side-フェイト
「――さて、そろそろ行くとしよう」
周りを見るとフタミンを含めみんなまだ眠っている。……確か4時くらいまで騒いでたのかな? 僕はまぁ、平常時なら寝なくても平気な体だからずっと起きていた訳だけれど。
「やぁ、ネギ君に犬」
「お前ついに犬呼ばわりか!!」
「フェイト、おはよう。君もフードを?」
「ああ。この方が面白くなると思ってね」
「「?」」
フ、この後が楽しみで仕方ないよ。皆の驚く顔が目に浮かぶ。
「フェイト? 何か企んでない?」
「いや、特に何も」
「お前、今完全に悪役の顔してたで?」
「犬面には言われたくないね」
「いい加減にせぇよお前!?」
まったく、良く吠える犬だ。うるさいったらないね。
「さて、僕は準備もあるし、先に行かせてもらうよ」
「あ、うん。それじゃまた後で!」
「お前は絶対俺がぶっ飛ばしたるからなぁ!!」
「君には無理だよ。それじゃ」
まずはフードを被り、顔が完全に隠れた事を確認する、と。まぁ、正直今更顔バレして困る事はないけど、これも仕込みの一部だ。仕方ないと言えよう。
「おはようございます、フェイト君♪」
「クウネルか。何か用かい?」
「知り合いを見つけて声をかけるのはおかしいですか?」
「……変ではないね」
「フフ、でしょう? そうそう、いかがです? 先程見つけた『果物ミックス~全てはここから始まった~』です。中々面白い味をしていますよ?」
「頂こうか。……ふむ、確かにこれは面白いね。ミックスと書いてあるのに味が全て独立している……!」
MAHORAドリンクは素晴らしいね。僕の好奇心を常に刺激する。
「君は確かキティと第一戦でしたか?」
「ああ。ちょっとした仕込みを考えてはいるがね」
「ほう? それは……面白いのですか?」
「僕が最高に楽しめると思っているよ」
「なるほど。それでは楽しみにしておきましょうか」
期待は裏切らないよ。武道会と聞いた時からこの仕掛けは考えていたのだからね。
「……フェイト、お兄ちゃんは?」
「リア君か、彼ならまだ教室で寝ているよ?」
「……そう」
「フェイト君、この素晴らしいロリっ子はどなたですか?」
「彼女はリア君と言って、フタミンの妹だよ」
「……?」
クウネル、その手に持った猫耳と猫尻尾とセーラー服はなんだい……?
「リアさん、と言うのですね。私はクウネル・サンダース、あなたのお兄さんの大親友ですよ」
「……くうねる? 呼びにくい……」
「呼び方は何でも結構ですよ。それより、この猫耳と猫尻尾とセーラー服を装着してはくれませんか?」
「死ね」
「クウネル、今の一瞬であなたの評価が最低ランクに堕ちたよ」
「私はドMなのでむしろご褒美ですね。ささ、もっと罵ってくださいませんか?」
「……怖い。お兄ちゃんの所に行く……」
明らかに怯えた表情を浮かべたリア君はそのまま走り去ってしまった。まぁ……当然と言えば当然だろうね。
「はて、一体何が悪かったのでしょうね?」
「存在だと思うよ?」
「フフ、今の冗談はグッドですよ」
「本気で言ったつもりだったのだけれど……」
sideout
「おい、全然客来ないぞ」
「おっかしーな。昨日は確かに5人来たのになぁ……」
「……ん? すまん、もう1回人数言ってくれ」
「え? だから5人だよ5人。ガチムチ2人の集団と、女性客が3人」
「それ集団って言わねぇから!! え、なにたった5人であんだけ稼いだのかよ! ガチムチすげぇな!?」
と、そこへ見慣れた銀髪少女が姿を現した。
「……お兄ちゃ、お姉ちゃん」
「言い直さないでいいよ! 普通にいつも通り呼んでくれて良いから」
「「「「天使が、来たっ!」」」」
「……お兄ちゃん、怖かった」
「え、どうした急に?」
良く分からないけど、チャイナ服の裾引っ張るの止めてください。スリットからパンツ見えてしまいます。男物の。
「……変態に、襲われかけた」
「そいつの名前を教えてくれ。ぶっ殺しにいってやる」
「「「「俺達も行くぜ」」」」
俺はこのクラスが大好きです。
「……クウネルとか、言ってた」
「あ、あの変態フード野郎――っ!!」
「……お兄ちゃんの大親友?」
「今さっきその絆は断ち切ったよ。つーか単なる知り合いで別に親友ってほど仲良くねぇし」
リアの頭を一撫でして戦闘準備を開始する。
「ロリみん君、店はもう閉めた。いつでも行けるよ」
「ありがとうロリ林君。次言ったらあの変態フードの前にお前からぶっ飛ばすぞ」
「それはお互い様だよ」
「まぁいいや。それより今はリアだ。よーし、お前ら! リアを襲おうとした変態フード野郎を仕留めるぞ!!」
「「「「応!!」」」」
だが次の瞬間、俺の足元に魔法陣が出現した。
「え、え? 何これ!?」
「……強制転移?」
「お、おいふたみん? お前……いつから魔女っ子に? 女装して目覚めたのか……?」
「ちげぇよ!! あー、クソ! どこ行くんだよコレェエエエエ!!」
side-フェイト
「さて、次は僕と貴女の試合だね」
「……フン」
「フ、いきり立っているね。だが、それも仕方ないか」
「いやぁ、どうなるか見物ですねぇ~♪」
「クウネルが余計な事を言わなければもっと面白くなったんだけどね?」
「クウネル、私が勝てばヤツの情報を教えると言うのは本当だな?」
「もちろん♪」
その瞬間、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの雰囲気が一変する。まったく……最強種ともあろうものが。
『それでは続きまして第八試合! かの有名なMAHORAドリンクを愛する謎の転校生『F』選手対、麻帆中囲碁部エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル選手!!』
「お前……何故名を名乗らん」
「その方が面白いからだよ」
「フェイトのFがか? ……ん? 確か奴の名は……お、おい待て、お前まさか……!!」
『さぁ、この2人はどう戦うのか!! それでは第八試合、ファイト!!』
「では、僕の素顔を見せようじゃないか」
「何と言うか……奴も気の毒にな」
『おっとー! 急にF選手が煙を出した! これは何かの技かー!?』
技なんて大層なものじゃないさ。これはちょっとした演出だよ。さぁ、出てくるんだ。もう一人のF……FUTAMIN!
