甘味処を後にし、次に俺達が向かったのはゲーセン。え? わざわざ京都に来てまでゲーセンかよ。って? 分かってないなぁ。ご当地モノってのがあるんですよ。
「おーい、ふったみーん! そんなとこでブツブツ言ってないで京都記念のプリクラ撮るよー!」
「あ、おう!」
でもプリクラかー。俺あんま撮った事ないんだよねー。男同士でプリクラなんてほっとんど無いし。
「ふたみん、分かってるわね?」
「モチコース、宮崎さんとネギ君だろ? ネギ君は俺が誘導する」
「OK!」
「二見さん、頼んだですよ」
「当然だ!」
何かネギ君は神楽坂と話してるけど、まぁ良いだろう。
「おーい、ネギくーん!」
「わっ、ふ、二見さん! ど、どうかしたんですか?」
俺が声をかけると飛びずさったネギ君。言っておこう、俺は結構ショックを受けた。
「そんな驚く事でもないと思うが……せっかくだし、京都記念のプリクラ撮ろうぜ!」
「あ、はいっ!」
「へぇ~、何か意外」
「何が?」
「いやさ、男子ってプリクラとかあまり取らないイメージあったから」
それは偏見だと思うぞ? まぁ、少数派だとは思うけどさ。
「俺もどっちかって言うとゲームの方が多いけどな。っと、ネギ君待ってくれー!」
「お、ちゃーんと連れてきてくれたね」
「おうよ。そんじゃ、最初はネギ君と宮崎さんで良いな」
「えうぇっ!?」
「何驚いてるですか。当然ではないですか」
綾瀬の言うとおり。どうして宮崎さんはそんな驚くんだろうか?
「あ、あのー? 僕一人で撮るんですかぁ?」
「ほらのどか! 行くっ」
「あぅっ!?」
宮崎さんが入った瞬間にシャッターが切られる。なんで一緒にプリクラ撮るくらいでそこまで緊張するかなぁ?
「よし、ネギ君。次は俺と撮ろうぜ!」
「あ、はい!」
ふっふっふー、噂の子供先生と写真撮ったなんて言ったらあいつら羨ましがるだろうな!
そうして、ネギ君と最初は嫌がっていた神楽坂、綾瀬・早乙女とネギ君、近衛さんと桜咲で一通り撮り終わった。
「さて、次は何するよ?」
「ちょい待ち」
「ん?」
「まだふたみんとあたしら撮ってないっしょ」
「ああ。そうだったっけ? んじゃ撮るか」
そういや俺ネギ君としか撮ってないしな。ま、こう言うのもたまには悪くないだろう。……武村辺りがうるさそうだけど。
「おい、入ったぞー」
「ほら夕映! もっとくっついて!」
「な、ちょ!? 何をするですかハルナ!!」
「お、おい押すなよ!?」
早乙女が綾瀬を押しまくるせいで俺まで押され、結局撮れた写真は外に押し出されて顔の半分が切れてる俺と、なんとか顔は入ってる綾瀬。そしてポーズ決めてるパル達だった。
「俺半分しか写ってねーじゃねーか!! これじゃ俺いらなくね!?」
「いや~、ちょっとやりすぎたね~」
「あいたたた……ハルナ! 限度って物を考えてくださいよ」
「あはは、ごめんって。ほら、関西限定のレアカード取りに行こうよ!」
カードって……ああ、ひょっとして新幹線でやってた魔法使いのアレか。よし、俺も見に行こう。
「取れそうか?」
「なかなか難しいですね。流石は関西限定と言ったところでしょうか」
「けど、ここで諦める私達じゃないよー!」
「そう言う事です。二見さんも見ているだけでは暇でしょうからやりますか? デッキなら貸すですよ? 予備になりますが……」
「そうだなぁ……んじゃいっちょやるか! 俺が先に限定カード取ってやるからな!」
綾瀬からデッキを借りてプレイしてみたまでは良かった。良かったんだが……
「おふっ、また負けた……」
「これで10連敗ですね」
「ふたみん弱っ」
「う、うるせぇな! ルールなんてあんま覚えてないんだよ!」
なんだよ今のコンボ! こっちがカード引くたびにダメージを受けて、さらに強制的にカードを引かせるカード使ってくるとか!!
「今のコンボは普通に魔法解除のカードで何とかなると思うですが……」
「出たら使ってたよ! 出る前にHP0なんだよ!」
今回の敗因:俺の引き運の悪さ。断じて俺が弱いわけではない!!
「でも運も実力の内って言うよねー」
「……おふっ」
「どうやらトドメのようですね」
俺、カードゲームに向いてないんだ……。あ、でも武村や鷲崎にはバカ勝ちしてたけど……それはつまりあいつらは俺よりも弱いって事か? ……なんか、元気出てきた!
「とりあえずデッキ返すわ。俺その辺で新作やっとくから出る時に呼んでくれ」
「分かりましたです」
さて、鉄○とかないかなー。言っておくが、俺はあれなら結構強いんだぞ!
