side-栞
「はわぁ~、凄いですわねぇ」
「栞……ちょっと良いですか?」
「はい? どうかしましたか調」
「私達……完全にフェイト様やフタミン様達とはぐれてしまったようなのですが」
「ほぇ?」
辺りを見回すと、調の言う通りフェイト様もフタミン様の姿も見えません。……これは所謂迷子、と言うやつでは?
「どうしますか? 念話でフェイト様だけにでも連絡を」
「んー……せっかくなので色々見て回りません?」
「え」
「まずは皆さんしてるような仮装とやらからしましょう!」
「え、あの……栞?」
「ほらほら、行きますよ調!」
「え、えぇー……」
せっかくなので可愛い仮装しませんと! 調には何が似合うでしょうか……!
「……あの、栞?」
「はい?」
「この衣装とてつもなく恥ずかしいんですけど!? なんですかこれ!?」
「え? バニーガール、と言うモノらしいですけど?」
「いや、おかしいでしょう!? 明らかに浮いてるじゃないですか! と言うかこの服(?)露出が高すぎてもう……!」
「そうですか?」
調は結構胸もありますから似合いますのに……。ついでに写真撮っておきましょう。
「あ、ちょ、写真とかダメです栞! こんな姿フェイト様に見られたら……」
「大丈夫大丈夫。フェイト様も悦んでナニがおっきくなりますわ!」
「喜ぶの字がおかしくないですか!? この衣装そう言う目的のものなんですか!?」
「いえ、違うと思いますよ?」
まぁ、そう言う嗜好の殿方はいらっしゃるでしょうけど。それにしても、調は中々良いスタイルですわね……あの衣装だとそれが浮き彫りになると言うか……うん、ぶっちゃけエロい。
「貴女は一体何がしたいんですか!! こっちに来てからの貴女は少し……いえ、かなりおかしいですよ!」
「ふふ、フェイト様も言っていたじゃありませんか。多くの事を学べと」
「いやいやいやいや! これは方向性が違いません!? そしてそろそろ何か羽織っても良いですかね!?」
「えー」
「和服などと言う露出の低いゆったりとした仮装した貴女が言える台詞ですか!?」
「だって私貧相ですもの。胸が。それともなんですか? 私もバニーコスしてこの貧相な体を晒せと? それなんてプレイ?」
ええ、別に悔しくも何ともありませんよ? ……嘘です、物凄く羨ましいですわ。毎日ミルク飲んでますのに何故大きくならないのでしょうか?
「え、いや、その……」
「私みたいな体型はスク水とかの方が似合うんですよ」
「スク水……?」
「調が着たら変態チックにしかならないと思うんで却下で」
「変態!? この格好だけでも十分変態っぽいと思うんですが!?」
「いえいえ、良くお似合いですよ?」
なんてエロけしからんスタイルなのでしょうか……。調はやはり脱いでこそですわね……! 彼女には露出の高い服やボディラインがハッキリと出る服が似合います!
「ぜ、全然嬉しくない……」
「ふと思ったんですが、私達の中で一番胸が大きいのは調ですけれど巨乳と言うカテゴリーに入るのはいませんわよね?」
「え? ええまぁ……それが何か?」
「フェイト様は……貧乳好きなのかしら?」
「いえ、そんな理由で私達を傍に置いてはいないと思いますが!?」
とすれば何故私達の中に巨乳がいないのでしょう……。年齢的な問題? まだこれから成長するという事……?
「と、とりあえずどこか入りませんか? この格好でお祭りを回るだなんて……」
「別に誰も気にしないと思いますけれど……まぁ良いですわ。せっかくですからコーヒーでも飲みましょう」
「えぇ……」
フフフ、では行きましょうか。『世界コーヒー展』に……!
「おや、君達も来たのかい? ……調さん、その格好は一体……?」
「フ、フフフフェイト様ぁ!? し、栞! 謀りましたね!?」
「あら、何の事やら」
「ところで君達も飲むかい? このスリジャヤワルダナプラコッテ産のコーヒーは酸味が程よく効いていて美味しいんだ」
「え、ス、スリ……?」
「ホント! 美味しいですわフェイト様!」
普段は淹れるだけであまり飲んだりはしないのですが、これならちゃんと飲めそうですわ!
「ほう、栞君はイケる口か。ではこの南極産はどうだい?」
「はい! ……うぇ、苦いですわ……」
「ああ、通常の100倍の苦さらしいからね。僕としてはどうすればコクと風味を残したままこの苦さを出す事が出来ているのか気になる所だけれど……。ああ、一つ良いかい?」
「なんですか?」
「調さんはどうしてそんな露出の高い格好をしているのかな?」
「ひうっ!?」
「殿方の劣情を誘うためですわ! 調ったらスタイルは良いのに露出の少ない服を好む傾向にあるのでこの際一気に露出を高くして自分のスタイルに自信を持ってもらおうと思いまして!」
私だってもう少し胸があればあんなキャラやそんなキャラのコスプレが出来るのに……! あ、でもこの体型ならあのキャラがいけるかも……?
