「こひゅー……こひゅー……し、死ぬ……」
結論だけ先に言おう。俺が着いた時には全部終わってました。途中でフェイトが転移魔法で連れてってくれなかったら途中で倒れてた、絶対。
「……お兄ちゃん、大丈夫?」
「おい、何故貴様がここにいる? そしてそこの小娘は誰だ」
「フタミン、君にここで死なれると色々と困るんだが」
「ふたみん殿……すまぬでござる」
「何と言うか、申し訳ないです」
決めた! 俺毎日走る! 次こんな目にあっても大丈夫なように走る!
「えほっ、ゲホッ!! フェイト……お前のおかげで助かった」
「フ、気にしなくていい。少なくとも今は仲間だからね」
「……ねぇ、なんでさっきまで敵だった奴とふたみん一緒に喋ってんの?」
「ふたみんさん、そいつは!」
「ネギ君にカグラザカアスナ、何度も言うようだけど僕には交戦の意思はないよ? さっきだって君達が襲ってくるから迎撃したまでさ」
何か向こうは向こうで大変そうですね……。それより、この間囲碁勝負したこのロリっ子……名前なんだったっけ? 確かかなり長い名前だったよな……?
「えっと……エ、エヴァ……エヴァン○リオン・A・T・フィールド、だっけ?」
「誰が汎用人型決戦兵器だ!! エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ!! ただのガキの癖にこの私の名前を間違えるな!!」
「……うるさい、BBAは黙って」
「……あん? 小娘、この私が誰だか知っての発言か?」
「マスター、落ち着いてください」
「……お兄ちゃん、このBBA怖い」
「いや、今のはお前が悪いだろ。謝りなさい」
さすがに人様にいきなりBBA呼ばわりはないだろう。が、リアの次に発した言葉は火に油を注ぐ言葉だった。
「……本当の事を言ってごめんなさい」
「……茶々丸、離せ」
「ダメです」
「もー、子供の軽口でしょー? エヴァちゃん大人気ないって!」
「ふざけるな! いきなりBBAと呼ばれて喜ぶバカがどこにいる!」
「……アスナ、優しい」
「はうっ!?」
また1人、堕ちたようだ。こいつ、狙ってやってないよな?
「ところで、ここにいるって事はエヴァも魔法使いなの?」
「お前……気安く人の名を呼ぶな。だがまぁそうだな。くくく、貴様には見せてやりたかったなぁ! 私の力を見て腰を抜かす貴様の姿、是非とも拝んでみたかったわ!」
「あー……多分、それくらいじゃ驚かないと思うぞ? かなり強烈なもん見ちまったし……なぁ?」
俺が目を向けると、綾瀬・小太郎・長瀬・リアはどんよりとした顔になる。と言うか目からハイライトが消えている。多分、話してる俺も。
「ん?」
「その、な。身長2mくらいでガチムチでスキンヘッドで女性向け化粧をして漢女と書かれたフンドシのみを身につけたド変態が俺達の目の前に……」
そう言った瞬間、その姿を想像したのかその場にいた全員が吐いた。
「何ソレキモイアル!! てゆーか怖いアル!!」
「そ、それはまた凄まじい物を見たんだな……同情する」
「想像しただけでこうとなると実際に見た貴方達は……」
「……正直、すまなかった」
「マスターどうしましょう。思わずモンタージュを作ってしまいました」
「そんな忌まわしいモノ今すぐ消せ!!」
「夕映達……大変だったんやね」
「ホントにね……」
「ぼ、僕があのまま行ってしまったから皆さんが……!」
「全く、アレには参った……ぜ――」
いきなり、本当にいきなり体が急に重くなったかと思えばそのまま意識が途絶えた。最後に聞こえたのはおそらくネギ君だろう、ふたみんさんが石化した!? だった。その後もごちゃごちゃ聞こえたがほとんど覚えてない。
「――ハッ! 俺は一体……?」
「……お兄ちゃん、良かった」
「何の前触れもなく石化……いや、先の『石の息吹』が再発動したと言う事か……? となると何かが原因で魔法自体が阻害されていた? フタミン、君は面白いね」
「このかさんが治せたから良かったものの、突然石化した時は本当に驚いたです……一体何事ですか?」
「……え、俺石になったの?」
「「「「「うん」」」」」
俺がそう言うと全員が頷く。……マジでか。え、一体何が原因なんだ!?
「ちなみに僕が彼に魔法を使ったのは本山での一回だけだから今回は何もしてないよ。ネギ君」
「べ、別に君を疑ったわけじゃ……」
「中々興味深い現象だな。そこのガキも言っていたが魔法自身が阻害され後に再発動とは……一体何をした?」
「……お兄ちゃん、スゴイ」
「何をしたって……うーん……強いて言えばドリンク飲んだくらい?」
えーっと、確か『バジリスクの生き血~きなこ味~』だっけ?
