MAHORA不思議ドリンク研究会   作:ヨシュア13世

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投稿ペースはストックなくなるまでこんな感じで……


3時間目 やめられないとまらない

なんだかんだで秋も深まった頃、第一回MAHORA不思議ドリンク研究会の活動日だ! ん? 今まで何してたかって? そりゃ綾瀬の方が部活や何やらで忙しかったらしいからな。俺は帰宅部だからする事もなく暇してたけど……。

 

「♪~♪♪~」

 

鼻歌を歌いながらそそくさと荷物をまとめる。

 

「ん? お前どうかしたのか?」

 

「ああ、これから部活にな」

 

「へぇ~、部活入ったのか」

 

「おう。それじゃな~」

 

級友に手を振って活動場所の世界樹広場のカフェに向かう。

 

「おーい」

 

「来たですね。それでは第一回の活動を始めるです」

 

「うっす会長!」

 

「会長……悪くない響きですね」

 

まぁ、二人しかいないんだけどな……。

 

「――コホン! それでは第一回と言う事で今後の活動内容を説明するです」

 

「はーい」

 

「まずですね。主な目的はMAHORAドリンクのコンプリートです」

 

「そうだな」

 

そのためのMAHORA不思議ドリンク研究会だし。

 

「なので一週間の間に各々ドリンクを飲み、その味と名前、買った場所をこのノートにメモし、金曜日の放課後にそれぞれの成果を報告し合い、リストを作っていくです」

 

そう言いながら綾瀬は『MAHORA不思議ドリンクメニュー表』と書かれたノートを渡してきた。

 

「はい、質問」

 

「なんでしょう?」

 

「行く場所が被ったらどうするんだ?」

 

同じ場所に来てしまったら無駄なような気がするんだが。

 

「それは行く前……日曜なら朝、学校がある日なら放課後すぐにメールで何処へ行くかを連絡し合えば問題ないです。もちろん、気が乗らなくて活動したくない場合もあるでしょうが、その時も連絡はください」

 

「なるほど。了解した」

 

「ちなみに、私の見立てではこの麻帆良を回り切るには膨大な時間がかかると言っても良いでしょう」

 

「いや、見立てもクソも分かり切ってる事だけどな」

 

この学園めちゃくちゃ広いからなぁ……。

 

「とにかく、この広大な敷地を誇る麻帆良学園です。ドリンク制覇は長期的に見るしかないでしょうね」

 

「そうだろうな」

 

「現状では我々二人しかいませんですが、頑張っていきましょう!」

 

「おうよ!」

 

学校の金で面白い事出来るなんてホント最高だな!

 

「――さて、せっかくカフェにいるですし何か食べますか」

 

「さすがにコーヒーだけでずっと居座るのもなぁ」

 

問題は無いと思うけど、なんか申し訳なくなる。

 

「そう言う事です。では私はこのマツタケパフェを」

 

「そんじゃ俺はナメコサンドをもらうか」

 

ヌメヌメ感が意外と美味かったナメコサンドを食べ、その日は解散とな――

 

「おーい、夕映ー!」

 

――らないみたいだな。

 

「おや、ハルナにこのかさんどうしたですか?」

 

「いやいや、あんたこそどうしたのよ。男とさもカップルの様にさー!」

 

「「?」」

 

俺達は首を傾げた。はて、俺達は部活をしていただけで別にカップルだとかは微塵もないんだが。

 

「そうやえ夕映ー。恋人がおるならおるって言うてくれたらええやんー」

 

関西弁……かな? なんか違う気もするけど、この辺じゃ結構珍しいな。確かこのかって呼ばれてた人か。

 

「先ほど何を言っているのか皆目見当がつかないのですが」

 

「俺も」

 

「「はい?」」

 

今度はあちらが首を傾げた。

 

「私たちは部活をしていただけですが」

 

「こんなカフェテラスで食事しながら?」

 

「それはコーヒーだけじゃ可哀相かと思って」

 

「あや」

 

「そんじゃ私たちの勘違いってこと!?」

 

なんでそこで酷く残念そうな顔で俺を見る?

