「はぁっ、はぁっ!」
「あ、フタミン様~! こっちですわー!」
「お、おおおオメェらなんて事学園放送で流してくれてんの!? 俺を社会的に殺す気か!? いやもう既に死んだと言っても過言ではないけどな!!」
少し待ってから走るべきだった! あの放送聞いてすぐに飛び出したもんだから道行く人にロリコンと指を差され……。
「やっぱり怒ってます」
「こ、怖いですぅ」
「全部栞が勝手にやった」
「環!? ここは一蓮托生では!?」
「ぷいっ」
「しおりん……何か訳があるなら聞こうか」
これがどうしようもない理由なら我慢してやろう。携帯とか持ってないから連絡の取りようがなかったとか大怪我したとか。
「その、フェイト様の格闘大会の予選に行こうと思ったのですが場所が分からなくて……なので迷子と言う事でフタミン様に迎えに来てもらおうと」
「それで?」
「フタミン様だけじゃ分かり辛そうだったので代名詞をお付けして……」
「俺の代名詞はロリコンじゃねーよ!?」
そういう風に認知されてんのかよ!!
「え、そうだったのですか!?」
「そこで驚かれる事に驚きだわ!」
「知らなかったニャ……」
「フェイト様からはロリコンの化身とお聞きしてましたが……」
「ビックリした」
あいつ、マジでいっぺんぶっ飛ばす。障壁だろうがなんだろうがぶっ飛ばしたる!!
「はぁ……まぁ今回はフェイトの野郎が悪いって事で我慢するか……」
「「「「ほっ」」」」
「……お兄ちゃん、見つけたっ」
「お、リアか……ってどうしたどうした。んないきなり抱きついてきて」
「ぜぇっ、はぁっ……ちょ、ちょっと待ってくれ……! 一体どこまで……」
「あ、ほむほむだニャ」
「……気づいたらお兄ちゃんいなかった……」
あー……あれから迷子になった訳か。んでさっきの放送聞いてここまで来たと、そんな感じか?
「た、大変だったんだぞ!? いきなり泣きそうになるし、お前の名前を聞いた途端走り出すし!!」
「いや、先にいなくなったのそっちだからな? まぁ……寂しい思いさせて悪かったな」
「……携帯繋がらなかった」
「すまん、色々あって捨てた」
今度ほむほむ達の分も合わせて買いに行かなきゃなぁ……。金? 全部フェイト持ちに決まってるだろ!
「捨てた……一体何があったんでしょう?」
「お前らのせいだよ!? この場合フェイトか? この際どっちでもいいけどな!!」
「あ、あのぉー。それよりフェイト様の所へー……」
「あん!? あ、あー……そうだったっけ。いつまでもウダウダ言ってても仕方ないか……」
後でフェイトを詰問すれば良いだけの話だ……! 誰がロリコンの化身だあの野郎!!
「フェイト・アーウェルンクスなら無事に予選突破したヨ」
「ほぇ?」
「誰だ?」
「……チャオ」
「何でそんなこと知ってんの? つか俺達に何か用でも?」
「フフフ、大会は私が買収させて貰ったからネ。理由は表、裏の世界問わずこの学園最強を見たいから。それだけヨ。……まぁ、このままだとフェイト・アーウェルンクスの一人勝ちになりそうで主催者としては面白味に欠けるガ」
そういやあいつかなり強いんだっけ? 最近の動向からしたら全くそんな風には見えないんだけど。
「フェイト様なら当然です!」
「うむ!」
「ですね」
「そうニャ!」
「デス」
「……ロリみんは伊達じゃないネ」
「待てやコラ」
この学園に俺の安息はないのか!!??
「で、ここからが本番ネ。リア、私達の同志にならないカ?」
「イヤ」
「そ、即答カ……。理由は?」
「……興味ない。私は、お兄ちゃんと一緒なら……それで良い」
「と、まぁこの調子でさっきからずっと引っ付いてるんだけどな」
そんなに長い時間離れたわけじゃないんだけどなぁ。てか、普通に授業受けてる時の方が長いだろうに。
「フム……なら特別にロリみんも招待するネ」
「え、面白くなさそうだから嫌ですけど?」
「むぅ……正直今は少しでも人手が欲しいネ」
「……これあげるから帰って」
「いやいや、ジュース一本なんてそんな幼稚ナ」
「……飲んだら考えても、いいよ?」
「ナヌ? そう言う事なら……って、これはマサカ……」
リアが超に手渡したのは『涙腺崩壊―玉ねぎ千個詰めました―』と書かれているドリンクだった。ほぅ、中々面白そうなドリンクじゃないか。
「……これを?」
「……飲む」
「大人しく諦めた方が良い様な気がする」
「ですよね……」
「胃が心配」
「胃だけじゃない様な気も」
こいつらドリンクに対して失礼だな!! そんなやばい成分が入ってる訳ないだろうが!