「「「「「それだよ!!」」」」」
「え?」
「そりゃあんなの飲んでたら体に異常くらい起きるって……」
「今回はたまたま良い方に転がった様ですが……」
「マスターも飲んでみますか?」
「殺す気か!?」
そんなこんなで、俺達は再び屋敷へと帰ったのであった。そこでは今回の事を労ってくれたのか、またまた手厚い宴が開かれた。ひゃっほう! 色々あったけど、終わりよければ全て良し!
「あ、そうだ。リア、お前はどうするんだ? 何かフェイトの奴は麻帆良まで着いてくるとか言ってるんだけど」
「……当然、私も、行く……フェイト、私の分も、手続き」
「まぁそれくらいは良いだろう。これから先の事を考えたら安い代償だ。君は何歳だ?」
「……10」
「でもさ、リアの両親とか心配しないか?」
「……私、親いないから、平気……。それに、お兄ちゃんがいるから、大丈夫」
「ふむ、なら僕らの保護者はフタミンにしておこうか」
……まぁいいか。フェイトはともかく、リアはこんだけ懐かれてる以上、置いていくのも忍びない。
「あ、二見さん達ここにいたですか。どうやら旅館で私達の身代わりが大変なことになってるみたいですので急いで戻りますよ」
「あ、おう! ……大変な事ってなんだろう?」
「ふむ、身代わりとなるとやはり暴走して何かしでかした、と言うのが一番考えうる事だろうね」
「……先に言われた」
で、旅館に戻ると……なるほど確かに大惨事だった。女性陣の身代わりはストリップ始めてたり、俺とネギ君の身代わりはマッスルポーズひとしきり取った後、二人でスクラムを組むと言う誰得な事をしていたり……。
「悪夢だ……」
「おい、貴様私の京都観光に付き合え! そこのお前達もな! 図書館の3人は付き合ってくれるみたいだぞ!」
「……面白そう」
「またあの珈琲が飲めるかも知れないね。行こう」
「……ま、いっか。昨夜の件で旅館には居づらいし」
身代わりの件を抜きにしても、いつの間にか俺がロリコンだのなんだのと言う話が広がり、リアはみんなから写真を撮られまくりで機嫌がすこぶる悪くなりほぼ一晩中愚痴を聞かされた。
「おいーっすロリみんおっはよー!」
「はっはっは、パル、次言ったら燃やすぞ」
「ハルナ……失礼な言動も大概にしてください……。二見さん、おはようございます。昨夜は大変でしたね」
「そう言いながら距離取ってんじゃねぇよ!? 宮崎さんなんて最初っから近くにいないしな!」
これ、当分はこのままなんだろうなぁ……。ま、我がクラスに戻ればこんな称号大した事ないんだけどな! 変態の巣窟だし!
「ま、冗談はこれくらいにして、二見さん。今日が正真正銘最後です。リアさん、フェイトさんが加入した今、ドリンクの収集効率は格段に上がっています。この機会に京都ドリンクを集めれるだけ集めましょう」
「おうよ!」
「……うん」
「任せてもらおう」
「……つい先日まで殺し合いをしてた奴らとは思えんな」
「ふたみんさんと綾瀬さんは一般の方ですから仕方ないのでは?」
「いや、これはなんか違う気がする」
その後、部屋で休んでいたネギ君達も強制的に付き合わせ、エヴァの京都観光が始まった。
「再び来たぜ、清水寺!」
「ですね!」
「……お兄ちゃん、『清水寺限定~舞台から飛び降りた風味~』見つけた」
「こっちで『音羽の滝~3種の水を配合~』見つけたよ」
「……何か全て台無しになった気分だ」
「マスター……」
さすが4人いると効率が全然違うな! 沢山手に入る事手に入る事。
「……金閣寺」
「初めて見たけれどこれが……」
「うむ、素晴らしいな」
「晴れで良かったですね」
「ほほう、『湖面に映る月の味』かぁ!」
「おや、こっちには『金閣寺風味のネッチョリ八ツ橋』があるです!」
あ、もちろん観光もしてるよ? ドリンクのついでではあるけどさ!
「ねぇ、そろそろ突っ込んでも良いよねアスナ」
「うん、私もそう思う」
「お、こっちでも見つけ」
「「い・い・か・げ・ん・にしろぉおおおおおおお!!!」」
「「「「へぶうっ!!??」」」」
お、俺達4人まとめてハリセンで……だと!? パルと神楽坂め……他の二人はともかくリアになんて事しやがる!!
