MAHORA不思議ドリンク研究会   作:ヨシュア13世

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明日は一日空かないので実質これが今年最後の投稿になると思います。


10時間目 吸血鬼の噂

side-?

 

「悪いが死ぬまで吸わせてもらう」

 

くくく、これでようやくこの呪いが解ける。あの飲み物のせいで散々な目に遭ったが、呪いが解ける事に比べたら些末な事だ。

 

「うわあ~~~ん!! 誰か助けて~~~~!」

 

「ふ……、誰も来ん。諦めろ」

 

「ううう……あれ? うっ、臭っ!?」

 

「んなっ!?」

 

な、なんだと!? まさか、まだあの臭いが残っていたのか!?

 

「げほっ、げほっ、げほっ!」

 

「失礼な奴だな!? 咽るほど臭くはないわ!!」

 

「す、すいません。で、でもこの距離だとホント臭いがキツくて……」

 

「う、うるさい!! お前は黙って血を吸われていろ!」

 

この私が臭いと言われる日が来るとは……おのれ、茶々丸にあの飲み物を渡した奴を絶対に後悔させてやるわ!!

 

sideout

 

「ぶえっくしゅ!! うぅ……寝冷えしたかな?」

 

なんか妙な悪寒がしたなぁ……。俺、ひょっとして誰かに恨まれたりしてるんだろうか?

 

「んー……まぁ良いや。寝よ寝よ……」

 

風邪引いても困るしな。それに誰かに恨まれる覚えなんてないっての。

 

…………

 

………

 

……

 

 

「――でさ? 昨日の夜から風邪っぽいんだよな」

 

「そうなのですか? 春になったと言えど、まだ朝と夜は冷え込むですから気を付けるです」

 

部活動をしつつ駄弁っている俺達。ちなみに、今俺が飲んでるのが『スイカメロンマグナム』、綾瀬が飲んでるのは『ナポリタンコーラ』である。これが今週の中で一番のおススメ。学園長にも贈ったが、涙を流して喜んでたよ。

 

「そうそう、話変わるんだけどさ。お前のクラスに絡繰茶々丸って娘がいるだろ?」

 

「ええ、いますが……どうかしたのですか?」

 

「いや、それがな? 昨日猫に絡まれてるところを助けてくれたんだ」

 

「……」

 

おいコラ、可哀相な子を見るような目で見るんじゃない。

 

「まぁ聞けって。俺も何で絡まれたかはわかんねーんだよ」

 

「……色々と言いたい事はありますがまぁ良いでしょう。それで、何なのですか?」

 

「うむ。実はな、絡繰は毎日野良ネコに餌をあげてるんだそうだ。毎日だぞ毎日。すげぇ良い子だと思わないか?」

 

「確かに善い行いだとは思いますが……結局のところそれが言いたかっただけですか?」

 

「おうよ」

 

俺だったら数日で止めるわ絶対。同じ事の繰り返しなんてつまんねーし。MAHORAドリンクみたいに毎日違うなら続くんだけどな。

 

「……二見さんも暇人ですね」

 

「なにおう!? ……ま、否定はしないけどさ。ん~~~、なんか面白い事ねぇかなぁ」

 

「ほう……? その言い方、MAHORAドリンクに飽きたと。そう言いたいのですか?」

 

「うんにゃそれは全然。でもさ、面白い事は沢山あった方が良いだろ?」

 

てか綾瀬、視線が凄く冷たい。今のは俺の言い方が悪かったかも知れないけど、さすがに怖いぞ。

 

「む……それはそうですね。しかし、そうそう面白い物など……」

 

「だよなぁ……。あ、そうだ。子供先生の事聞かせてくれよ」

 

あ~~、子供先生とか超会ってみたい! 子供で先生とかホントどんだけ頭良いんだよ。

 

「ネギ先生ですか? そうですね……今日はやたら落ち込んで……と言うよりどんよりしたオーラを纏っていたです。あぁ、そう言えばクラスの方に突然パートナーになってくれるかどうかと言う質問をしていましたね。――おっと電話です。少し失礼します」

 

「ん」

 

いきなりどんよりしてパートナー? 子供先生、いきなりどうしたんだ?

 

「え? 大浴場ですか? ……なるほど、分かりました。それでは」

 

「誰だったんだ?」

 

「ハルナですよ。何でも、至急大浴場に集合だとか意味の分からない事を言っていたです」

 

確かに。何で風呂?

 

「どうせ下らない用事でしょうが……行かないと行かないで五月蝿そうですので行ってくるです」

 

「了解。んじゃ、俺は帰るとするかー」

 

「それではまた来週ですね」

 

「だな」

 

綾瀬を見送り、俺は俺で寮に戻る道を進む。

 

「ん~~、今日はリストにあるのばっかだなぁー」

 

その道中、自販機でMAHORAドリンクを確認しながら呟いてしまう。だってよ、かれこれ5~6台は見たけど全部リストに載ってるんだぜ? あり得ねぇだろ……。

 

「今日はもうツイてないって諦めるしかないか……」

 

「む……二見か」

 

「あ、グラヒゲ先生。どもっす」

 

「こんなところで何をしている?」

 

う~ん、何か良く分からないけど怒ってる? サングラスかけてるから表情が分かり辛い。元々分かり辛いだけかも知んないけど。

 

「部活……だったんですけど、無理になったんで帰るとこです」

 

「部活? ……ああ、MAHORA不思議ドリンク研究会と言うやつか」

 

「あ、もう覚えてくれたんですね」

 

「あんな目立つ名前の部活、すぐに覚える」

 

確かに。それに部活名が部活名だしな。

 

「はは、では俺はもう帰りますね」

 

