「行け――! 左、左!!」
「本屋、そっち違う!」
「おー、やってるやってる」
「あまり騒いでは周りに迷惑がかかると思うですが……」
「それ、今さらだと思うぞ?」
あとこれくらいなら問題ないと思う。修学旅行だし。
「まぁ……そうですね。ウチのクラスが騒がしいのはそもそも当然と言えば当然ですし」
「俺んとこも同じような感じだぜ? 多分今頃――」
side-グラヒゲ先生
「うっひょ~~~~! 水着のお姉さ~~~ん!!」
「おい、武村。あまり騒ぐな」
「「「「お姉さ~~~~ん!!!」」」」
「……馬鹿共が」
何故俺のクラスはこんな奴らばかりなのだ? 中林が唯一まともな人間だが……何せこのクラスだ。どうなるか分からん。
「グラヒゲ先生、二見君を除いて全員いるのを確認しました」
「すまない中林。あと二見は新幹線を乗り間違えて京都の方へ行った。この修学旅行中はこちらに来る事は無いからもう確認しなくて良いぞ」
あいつは部活の件を入れてもまだマシな奴だとは思ったんだが……一番の馬鹿だった。
「あ、はい。分かりました」
sideout
「――ってな感じになってるだろうし」
「確かに、騒がしそうですね」
「よっしゃ、行けのどかー! そうそう、そのままそのまま……」
「おっと、のどかの応援をしないといけませんね。のどか~~、右ですよ!」
「んじゃ俺も……。そっち違う! もっと右!」
そうやって宮崎さんを誘導している内にいいんちょと佐々木が穴に落ちた。あ、またカエルがいる。
「ゴ、ゴールです――」
「良くやったよのどか!」
「これでネギ先生とはバッチリですね」
「うんうん。良かったな~」
「だな」
いやぁ、それにしてもネギ君ってモテてるなぁ。武村がこれ聞いたら発狂するんじゃね?
「さ、次は音羽の滝です。縁結びの筋に行きましょうのどか」
「う、うんー……」
「俺は健康に行ってくるぜ!」
「二見さん、一つ水筒を預けておくです。……頼みましたよ?」
「任せろ」
良い笑顔でサムズアップする俺達。よし、ミッションスタートだ。
「ん? ふたみんどっか悪いの?」
「体調悪いんやったらどこかで休んでた方が……」
「大丈夫だ、問題ない」
幸いみんなは縁結びに集中してるから健康はがら空きだ。ラッキーラッキー♪
「くっくっく……これで俺は無敵だ!」
「あ、二見さんは縁結びじゃないんですね」
「ん? ネギ君か。ま、今はあんまり興味ないからな」
「へぇ~。でも何で健康なのよ? 学業とかならまだしも」
「崇高なる目的のためだ。今はこれだけしか言えん」
ネギ君に続き神楽坂にも聞かれたが理解されないだろうし、言わなくていいだろ。
「そ、そう?」
「ああ、だから俺の事は気にしないでくれ」
そう言って水筒とペットボトルに注いでから下に降りる。
「お、その様子ですとバッチリの様ですね」
「おうよ。――で、コレどうしたんだ?」
「……良く分かりませんが縁結びの水を飲んだら酔いつぶれたようです」
水ってか酒じゃね? 実際酒臭いし。……先生方に見つかったらアウトな気がする。
「あ、あれ? 皆さん一体……」
「あ、ネギ君。何か酔いつぶれたらしいぜ?」
「縁結びの筋の水を飲んだ人たちはみんな酔いつぶれましたです」
「ええ―――っ!?」
「恐るべし、縁結び」
まさか酒を混入しているとは……大人な香りがするぜ。
「と、とりあえず皆さんをどこかに運ばないと! すいません、大丈夫な方は手伝ってくれませんか!?」
「はいよー」
「仕方ないですね」
「了解や」
俺達はネギ君に従い、酔いつぶれた連中を甘酒屋に運んだ。(酒の言い訳に使えるからって理由だ)
「ん……? 何かお酒臭くないですか?」
「うげっ!? 新田に瀬流彦先生!? おい、起きろお前ら!」
「あー! 甘酒ですよ新田先生、瀬流彦先生!!」
「いいんちょさん起きてください! バレたら修学旅行中止の上、停学ですよ!」
ネギ君と神楽坂が先生たちを引きつけてる間に起こそうとするが、全く起きる気配がない。
「あ、あらどうしましたネギ先生」
「うひゃ~~ん! 何でもないです~~!!」
「えーと、一部が疲れて寝てしまったようで」
「バ、バスに押し込みますから旅館に向かいましょうしずな先生!」
「先生は他のみんなに連絡してきてください!」
――と、一時はどうなる事かと思ったけど強引に押し切り何とか無事に旅館までたどり着けた。
「はぁ~~、何とかなって良かったな」
「ですね。かなり危なかったですが」
「とりあえずアスナと一緒にみんなは部屋で休んでるって言った来たから大丈夫やよ」
俺と綾瀬と近衛さんは旅館の入り口ロビーでだらけていた。
「そういや、俺って部屋どこになるんだろ」
「やはり先生とではないですか?」
「新田と同じ部屋だったら嫌だなぁ……」
「さすがに女子と同じ部屋はないやろうしな~」
「あったら俺はロビーで寝る」
仕方ないな、誰か他の先生に聞いてこよう。
「あ、二見君こんなところにいたのね」
「源先生、どうかしたんですか?」
「すっかり伝えるの忘れてたの、あなたの部屋の事よ」
「もう決まってるんですか?」
「ええ、ネギ先生と同じ部屋で良いかしら? 新田先生と瀬流彦先生とだとお酒が入るからね」
なるほど。ネギ君となら俺も安眠できそうだ。
「大丈夫です。むしろそっちでお願いします!」
「良かったですね」
「おう!」
「ふふ、それなら良かったわ。あ、お風呂の時間だけど混浴になっていたから時間には気を付けてね? それじゃ」
「ういっす」
じゃあ何故混浴がある旅館を選んだんだ? ……あ、俺みたいなバカが新幹線乗り間違えるなんて予想してなかったからか!