「もう、せっかくの修学旅行なんだからもっと普通に楽しみなさいよ!」
「そうそう! てなわけで、今日一日はドリンク禁止!! 良いわね!?」
「……ひどい」
「僕の障壁もカグラザカアスナの前では無いに等しいし……仕方ない、か」
「はぁ……こうなったハルナは止められないですね……。ここまで来て残念ですが……」
「だなぁ……」
まぁこうなったらガッツリ京都観光を楽しむとするか!
「――で、結局一番楽しんでたのふたみん達じゃん」
「……楽しかった」
「なんだかんだで京都初めてだったしなー」
「日本の古都、中々興味深かったね」
「歴史を感じさせる建築物の数々、実に素晴らしい物でした……!」
「私も満足した……良いものだな京都は」
でも、金が大分飛んだのよねー。リアにあれ買ってこれ買ってとねだられて……しばらくは節約生活になりそう……。
「やぁ、皆さん、休めましたか?」
「どうもー、長さーん!」
「なぁ綾瀬、そういやこれから俺達どこ行くんだ?」
「何でもネギ先生の父親の別荘に行くらしいですよ。と言うか、二見さんも聞いていたのですから覚えておいてください」
「悪い悪い」
「……サウザンドマスターの、別荘……」
「少し興味があるね」
そういやこの2人は魔法使いだもんな。ネギ君のお父さんって有名だったりするのかな?
「……魔法使える人なら、知ってて当たり前」
「そんなにか!」
「まぁ、彼は大戦時の英雄とまで言われているからね。魔法学校の教科書にも載っているハズだよ」
大戦……? 魔法関係なら世界大戦とかは関係ないやつかな? 魔法使いも大変なんだなぁ。
それから中に通されると、何と言うか本だらけだった。個人で集めたにしてはスゴイ量だな。
「……スゴイ」
「これが彼の……中々興味深いね」
「なぁなぁ! これなんて読むんだ? ギリシャ語らしくて俺らにゃサッパリなんだけど!」
「……えっと、三匹のこぶた」
「童話かよ!!」
何集めてんのネギ君のお父さん!? よりにもよって童話て! なんだその謎チョイス!!
「あ、二見さん! その本に書いてある文字、分かったですか?」
「あ、ああ。リア曰く、三匹のこぶただそうだ」
「ギリシャ語で書かれた童話ですか……これは面白い!」
「……後は大体魔法関係の本。ちゃんと魔法を理解してないと、読めても分からないと思う」
「リア君の言う通りだ。まぁ、それに理解出来たからと言って魔法が使えるようになるわけでもないんだけれど」
ほぁ~~、まぁ魔法使えたら面白そうだなーとかは思ったけどまた勉強しなきゃいけないっぽいし……そう言う事なら俺別に魔法使えなくていいや! 魔法は最悪リアとかフェイトに見せてもらえばいいし!
「おい」
「ん? エヴァ、何か用?」
「だから気安く呼ぶなと……いや、今はいいか。少し貴様に聞きたい事がある」
「どうぞ?」
「あのガキ2人……本気で傍に置く気か? リアとか言う小娘はぼーや程ではないにしろ膨大な魔力を持ち且つそれを完全に使いこなしているからいつ牙を剥くとも限らん。更にあの白髪のガキについては何をしでかすか分からんぞ? 一応監視付きと言う条件付きであの様に自由にさせてはいるが」
まぁ、エヴァが言ってる事は分かる。あの2人が暴れたら大惨事になるだろうしなぁ。シャレ抜きで。でも――
「んー……リアはさ、両親いないみたいなんだわ。詳しくは知らんけど」
「ふむ?」
「だからかは分かんねーけど、やたらお兄ちゃんお兄ちゃんって懐かれてるってワケ」
「そうだな」
「だったら、『家族』の俺がしっかりしてれば良いんじゃね? 少なくともあいつは悪い奴じゃねーよ」
まぁ、さすがにあんだけお兄ちゃんと言われたらそれくらいの感情は出てくるわけで。――父さん母さんになんて説明しようか。
「くくく……『家族』とはまた面白い事を言う。ではあの白髪のガキは?」
「え? ドリンク好きに悪い奴はいないだろ? あ、リアもそれがあるぞ?」
「結局そこか貴様達は!?」
え、そこで怒鳴る意味が分からない。やっぱりこいつカルシウム足りてないんじゃないか?
