エリア8,10をランポスの襲撃をかいくぐって走り抜け、ヴェルデは、ドスランポスの巣であろうエリア11に来ていた。
このエリアは山頂のエリア6などとは違い、エリア5のように木が生えておらず、開けた場所になっている。そのエリア11の上を見上げると、この山の頂上が見える。
「すげえ高いところに山頂があるな…跳び下りなくてよかった…」
ヴェルデは若干怖がったまま、その視線を仲間に囲まれて横たわっている青き狩人に向ける。
「やはり瀕死だったのか…ドスランポス」
その体は、ボーンシックルで斬りつけられて、青い鱗が無残に落ち、幾つもの斬撃の跡がある。
それを見るヴェルデの体にも、幾つもの擦り傷や掠り傷がある。
その傷は、ここまでの両者の激闘を物語っている。
「取り巻きが邪魔だな…ドスランポスが起こされないように注意を引き付けるか…」
そう言って彼は、近くに落ちていた手頃な石を拾う。
「問題は、これをドスランポスに当てないことだ。」
ヴェルデは慎重に、取り巻きのランポス3匹に近寄る。すると、
「ギャア!ギャア!」
「気付かれたか…せめて…!」
そして彼は、一番ドスランポスの近くにいたランポスに向かって、石ころを投げつける。そしてその石ころはランポスの後頭部に当たる。
「よし。これで注意を…」
しかし喜びも束の間、彼が投げた石ころは、勢いそのまま、ランポスの後ろの方に飛んでいき、見事に寝ているドスランポスの頭に直撃してしまった。
「あ、ヤベ…」
そしてもちろん石ころを当てられたドスランポスは起き上がる。
「ギャア!ギャア!」
「ちっ…なんでこういう時は運が無いんだよ…!」
そう愚痴を言いながらも、ヴェルデは近寄ってきたランポスを斬り飛ばす。
そして残り2匹のランポスに近寄り、一閃、また一閃と的確にランポスを斬り飛ばし、ドスランポスと相対する。
「最後はお前だぁ!」
そう言ってヴェルデはドスランポスに突撃する。この狩りも終盤だというのに、そのスピードは全く衰えていない。
彼が近づくと、ドスランポスはそれを躱し、また距離をとり、彼を睨みつける。
その眼差しからは、狩りが始まった時の見下すような眼差しではなく、ヴェルデの動きすべてを観察し、隙を見つけるという、青き狩人としての眼差しだった。
一方ヴェルデも、最後まで油断することなく、ドスランポスの動きすべてを見極め、最後の最後まで、その力のすべてをぶつける、狩人としての姿勢が、体全体から滲み出ていた。
「さあ、決着をつけようか、この狩人同士の戦いに!!」
「ギャア!」
互いの言葉が分かる筈も無いのに、その言葉を合図にするようにして、狩人たちは激突する。
エリア11で戦い始めて、すでに10分が経過していたが、ヴェルデは、閃光玉、回復薬、砥石がそれぞれ残り1個と、ほとんどのアイテムを消費してしまっていた。
アイテムに頼れない状況の今、彼は気力のみで戦っていた。
しかし、彼の持ち前のスタミナも、初の狩猟ということで、だいぶ消耗していた。
「ちっ…一旦間を取るか…」
そしてヴェルデは、ポーチから丸い球状のものを取り出し、その玉についているピンを抜き、ドスランポスの眼前に投擲する。
「ギャア!?」
その球体は、ドスランポスの眼前で弾けると、あたりに激しい閃光を撒き散らす。
「さて…そろそろ決着をつけようか…」
ボーンシックルを最後の砥石で研ぎ、最後の回復薬を飲み干すと、ヴェルデはドスランポスに向かって走り出す。
「閃光玉の効果はまだ続いてる…攻めるなら今しかない!!」
ドスランポスの懐にもぐりこんだ彼は、ボーンシックルを抜き放ち、すぐさま鬼人化する。
鬼人化したヴェルデは、ドスランポスの息の根を止めんとばかりに乱舞を放つ。
乱舞を放った彼は、鬼人化によるスタミナ切れを回復させるべく、一旦後退する。
しかし、青い体が血で真紅に染まっているドスランポスも、死力を振り絞って彼に跳び掛かってくる。
しかしヴェルデは、その攻撃を前転して避けると、起き上がりざまに剣を振り上げる。その一撃でドスランポスが吹き飛んだのを見ると、ヴェルデはさらにその距離を詰める。
ドスランポスに接近した彼は、ドスランポスの起き上がりざまに連続で斬りつける。
その連続攻撃に、たまらずドスランポスは後退する。
しかしそれを黙って見過ごすヴェルデではない。ボーンシックルを納刀し、その距離を一気に詰める。
「喰らえっ!」
そのままの勢いで抜刀。ドスランポスを双剣で斬り払う。さらに斬りおろし、反動で体ごと斬り上げる。
そこで噛みついてきたドスランポスに対し、彼は前転して位置取りを変えて、先程の連撃を繰り返す。
そして、大きく怯んだドスランポスの隙を見逃さず、ヴェルデは最後力を振り絞り、鬼人化する。
「これで…終わりだあぁぁぁぁぁああああ!!!」
乱舞。その乱舞は、今までの乱舞とは明らかに違い、パワーやスピードが桁違いだった。
その乱舞をまともに喰らったドスランポスは、「ギャア…」と小さな声で鳴いて吹き飛んだ。
そして、ヴェルデと激闘を繰り広げた青き狩人は、二度と立ち上がることはなかった。
「終わ…った…?」
血で真紅に染まった狩人を見つめながら、ヴェルデはドスランポスに近寄っていく。
ヴェルデの視線の先にある、青き狩人の目は生気を失っており、呼吸もしてはいなかった。それを見ると、ヴェルデはその場に崩れ落ちた。
「よっしゃ…狩った…!」
満身創痍彼はすぐに立ち上がることはなかったが、しばらくすると立ち上がり、ドスランポスの剥ぎ取りを始めた。
「よし、これでOK。鉱石採掘して帰ろう。ああ、腹減ったなぁ...」
そして彼は、よろよろとカナタ村へと帰って行った。
「あ、お帰り!」
「あ、リーシャさん、ちょっと…」
「で、どうだった?初めてのクエスト、それとドスランポスとの遭遇は!」
ヴェルデはドスランポスのことを言おうとしたのだが、どうやら彼女は知っていたらしい。
「で、どうだったの?ドスランポス乱入のハプニングは?」
しかもハプニングと織り込み済みらしい。なかなか意地悪な性格をしている。
「いやまあ、ドスランポス倒してクエストもクリアしてきましたよ…」
その言葉を聞いて、満足気にうなずくリーシャ。ヴェルデならきっとドスランポスを討伐するだろうと踏んで黙っていたのだろうか。
「そう、ヴェルデくんなら当然といったところね。ところであなたに紹介したい子がいるけど、同じカナタ村出身だし、もう知っているかもしれないわね。」
「?紹介したい子って…」
そのときヴェルデは、ヴェルデが知っているハンターを思い浮かべてみた。
そして同じカナタ村出身のハンターは、1人しか思い浮かばなかった。
「まさか…」
「じゃあ、紹介するね。」
そう言われてヴェルデの前に立った人は、彼の幼馴染で、ハンター養成学校副生徒会長、
「アリナ、帰ってきてたのか…!」
――アリナ・ローゼヴィントだった。
ヒロインのご登場です。
次回をお楽しみに!