「いやしかし、これを飲むだけでリアが同志に加わってくれると考えるナラ……飲むネ!」
「……にやり」
「ん?」
「……なんでもない」
リア、お前今……? 何企んでるんだ一体?
「……の、飲むネ!!」
「……チャオのちょっといいとこ見てみたい」
「どこで覚えたそんな台詞。またパルか!?」
「ほ、ほんとのほんとに飲むネ!!」
「早く飲めよ」
せっかくのドリンクが勿体無いじゃないか。
「物凄い脂汗だな」
「仕方ないでしょうね……」
「あ、私も何か買って来ますね~」
「――ゴクッ! ……? んぐっ!!?? こ、これは、玉ねぎが鼻に……目が、目がぁああああああっ!!」
「うっ、こっちまで臭いが……っ!!」
「し、染みるですぅー!!」
「も、最早兵器……っ」
「……完全勝利」
「エグいな……」
それにしても超は大丈夫だろうか? 目から涙溢れ出てるわ、鼻水も止めどなく出てきてるし……正直女の子がして良い顔じゃないだろ。
「ハンカチいるか?」
「ス、スマナイ……き、今日はもう帰るネ。私も少し急ぎすぎたヨ」
「……計画通り」
「妹が末恐ろしい件」
「そう言えばフェイト様はどこに行かれたのでしょうか? もう予選は終わったとの事ですが」
「念話とやらで呼べないのか?」
『僕なら会場にいるよ。ネギ君達と一緒だ』
「あ、フェイトから念話来た」
『じゃ、俺らも行くからちょっと待っててくれ』
『分かった』
「どうやらまだ会場にいるみたいだから行くぞー」
全員を引き連れて会場に行くと、フェイトの姿が見えたので問答無用で殴りかかる事にする。周りのみんなが驚いていたがそんなの知らん。
「わぁっ!? ふ、ふたみんさん!?」
「よぉ、フェイトてめぇ……しおりん達にとんでもない事教え込んでくれちゃってるじゃねぇか……!」
「はて? 僕は真実を伝えたつもりだが?」
「ど・こ・が真実だ!? 嘘100%じゃねぇか!!」
「なら聞いてみるが良い。みんな、彼を一言で表すと?」
「「「「「ロリコン」」」」」
こ、こいつら……っ!!
「ほらね?」
「ほらねじゃねぇよ! くそっ……!」
「まぁ、こればかりは仕方がないですよ。貴方がロリコンだと言うのは覆しようのない事実ですし」
「綾瀬……とりあえず頬つねっていいか?」
「なんでですか!?」
いや、お前今の発言はどう考えても喧嘩売ってんだろ。
「まーまー、落ち着いてよロリみん!」
「ふざけんな神楽坂テメェっ!!」
「ア、アスナさん、あまり失礼な事を言ってはダメですよ!」
「そうやえアスナー。そないハッキリ言われたら恥ずかしいもんなんよ?」
「それフォローになってないから!」
何これ周り全員敵っすか? ……泣きたくなってきた。
「……大丈夫、私はお兄ちゃんの味方」
「良かったですね?」
「お前絶対俺の事馬鹿にしてんだろ」
なんで俺コイツの事好きなの? ちょっと自信なくなってきたんだけど。
「まぁ、冗談はさておき……すまなかったね、彼女達の面倒を見てもらって」
「実質見てたのはほむほむだけだったけどな。しおりん達はあっと言う間にどっか行ったし」
「うふふ、調のコスプレ素晴らしかったですわ」
「もう二度としたくないです……」
一体何があったんだろうか……? 物凄く嫌そうな顔して震えてるんだけど。
「さて、俺は自分のクラスの打ち上げ行くけど、フェイトはどうするよ?」
「ふむ、特に疲れた訳でもないし、僕も行くとしよう」
「……私もお兄ちゃんと一緒に――」
「リアちゃんは私達と一緒に来るよねーっ!」
「……あー」
「それではまた明日この武道会場で」
リアがチラチラとこちらを見ながら連行されていったが……まぁ、大丈夫だろう。
「あ、私達はどうしたら良いでしょう?」
「んー……寝るなら家戻るか? さすがに打ち上げには連れて行けないし……」
「眠い……」
「そうですわね……では私達は一旦家に戻らさせていただきますわ」
「あ、ふたみんさん!」
「ん? ネギ君何か用?」
てっきり綾瀬達と打ち上げいったもんだと思ってたけど……まさかまた恋愛事か!?
