「どうやら魔法使いにはなれるみたいだぞ。ただ……」
「修業、ですね? フフフ、それくらい耐え抜いてみせます!」
「俺も負けてられねぇな。ところで俺達どこ向かってんの?」
「ふむ『こんぺいとうがらし緑茶』……中々不思議な味だね。書き加えておこう」
「……『中濃ソースのチョコサイダー』も美味しい。このソースの重厚感とチョコの甘さにサイダーの炭酸のミスマッチ具合は見事」
「図書館に向かっています。あそこなら広いですので地図も広げやすいと言う事でのどかには既に準備してもらっています」
綾瀬の言う通り、図書館に着くと宮崎さんが地図を広げた状態で待機していた。
「おはよーさん」
「お、おはようございますー」
「やぁ」
「……おはよ」
「挨拶はその辺にして。では私達はネギ先生を呼んで来ますから二見さん達は少々待機していてください」
「え、俺も行こうか?」
そう言った瞬間、全員から白い目で見られる。え、なんでリアまで!?
「二見さん……女子寮に突撃する気ですか?」
「……変態なお兄ちゃんは、好きになれない」
「フタミン、流石にそれは擁護出来ないね」
「え、ちょっと待って!! ネギ君女子寮に住んでんの!? それ初耳なんだけど!?」
「……おや、そう言えば言ってなかったですか。ネギ先生はアスナさんとこのかさんの部屋で一緒に住んでますよ」
色々と言いたい事があるがまぁ……部屋に関しては子供だしその辺は問題ないんだろうな。なら俺が行くわけにはいかないな!
「おっけ。そう言う事なら待ってるよ」
「ええ。行きましょうのどか」
「い、いってきますー」
「……いってらっしゃい」
2人を見送り、手持ち無沙汰になった俺達は近くにあった自販機でドリンクを集める事にする。
「お、『フレッシュカルボナーラ~味噌汁風味~』みーっけ。……ほうほう、このクリームの味と味噌汁の味が絶妙に絡まりすぎて何が何だか良く分からん味に……素晴らしいな!」
「ふむ……後は見た事のあるものばかりだね」
「……残念」
そんなやりとりをしている内に綾瀬と宮崎さんが戻って来た。その後ろからはネギ君と神楽坂が。お? ネギ君は分かるけど何で神楽坂も?
「戻りましたです」
「あ、ふたみんさんおはようございます! リアさん、フェイトも!」
「やぁ、ネギ君」
「……おはよう」
「お前も来たの?」
「ま、付き添いでね」
そういやネギ君顔腫れてね? 例の修業と関係あるのか……後で聞いてみよう!
「頂いた地図のコピーの8枚目、幻の地底図書室の拡大図の所ですが」
「あ、はい!」
「ここからは二見さんにバトンタッチするです」
「いきなりのフリにビックリです。えーっと、ネギ君はお父さん探してて、んでこの地図に手がかりがあるんだよな?」
「ハイ!」
「んーっと……あ、あった。ここ、見てみ?」
「えーと……オレノ、テガカリ……?」
ネギ君はそう呟いて目が点になる。うん、そりゃそうだよな。だって暗号とかあるくせに日本語で書いてあるんだもの。
「て、手がかりだーっ!?」
「暗号じゃねーし!」
「ええ、ですので二見さんが見つけた時は心底驚きましたです」
「……お兄ちゃんは、スゴイ」
「灯台下暗しとはこの事だね。そこに目を付けるとは、中々やるじゃないかフタミン」
「ふたみんさん凄いです!!」
お願い、そんな持ち上げないで……? たまたま目に入って偶然見つけただけなんだよ……!
「ネギ、良かったじゃん!」
「ハイ! 早速ここ調べに行かないと!」
「……ネギ先生、これは私と二見さんとで軽くお話した事ではあるのですが、確認させて頂いてもよろしいですか?」
「え?」
「ネギ先生……貴方は魔法使い、ですね?」
何を今更、とも思うがやはり本人に直接確認したかったんだろうな。
「えうっ!? いや、その、それは!」
「安心してください。この話は先程も言いました通り私と二見さん、あとのどかには話だけはしてあります」
魔法使いになりたいとかは話してないのかな?