「し、栞!」
「ふむ、良いんじゃないかな? 中々似合っていると思うよ?」
「ほ、本当ですかフェイト様!? も、もしかしてフェイト様も劣情を……」
「いやそれはない」
「「ですよねー」」
「生憎僕はバニーよりメイドの方が好きでね」
「そっち!?」
「ではフェイト様! 私次は必ずメイドのコスプレを致しますわ!」
「楽しみにしているよ」
フェイト様がとても変態さんになっているような気がしますが、年齢的にはお年頃ですもの当然ですわよね!
「そう言えば暦君や環君達はどうしたんだい? ほむほむ君はリア君とフタミンと一緒にいるのを見たから大丈夫だろうけど」
「さぁ……私達も別行動していましたので……」
「ふむ、そうか。僕は格闘大会の時間までここでコーヒーを飲むけど、君達はどうするんだい?」
「私達はもう少し学祭を回ってみようかと思います♪ さ、行きますよ調!」
「え、あ、ちょ! せめて着替えさせてくださっ! あ、ああああっ!!」
「賑やかだね。……良い事だ」
今……フェイト様が穏やかな顔で笑いました? ……何故カメラを持っていなかったんでしょうか私! あんなフェイト様この先見れるかどうかも分からないのに!!
「ニャ。栞と……し、調?」
「おー、せくしー」
「でしょう!? どうですこの露出! この胸! 調のスタイルの良さを引き立てていますわよね!」
「お願いですから大声で言うのは止めてください栞! 周りからジロジロ見られてます!!」
うーん、この服でそんなモジモジと動いたらエロスしか出てきませんわね。まさか調ったら無意識で……? 恐ろしい子っ!!
「確かに……調がこんなにスタイルがいいとは思わなかったニャ」
「エロい」
「でしょう!」
「あ、貴女達……」
「「「ひっ!?」」」
そ、それはアーティファクト!? 調、そんな危険な物を私達に使う気ですか!?
「いい加減にしなさいっ!! 『救憐唱』!!」
「「「キャァアアアアアッ!!??」」」
「ハァッ、ハァッ……!」
「あたた……調! 私達を殺す気ですか!?」
「ほ、本気で死ぬかと思った……」
「痛い……」
「全く! 私達の使命を忘れたのですか!?」
私達の使命? 忘れるわけないじゃないですか。
「コスプレ」
「食べ歩き」
「猫カフェ」
「本当に欲望に忠実ですね貴女達!? と言うか暦! 貴女豹族でしょう!? 最早ただの猫じゃないですか!」
「猫の方が可愛いニャ……」
ああ、ちょっと気にしてたんですね。私達は全然気にしてませんでしたが。
「それは分かる」
「もう、貴女達は本当に……」
「とか言って、その服を脱がない辺り、案外気に入ってるんじゃありません?」
「……まぁ、ちょっとは。その、可愛いと思えなくもないですし」
よし、また1人堕ちましたわ!! これであとはほむほむだけ……ですけれどフタミン様やリアさん達と一緒なら時間の問題ですわよね!
「そのウサ耳が可愛いニャ」
「エロ可愛い」
「この服だけでもなんとかなりませんか……? 丁度あの人のような……おや?」
「え?」
「あら、ネギさんに刹那さんにカモさん。こんにちは」
ネギさんはともかく刹那さん……貴女もコスプレを……! これは同志と呼ぶしかありませんわ!
「おう、旦那のとこの嬢ちゃん達じゃねーか」
「皆さんこんにちは! フェイトと一緒じゃないんですね?」
「フェイト様は今『世界のコーヒー展』でコーヒーを楽しんでますわ」
「あはは、フェイト……まだいたんだ。そ、それより皆さん可愛らしい格好ですね!」
「うふふ、ありがとうございます。せっかくの大きなお祭りなのでハメを外してみましたわ」
「あ、あの……調さんの衣装は一体……?」
「そ、そう言う刹那さんこそ……」
何故か遠い目をして肩を叩き合う2人。何かあの2人にしか分からないものがあったんでしょうか?
「そう言えばほむほむさんは一緒じゃないんですか? 午前中にふたみんさんと一緒にいるのは見たんですけど……」
「ええ、まぁ……フタミン様がお側にいるなら大丈夫かなと」
「一番大丈夫ではないような気が……」
「あはは……で、でもふたみんさんは頼りになりますし大丈夫じゃないですか?」
「だと良いのですが……」
「俺っちもそこは心配だぜ……」
フタミン様ならきっとほむほむを面白い方向へ導いてくれるはず……!
