MAHORA不思議ドリンク研究会   作:ヨシュア13世

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今回から主人公以外に視点が行く時はside-○○、戻る時はsideoutを使わせていただきます。


2時間目 発足! MAHORA不思議ドリンク研究会

唐突だが……俺は今、結構ピンチだ。

 

「……」

 

「……」

 

目の前には山のように積まれた本。そして勝ち誇った顔の綾瀬。

 

「なぁ……コレ、全部読めってか?」

 

あの惨劇から2週間ほど経過し、つい昨日綾瀬から『この間言っていた本の用意が出来たので明日、放課後に総合図書館に来てくださいです』と、メールが来た。それで来てみればコレだ……。ゆうに12,3冊はあるぞ……。

 

「いえ、さすがに普段から読んでない人にはこの量はキツイでしょうから、とりあえず1冊読んでみてはいかがです?」

 

「……そうさせてもらおう。えーと……」

 

ざ、っとタイトルに目を通す『羅賞門』『罰と罪』『明夜行路』……はて? おかしいな、到底読む気すら起きない。

 

「どれか気になった物はあるですか?」

 

「お前の本の選択が非常に気になるわ!」

 

「? 別に哲学書やらを選んだ記憶はないですが?」

 

「それ以前に、とりあえず有名な作家を集めとけばどれか読むだろうとでも言いたげな本のチョイスはどうなんだ?」

 

一応作家はある程度分かるけど……だからと言って読みたいか? と聞かれたら答えはNOだ。

 

「ふーむ……それならもう少し最近の小説とかにしますか?」

 

「そうだなぁ……あ! 出来たら推理小説とかで頼めるか? コ○ン君とか見てるから結構好きなんだよな、そう言うの」

 

「子供ですか二見さんは……。まぁ、分かりました。持ってくるので少し待ってください」

 

持ってくるって……場所分かってるのか? それだけ入り浸ってるんだろうな。俺みたいに外でアホみたいに遊んでる奴と違って。……綾瀬に感化されたかな? 俺も少しは本を読んだ方が良いんじゃないかと思ってきた……。

 

「とりあえず適当に読んでみようか。せっかく選んでくれたわけだし……」

 

とりあえず知ってるタイトル『長靴をはいた犬』があったので手に取って読んでみる事にした。

 

side-夕映

 

「推理小説だと……赤川三郎シリーズがいいですか」

 

このシリーズなら好きな人も多いので問題ないと思うですが……。問題はそちらよりも

 

「割と厳選したつもりだったのですが……二見さんの好みには合わなかったですか」

 

相手の好みも把握せずに自分の主観で本を押し付けてしまうとは……猛省の必要があるです。

 

「まぁ、今日は2,3冊あれば十分でしょう」

 

本を抱えて二見さんの所へ行くと

 

「……」

 

私がおススメした本の一つを読み耽っていたです。

 

「あのー?」

 

「……」

 

……どうやらこの人はのどかと同じく、読みだすと集中して周りが見えなくなるタイプのようですね。とりあえず……今のうちのお手洗いとジュースでも買うですか。

 

sideout

 

「…………ふぅ」

 

読んでいた本を閉じた。

 

「いや~、なかなか面白かったな」

 

こうして読んでみると本も悪くないなぁ。漫画ばっかりだったから活字が新鮮だこと(新田に怒られそうだな……)。

 

「おや、やっと読み終わったですか」

 

「あれ? いつの間に……」

 

「声はかけたですが、集中していたようで全くこちらに気付かなかったです」

 

あー……持ってきてって頼んでたのにそれは悪い事をしたかな。

 

「悪い。俺ってどうも、集中すると周りが見えなくなるみたいで」

 

我ながらスゴイ集中力だと思う。

 

「そのようですね。しかし、先ほどは興味が無いように言っていた気がするですが?」

 

「いや、その……俺も知的なクールガイを目指そうとな」

 

「……」

 

『コイツ馬鹿だ』って目で見られてるよ。

 

「冗談だ。ま、少しは本を読んでおくのも悪くないかなーって思っただけだよ」

 

「それはなによりです。あの、実は本以外にもう一つお話があるのですがよろしいですか?」

 

「超不思議カレーは御免被るぞ?」

 

あそこに行くくらいなら俺はここで本を読み続けるぞ……。

 

「……あれは私も遠慮しますです。ではなく、私が言いたいのは二見さんもあのMAHORAドリンクに興味があるのですよね?」

 

「んー、まぁ確かに気になると言えば気になるかなぁ? バリエーションが色々とあるみたいだし」

 

「そうです。正しく私が言いたい事はそれなのです」

 

「?」

 

俺には綾瀬が何を言いたいのかがさっぱり理解できん。

 

「私は、このMAHORAドリンクをコンプリートしたいのです」

 

ちなみに今綾瀬が飲んでいるのは抹茶オレンジなるもの。今度俺も何か買ってみよう。

 

「へぇ~、なかなか面白そうだな」

 

「二見さんならそう言ってくれると思っていたです。そこで……私がかねてより設立しようと思っていた『MAHORA不思議ドリンク研究会』に参加してくれませんか?」

 

「『MAHORA不思議ドリンク研究会』?」

 

つまりは、その不思議ドリンクを全て調べ上げてリストでも作ろうってことか?

 

「そうです。ですが困ったことに私一人では成し遂げる事は出来ないです」

 

「まぁ、この学園広いしなぁ」

 

全ての自販機を押さえない限り、到底無理じゃなかろうか?

