MAHORA不思議ドリンク研究会   作:ヨシュア13世

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本日3回目の投稿……これはストックの成せる業ですね。もう一つの方も段々形になってきたので上手くいけば年内にはなんとか……


9時間目 誰にでも嫌いな物はある

「なーなー、噂の吸血鬼対策に餃子でも食ってこーぜ?」

 

身体測定が終わり、帰ろうとしている時に鷲崎が俺・武村・中林君に向けて話しかけてきた。

 

「おいおいおい、我が同志よ! もし吸血鬼が美女だったらどうするんだよ!」

 

「そう言う問題なのか?」

 

「まぁ聞け武っち。確かに美女だったなら俺も喜んで吸われよう。だが……もし! もしも男だったら……?」

 

武村の顔が一瞬で青くなった。いや、最早土気色と言ってもいいくらいだ。どっちにしても吸われたくはないだろ……。

 

「餃子食うぞ!! 男なんて絶対に嫌だ!」

 

「悪いけど僕は用事があるから失礼するよ。今日中に本を返しに行かないといけないんだ」

 

「そっかー。じゃ仕方ないか。ふたみんはどする?」

 

「ふたみん言うな。ま、良いぞ。部活は歩きながらでも出来るしな」

 

さてさて、今日はどんなドリンクに出会えるんだろうか。嗚呼、毎日が楽しみで仕方ない。

 

「で、どこで餃子食うんだ?」

 

「俺のバイト先だよ。従業員割引使えるからな」

 

「ほぉ。そいつは助かる」

 

こういう時ってホント助かるよな。まだ小遣い日じゃないからあんま手持ちないし。

 

「と言う訳で行こうぜー」

 

「「おー」」

 

…………

 

………

 

……

 

 

「げふっ」

 

「うぷっ」

 

「お前らバカじゃね? 餃子10人前とか」

 

俺と武村の苦しそうな様子を見て鷲崎が笑いながら言ってくる。

 

「うるへー……コイツにだけは負けらんねぇ」

 

「……でも、引き分けだけどな」

 

店に入ってすぐ、武村が「二見、大食い勝負しようぜ! 勝った方が奢りな!」と言ってきたのだ。コイツにだけは色々と負けたくなかったのでつい勝負を受けたが……食い過ぎでダブルノックダウン、一人当たり1000円近く支払った。鷲崎の従業員割引が無かったらどうなっていた事やら……。

 

「いやぁ、でもお前らバカみたいにスゴかったよ。うちの店で初めて見た」

 

「ふははは、どうだ二見俺の方がスゴイってよ……げふ」

 

「誰がそんな事言った……? つか俺は人間性で勝ってるから良いんだよ……おぷ」

 

駄目だ、食った物が逆流しそう……。10人前から先は数えるの止めたからなぁ……一体どれだけ食べたんだ?

 

「あ、そうだ。武っち、『例の品』手に入れたんだけどどうする? 今日は止めとくか?」

 

「行くに決まっているだろう? げふん」

 

「よし、それじゃふたみん。また明日な!」

 

「俺は今日同志の所に泊まるからな」

 

「さっさと行けよ……」

 

どうせエロ関係だ。武村が同志とか言ってるし、絶対に間違いない。あとふたみん言うな。男に言われても気持ち悪いだけだ!

 

「「じゃ!」」

 

物凄い良い笑顔で寮へ向かって行った2人。

 

「俺は……腹ごなしにちょっと歩くか」

 

そうしないと本気でマズイ。こんな道のど真ん中でリバースとか洒落にならんよ!

 

…………

 

………

 

……

 

 

「ふぅ。ちょっとはマシになったかな」

 

途中で買った『超葱スーパーガーリックMIX』を飲み、一息つく。餃子たらふく食べたけどドリンクは別腹だしな!

 

「うーん……これなら寮に着く頃には腹は問題なさそうだな!」

 

ここから寮までは結構距離あるし、のんびり歩いて帰れば少しはマシになってるだろ。

 

「にゃー」

 

「ん?」

 

こんな道端でいきなり猫? まぁ、麻帆良だしいても不思議じゃないけど。

 

「「「「にゃー」」」」

 

「増えた!?」

 

いきなり、本当にいきなり4~5匹の猫に囲まれた。なにこれ? 俺なんかしたっけ?