 

「まったく……アホな勘違いです」

 

「アホは言い過ぎだと思うが……まぁ、盛大な勘違いだな」

 

「むぅぅぅ……ま、いっか。私中等部1-A早乙女ハルナ、パルって呼んでちょうだい」

 

「え? あ、ああ。俺は男子中等部1-C二見隼人」

 

なんか良く分からんがいきなり名乗ってきたので、こちらも名乗る事にした。

 

「うちは中等部1-A近衛木乃香やよ~。よろしくな~」

 

「ど、どうもよろしく」

 

スゴイほんわかした子だな……。癒し系ってやつかな。

 

「……結局何がしたかったですかハルナ達は」

 

「ん? 夕映の動向チェック」

 

はた迷惑なことしてるなぁ……。

 

「ストーカーですか貴女は!?」

 

「いやいや、友人としての健全な心配からきてるのよ? 決して下世話な好奇心とかそんなのじゃないわ!」

 

「実はなー、ハルナがなんや面白そうやから夕映を尾行しよう言うてな~」

 

そしてあっさりバラす近衛さん。……っておや? 近衛ってどっかで聞いたことあるような…………ま、気のせいか。少なくとも俺の知り合いに近衛って苗字のやついないし。

 

「――コホン。ま、一応ちゃんとした用事もあるのよ」

 

「なんです?」

 

「図書館探検部の次の、と言うてもこの後なんやけど。活動場所に変更があったから伝えに来たんよ。うちらもさっき知ったとこでな~」

 

「そう言う事ですか……。それならそうと言って……はくれないですよねハルナの場合」

 

どうやらパルはこの中ではそう言うキャラらしい。

 

「トーゼン! 普通に教えるだけじゃ面白くないでしょ?」

 

……仲良くはなれそうだな。でも、勘違いは止めて欲しい。いちいち説明するのがめんどくさいし。

 

「はぁ……。それで、どこになったのですか?」

 

「えとな、図書館島に現地集合やて」

 

「今日は特に説明する事はないってさ」

 

「そうですか。では二見さん、これから図書館探検部の活動があるので今日は失礼するです」

 

「あいよ」

 

さて、それなら男子校エリアのドリンクでも見に行くか。

 

「ちょぉーっと待ったぁ――!!」

 

パルの大声に、歩きかけた足を止めた。

 

「え、なに?」

 

「せっかくだし、君も来ない?」

 

「は?」

 

なぜに?

 

「だって向こうにはのどかもいるし紹介しときたいじゃない? 友達としては」

 

「ハルナ……のどかは男性恐怖症なのですよ? 二見さんは悪い人ではないですが、いきなりは無理だと思うです」

 

「せやえハルナー」

 

「えーと……」

 

当然の如く、置いてけぼりだ……。まずそののどかとか言うのが誰か分かんないし。

 

「ま、連れてけば分かるって」

 

「はぁ……。あの、二見さん。ご迷惑だとは思うですが、良ければ図書館島まで来てくれませんか? 主にハルナがうるさいので」

 

「あはは、まぁでも二見君にも用事あるかも知れんし、無理はせんでええよ?」

 

「ん~~……ま、暇だしいっか」

 

本には少し興味が出てるし。図書館島に行ってみたかったってのもあるし。

 

「よ~っし、そうと決まればさっさと行くわよ~~!」

 

「やれやれです」

 

「はは、いつもこんな感じ?」

 

パルの様子を見て二人に聞いてみる。

 

「せやね。割とこんなんやよ」

 

「基本的に騒ぐの好きですからねハルナは」

 

「おいこらー! 早く来るったら来る!!」

 

…………

 

………

 

……

 

 

「でかっ、広っ!?」

 

いや、まさかここまで広いとは思わなかったぁ……。

 