 

「ええ。ですから人手が欲しかったのです。特に男性が」

 

「そりゃまたどうして?」

 

「男子校や男子寮にしかないドリンクが存在するかもだからです。さすがにそこに簡単に行く事は出来ないですからね……」

 

なるほど。そりゃそうだな。

 

「ふー……ん」

 

「それで、入ってくれますか?」

 

「面白そうだし、良いよ」

 

俺は面白ければ別にドリンクだろうが何だろうが大歓迎だ。

 

「ありがとうございますです! それでは部活申請の書類等を作って提出するので、明日学園長先生のところへ一緒に来てほしいです」

 

「了解。それじゃあ明日は土曜で半ドンだから授業終わり次第、教員棟に行けばいいか?」

 

「そうですね。それで大丈夫です」

 

「OK。それじゃ、片付けて今日は解散にするか」

 

と、席を立って本を持つ。片付けくらいはしないとな。場所は綾瀬に聞いたらいいし。

 

「あ、私が直しておくから良いですよ。知らない人がやるとかえって余計に時間がかかりますし」

 

「え? でも、読んだの俺だしさ」

 

「いえ。先ほども言いましたが、この方が効率がいいです」

 

「……分かった。悪い、それじゃまた明日」

 

「はいです」

 

ちょっと後ろ髪を引かれる思いで図書館を後にした。

 

「……MAHORA不思議ドリンク研究会、か」

 

要するにこの学園に存在するMAHORA印のドリンクを全て飲んでそのリストを作るのが目的なのだろう。そんな事をして何の意味があるか分からないが……ま、面白そうだから俺は気にしない。

 

「あれ? そう言えば部活になるのって4~5人いるんじゃなかった?」

 

今のところ俺と綾瀬しかいないように思うんだが……。

 

「ま、明日になれば分かるか」

 

そして翌日――

 

「おっと、待たせたか?」

 

授業が終わり次第、教員棟に向かうとそこには既に綾瀬の姿があった。

 

「いえ、そこまでは待ってないのでお気になさらず」

 

「そっか。で、他のメンツは?」

 

「え?」

 

「いや、だから研究会の他のメンバーはって」

 

まさか……

 

「いないですよ?」

 

やっぱりか!!

 

「……それじゃあ部活として認めてくれないんじゃないのか?」

 

「ですからこれから学園長先生を説得に行くですよ。この時間は空いていると友人に聞いたです」

 

学園長のスケジュールを知ってる人って誰だろう? 教師? 

 

「さ、行くですよ」

 

そう言うなりさっさと歩きだしてしまった。

 

「あ、ちょっ!」

 

慌てて後をついていく。なにせ、俺は教員棟なんて来たことがないから学園長がいる部屋なんて分からないからだ。

 

それから階段を登ったり廊下を歩いたりする事約5分――

 

「ついたですね」

 

『学園長室』と書かれた立派なプレートがぶら下がっている部屋の前に着いた。

 

「だな」

 

「それじゃあ、入るですよ?」

 

綾瀬がノックをし、『どうぞ』と聞こえたので中に入った。

 

「おお、このかから話は聞いておるぞよ」

 

「ありがとうございますです」

 

「……」

 

学園長相変わらず頭長ぇっ! ふと、この人って人間なんだろうかって思う時がある。こうやって至近距離で見るのって初めてだから余計に。ところでこのかって誰だろう? 学園長のスケジュール知ってる人かな?

 

「おや、そっちの君は……」

 

「あ、失礼しました。男子中等部1-Cの二見隼人です」

 

「そうかそうか。夕映君の部活のメンバーじゃの?」

 

「はい」

 

どうやら、気さくな人(?)っぽいな。

 

「学園長先生、私が提唱するMAHORA不思議ドリンク研究会なのですが……二人でも部活として認めて頂くと言うのは無理ですか……?」

 

「ふぉ? 別に構わんぞよ?」

 

あっさりOKかよ……俺の心配は一体……。

 

「あ、ありがとうございますです!」

 

「そうじゃ、良ければわしにもそのドリンクを少し回してもらえんかの? ちょっと気になってたんじゃよ」

 

「それくらいお安い御用です」

 

「はは……」

 

掴めない! この学園長、どういう人間(?)なのか全く掴めないんですけど!

 

「とりあえず承認じゃの」

 

どん、と承認印を部活の設立書類に判を押してくれた学園長。

 

「やりましたね」

 

「ああ。これで部費が入るから気兼ねなく飲めるな」

 

「楽しみです」

 

「ふぉふぉ、ではわしの分も含めて頼んだぞい」

 

「はい」

 

「それでは失礼しますです」

 

学園長に頭を下げて学園長室から出た。

 

「いや~、最初はどうなるかと思ったけど杞憂だったみたいだな」

 

「ええ。学園長先生も興味があったからOKしてくれたのでしょう」

 

「結構お茶目なんだなあの人……」

 

「まぁ、とにかく……これから不思議好きの同志として、よろしくお願いしますです」

 

「おう。こっちこそよろしくな」

 

そう言って俺達はガッチリと友情の握手を交わした。

 

…………この時、一瞬女の子って柔らかいんだなぁー、とか思ったのは内緒ってことで。

 

 




作中に出てきた本のタイトルにつきましては言及しないでください。

そう言えば、出すのが朝だったり深夜だったりでまともにキャラ紹介すらしてなかった気がします。

なので今ここでしてしまいます!

名前は二見 隼人(名前で呼ばれる予定ナシ)
基本的に考えるより先に行動するタイプ。行動原理は面白そうか否か。勿論倫理観はキチンと持ち合わせております。
所属は麻帆良学園男子中等部1-C。部活は言わずもがな、MAHORA不思議ドリンク研究会でございます。

と、まぁ簡単にするとこんな所でしょうか? 戦闘力は追々になります。とにかく戦闘描写が出てきたら出します。


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