sideout
「……あれ?」
目を開けると何故か目の前にはエヴァが。しかも俺を見たその顔は驚愕に満ちている。さらにぐるっと見渡すとたくさん人がいる。あ、綾瀬見つけた。え、何その哀れむような目。てか、目の前にエヴァがいるって事はここは武道会会場ってわけで、って事はつまり俺……この女装姿を晒してる……?
『こ、これは――ぶふっ! なんと! F選手の正体はぶはっ! ぷくく、麻帆良にその名を轟かすロリコンの中のロリコン! 既に多数のロリを惹きつけその手篭めにしていると噂のロリコンマスター! 一部では崇拝している者まで存在していると言うあの! 伝説のロリコンマスターフタミン!!』
「朝倉テメェ人の格好笑いながらどんな紹介してくれやがんの!? ぶん殴んぞ!!」
『あ、あれが伝説のロリコンマスター……』
『我らロリコン教の教祖様……!』
「何それ!? 俺そんなものになった記憶一ミリもないんだけど!?」
怖いよ、麻帆良いろんな意味で怖すぎるよ……!
『てかフタミン、いつの間に女装に目覚めたの?』
「目覚めてねぇよ!! クラスの出し物だよ! つーか、俺の事知ってる奴ら笑いすぎだろ!!」
パル→こっち指差して大爆笑。後で覚えとけ
宮崎さん→顔は背けてるけど肩が震えてる。アレ絶対笑ってる
近衛さん→普通に笑ってる
綾瀬→表情消してるけど小刻みに震えてる。もう素直に笑えや
ネギ君→控えめに笑ってる。天使か
小太郎→腹抱えて大爆笑。リアに氷漬けにしてもらおう
フェイト→してやったり顔。あいつ、マジデコロス。
クーネルさん→顔は見えないけど顔を押さえて笑ってる。リアの件もあるけどとりあえずぶん殴る。
エヴァ→笑いすぎて痙攣してる
『にしても、さすがロリコンマスターだぜ。やっぱあの年でロリコンに目覚めないとマスターにはなれないんだな』
『ああ、俺今日からフタミン様を崇め奉るぜ』
『それより、アイツ中々いいケツしてないか?』
「誰だ阿○さん呼んだの!!」
「だ、だめだ……笑いすぎて死ぬ……アハハハハッ!!」
「もういっそ殺せよぉおおおおおお!!」
結局、試合時間の15分間会場全体が笑いっぱなしで勝負は当然着くはずもなく、メール投票の結果エヴァが次に進む事になった。
「良かった……負けて本当に良かった……」
「ようやく落ち着い……ぶはっ!」
「御主人、笑イ死ヌンジャネェカ?」
その後次々と出場者の方々に肩を叩かれる俺。なに、この格好を晒して笑いものになった俺を哀れんでくれてるのか。あんたらさっきまで大爆笑してたくせに。
「やぁ、フタミン。災難だっt」
「死ねやテメェ!!!!」
「いきなり危ないじゃないか」
「お・ま・えのせいで散々目に遭ったわ!! 良いから黙って殴られろ!!」
「断るよ」
「……『障壁突破』、『戒めの風矢』、『戦いの歌』」
突如聞こえてきたリアの声。そしてなんだか力が湧いてきた。なんぞこれ?
「! リア君……僕の障壁を破るとは……おまけに拘束まで」
「……お兄ちゃんを取った罰」
「待つんだリア君、僕は決してそう言うつもりでは」
「おらぁっ!!」
「ごフッ!?」
初めて……初めて俺の拳はフェイトの顔面を捉えぶっ飛ばす事に成功した。
「……イタ気持ちいい」
「変な性癖覚醒しちゃった!?」