「おーい、そこの2人いちゃついてないで写真撮るから並んで並んでー!!」
「誰と! 誰が!! いちゃついとるか!! こんなクソガキこっちから御免被るわ!!」
「俺がクソガキならお前はクソBBAだな!!」
「殺すぞ貴様!?」
エヴァとギャーギャー言い合いながらも写真に収まる俺達。……リアとフェイトも写真に入ってるけど良いんだろうか? いや良いならそれはそれでOKなんだが。
それから、近衛さんのお父さんに挨拶して旅館に戻り、帰り支度を整えて駅へと向かった。
「あー、これで修学旅行も終わりかー」
「ですね。それにしても、色々ありましたね……」
「だなー。新幹線乗り間違えたり、お兄ちゃん呼ばわりするロリっ子に会ったり、いきなり襲ってきた白髪少年が仲間になったり、魔法とか……変態、とか…………」
「……」
「……すまん」
「いえ……」
うん、あの事は忘れよう。早く忘れさせてくれ!!
「そう言えば二見さん、構内でドリンクは買えましたか? 私は空振りで……」
「俺は一つだけどなんとか見つけたぞ。『賀茂茄子の天然水・すぐき入り』」
「ほう。ではさっそく戻り次第みんなで飲むです!」
「だな!」
俺達がそう話している内に先生方の挨拶も終わり、俺達は帰りの新幹線に乗り込んだ。のは良いが――
「どうして……こうなった」
「おい貴様狭いぞ、もっと詰めろ」
「……BBA邪魔」
金銀のロリ組に挟まれてます。誰か……そうだ、フェイト! あいつなら俺を助け……
「ふむ、このコーヒーも中々……」
「フェイトさん、こちらも如何でしょう?」
「ありがとう。君はコーヒーを淹れるのが上手いね」
「恐縮です」
あ、あいつら……! 他の連中はみんな寝てるし……。つか、いくら座席に空きがなくてこいつら小さいからって2人掛けに3人で座るのは無茶だと思うの。
「そうだ、俺も寝てしまえば良いんだ! ……ぐぅ」
「……お兄ちゃんが寝るなら私も。……くぅ」
「寝付きいいな貴様ら!? ……え、何だコレは、私一人が起きてるような状態ではないか! おい、茶々丸!!」
「コラ、マクダウェル! 静かにしなさい!」
「うぐ! ……おのれ、格なる上は私も…………」
……んぐ、何だろう? 両肩が何か重いんだけど……まぁいいや、今は寝る。
『次は東京駅、東京駅ー』
「はーい、寝てる皆さん起きてくださいな~!」
「んごっ……もう着いたのか。良く寝たなぁ…………で、コレどうしよう」
俺の隣にはすやすやと寝息を立てる天使・リアが。これは良い。リアなら起きても大した問題じゃないだろう。問題なのは反対側だ……。
「んんっ……すー……」
リアと同じように寝息を立てているエヴァ。寝てるだけなら良かったと思う。でも、何が問題かと言うと、こいつ俺の服掴んで寝てるんだよな……。傍から見たら兄に甘える妹、だろうか? これ、本人が目を覚ましたらガチで殺されるんじゃね?
「あ、ふたみん! その姿、バッチリ写真に収めといたからねん!」
「待て朝倉! それは色々と危ないから止めろ!」
「ん……お兄ちゃん、おはよ」
「お、おうリア……おはよう」
「ん……、っ!? ……おい」
「……ハイ、ナンデショウ」
「ここで起きた事見た物は全て忘れろ。少しでも口に出したらくびり殺す。良いな!?」
顔を真っ赤にしてそう言うエヴァ。顔はともかく、言ってる事はマジだ。リアなんて震えてるし!
「り、了解!」
「くっ……私とした事が不覚……」
「あ、3人とも起きたー? そうそうふたみん、さっきの仲良く寝てる写真、現像して送っとくからねー!」
「何だと!? おい待て朝倉!! 貴様、待たんかぁあああああああっ!!!」
「……降りるか」
「……うん。お兄ちゃんと一緒の学校、楽しみ」
その後、エヴァに捕まった朝倉は泣く泣く画像を消去したとかなんとか。が、俺の携帯に件の画像が……。あいつ、携帯でも撮ってやがった……。
前書きにも書きましたがようやく修学旅行編が終わりました! ……あれ? なんでエヴァといちゃいちゃしてんのこの主人公。……まぁ、これで主人公と3-Aとの繋がりが消えましたので暫くは新人2人を迎えたのんびり日常回が続くかと(笑)
原作に絡ませるとしたら原作7巻に相当するのでネギ君の弟子入り試験、地下のどらごん、そして南国バカンス……くらいですかね。そうなると各数話くらい使うでしょうねぇ……。
まぁ、大抵の事はリアちゃんとフェイト君がいればなんとかなります!
※最後に朝倉さんが携帯で画像を撮っていたとありますが、原作では携帯ブッ壊れてます彼女。でも、あくまでも原作でのお話になりますので深い事はお気になさらず(コラ