 

「なんだなんだ? 言っとくが俺はお前らが好きそうなもの何も持ってないぞ?」

 

持ってるのが予備の『超葱スーパーガーッリクMIX』一本だけだし。……飲ませる? いやいや、ダメだろう。となると逃げるしかない。でもどうやって? ほぼ円状になって囲んでやがるし……。

 

「あ……」

 

「うん?」

 

この猫達からどうやって逃れようか考えていると誰かの声がして、そちらを向くと中等部の制服を着てる女の子がいた。助かった! 良く分かんないけど猫の餌らしき物持ってるし!

 

「いえ、その子達はあまり人には懐かないので……」

 

「どう考えても囲まれて逃げ道塞がれてるんだけど? いや別に飛び越えれば良いんだけど何かしてきそうで……」

 

しかもこいつら餌持ってきてる女の子無視して俺囲んでやがる! ちくしょう、俺が何をしたって言うんだ! 懐いてる女の子の方行けや! 女の子結構可愛いぞ!

 

「……おいで」

 

「「「にゃぁー」」」

 

女の子が猫を呼ぶと、さっきまで一歩も動こうとしたなかった猫達が一斉に女の子に群がった。

 

「すげぇ……」

 

助かった……いきなりだったからマジびっくりした。

 

「……」

 

「あ、助けてくれてサンキュな」

 

「?」

 

いや、そこで不思議そうな顔をされても困る。

 

「さっきも言ったけどこの猫達……何故か俺をいきなり囲んできてさ、鳴き始めるんだよ」

 

「……どうしてでしょう?」

 

「俺が聞きたいよ……。――にしてもホントすげぇな。一回呼んだだけで全員来たじゃん」

 

俺が呼んだらどうなるんだろう……何か怖いからやめとこ。

 

「私は毎日餌をあげてますのでそのせいかと」

 

「マジ?」

 

「はい」

 

「毎日?」

 

「はい」

 

……すげぇ、すげぇよ。めっちゃ良い人だよこの子。猫は見たところ野良みたいだけど、それなのに……。

 

「いや、俺感動したよ。君、名前は? 俺は3-Cの二見隼人だ」

 

「私は3-Aの絡繰茶々丸と申します」

 

3-Aって事は綾瀬と同じクラスか。よし、今度すげぇ良い人がいるって教えてやろう。

 

「で、これやるよ。偉そうに言うとご褒美だな!」

 

「これは……?」

 

「ふふ、それはMAHORAドリンクと言ってな。すごく面白いんだ!」

 

「面白い? 美味しい、ではなくてですか?」

 

「おう。ま、騙されたと思って一度飲んでみな!」

 

よし、これでまたこの面白さの虜になる奴が増えるな。

 

「いえ私はロボなので飲み物などは……」

 

「はいはい、冗談は良いから飲め! んで次会ったら感想聞かせてくれよな!」

 

さて、早く帰ってノートにこのジュースの情報を記さねば! 学園長の分は無くなったけど勘弁してもらおう。

 

「あ……」

 

side-茶々丸

 

止める間もなく行ってしまいました。

 

「……『超葱スーパーガーリックMIX』」

 

マスターは飲まないでしょう。私も飲めません。ですが廃棄するのはあの人の厚意を無碍にすることになってしまいます。困りました。

 

「お、茶々丸! こんな所にいたか」

 

「……マスター」

 

「全く……今夜辺り『ぼーや』が私に勘付いても良い頃だと言うのに、従者であるお前が私の傍にいないとはどういう事だ」

 

「申し訳ありませんマスター。しかしこの子達が」

 

足元で鳴いている猫達を見てからマスターに返事を返します。

 

「はぁ……お前は相変わらずだな。……ん? 何故お前がジュースを持っている? お前は飲めんだろう」

 

