モンスターハンター ~英雄への旅路~   作:楼河

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今回も戦闘シーンはありません。


第2話 カナタ村

「お兄ちゃん起きて!朝だよ!」

 その一声で、ヴェルデは目覚めた。

「んー、もう朝か、おはよう、レミィ。」

「おはよう、お兄ちゃん!」

「しかしまあ、よく寝たなぁ、もう8時か。」

 ちなみにヴェルデは、ドンドルマにいた頃、毎日鍛錬のため、5時に起きていた。

「ん?どうしたの?まだ8時じゃん。」

「あぁ、俺はドンドルマにいた頃は、毎朝5時に起きてたんだよ―ってヤベ!トレーニングに行かなきゃ!」

 ドンドルマにいたときの日課として、カナタ村でもトレーニングをする予定だったのだが、寝過ごした訳で、ヴェルデは割と焦っていた。

「え!?今から!?ご飯は?」

「用意しておいてくれ!10時過ぎくらいに戻ってくる!」

「――わかった!行ってらしゃい!」

「おう!」

 

「…まったく、いくら日課だからって、あそこまで焦らなくてもいいじゃない。こっちは話したいことが沢山あるんだから。」

 そういって不満げに頬を膨らませながらも、兄が相変わらずなことに、ちょっとだけ安堵したレミィであった。

 

「いやー、寝過ごしたからって、そこまで焦ることは無かったかもな。」

 ヴェルデは、トレーニングのために、村長とギルドに、下見をしたいといって、軽微迎撃施設に来ていた。

 この施設は、西の平原から来る、ランポスなどの小、中型モンスターに対応する為の拠点である。

 ちなみに、飛竜種などの大型モンスターに対しては、施設が小さいため、村の西側にあるフィールド【平原】に誘導し、そこで戦闘する。

 迎撃施設は、主に小型かつ飛べないモンスターを相手にするため、高低差が激しくなっている。

 そのため、トレーニングには、意外と適している場所である。

 そこでヴェルデは、走り続けていた。現在9時。

 一時間ぶっ続けで走っていても、ヴェルデはほんの少ししか息を乱していなかった。

 これは、彼が、学校生活の中で、教官に、「双剣使いはスタミナが命だ!」と教わったからである。

「ふう、ランニングはこのあたりでいいかな?」

 ちなみに、前述の通り、高低差が激しいところなので、普通の人がここの、ヴェルデが走ったところを走り続けると、30分ももたない(らしい)。

「さあて、あとは素振りでもするとするか。」

 

 そして、立ち回りや、基本的なコンビネーションを確認するほど1時間弱。

「あ、ヤベ、いつの間にか10時半だ、レミィが心配してる。早く帰ろう。」

 

「ただいまー。」

「お帰りなさい。もうご飯できてるよ。」

「おう。じゃあ早速いただきます!」

 

「あー、やっぱいつになってもレミィの飯は最高だわ!」

「それはそうよ。今だってドンドルマとかからスカウトが来るもの。」

「そうだったのか…ところで、なんでスカウトをけったんだ?」

 噂によると、レミィは、ドンドルマの他にも、他の街の高級レストランから、10軒を超えるスカウトが来ているという。

「えっと…やっぱりこの村から離れたくないって思ったし…それに…」

 何か言いづらそうにして、もじもじしているレミィだったが、ヴェルデはかまわず問う。

「それに?」

「えっと…なんでもない!」

「ん?そうか」

「うん。やっぱり生まれ故郷からは離れたくないからね。」

「ふーん。そういうものか」

 何か別の事を言おうとしてた気がするが、と直感的に感じたヴェルデだったが、同時に確かに生まれ故郷から離れたいとは思わないだろう、とも思ったので、それ以上追求することはやめておくことにした。

「それより、これからどうするの?」

 ここで突然だが、今日のヴェルデの予定(だったもの)を。

 

 朝5時に起床、7時までトレーニング

 飯を食い、午前中は買い物の下見

 午後から、何かクエストを見て、行けそうなクエストに行く。

 帰宅、就寝。

 

 ――だったのだが、ヴェルデが寝過ごしたせいで、それが根本から覆されることとなってしまった。

「そうだな、予定が狂ったから、買い物を少しして、クエストを見るだけ見てくる。」

「わかった。じゃあ、これから買い物ね?」

「ああ、行ってくる。」

 といって席を立ち、家を出る。

「行ってらっしゃい。」

 ヴェルデの背中に、レミィの優しい声が掛けられた。

 

 現在13時

 

~鍛冶屋(工房)~

 

「こんにちは、レイルさん。」

「おう、ヴェルデか!少し見ねぇ内に、でっかくなりやがったな!」

 工房のレイルは、昔から、ヴェルデとよく、ハンターの武器について話していた、ヴェルデの兄貴的存在である。年齢は30代後半。

「そ、そうですか…?自分ではそんなに変わってない気がしますが…」

「何言ってんだ!この前まで、そこいらのガキとあまり変わらない体のくせして、今は俺とそう変わらないじゃねえか!」

 実際、ヴェルデの身長は、この3年で、157cm→180cmと、かなり成長していた(と思う)。

「まあ、成長期ですからね…」

「そうだな!」

 そんなやりとりをして、レイルが本題に入ろうとする。

「で、今日はどんな用件だ?」

「あ、いえ、今日は挨拶をして回ろうということで、特に用事はないんです」

 そうヴェルデが言うと、レイルは少し残念そうな顔をしたものの、すぐに元の快活な笑顔に戻った。

「何だそうだったのか。なら今度は、素材を持って、俺に腕を振るわせてくれや!」

「はい、そうします。では!」

「おう、またな!」

 ヴェルデの背中に、レイルの朗らかな声が掛けられた。

 