「フフフ、その反応……ここに来るのは初めてね?」

 

「ああ。どうせ行くとしても図書室とかその辺だし」

 

「普通はそうでしょうが、やはり本格的に調べ物をしたいなら図書館島が一番ですよ」

 

何故か自慢げな表情をする綾瀬。

 

「ほぉー。そんじゃま、なんか適当に」

 

「あ、ちょっと待つです」

 

「え? なん――」

 

本を取りかけたところで、俺の目の前に矢が突き刺さった。

 

「……えーと、説明求む」

 

「ただ単に貴重書狙いの泥棒を撃退するための罠ですよ」

 

「待てやコラ。こんなもん仕掛けられてたら読めないだろうが!!」

 

かなりビビったのは内緒の話だ。寿命縮んだ、絶対。

 

「でもね~、本当に貴重な本とかあるし仕方ないっちゃ仕方ないんだよねぇ」

 

パルが補足説明を入れるが……怖い事に変わりはない。

 

「それに、ちゃんと罠の位置覚えてれば大丈夫やよ?」

 

「いや、覚える前に死ぬからね? マジで洒落になんねーから」

 

「安心してください。お墓にはちゃんとおススメの本を添えてあげるです」

 

「そっか、そりゃ安心だ。――って死ぬ事前提!? しかも死んでまで本読ませる気かお前は!」

 

ぐにー、っと綾瀬の頬を引っ張る。

 

「ふぁっ!? ふぁにをふるでふか! はなふでふ!!」

 

「おお、柔らかい柔らかい」

 

「やめるでふ――っ!!」

 

そうやって綾瀬の頬を堪能し、解放してやる。

 

「うう……酷い目にあったです」

 

「自業自得だな」

 

「……二見君も結構やるわね。女子の頬を容赦なく……」

 

「ウチじゃなくて良かったえ……」

 

その様子を見ていたパルと近衛さんが引きつった笑みを浮かべていた。ふん、俺は男女平等主義なのだ。

 

「ったく……まぁ、とにかく本を取る時は気をつけないといけないって事は分かった」

 

「……それでは集合場所に行くですか」

 

赤くなった頬をさすりながら綾瀬が先導する。

 

………

 

……

 

 

「でさ、そん時夕映が――」

 

「ちょっ! ハルナ、変な事を吹き込むなです!」

 

「ブフッ、マジかよそれ」

 

と、談笑しながら歩いていき

 

「着いたです」

 

少し開けた場所に出てきた。図書館探検部の部員であろう人達がちらほら見える。

 

「それじゃのどか呼んで来るから少し待っててねー」

 

「本を読みたいときは部員に言うですよ?」

 

「ほんじゃね~」

 

「ほーい」

 

三人を見送り

 

「……暇だなぁ」

 

適当に本でも読むか。えーっと近くにいる部員さんは――と

 

「あ、いたいた。すんませーん」

 

割と近くにいたショートヘアの女子に話しかけた。

 

「えっ? は、ははははい。な、なななななんでしょうかー……?」

 

なんか、めっちゃ怯えられた。……俺ってそんな人相悪いかな?

 

「あー、その、何か本を読もうと思ったんだけど、おススメとかってある?」

 

見たところ、同い年っぽかったので普通に話す。……この際怯えられてるのは気にしないでおこう。

 

「あ、あああああのっ、す、すすすす好きなジャンルとかはー……?」

 

「え? うーん……推理小説とかは結構好きかな」

 

「そ、そそそそれでしたら、あちらの棚にー……」

 

どんどん後ずさっていくが、とりあえず教えてはくれたみたいだ。

 

「ん。サンキュー」

 

「い、いいいいいいえ……」

 

……俺、知らない内にこの子に何かしたんだろうか……? ま、細かいことを気にしても仕方ない。とりあえず、綾瀬達がのどかとか言う人を連れてくるまで待つとしよう。




ネギ君はもうしばらく出てきません。だって彼らまだ中一ですもの……。

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