「時に刹那さん、その衣装は一体どこで? 調にも着せようと思うのですが」
「ひ!?」
「あ、それ良いニャ!」
「絶対似合う」
「えーと……あちらに貸衣装店があるのでそこで」
「えへへ、実はこの着ぐるみもなんですよ」
「着ぐるみ……フェイト様にも!」
フェイト様の着ぐるみ姿……うん、着せようとしたら絶対に殺されますわ。でも、正直言うと物凄く見てみたいです。
「き、着ますかね?」
「着ないと思うニャ」
「着たら奇跡」
「……っ」
「ネギ先生?」
「い、いえ、その……フェイトが僕と同じ格好してるところ想像してしまって……ぶふっ」
「あー……」
「…………ぶはっ!!」
ネギさんに言われて想像してみましたが、可愛すぎますわ! あのフェイト様がネギさんと同じ着ぐるみを……何度想像しても可愛すぎて鼻血が……っ。
「ニャっ!? 栞、鼻血鼻血!」
「服汚れる!」
「大方妄想に耽っていたのでしょうが……」
「「うわぁ……」」
「逸材だな……」
ああもうこの妄想に浸れるなら死んでも良いですわ……!
「我が人生に、悔い……なし……!」
「栞ぃいいいいいっ!!」
「えーと……保健室に運ぶの手伝いましょうか?」
「いえ、大丈夫です。場所だけ教えてもらえますか?」
「血まみれ……」
…………
………
……
…
「ハッ――! ここは……?」
「保健室です。栞、鼻血の出しすぎで倒れたのですよ。全く……」
「あの出血量は洒落にならないニャ」
「致死量レベル」
「それはそれで……」
あの素晴らしく甘美な妄想に浸れたのですもの……もういつ死んでも満足ですわ……!
「栞! また鼻血出てます!」
「鼻にティッシュ詰めるニャ」
「ふがふが」
「……すぐ無駄になりそう」
「予備、沢山拝借しましょうか」
むぅ、こんな鼻にティッシュ詰めたみっともない姿で学祭巡りなど……。
「栞? 何か考え事ですか?」
「いえ、こんなみっともない姿で学祭巡りをするのは如何なものかと思いまして」
「さっき鼻血噴出して倒れた栞が言っても説得力が……」
「全くない」
「これ以上ない醜態晒してますし、今さら……」
「まぁそれもそうなのですが。とりあえず学祭巡りに戻りましょうか! 出来るだけ沢山回りませんと! さすがに広すぎて全部は無理でしょうけれど」
午前中一杯使ってもきっと10分の1くらいしか回れてませんわよね!
「おー!」
「おー」
「やれやれ……」
「まずはフェイト様の格闘大会の予選会ですわね! 時間的にそろそろみたいですし!」
フェイト様なら余裕で予選どころか優勝まで出来るでしょうけど!
「でも場所が……」
「ガイドブックがあるでしょう?」
「栞、私達はどの大会に出るのか聞かされていないのですよ……?」
「あ」
「どうしよう?」
うーん……フタミン様なら知っているハズ……。
「なら、迷子と言う事でフタミン様に迎えに来てもらってそのまま一緒に行くというのはどうでしょう?」
「!」
「栞、名案」
「先程までのイカれっぷりとは打って変わって……」
「さ、そうと決まれば早速行きましょう。血が足りなくてフラフラしますがそんな事よりフェイト様の格闘大会です!」
「いや別にそこまでしなくてもいいような……」
「フェイト様自身もあまり興味なさそうだった」
そう言う問題ではありません! フェイト様の従者としてはたとえ骨が折れようと鼻血を噴出しようとついて行くのが当然!
「すみません。私達保健室に行ってから迷子になってしまって……」
「あ、はい。保護者の方のお名前は?」
「フタミン様ですわ」
「え、ふた……? あ、あのー……」
「? ああ、ロリコンのフタミン様ですわ!」
ちゃんと言わないとどこの誰か分かりませんものね! あ、マスターを付けるのを忘れてました……大丈夫でしょうか?
「……ま、いっか。では皆さんのお名前は?」
「栞、暦、環、調ですわ」
「分かりました。『迷子のお知らせです。ロリコンのフタミン様、ロリコンのフタミン様、お連れの栞ちゃん、暦ちゃん、環ちゃん、調ちゃんが世界樹広場迷子案内所にお越しです。学園内にいらっしゃいましたらお早くお願い致します。繰り返しますロリコンのフタミン様――』」
「これで後は待つだけですわね!」
「絶対フタミン様怒ると思うのですが……」
「まぁ……もう言っちゃったし仕方ないニャ……」
「なるようになる」
~今回の出来事~
・栞視点につきドリンクは出ません
・バニー!バニー!
・フェイト君はメイド好き
栞がキャラ崩壊どころじゃないレベルで壊れてしまっている件。ですが後悔はしていません。