「はい。実は先ほど――」

 

「あー……良い、どうせガキからもらったんだろ?」

 

ガキ……子どもと言うべきなのでしょうか? マスターから見れば子供に当てはまりますが……。

 

「表現に困ります」

 

「あん? まぁ良い。ちょうど喉が渇いていた所だ、もらうぞ?」

 

「あ」

 

マスターが私の手からMAHORAドリンクなるものを取り、ストローを指して中身を口に含んでしまいました。

 

「ゴブフゥッ!!??」

 

その瞬間、誰にも見せられない顔になりマスターが中身が噴き出しました。これが面白いのでしょうか? 確かに普通のジュースならばこんな事は起こりえないので面白いと言えば面白いとも言えます。

 

「な、ななななななんだこれは―――っっっ!!!???」

 

「MAHORAドリンクと言う物らしいです」

 

「なに!? あのゲテモノか!? し、ししししかも『超葱スーパーガーリックMIX』だと……!? 私への嫌がらせか!!??」

 

「いえ、あの人はたまたま持っていただけだと思いますが……」

 

顔を真っ赤にして紙パックを何度も踏みつけるマスター。あああ、ゴミはゴミ箱へ捨てないと……。

 

「……復讐だ」

 

「え」

 

「復讐だ茶々丸!! それをお前に渡した奴を私の家に連れて来い!!」

 

「しかし、あの人は一般人ですが……」

 

「関係あるか!! 真祖の吸血鬼を舐めるとどうなるか思い知らせてやるわ!!!」

 

こうなったマスターは止められません。

 

「マスター、今宵はどうするのですか?」

 

「あ。……ええい、忌々しい! とりあえず今は『ぼーや』が優先だ! そいつは後日連れて来い!」

 

「了解しました」

 

「くそっ! 口の中がニンニクとネギ臭くてかなわん! 絶対にこの恨みは晴らす!!」

 

……私はどうすればいいのでしょう?

 

sideout

 

「うっわ、すっかり暗くなっちまった!」

 

絡繰と別れた後、真っ直ぐ帰ろうと思ったのだが自販機がやたら多く、しかもほとんど見た事無い味ばっかのMAHORAドリンクを見かけ、買って試飲してたらついこんな時間になってしまった。

 

「ま、その分成果はあったけどな!」

 

今日新たに発見したドリンクが絡繰にあげた分を含めて4つ。くっくっく、さすがの綾瀬もこれ以上は見つけれまいて!

 

「っておやおや、綾瀬にパルじゃないか」

 

「おや二見さんどうもです」

 

「おいっすー。……ちょっと臭くない?」

 

いきなり失礼な事を言い出すパル。……ひょっとして昼間の餃子がまだ残ってんのか?

 

「多分昼に餃子食いに行ったせいだ」

 

「餃子ですか。吸血鬼対策でもしていたですか?」

 

「お、正にその通り。まぁ、そんなもんいないと思うけどな」

 

「えー! なんでさ! いた方が面白いって絶対!」

 

いやいや、いたら血吸われるんだぞ? 確かに面白いとは思うけどさ。

 

「そんないるかいないか分からない物の事は置いといて、MAHORAドリンクの方は順調ですか?」

 

「フッ、トーゼン! 今日だけで4つ見つけて来たZE!」

 

「それ、スゴイの?」

 

「なぬ!? や、やりますね……」

 

これで俺の方が一歩リードだな。はっはっは!

 

「し、しかしまだまだコンプリートは出来ていないのですから頑張るです」

 

「だな!」

 

「……スルーされたし、もう良いや。帰ろ帰ろ」

 

「あ、ハルナ待つです! では二見さん、私達はこれで」

 

「おう、また金曜な!」

 

わざわざ一礼して先に帰って行ったパルを追いかけて行った綾瀬。いっつも思うけど……毎回毎回、無駄に律儀だよな。まぁ、らしいって言えばらしいか。




主人公のいない所で進んでいく復讐計画。もちろんこのお話ではそんな物騒な事にはなりません。
次回、ついにネギ君が登場します!

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