~調合屋~

 

「お、ヴェルデじゃあないか!帰ってきたんだね!」

「どうも、アレンさんもお元気そうですね」

「何言ってんだい、この老体が、そんなに元気に見えるかい?」

 そうは言うものの、ヴェルデからしてみれば70歳近いとは思えないほど元気で、見方によっては自分とそう変わらないと思えるほどだった。

 調合屋のアレンは、確かに70歳近い老体であるが、長年培ってきた技術で、調合屋として、ハンターを支えている。

「で、今日はどんな用件だい?」

「あ、今日は挨拶に来ただけなので、特に用件はないです。」

「そうかい。まあ、お前さんは調合が下手みたいだから、困ったらいつでもおいで!」

 その言葉に、ヴェルデは驚いた顔をして振り向く。

「ど、どこでその情報を!?」

「お前さんの幼馴染だよ」

「ぐっ…まあ、困ったら遠慮なく行きますから、よろしくお願いしますよ?」

「へいへい、わかってるよ。またおいで!」

 

 ヴェルデの背中に、アレンの気さくな声が掛けられた。

 

~道具屋&食材屋~

(道具屋と食材屋は一括)

 

「こんにちは、ラルドさん。」

「お、こんにちはヴェルデ君。久しぶりだね。」

「はい。ラルドさんも、お久しぶりです。」

 道具屋のラルドは、食材屋も兼用している、器用な若者で、周りの人から(主に知識面で)頼りにされている。

「うん。で、今日は何か用かい?」

「あ、はい。実は、学校で使っていた道具だけでは、これからの戦いにはいささか足りないかと…」

 ヴェルデの持ち物は、回復薬2種がそれぞれ20個ずつ、砥石が25個、閃光玉が15個、ペイントボールが20個etc…

「なるほど、じゃあ、どれが必要なんだい?」

「そうですね、じゃあ、ピッケルと、虫あみを3つずつ、小タル爆弾を10個、ホットドリンクを3つください。」

「はい、3030zだよ。」

「ん…どうぞ3050zです。」

「はい。どうもありがとう。ところで、食材のほうはいいのかな?」

「ん…たぶん大丈夫です。見た感じ、まだ余裕はありそうでした。ありがとうございました!」

「そう。ならいいんだ。じゃあまた!」

 

 ヴェルデの背中に、ラルドの柔和な声が掛けられた。

 

~ギルド支部~

 

「こんにちはー」

「あれ?ヴェルデ君?どうしたの?」

「あ、リーシャさん。どうもです。」

 ギルドの看板娘であるリーシャ。彼女は、去年カナタ村に配属された、新人である。

「もしかして、これから依頼を受けるの?」

「あ、いやそういう訳じゃなくて、今朝はちょっと慌てていたので、改めて挨拶に…」

「そうだったの、改めてなんて、礼儀正しいじゃない。」

「いやまあ、礼儀は学校で嫌と言うほど叩き込まれましたから…」

 ヴェルデは学校生活で、(実技のみだが)優秀だったので、専属の教官がいた。

 ハンター養成学校ではヴェルデのように、一定の技量を持つ者には専属の教官がつき、その生徒の能力をより向上させている。

 ただ、その分辛く苦しいものでもあった。

「そ、そうだったんだ…」

「まあ、一応依頼も見ておきますか。」

「うん。明日になっても残ってる依頼はあるから見ていくといいよ。」

 そして、ヴェルデは依頼書に目を通していく。

「うわぁ、リオレウスとリオレイアの同時狩猟かぁ、俺には到底無理だな…」

 苦笑いを浮かべながら依頼書を見るヴェルデ。しかしそんな彼に、リーシャが笑いながら言う。

「でも、ヴェルデ君だったら、この先そんな依頼も受けられる、そんな気がするよ。今まで見てきたハンターさんには少し悪いけど、身に纏ってる雰囲気が違うもん。」

「似たようなことを村長にも言われましたよ?」

 やはり、周りから見ても、ヴェルデはそれなりの雰囲気なのだろう。一部のハンターの視線は彼に向いていた。

「でもまあ、やっぱりこのあたりが妥当じゃない?」

「ランポスの討伐…ですか。目的地は…ああ、すぐそこのゴルドラ山か。」

「うん。少し地形が悪いかな?」

「いや、地図持ってれば何とかなるし、あの山だったら、走り回ってもあまり疲れませんよ。」

 日頃からトレーニングをつづけているヴェルデは、ある程度山を走り回っても疲れない程度の体力はあった。

「それじゃ、明日この依頼が残ってたら受注します。」

「わかったわ。それじゃ!」

「はい、ありがとうございました!」

 

 ヴェルデの背中に、リーシャの陽気な声が掛けられた。

 

「それじゃ、明日の予定は大体オーケーだな。明日が初めての狩りだ。気を引き締めて行こう。」

 

 その日、ヴェルデの家の2階は、翌日まで薄明りが消えることはなかった。




モンハンなのに戦闘シーンなくてごめんなさい…
次回こそは必ず!

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