なぜテンションが上がったのかは自分でも分からないがな!
そんな感じの第7話です。
狩猟シーンはないです。
「で、何でアリナは荷物を持って、俺の家に居るんですか…」
ギルドを出てヴェルデは、荷物を整理する為に一度家に帰ったが、何故かそのままアリナも彼の家に来ていた。
ヴェルデとアリナの家は隣同士なので、まあ普通に一緒に帰る流れだよな、と彼は思っていたが、さすがに家に上がられては、突っ込まざるを得ないだろう。
「それは、一応レミィちゃんに説明して、了承も得てるから、気にしないで♪」
「え?何?了承って何の?」
そこでレミィが、何故か拗ねたような感じで、
「アリナさんがお兄ちゃんとパーティーを組むという事で、一緒に生活していた方が、お互いの事をもっと知れる、とか言い出したから...」
ヴェルデは若干レミィの様子がおかしいと感じたのか、どうかしたのか?と聞いたが、
「ううん?何もないよ?」
これも若干拗ねたように返される。ヴェルデはこれ以上聞いても無駄だと判断したようで、それ以降そちらに話題を向ける事はなかった。
「じゃあ、二階のもう一個の部屋を借りるけど、良いよね?」
そうアリナが言って階段を上がろうとするが、ヴェルデが待ったをかける。
「ちょ、ちょっと待て。アリナお前、この家で寝泊まりまでする気か?俺はてっきり日中とかの暇な時間だけだと...」
そう勘違いしていた彼だが、そこに容赦なく、
「今の話からどうしてそんな解釈ができるの?」
「そうよ、お兄ちゃんはもう少し女心を知った方が良いんじゃないの?」
と、何故か女性陣2人から思い切り批判されてしまう。
ここまでストレートに批判されて、思い切り言えなくなってしまったヴェルデは、心の中で「なぜこんなに責められているんだ…」と思いながらも、
「わ、分かったよ。部屋は好きに使っていいから。」
と、渋々了承してしまう。彼としては、彼女達、特にアリナとは、同じ屋根の下で寝るというのはなんとなく避けたかったヴェルデだが、その話を持ち出すと、色々と話がややこしい方向へ逸れてしまいそうだと本能的に察知したので、そこについては言及しないで我慢しておくことにした。
「わかった。それじゃ、私は荷物を整理しなくちゃいけないから、また夕食の時にね」
「ああ、そういえばアリナもカナタ村に帰ってきたばかりなんだっけか」
村に帰ってきたばかりで、荷物も整理せずにギルドに向かうというのはどうなのかとは思ったが、それも言及するとめんどくさいことになりそうだと思ったので、やはり我慢することにした。
「そうね。ただ、リーシャさんがギルドの前に居て、運悪く捕まっちゃった訳だけど...」
「なんだ、そうだったのか。俺はてっきり…いやなんでもない。」
アリナが無言で、そしてやけに良い笑顔でこちらを見てきたので、生命の危機を感じたヴェルデはそれ以上は何も言わないことにした。
一旦話を区切り、二階にある部屋に入って、アリナは一人呟く。
「全く、ヴェルデくんってば、少しは意識してくれたっていいじゃない...」
その後は、3人でアリナが作った夕食をとった。
その夜、
ヴェルデの部屋のドアをノックする音が響いた。
「ヴェルデくん?まだ起きてる?」
時刻は深夜1時過ぎ。1階にいるレミィも寝ているであろうこの時間だったが、部屋から返事がした。
「アリナか、入っていいぞ。どうかしたのか?」
部屋に入ったアリナの眼前に広がっていたのは、彼が学生時代に作成したノートと、 雑貨屋、行商人から手に入れたモンスター図鑑を交互に見比べて、新たなノートを作成しているヴェルデの姿だった。
「う、ううん。特に用事はないけれど...やっぱり起きていたのね。」
「まあな、学生時代とは環境が変わったし、何より大人数での行動じゃなくなる。これからは、一人の狩人として、自分の身を守らなくちゃいけないからな。」
「昔からずっと、ヴェルデくんは狩りの事になると急に真面目になるからね。」
机に向かってランポス、ドスランポスの生態を書いている彼を見て微笑を洩らし、彼女は彼のベッドに腰を降ろす。
「失礼な。狩りだけじゃないだろ。たとえばほら、武器の事とか、アイテムの事とか。」
「でもそれって結局狩りに必要な事じゃないの?」
「うっ...バレたか...後は、えーっと...」
何気ない言い合いをしながら学生時代のヴェルデの事を思い出していたアリナが、その記憶を懐かしむように笑う。
実際には1ヶ月程しか経っていない筈なのに、やけにその記憶が懐かしく思えた。
「あ、そうだ。料理だよ料理。ほら、よく練習してたじゃんか。」
「そういえばそうだね。でも、結局両手で数えられるくらいの種類しか出来ないんじゃなかったかな?」
もはや何時ものように二人の言い合いは続いていく。
「んまあ、こんなところかな。」
少しして、ランポス等の生態を書き終えたヴェルデは、大きく伸びをしてベッドへと歩む。
「あ、それじゃ私はこれで。また明日ね。おやすみ」
「ああ、それじゃあな」
そしてアリナは部屋を出ていった。
彼女が部屋を出ていき、気配がなくなったのを確認した後、
「全く、アリナは少しくらい女性としての自覚を持っても良いんじゃないか?年頃の男女が同じ屋根の下で寝るっていうだけでもこっちはあれなのに...」
と、小声で呟くヴェルデ。
いきなり二人の想いはすれ違っていた。
――そして後日、彼らの元にある一つの知らせが届く。
次回は多分狩猟シーンがあると思います。
また失踪かな?(オイ