「その、ふたみんさんは今寮ではなく住宅街にお住みですよね?」
「うん。ほむほむ達も増えたって事でね」
「ふむ……つまりはあっちにいる君の姉と幼馴染の寝床かい?」
「あ、そう言う事ね。部屋は余ってるから特に問題はないけど……」
「本当ですか!?」
「お、おう。一応一般参加者向けの宿泊施設もあるけど?」
しかも無料って言うんだから太っ腹だよなぁ麻帆良。何て言うサークルだったっけ……どこぞの高級ホテル並みの施設を揃えてるとかなんとか。
「実はもう一杯みたいで……」
「なるほど、それで思い当たったのが僕らの住まいと言う訳か」
「不躾で悪かったね」
「そう言う意味で言ったんじゃないよ。変に曲解しないでくれるかな?」
「ホント仲良いよねぇ君達」
「フ、それ程でもないさ」
「むぅ……」
部屋はまだ十分過ぎるほどあるから、別に2人増えたくらいでどうにかなるわけでもなく。それに俺とフェイトとリアは学祭期間は基本外で寝泊りだしな。
「ま、こっちはオッケーだから、ネカネさんとアーニャんに伝えて来いよ」
「あ、はい! 本当にありがとうございます! このお礼はまた必ず!」
「……なぁフェイト」
「なんだい?」
「ネギ君ってどうしてあんなに堅苦しいんだろうな? 俺としてはもっと友人感覚で接してくれても良いんだけど」
「彼はロリコンじゃないから無理じゃないかな?」
「パンチ!」
このやり取りも既に何度目か。だが、俺はフェイトを殴れるまで、パンチする事を止めないっ!!
「そろそろ無駄だと理解した方が良いと思うのだけど」
「見てろ、近い内にそのふざけた障壁ぶち抜くパンチを習得してやる!!」
「期待しないで待ってるよ。君が生きているうちに出来たら良いね?」
「ぬぐぐ……」
フェイトと話していると、ネギ君と一緒にネカネさんとアーニャんがやって来た。
「ふたみんさん、よろしいのですか? 家を貸していただくなどと……」
「ええ、俺達は学祭期間は基本外で仮眠取ったりしつつずっと騒いでますんで。気にせず使ってくださいな」
「あの家の管理者は一応フタミンだから、僕の事は気にしなくて結構だよ」
「……」
「え、何? 俺アーニャんに何かした?」
何でこんな睨まれてるの俺……?
「あ、ああああんたロリコンなんでしょ!? ひょっとして私に”諸事情により削除”や”自主規制”な事するつもり!?」
「へ?」
「おまけに”放送禁止用語”が”ピー音必須”になって”小説削除の危険性”するつもりなんでしょ!!??」
「誰かこの子眠らせて!?」
いきなり顔を真っ赤にしたかと思うととんでもないワードを連発するアーニャん。あの子の将来が心配すぎるぞ!? 一体どこでそんな知識備えたんだよ!! まだ絶対に早いだろ!
「ふむ、このまま放って置いても面白いけれど、僕達の存在が抹消されそうだから大人しくさせるとしよう。ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト。大気よ水よ、白霧となれ。彼の者らに一時の安息を。『眠りの霧』」
「それでさらには……はれ? なんか眠く……ぐぅ……」
「はぁー、危なかったぁ!!」
「あ、あらあら」
「アーニャんさん……逸材ですわ! これは是非こちら側に引き入れませんと!!」
「頼むからこれ以上面倒な子を増やさないでくれよ!!??」
大変お待たせいたしました。仕事の関係で今日まで全くと言って良い程時間が取れず……。その辺のことは活動報告にも書いてあります。
そしてアンケートのお知らせです。詳細は活動報告まで。
次回はいよいよ格闘大会編! ……に入れたら良いなと思っております。