「うー……ん?」
あれ、俺どうしたんだっけ? 確か綾瀬が逃げるから追いかけて……んで綾瀬が急に止まって、俺はそのまま勢い余って落ちたんだっけ?
「つーか冷たっ! 水に落ちたおかげで大した怪我もなさそうだけど……。あー……ついに告白しちゃったなぁー」
ごめんなさいって言われた時はどうしようかと思ったけどフラレた訳じゃなさそうだし、どうせなら向こうから告白されるくらいまで男磨いて出直してみるか?
「となると……修行かな?」
見た目だけなら服着飾ったりでどうにかなるとして、これから魔法にどんどん関わっていくんだし、そうなるとネギ君が言ってたように危険な事もあるかも知れない。だったら、好きな女くらいは守れるようになりたいと思うのは男として当然だと思う。
「けど、そうなると誰に修行つけてもらうのがいいんだろ? ピッ○ロさんいたら一番良いんだけどなぁ」
俺の身の回りにいる強い人で考えてみよう……。エヴァ、は嫌がってつけてくれなさそう。ヘルマンはどうせロリがどうのこうので会話が成立するかどうか怪しい。と言うか俺のストレスがやばい。フェイト……強いのは確かだろうけど、何かあいつに頼んでもいきなり階段すっとばして訳分からん事教えられそう。リアは……うん、兄としてのプライドがあるし? 他に知ってる人で修行付けてくれそうな人……クーネルさん、か?
「いやいや、待つんだ俺。あんなド変態に何の修行を頼むつもりだ? 気がつけば俺までド変態に仕立て上げられるかも知れないんだぞ……?」
うーん……一応一通りあたってみるか。ひょっとしたら真面目に聞いてくれる奴がいるかも知れないし。
「よし、とりあえずみんなと合流しよう!」
「ふたみんさーん!」
「旦那ー!」
「ネギ君にカモ君じゃないか。わざわざ探しに来てくれたの?」
「はい! お怪我はありませんか?」
擦り傷すら負ってないって言ったらどんな反応されるのか……。
「しっかし、こりゃ軽く20mは落ちてんな。いくら水がクッションになってるとは言え……」
「いや、その……無傷、かな?」
「あんたやっぱりバケモンだよ!」
「なんであの高さから落ちて無傷なんですか!?」
「俺が知りたいよ」
なんで俺無傷なんだよ。ギャグ補正でもかかってんのかよ。
「ま、まぁ何にせよ無事でなによりだよ。ゆえっち達と合流しやしょう!」
「「おー!」」
それからネギ君とカモ君の後をついていき、綾瀬達と合流する事が出来た。
「いやー、一時はどうなる事かと思ったけど、無事で良かったよふたみん!」
「無事な事にびっくりだけどなー」
「二見さん!」
「ん?」
「あの、先程の告白のお返事なのですが……」
「おう」
あー……別に今すぐじゃなくていいんだけどなぁ。キチンと好きだと言わせるって決めたばっかだし。
「大変身勝手な事で申し訳ないのですが、少し……待って欲しいのです。考えても悩んでも未だに二見さんに対する感情がハッキリしないのです。こんな状態でお返事をするのは双方にとっても良くないと思った次第で……。なので、私の気持ちがハッキリとするまで、待ってはいただけないでしょうか?」
「ん、待つよ。それに、俺も待って欲しかったし」
「え? それはどう言う……?」
「何て言うかさ、せっかくだから次は綾瀬の方からちゃんと好きって言ってもらえるように頑張って男磨こうかなー、と思ったり」
俺がそう言うと、さっきまで申し訳なさそうな表情をしていた綾瀬が一転、柔らかな表情になる。うん、凄く可愛い。改めてそう思った。
「……はい。期待、してますよ?」
「おう」
「ムフフ、今の撮った? 撮った? 私はバッチリ!」
「ウチもバッチリやえ~」
「ゆえ、頑張れ~!」
おいそこ、覗き見するだけじゃ飽き足らずビデオや携帯で撮るとかいい趣味してんなおい。いや、まぁ突然こんな事おっぱじめた俺達が悪いかも知れないけどさ?