「ちょっと、良いですか?」
「え? 桜咲……」
え、え? 俺何かした? 何もしてないよな!?
「ここでは話しにくいので外へ」
「は、はい」
ま、まさかあの背負ってる武器みたいなのでヤキを入れるつもりか!? 俺何もしてないってのに! あ、存在しているだけで目障りなのか!? そんな、俺どうしたら……。そ、そうだ! 謝ろう! 誠心誠意謝ればきっと考え直してくれるはず!
「ここなら良いでしょう。貴方に2、3お聞きしたい事が……」
「ホンット、ごめんなさいでしたぁあああああ!!!」
「はっ?」
「俺って奴は知らないうちにバンチョーの気に障る事をしでかしてしまったようで。謝ります! 謝りますから何卒、何卒その木刀みたいなものでヤキを入れるのはどうかご勘弁を……!」
土下座だ! 日本の由緒正しき土下座をすればきっと木刀バンチョーも許してくれるはずだ!
「え? いや、バンチョーって私は別に……」
「って事は許してくれるんですか!?」
「そ、そもそも殴るために呼んだ訳ではなく……その、何も知らないのですか? 私の事とか……」
「ん? 貴方様は麻帆良を裏から暴力で支配する鬼バンチョーでは……?」
体は小さいが、きっと幾人もの人間をあの木刀でぶちのめしてきたに違いない。
「違いますからね!? 私は決してそのような危ない存在ではなく!」
「じゃ、じゃあ俺が鬱陶しいから人目につかないところでボコボコにしようとか……」
「しません!」
「……ホントに?」
「しませんよ! 現に貴方には何もしてないでしょう?」
「で、でも目が『殺すぞゴラァ』って……」
男だろうが女だろうが、怖いもんは怖いんだ!
「……そんなに怖い目つきでしたか?」
「うん。殺されるかと思った」
「……うぐ」
え、えーっと……とりあえずバンチョー、いや桜咲は俺に話があっただけらしい。
「と、ところで俺に聞きたい事があるって言ってたけど……」
「あ、いえ、もう大丈夫です……」
そう言ってしょぼくれた足取りでゲーセンに戻っていった桜咲。
「な、なんだったんだ? ……ま、俺も戻るか」
俺が戻ると、いつの間にかネギ君がいなくなっていた。神楽坂も。ありゃ? せっかくネギ君と鉄○で遊ぼうと思ったのに。
「綾瀬、ネギ君はどこに行ったんだ?」
「え? おや、確かにいませんね。それにのどかも」
「ネギ君おっかけていったんとちゃう?」
「ま、そんな事はおいといて、関西限定のレアカード全部集めるわよー!!」
「よし、今度こそ負けはしない!」
…………
………
……
…
「燃え尽きたよ……真っ白に」
「結局今のところ全敗ですね」
「何でそーまで負けれるか不思議よねー」
俺もそう思う。なんか、良いところまで行ったと思ったらあっと言う間に逆転されて負けるんだ……。
「そういや後何枚でコンプだっけ?」
「あと10枚ですね。超レア系が全然です」
「ウチはレアすら全然やえー」
「俺はそもそも勝てない。っと、ちょっとトイレ行ってくる」
「いってらー」
そしてトイレから戻る途中、桜咲みたいに木刀持ってメガネをかけている女の子がいた。……桜咲の知り合いか? 後で教えてやろうっと。
「? ウチに何か御用ですかぁ~?」
「え? あ、いや何でもない。失礼失礼」
いくらなんでもジッと見るのは失礼だったな。うん。
「おーい、カード取れたかー?」
「何とか一枚はねー」
「むぅ、こうなったら私の最強デッキでお相手するしかないようですね」
「ほら、せっちゃんもやろー?」
「あ、桜咲ちょっとー」
「はい?」
桜咲も驚くだろうな。こんなとこで知り合いと会うなんて。
「さっきさ、お前みたいに木刀持ってる女の子見たぜ? 知り合いだったら挨拶――」
「それは本当ですか!?」
「お、おう? メガネかけてて近衛さんみたいな喋り方する子だぞ」
そんなに驚く程だったのか。親戚か誰かかな? 全然似てなかったけど。
「マズい、まさか月詠がここにいるとは……」
「ん?」
「ふたみんさん、情報感謝します。お嬢様! ここを出ましょう!」
「え、せっちゃん?」
「あれ? 桜咲さんとこのかは?」
「さっき桜咲が近衛さんの手を引いて走っていった。俺達も追いかけるか?」
一応班行動だし、どっかいったネギ君と神楽坂と宮崎さんは仕方ないとして、これ以上バラバラになるのもなぁ。あと、何気にまたふたみんって呼ばれた気がする。
「そりゃ、そんな面白そうなの追いかけないとダメっしょ! ほら夕映行くよ! ふたみんも!」
「了解です!」
「ですよねー」
俺、走るのあんま好きじゃないんだけどなー。
……アレ? ドリンクが、ない……?