あいつと会った時に俺から返しとくか」
「……ありがとう」
リアから受け取ったタイムマシンをズボンのポケットに入れておく。忘れないようにしないとなぁ。未来から来たってんなら帰っちゃったらもう会えないだろうし。でも、それならなんでリアに預けたんだろう? 物で釣られるような子じゃない事は既に分かってると思うんだけど。
「ところで、しおりん達はどこ行ったんだ?」
「そう言えば見当たらないね。先程までそこにいたんだが……超鈴音と話している間にどこかへ行ってしまったようだ。念話で探そうにもこの人混みだ。近くに目印になるようなものも無いし……」
「……お兄ちゃん、アレ行きたい」
「え? サーカス?」
「良いんじゃないかな? 僕もサーカスは見た事がない。是非行こうじゃないか」
「お前が行きたいだけじゃねーか」
けど俺も見た事ないしリアも行きたいって言ってるから……行くとしますか! しおりん達はまぁ……そのうち見つかるだろ。つーかあいつら迷子になりすぎだ。
「あら、フェイト様にフタミン様も見に来たのですか?」
「お前ら、せめて行き先くらいは伝えていけや」
「ご、ごめんなさいですぅ……」
「で、ですがフタミン様! これは栞が勝手に……」
「うんうん。まずはその手に持った肉まんをどうにかしようなー?」
全員観る気満々じゃねぇか。俺達もお前ら放置してこっち来たわけだから別に良いけどさ……。
「……やぁ」
「うおっ!? えっと……誰だっけ?」
「……ザジだ」
「リア、知り合い?」
「……同じクラス」
なんでこう、俺に対して後ろから声かけてくる奴ばっかなの? なに、俺の驚くの見て楽しんでるの?
「その格好を見るに君もサーカスの団員だと思うが……違うかい?」
「合ってる」
「でしたらここでのんびりしててもよろしいのですか?」
「たまたま、幼女を侍らせてるロリコンを見かけたから」
「おい」
その言い方止めろ。周りが俺見て崇めだしたから。教祖様だのロリコンマスターだの聞こえてきたから。つーかこの辺ロリコンしかいねぇのかよ。怖すぎるわ。
「……ザジ、それ何?」
「ちみゃー」
「…………トモダチ」
「お前も知らないんだな」
「一見魔法界の生物に似てはいるけれど……僕も見た事ないな。みんなはあるかい?」
フェイトの問いかけにほむほむ達も首を横に振る。本当に何なんだろうな。あの小型のドラゴンみたいな珍妙な生物。
「ちみゃー」
「いてぇよ。いきなり噛むなよ。ザジ……だっけ? あんたのトモダチだろ、なんとかしてよ」
「あげる」
「トモダチあげんの!? お前の中でのトモダチ像どうなってんの!? そんな簡単に人にあげていいの!? あとなんでこいつ俺の頭に乗っかってんのさ!」
「気に入ったみたい。だから、あげる」
「みゃー」
「……可愛い」
どうやらリアはこの謎の生物を気に入ったようだけど……いやほんと何で俺の頭の上に? それとお願いですから頭噛むの止めてもらって良いですか?
「じゃ」
「何しに来たんだホントに」
「……お兄ちゃん、それ抱っこしたい」
「ほれ」
まさか、こいつ押し付けるために来たんじゃないよな? ……違うよな?
「しかし、正式にフタミンのペットとなると名前が必要だな」
「でしたら、やおい、と言うのはどうでしょうか!」
「ふざけんな」
「……ちみゃ」
「「「「「え?」」」」」
「……鳴き声が、ちみゃーだから、ちみゃ」
「ちみゃー」
リアがそう呼ぶと嬉しそうに返事をして俺の頭に舞い戻ってきた。俺の頭は寝床じゃねぇぞ。あと餌でもないから噛むな! 普通に痛いから!
「ふむ、まぁ良いんじゃないかな。僕が思いついたのは名前はネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲、と言う名前なんだけど」
「そんな名前つけられるわけねーだろ。何だその2つの玉と1本の棒で構成されたような名前。いきなり下ネタに走ってんじゃねぇぞ。そう言うのはしおりんの役目だろうが」
「えっ!? 私そんな役回りなんですか!?」
「「「「何を今更……」」」」
「ちょ、みんなまで!?」
「ま、とりあえず今日からこいつはちみゃで良いだろ」
「……ちみゃ、おいで」
「ちみゃー」
「♪」
ちみゃを抱くリアは凄く嬉しそうだ。……ザジ、ありがとな。出来れば、噛み癖治しといて欲しかったな……リアに抱かれながら器用に俺の手噛んでるんだもん……。
~今回のドリンク~
・『涙腺崩壊―玉ねぎ千個詰めました―』:名前の通り玉ねぎを千個詰めたドリンク。凝縮された玉ねぎの成分は涙腺を崩壊させる。効果は数時間にも及ぶ。
今回の、と言っても過去に出てきたものですが……。
ちみゃーと鳴く生き物は超のお別れ会の時にザジが超にプレゼントしていたトモダチです。噛み癖があり、主人公(ロリコン)の頭や手と言った箇所を常に噛んでいます。