「……とりあえずあいつらどうする?」
「そうですね……やはりあのビデオカメラを処分しましょうか」
「だな。よーし、パル達そこ動くなよー!」
「フッ、動くなと言われて動く馬鹿はいないわー!!」
「あ、ちょ、逃げるなです~~!!」
その後、なんとかパルを捕まえてビデオの中は処分させていただきました。パルが泣いていたが、自業自得なので放っておく。
「あん、もうゆえのいけず~」
「いけずではありません! い、今でも顔から火が出そうなくらい恥ずかしいのにビデオなどと……!」
「ちぇっ。ま、それはそれとして――さぁネギ君。楽しい楽しい仮契約を始めよっか~」
「ひっ!?」
「フヘヘ兄貴、観念してくださいよぉ~?」
こえーよ。パル、そのヨダレ垂らすの止めようか。本気で危ない人になってるから。ネギ君一目散に逃げ出したから。そりゃ、いきなり目の色変えてヨダレ垂らしながら襲われそうになったら逃げるわなぁ。
「あーっ!! なんで逃げるのネギ君ー!」
「だ、だってハルナさんなんか目が怖くて!」
「このか、ゆえ! 自慢の魔法でネギ君捕まえてっ!!」
「ムリやー」
「お断りしますです」
結局ネギ君はパルの魔の手に捕まり、仮契約させられた。ネギ君、この件でキスとかその辺がトラウマにならないと良いけど……。
「さ、次は旦那とゆえっちだよなぁ?」
「「えっ!?」」
「グフフ、だよねぇ~? みんなー、この2人を仮契約させるわよぉ~!」
「「おー♪」」
「え、えとその……」
「待てやぁああああ!! お前ら馬鹿なの!? 今の状態で仮契約とか何の拷問だよ!」
「そ、そうですよ! こう言うのはもっと仲を深めてからですね……!」
既に好きって公言したんだぞ? そして向こうから好きと言わせるとまで言ったんだぞ!? なのに仮契約でキスとかこの先気まずいわ!!
「そんじゃ、ネギ君としてもらう?」
「ぬぐっ! 近衛さん、ここでそれ言うのはズルいって……」
「あ、ちょ、離すですハルナー!」
「まま、えーからえーから、ほいっ」
「あ、なにす――!?」
「!!!???」
俺は近衛さんに、綾瀬はパルにそれぞれ押され、綾瀬が俺の胸にちょうど飛び込んでくる形になった。俺は俺で思わず抱きとめちゃった訳で……要するに、誰がどう見ても抱き合ってるようにしか見えません。
「あ、わ、悪い……」
「い、いえこちらこそ……」
「あちゃー! やっぱ身長差でキスは無理かー!」
「お前後でぶっ飛ばす!!」
「と、とりあえず離れますね!」
「お、おう!」
お互いに離れようとしたその時、俺の後ろから足音が聞こえてくる。音からすると走ってるように聞こえるんだけど……アレ? この展開ってまさか……?
「……お兄ちゃん、見つけたっ!」
「あ、リアっ! 今飛びつかれたらバランスがっ!!」
「え……キャァアアッ!!??」
リアに後ろから飛びつかれ、その勢いで綾瀬の方向に倒れてしまう。……あの、なんか柔らかいものが唇に触れてるんですけど? ねぇ、これってもしかしてもしかしますか?
「――っ!」
「!?」
「うっわぁ……ガッツリいってるわねぇ」
「仮契約成立だぜー!」
「「あわわわ……」」
「……? お兄ちゃんとユエ……キス、してる?」
ああ、やっぱりそうなんですね? 恐る恐る目を開くと、超至近距離に綾瀬の顔。そして綾瀬はその顔をこれでもかと言うくらい真っ赤にさせていた。
「ぷぁっ! す、すすすすすまんっ!」
「い、いいいいいえっ! こ、ここここちらこそ申し訳ありませんですっ!」
「いいいいや、そんなっ! や、柔らかかったしむしろもっとしたかったくらいでっ!」
「へうぇっ!?」
いや、待て落ち着け俺!? 無理な事は分かってるけど落ち着くんだ俺ぇっ!! 下手するとヤバイ事口走ってしまう! いや、手遅れかも知れないけど!!
「リ、リリリア! な、何かドリンクある!?」
「……ある。『キムチコーラブイヨン』。……さっき買ってきた」
「サ、サンキュ! ほ、ほら綾瀬も飲めよ!」
「え、ええ! 頂きます!」
リアが持ってきてくれたドリンクを一気に飲み干し、なんとか冷静になれた俺達。パル達が「うわぁ……」とか言ってたけど気にしない。
「……さっきのは事故だよな」
「……はい。そうしておきましょう。お互いのためにも」
「OK」
「グヘヘ、ゆえっち! 旦那とのファーストキス(はぁと)記念のカードだzぷろぱぁっ!?」
「「天誅!!」」
「……?」
こんな形でキスしてしまうなんて……いやまぁ、俺達らしいっちゃらしいかも知れないけどさ……。ここはもっとほら……ね? 良い雰囲気の時とかさ? あるじゃんそう言うの!! そういやリアにも事の顛末説明しとかなきゃいけないなー。
落ちても無傷な主人公(笑)。本当に人間なんでしょうかね?(笑)
それはさておき、ついにヤってしまいました。事故ですが。