「一応私なりに纏めた事をお話させていただきます。まずエヴァンジェリンさん。会話から察するに強力な魔法使いです」
「あ、それ俺も聞いた」
「さらにこのかさんも魔法使い! となるとその祖父である学園長も魔法使いと言う事になりますね、東の長とも言っていましたし。……これだけでも十分に驚くべき情報ではあるのですが、このかさんのお父上のお話からするとかなりの規模の魔法使いの社会が存在すると見てまず間違いないでしょう」
「はうっ!?」
「さらに私はこう考えます。この学園に数々の不思議……広大な地底図書室や動く石像、果てはあの世界樹! これらの不思議は全て『貴方達魔法使いが造った』と考えれば非常に納得がいくのです!!」
熱弁してんなぁ。それより動く石像って……あのド○クエの? そんなのが地下にいるの? 物騒すぎんだろ麻帆良学園……。
「あううう、た、多分当たってますー!!」
「さらにさらに! この『MAXねっとり~オクラ納豆とろろ添え~』の様な不思議ドリンクも、貴方達魔法使いが造ったと考えればこの面白おかしさも全て納得がいきます!」
「それは分かりません」
「……まさに、不思議」
「なるほど。一体どこの誰が何の為に作っているのか、それすらも分からない。これがドリンク一番の不思議だね」
「お前ら、その辺は突っ込んじゃダメなとこだからな?」
何か色々とマズイ事になりそうな気がする。何がどうマズくなるのかは分からんけど……。
「まぁ、今日はこれが本題ではないので一旦置いておいて、本題に移りますネギ先生」
「は、はい?」
「もし手がかりを調べに行くのなら私達も連れて行ってくれませんか? 私達は図書館島や学園の秘密、魔法使いの事を知りたいのです!」
「いや、俺は別に知りたいとかその辺は特に……」
魔法使いになりたくはあるけど図書館島とか学園の秘密なんて大して興味ないしなぁ……。
「で、でも夕映さん! 修学旅行からも分かる通りどんな危険な事があるか……!」
「まぁ、その辺りは僕らがいれば問題ないんじゃないかな?」
「……私達、強い」
「ちょっと2人ともー!?」
「こちらにはこのように心強い味方がいます! なのでお願いしますネギ先生!」
「あ、あの、その、あわわわ……す、すすすすみませんダメです~~~~っ!!!」
「あ、ネギ!?」
「逃げたです!?」
えー、何がダメなんだろう? フェイトも言ってたけど危険な事に自分から首突っ込まなきゃそこまでじゃないんじゃないの?
「……どうするよ?」
「私は戻るわ。ネギの事も気になるし」
「分かりました。では私達はこのまま部活動に勤しみましょう」
「……私も帰るねゆえー」
結局、この日はいつもの活動だけして終えたのであった。
「フタミン、起きたまえ。フタミン」
「んご……? なんだよフェイト、こんな朝早くに……」
時計を見るといつも起きてる時間よりまだ2時間も早い。当然リアはまだ夢の中だし武村もいびきをかいて寝ている。てかあいつうるせぇな……。
「ネギ君が動いた。どうやら昨日の場所を調べに行くつもりのようだ。行くかい?」
「……OK、行くか」
かなり眠いけどネギ君の動向も気になるし。リアを起こさないようにしないとな……いや、でも武村と二人にするのも心配だな……。
「……私も、行く」
「うお、お前起きてたのか」
「……さっき、起きた。あふ……」
「よし、なら転移魔法でネギ君の近くまで行くよ」
着替える前に問答無用で連れて行かれました。
「うわぁっ!? ふたみんさん達までっ!?」
「二見さん、その格好は……」
「リ、リアちゃんもパジャマのままですー」
「着替える前に連れてこられたんだよ! こんな朝早くからツッコミさせるな!」
「……眠い」
「はいはい。おんぶしてやっから、ゆっくり寝てろ」
「……ん」
リアがしっかり背中に乗った事を確認して立ち上がると、全員がこちらを見ていた。……またか、またかよ畜生!
「どうせロリコンって呼ぶんだろ!? もう好きに呼べよ畜生!」
「いえ、まぁ、その……微笑ましい兄妹愛ですよ? ね、のどか!」
「ひゃう!? う、うん! リアちゃん気持ちよさそうに眠ってますー……」
「その生温かい視線やめろ!!」
「それは良いが、行かないのかい?」
「あ、そうだった! えーっと……」
「兄貴、嬢ちゃん達の熱意勝ちだぜ……。それに旦那達もいりゃ多少何かあってもなんとかなるだろ」
「ううっ……分かりました、乗ってください」
あ、杖に乗るとかいいなー。まさしく魔法使いって感じでいいなアレ。俺も一本欲しいな。通販で売ってないかな?
「僕は飛べるから良いとして、フタミンは飛べるかい?」
「飛べると思ってんの?」
「冗談だよ。仕方ない、浮遊魔法をかけるから後は感覚で乗り切ってくれ」
「は? え、ちょっと待って感覚って何! 感覚って何!?」
そんなもんで飛べたら苦労しねぇよ!? これだから天才型は!!
「ほら、行くよ」
「あ、ちょ、待てこら!!」
「ふ、ふたみんさん! 浮遊は確か字の通り宙に浮くイメージでいけるはずです!」
「お、おう? ……お、おお! おおおおおっ!!??」
う、浮いた! これが舞○術か!!