「では、私達は一旦部屋に戻りましょうか」
「せやね」
「俺も部屋に行くかなー」
今日は完徹でネギ君とお話しようじゃないか。あー、でも10歳にはちょいキツイかな?
「おや、自販機があるです」
「何っ! さっそくチェックだな。どれどれ……」
「……ウチ先に戻ってるな~」
「ふむ、これなんか如何です? 『宇治抹茶しば漬け水小豆仕立て』と書いてあるです」
「面白いネーミングだな、それにしよう」
早速硬貨を投入し、ドリンクを買う。さて……京都のお手並み拝見と行こうか!
「む……? これは……」
「ぬぅ……この抹茶の香りとしば漬けの臭いが絶妙にマッチせず、さらに小豆の甘味が全てを破壊している」
「さすが京都……やりますね」
「ああ、侮れねえな」
京都……先程の偉そうな発言は訂正させてもらいます。
「ではこの不思議ドリンク京都編に『宇治抹茶しば漬け水小豆仕立て』を書き込むです」
「おうとも」
この修学旅行中、一体どれだけのドリンクに出会えるんだろうか? もっと時間があればたくさん集められるのにな……。
「それでは二見さん、また明日です」
「ん、また明日~」
綾瀬と別れ、ネギ君の部屋に向かう。
「おいっすネギ君ー! ……ってあれ?」
いない。部屋は間違えてないけど、いない。
「……風呂かな?」
俺はいつ入ろう……深夜?
「うーん……今は寝るか」
する事無いし、こう言う時は寝るに限る。
side-夕映
「……さて、私はどうしましょう」
先程アスナさんと木乃香さんはお風呂に行きましたし……ハルナ達は熟睡してるです。一人だとすることが無いですね。一応私達の班のお風呂の時間ですが今は特に気分ではないのでギリギリに行こうかと思いますし……。
「あ……そう言えば」
音羽の滝の健康の分をまだ二見さんから受け取ってなかったです。部屋に居なければ明日でも良いですが、とりあえず行くだけ行きますか。
………
……
…
「……」
いやまぁ、居るには居るですが……。
「ぐぅ……」
「寝てるですね、完全に」
布団だけ引いて着替えずにそのままとは皺になったら大変だと思うのですが……この人がそう言う事考えてる訳ないですよね。
「仕方ないですね、また明日にしましょう」
ここまで気持ち良さそうに寝てるのを起こすのも忍びないですし。
sideout
「……ん? あれ、今何時だろ……?」
つーかどんだけ寝てたんだ?
「えーと…………WHY?」
ちょっと待て、ちょっと待とうか! 時計見たらほぼ真夜中って、どんだけ寝てるんだよ! ここに着いた時はまだ夕方だったぞ!?
「しかもネギ君は……まだ戻ってないのか」
先生も大変なんだなぁ。子供なんだから仕事の少しくらい大目に見てあげればいいのに
「……ま、とりあえず風呂入るか」
さすがにもう誰もいないだろうしな! 一人で温泉とか最高すぎる!
「そうと決まれば善は急げだ!!」
用意してあった浴衣やその他着替えを持って風呂場へと向かった。風呂は露天風呂でこれまたすげー良い眺めだった。なんつーか、ハワイじゃこうはいかないよな~。
sideほいほい使ってたら邪魔くさいですかね……?
えー、そうですね、今回の流れは主人公が全て寝過ごすと言う結果に終わりました。とんでもないやつです。裏ではお風呂騒動があったり誘拐騒ぎがあったと言うのに……。