「お、新作発見!」
「ほう? 『バジリスクの生き血~きなこ味~』ですか。……さすが二見さん、やりますね。この訳の分からないネーミングセンス……」
「……見つけた、『珈琲風雅なダークマター』」
「お、リアもやるじゃねぇか! 綾瀬は?」
「私が見つけたのはこれですね『生八つ橋ポン酢締め~磯の香りと共に~』です。まぁ、今回はこんなもので良いでしょう。向かう所もありますし」
確かに、今回はドリンク見つけるのが目的じゃないしなぁ。……でも、俺達なんで近衛さんの実家に向かってるんだ?
「……そろそろ突っ込んで良い?」
「ん?」
「まずその子誰!? さっきふたみんの事お兄ちゃんとか呼んでたけど! あとこれから人の家行こうとしてるのにあんた達何やってんの!?」
「あー、そういや神楽坂もネギ君もまだだったか。こいつはリア。良く分からんけど懐かれて一緒に行動してるんだよ」
「……よろしく」
そしてネギ君なんでこんなズタボロなの? シネマ村での一件の後どっか行ったと思ったら神楽坂に背負われてる状態で登場だもんなぁ……。派手に転んだのかね? そして、ついに神楽坂までもがふたみん呼び……いっそ改名してやろうか!?
「リアちゃん、ね。よろしくね! 私は神楽坂明日菜、長いから明日菜で良いわよ!」
「あ、あの、僕はネギ・スプリングフィールドと言います。よろしくお願いしますリアさん!」
「……ん」
「こんだけ可愛いのにまさかの夕映達側だもんねぇ……。天は二物を与えずとは良く言ったものよ」
「確かに。あ、リアちゃん後で写真撮っていい?」
「……お兄ちゃんと、一緒なら」
「よっしゃ、銀髪ロリ美少女の写真ゲット!」
……一体朝倉は何がしたいんだろうか? まさか、売る気か? そうなると……きっと高値がつくだろうなぁ。
「お? あ、見てみて! あれが入口じゃない?」
「うん、せやえ~」
「おぉ~~~。何か雰囲気あるわね~!」
俺達が近衛さんの実家に行こうとすると何やら神楽坂とネギ君が敵だのなんだの言ってたけど、近衛さんの実家だろ? そもそも敵って……後でネギ君にでも聞いてみるか!
で、中に入るとそこには――
「「「「おかえりなさいませこのかお嬢様ーっ!!」」」」
見た事もないくらい広い屋敷があり、沢山の人が近衛さんをお嬢様と呼んで歓迎していた。……近衛さん、超絶金持ちだったんだな。知らなかった。
「うっわ、すっげ」
「うひゃー、これ全部このかのお屋敷の人!?」
「家広いー……」
「いいんちょ並みのお嬢様だったんだねー」
……あのいいんちょもかよ。3―Aすげぇな。超金持ちがクラスに二人もいるのかよ。
「……広い」
「だなー」
「驚きましたが、あの学園長の孫娘なのですから納得といえば納得ですね」
「……ごめん、それ初耳なんだけど」
「何でですか!? 学園長先生もこのかさんの名前を仰っていたでしょう!?」
「え? ……おお!」
灰色の脳細胞をフル稼働させて記憶を探ってみると、確かに言ってた気がする!
「二見さんの頭は鳥並ですか……」
「失礼な!」
「おーい、そこのお二人さーん! 置いてくよー!」
「……お兄ちゃん、早く」
「お、おう!」
「ま、待つです~~!」
そうしてみんなの後に続いて屋敷の中に入ると、そこでも歓迎ムードだった。アレか、金持ちの友達が来るとなるとみんなこうなのか? 少なくとも俺のクラスにゃ金持ちいないから分からんけど!
「うひゃひゃ、こりゃまたスゴイ歓迎だねー」
「これはどう言う事ですか?」
「は、はい。実は僕修学旅行とは別に秘密の任務があって……」
「「「「秘密の任務?」」」」
その言葉を聞いた瞬間、俺・綾瀬・朝倉・パルが素早く反応する。そりゃ秘密って聞いたら気になるのが人間ってもんだろ?
「……任務?」
「道理でネギ君途中でいなくなったりしてたわけだ」
「ま、まぁ、その……はい」
「まもなく長がいらっしゃいますのでお待ちください」
長? 何それ? ここが近衛さんの実家だと考えると近衛さんの関係者だよなぁ……? まぁ、俺には関係ないからどっちでも良いんだけど。
「……長……」
「ん? リア、知ってるのか?」
「……名前だけなら」
「へぇ~、って事は有名人?」
「……多分」
「お待たせしました。ようこそネギ君、そしてこのかのクラスの生徒の皆さん……と君達二人はお友達かな?」
リアと話していると、良く通る声と共に奥から1人の男性が現れた。まぁ、話の流れからしてあれが長とか言う人だよな。
「あ、はい。ふたみんでっす」
「……リア」
どうせまたふたみんって呼ばれるんだから最初からふたみんで言ってやる。
「お父様! ひさしぶりやー」
「ははは、これこれこのか」
「微笑ましいねぇ」
「ふふ、ですね」
「でも、こんな屋敷に住んでる割には普通な感じよね」
「むしろ顔色悪くない?」
確かに。体の調子でも悪いのかね?