「ふむ、魔法センスは良いねフタミン」
「二見さんが、浮いてるです……リアさんを背負ったまま。何とシュールな光景でしょうか」
「と、とりあえずそれならなんとかなると思います! でも、少しでも危険な事があったらすぐに引き返しますからね」
「了解」
「はいです」
「わ、わかりましたー」
「ま、今日は君の言う事を聞いておこうか」
ところでこれ……いきなり効果切れたりしないよな? 足場ないとか超怖いんだけど。
「そう言えばこれ、下から見られないですか?」
「ちょっとした認識阻害魔法がかかっているので大丈夫ですよ」
「ちなみに僕らもかかっているから安心していいよ」
「それより、俺はこの高さが不安で不安でしょうがないんだけど」
数十メートルは上がってるよねこれ? 一応ネギ君について行ってはいるんだけど、どこまで上がる気なの?
「今回は前と違って飛んでいけるので楽勝ですよ」
「前の事は知らんけど楽なのは良いな!」
――なんて思っていた時期が、俺にもありました。
「うおおおおっ!? 風、風すごい! 落ちる! これ絶対落ちるぅううううう!!」
「……んみゅ」
「フタミン、それくらい微調整でなんとかなるだろう? 少しは落ち着きたまえ」
「落ち着けるかこんなもん! こちとらリアも背負ってるんだぞ!?」
つーかこの子良くこの状況でものんびり寝てられるな!? ――ちなみにネギ君達はネギ君達で……
「お、おち、落ちちゃいます!?」
「す、すすすスゴイ風です~~!?」
「大丈夫、大丈夫です! 落ちませんから!! ――わぷっ!?」
「ク、クモの糸です!?」
「ネ、ネバネバしますぅ~~!」
「うわぁっ!? 目隠ししないでくださいーっ!!」
……大変そうだな。ホントに落ちたりしないよなアレ……。
「あ゛ー……やっと足が地面に着いた」
「大丈夫ですから落ち着いて」
「探検部なんだろ2人ともよぉ」
「す、すみませんです、取り乱してしまいまして」
「ごごごめんなさいー」
いや、アレは仕方ないと思う。
「さて、ここからは歩きかい?」
「うん。でも魔法のトラップがあるかも……」
「全部破壊して進めば問題ない」
「ダメに決まってるでしょ!?」
「あの2人、結構仲良いですね」
「まぁ、年も同じくらいっぽいし色々話す事とかあるんじゃね?」
ネギ君、フェイトには敬語じゃないしなぁ。俺もタメで全然いいのに。
「そう言えば、ずっとリアさん背負っていますが大丈夫ですか?」
「ん? ああ、ここに来るまで浮いてたから別に。それにリアめっちゃ軽いし平気平気――(カチッ)……カチッ?」
「ああ、それはトラップの起動音ですね。……トラップ……?」
綾瀬がそう言うのと同時に、轟音と共に俺達の方へと転がってくる大岩。ちょ、これは洒落になんねーよ!? てゆーか……
「俺、トラップにハマりやすいの忘れてたぁあああああっ!!??」
「ふたみんさーん!?」
「やれやれ」
「あわわわわ!?」
その後も、迫り来るトラップを回避しつつ(9割方俺がハマった)進んでいくと――
「ハァハァ……つ、着いたです」
「さすが、図書館島は一筋縄じゃいかねーな」
「誰のせいだと思ってんすか旦那ぁ!! ほとんど旦那がトラップにハマるからっスよぉ!!」
「仕方ねーだろ!? 俺だってハマりたくてハマってるわけじゃねーんだよ!!」
「ま、まぁまぁ。ある程度予測はしていましたので大丈夫ですよ。それよりネギ先生、あの扉の奥に手がかりがあるですか?」
「分かりませんが……少しやってみます」
「僕も手伝おう」
じゃあ俺達はそれまで休憩しとけば良いのかな?
「あ、ゆえー、ふたみんさん、これなんだろうー?」
「ああ、これか。危険って書いてあるけど……この絵が何かわからん」
「確かに……犬か猫でしょうか――わぷっ!?」
「ひゃ」
「うおっ!?」
な、なんだ? いきなり何かベトベトする液体がかかったぞ!? リアにはかかってないみたいだけど……。もしかしてこの子噂の障壁とやら貼ってる……?
「な、なにこれー……?」
「ベタベタするですね。これは一体……」
「しかもくっせぇし……。なんなんだこりゃ……っておや?」
急に影がさし、何事かと上を見上げるとそこには体長十数mはあるだろうドラゴンが、いた。……え、ドラゴン……?
~今回の出来事~
・不思議ドリンクは魔法使いと何か関係がうわなにをするやめ(ry
・主人公、空を飛ぶ
・相変わらずトラップに弱い主人公
・アレと遭遇
今回は少し文字数が多くなってしまいました……。調整ちゃんとしなくては……!