「うむ。寄り道などせず真っ直ぐ帰れ。最近妙な噂が流行っている」

 

「吸血鬼がどうのこうのってやつですか? やだなー、まさか先生まであんな噂信じてるんですか?」

 

「信じてはいない。だが、用心する事に越した事は無いと言う事だ」

 

そう言うもんかねぇ? 刃物持った不審者ならまだしも、吸血鬼なんて実在しない存在の用心しても仕方ない気がするんだけどなぁ。

 

「はぁ……そうですか」

 

「まぁ良い。じゃあな」

 

「ういっす! あ、そだ。先生、良かったらコレどうぞ」

 

と、俺は一応買っておいた『濃縮無還元ドラゴンフルーツ』を先生に差し出す。

 

「……飲めるのか?」

 

「勿論っすよ! そんじゃ失礼します!」

 

さーって、さっさと帰ってドリンク帳の整理でもするかなぁ。

 

side-グラヒゲ先生

 

「……」

 

『濃縮無還元ドラゴンフルーツ』……これを私に飲めと言うのか? これからは奴から飲み物を貰わない方が良さそうだな。

 

「…………ゴク――――!!??」

 

な、なんだコレは……!? 口に入れた瞬間にどうしようもなく広がるあり得ない程の甘ったるさ……。い、いかん眩暈がしてきた……。

 

「か、神多羅木先生!? どうなさったんですか!」

 

「ガ、ガンドルフィーニか……。いや、何でもない。少し立ちくらみがしただけだ」

 

「は、はぁ……」

 

二度とこの飲み物は飲まん。

 

sideout

 

「えーっと、これが一冊目でこれが二冊目で」

 

部屋に戻り、ノートに書いた日付を確認しながら棚に並べていく。

 

「う~ん、こうして見ると結構集めたもんだなぁ」

 

1年の秋から初めてもう3年の春。時間が過ぎるのは早いよホント。

 

「それは良いけど……MAHORAドリンクは底が知れないぜ全く」

 

なんだかんだで百本以上だぞ? 凄くね?

 

『♪♪~~♪~』

 

「ん? メール……綾瀬か。何々……『先程はすいませんでした。やはり下らない用事だったです。そちらは何か進展ありましたか?』って、どこまで律儀なんだお前は。ま、一応返信しとくか。『こっちは収穫ナシ。今日はツイてなかった』――送信、と」

 

あーあ、収穫ナシなんて久しぶりだなぁ……。明日はもっと違う所に行って見るかぁ。

 

「よし、そうと決まればもう寝よう!」

 

明日こそ、明日こそは新作ゲットだぜ!! と、決意も新たに俺は布団に入った。

 

――翌日の放課後

 

「うし! 今日こそは新作を見つけてやるぜっ」

 

「おお? 何かやる気が満ち溢れてますね」

 

「おうよ。昨日は久しぶりに一個も見つけられなかったからな。リベンジよ!」

 

まさか、もう全部見つけたって事はないよなー……? まだ大学や高校の方は見に行ってないし。

 

「では今日はどこに行くですか? 私は今日は教会の方へ行こうと思いますが」

 

「俺は街の方に行って見ようと思う」

 

「了解です。では、適当な所で解散しましょう。その時はこちらから連絡を入れるです」

 

「オッケー。んじゃ、行ってくるかー」

 

と、綾瀬と別れ俺は街の方へ行き、ドリンクを探す。

 

「えーと、自販機自販機……」

 

「およ? ふたみんじゃん」

 

「ん? あ、鷲崎か。こんなとこで会うなんて珍しいな」

 

「それはこっちの台詞だっての。俺は夕方の郵便配達のバイトだからこの辺は毎日来てるんだ」

 

こいつは相変わらずバイトばっかしてるなぁ。苦学生なんだろうか?

 

「ま、いいや。それよりお前自販機どこか知らない?」

 

「自販機? それならここをもう少し真っ直ぐ先に行ったとこにあるぞ」

 

「サンキュ。んじゃ、バイト頑張れよ」

 

「おう。お前は遅くなって吸血鬼に襲われんなよ?」

 

「もうそのネタは良いっての」

 

……ったく、昨日のグラヒゲ先生にしろこいつにしろ、どーして実在しない物の事をそう気にするんだか。

 

「ま、いたらいたで面白くはある、か」

 

ニンニクとか十字架調達しとこうかなぁ。

 

「とりあえず先にドリンクだよな。吸血鬼なんてあとあと」

 

それから鷲崎の言うとおりに道を行くと、程なくして自販機が見つかった。

 

「お、あったあった。えーっと、新作は……む? 『チョコハバネロ梅干味』か。これは初めてだな。おっ、『味わいコーヒーinわさび』ってコレも初めてだぞ!」

 

すげぇ! すげぇぞこの自販機! まさか二つも新作を見つけられるなんて!

 

※当然学園長にも送っといたよ。なんか、とても汗かいてたらしいけどどうしたんだろうか?

 

「早速試飲して見よう。まずは『チョコハバネロ梅干味』から。……ほっほー。なるほど、チョコの甘さとハバネロの痛烈な辛さが全く噛み合わず、さらに梅干独特の味で全てが破壊されるようなこの味……面白いぜ。んじゃ、次は『味わいコーヒーinわさび』だな。……これはこれは。コーヒーの苦みの中にわさびのあのツーンと来る辛さとポン酢の味が全くマッチせず、ただ苦くてツーンでポンな液体と化しているな。これも面白い」

 

うんうん。やっぱMAHORAドリンクは最高だ。どうして誰もこの面白さが理解出来ないんだろうか?

 




なんだかもう少し投稿したいような気分ではありますが、とりあえず今年はこれで終わりとさせていただきます。

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