「あ、あの長さんこれを……。東の長、麻帆良学園学園長近衛近右衛門から西の長への親書です! どうぞお受け取り下さい!」
「なぁ綾瀬、親書って何?」
「この場合だとこのかさんの父宛に学園長先生が自筆で書いた手紙の事です。流石に内容までは分かりかねますが」
「なるほどなるほど」
「……昔から、東と西は仲が悪いから……その為の親書」
「あ、そうなの?」
「……うん、チクサから聞いた」
「誰それ」
初めて聞く名前にリアに詳しく教えてもらおうとすると、ネギ君達の方で何やら進展があったらしく
「任務ご苦労! ネギ・スプリングフィールド君!!」
「あ……ハイッ!!」
「おー! 何か良く分かんないけどおめでと先生ー!」
「ご苦労さまー!」
「今から山を降りると日が暮れてしまいます。皆さんも今日はここに泊まっていくと良いでしょう。歓迎の宴をご用意しますよ」
「宴キタ―――ッ!!」
これは、美味い物食えるチャンス!
「やったー!」
「ラッキー!!」
「いや、あんたらついて来ただけでしょ」
「……楽しみ」
そうして、宴が始まった……! 出された料理はどれもが美味い。とにかく美味い。神楽坂の言う通り、ついて来ただけの俺達がこんな美味い物食っていいのかと思うくらい美味い! 嗚呼、ついて来てホンっと良かった!
「1番ふたみん! イッキやりまーす!!」
「良いぞふたみーん!!」
「念の為ですが、アレはお酒ではありません。お酒風味の水です。断じてお酒ではありません」
「夕映誰に説明しとるん?」
「……美味しくない、やっぱり……コレ」
「おや、『微炭酸ラストエリクサー』ですか。是非ご感想をお聞かせください」
「……うん」
「ぷっはぁああああ!! 美味い、もう一発!!」
なにこの水超美味いんだけど! しかもすげぇテンション上がってくるし!! 今の俺なら、なんでも出来る気がする!
「――なんて思っていた時期が俺にもありまし――おげぇええええ!」
あの後、飲みすぎて気持ち悪くなった俺は近衛さんのお父さんに聞いてトイレに篭もり、そしてリバースした。おえぇ……ぎぼぢわるい……。
「こ、こんな時は不思議ドリンクだ! 何だか健康に効果ありそうな『バジリスクの生き血~きなこ味~』で! ……あ、普通にきなこうめぇ」
……でもなんだよこれ。名前の割に味が全然面白くない! これはボツになるだろうな。
「――ふぅ。大分楽になったし、そろそろ戻るか。確か俺の部屋は……」
「……あれ、まだ人がいたんだ」
「ん? 誰君? 屋敷の子?」
この白髪の少年……あれ? そういやシネマ村で見たような……
「まぁいいか。少し眠ってもら――」
「あ、良かったらこれやるよ。今ちょっと飲めそうになくてさー」
「……ふむ。僕に珈琲とは中々分かってるね。だからと言ってそのまま逃すわけじゃないんだけど。『石の息吹』」
「ほへ?」
少年がそう呟いた瞬間、目の前が変な霧に包まれた。おい、『珈琲風ダークマター』の何が嫌なんだよ。いくら嫌だからって人様にいきなり謎の物体ぶつける事ないだろ!
「ゲホッ、ゲホッ!! しかもやけに煙たいし!! おい、このガキ一体何のつもり――っていねぇし!!」
あんのガキ、どこ行きやがった!? 次会ったらチョップしてやる!!
「それはそうと、やけに静かだなぁ……みんな寝てんの? あ、綾瀬だ。おーい、綾瀬ー!」
綾瀬が血相を変えて走っていたので声をかける。一体どうしたんだ?
「っ!? あ、ふ、二見さん! 良くぞ無事で……そ、それより大変です!」
「ん?」
「詳しくは移動しながら説明します! とにかくここから出るです!」
「お、おい! それは良いとしてリアが!」
「……呼んだ?」
「うおっ!? ま、まぁいるんならいいや。良く分からんが行くぞリア!」
「……うん」
一体全体、屋敷の中で何が起こったんだ?
「そういや何か左手が重い……な?」
「!! 二見さん、それは……!!」
「……石化……ッ!」
左手を見ると、何か石になってた。……え、なんで? 道理で全く動かないし重いと思った……てぇ!!
「な、なぬな……なんじゃこりゃあああああああ!!??」
「ジーパン……いえ、二見さん落ち着いてください! 二見さん、白い髪の少年に何かされませんでしたか!?」
「え、あ、何か霧みたいなのぶつけられたけど……」
「……それは『石の息吹』。浴びた人を石にする、『魔法』……」
「「……魔法!?」」
フェイト君、珈琲と言う文字しか見てません(笑)
そして石の息吹を受けても完全に石化しない主人公。→その前に飲んだドリンクで察してください
今回は被害者0! けれどもフェイト君が確実に餌食……コホン、被害に遭いますね!
さらにリアちゃんあっさり魔法と言っちゃいましたが……緊急事態だから仕方がないですね!
一応次回で上記の事案は全て片付ける予定です。