モンスターハンター ~英雄への旅路~   作:楼河

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待たせたな!((殴
MHXのHRが100という区切りがついたので。
大変お待たせしました!


第19話 怒り狂う女王、僅かな勝機

「チッ...」

 咆哮のせいで、乱舞を中断せざるを得ず、有効なダメージにすることができなかったヴェルデは、舌打ちしてリオレイアから離れる。

(だけど、通用はしてる...いける...ッ!)

 しかし、そうも言っていられない。怒り状態では、モンスターの身体能力が大幅に上昇する。アリナとの連携を中心にして、何とか閃光玉や罠の無い状況で戦ってきたが、ここから先はもっと苦しい戦いになるだろう。

 だが、ここを乗り切らない限り、リオレイアに勝つことはできない。

「何としても、狩るッッッ!!」

「ゴアアァァァァァアアアアッッッ!!」

 二つの叫び声が、【平原】に響き、激突した。

 

「うおおぉぉぉぉぉぉおおおッッッ!!」

 リオレイアの放った火球を、紙一重で避けつつ叫び、リオレイアの懐へ向かって駆ける。

(危ねえッ!さっきから紙一重の場面が増えてきてるぞッ...!!)

 アリナの放つLv2通常弾が、的確にリオレイアの頭部に着弾し、僅かながらも隙を生み出す。

 自分の独断でリオレイアと戦うことを判断したヴェルデだが、そんな自分についてきてくれるアリナに感謝しつつ、抜刀する。

 火球を放った硬直で動けないリオレイアの懐に潜り込んだヴェルデは、その脚に向かってランポスクロウズを叩きつける。しかし、その攻撃は、リオレイアの強固な鱗に弾かれてしまう。

(やっぱり半端じゃねえな...少しでも斬れ味が鈍るとこれか...ッ!)

 攻撃が弾かれると、その分だけ隙を生み出すことになってしまう。リオレイア相手には、その僅かな隙が命取りになってしまうのだ。

(なら...ッ!)

 ヴェルデは、一旦リオレイアから離れると、アリナに目配せする。

(俺じゃこの装甲を突破できない、なら、アリナに隙を生み出してもらうしか無い...ッ!)

 その意味を知ってか、頷き返してきたアリナは、Lv2通常弾からLv2貫通弾に弾丸を変える。そして、今まではヴェルデの背後で援護している形だったのが、リオレイアの正面にヴェルデを残し、リオレイアの背後に陣取る。そしてリオレイアは、その大きな尾が仇となり、背後を見ることが出来ない。

 さらに、アリナの放つLv2貫通弾が、リオレイアの体を尾から頭まで貫き、その真価を発揮する。

「グオォォォォッ!?」

 全身を貫かれたリオレイアは、たまらず悲鳴を上げて仰け反る。その間にも、アリナは何発も弾丸を撃ち込む。その正確さは、ヴェルデが思わず足を止める程だった。

「やっぱり成長してるな...」

 イャンクック戦を経た彼らの腕前は、リオレイアにも通用していた。

 しかし、リオレイアも黙ってはいない。咆哮で付近のヴェルデの足を止めると、振り向いてアリナに火球を放つ。

 だが、アリナも焦る事はなく、余裕を持ってその攻撃を見極め、回避する。さらに、リオレイアが硬直している間にも、頭から尾に向けてLv2貫通弾を撃ち込む。

 アリナの執拗な攻撃に苛立ったか、リオレイアは痺れを切らしたかの様に、怒りをあらわにして突進する。

 怒り状態では、モンスターの身体能力が異常に高まる。ハンター養成学校で何度も教わったこの言葉を、リオレイアはイャンクック以上に忠実に表していた。

「っ...!」

 その突進をなんとか避けきったアリナだったが、リオレイアは今までの様に体を投げ出すことも無く、そのまま踏みとどまり、再度アリナに突進を仕掛けてくる。

「えっ!?」

 怒り状態だからだろうか、普通の状態では有り得ない攻撃にアリナは戸惑い、一瞬反応が遅れてしまう。

 二度目の突進を避けきることが出来ず、吹き飛ばされてしまうアリナ。しかし、突進が終わった後のリオレイアの隙を狙い、ランポスクロウズの斬れ味を最大にしたヴェルデが、鬼人化しながらリオレイアに突っ込んで来る。

「うおおぉぉぉッ!!」

 隙を狙い、渾身の一撃をリオレイアの脚に叩き込むヴェルデ。その渾身の一撃で、強固な鱗とランポスクロウズの刃によって火花が飛び散る。

 しかしその攻撃は、リオレイアに有効では無かったのか、何ともない様子でヴェルデを睨みつける。

「チッ...分かってはいたが、やっぱり通用してないか...ッ!?」

 しかし、ヴェルデは彼が斬りつけたその鱗が飛び散った痕を見て、リオレイアの鱗の下に隠れていた肉が見える事に気付き、息を呑む。

「ッ!?」

 いや、とヴェルデは動き出す。

(いくら鱗で攻撃が通らないといっても...)

 と、鱗が飛び散った所を集中的に攻撃する。

(何枚も鱗が飛び散れば...)

 その集中攻撃で、遂に剥き出しになった肉に狙いを定め、右手で渾身の突きを繰り出す。

「その下の、肉が剥き出しになるって訳かッ!!」

「グオォォォオッ!?」

 ヴェルデの突きをまともに受け、悲鳴をあげて仰け反るリオレイア。しかしヴェルデはそこで終わらない。

「まだまだぁッ!」

 その言葉と共に、リオレイアの脚に向かって何度もランポスクロウズを叩き込むヴェルデ。

 これを好機と見たアリナも、Lv2貫通弾を何発も撃ち込んでいく。

 しかし、リオレイアはそれらを鬱陶しそうに薙ぎ払おうとする。

 ヴェルデはその攻撃をバックステップで回避するが、いい具合に攻勢に出ていたところに水を差されたような気分になって、顔を顰める。

「チッ...せっかくこれからって所を...」

「ヴェルデくん!来るよっ!」

「うおッ!?」

 アリナの声が響き、ヴェルデが顔を上げると、リオレイアは数歩後退っていた。

 そして、咄嗟に転がったヴェルデの横を、リオレイアの尾が、唸るような音をあげて横切った。

 体勢を立て直したヴェルデは、滞空するリオレイアを見て、

「くそ...ッ!少しでも隙を見せるとすぐにサマーソルトして来やがる...!」

 だが、息をつく暇もなく、滞空しているリオレイアは、再びヴェルデに向き直り、辺りに風を吹き散しながらサマーソルトを繰り出す。

「――ッ!?」

 それは運良くヴェルデに直撃せず、彼の横を掠めていく。しかし、

「二連撃かよ...!」

 例え当たっていなくても、それが彼に与えた衝撃は大きかった。

 今のは一撃目を完全に避けれたが、それがただの偶然だという自覚があったヴェルデは、さらに顔を顰める。

 もし、一撃目を避け損ねて、体勢を崩してしまえば――そんな想像が彼の脳裏をよぎる。

 そして、その思考が彼の足を止め、隙を生み出す。

「ヴェルデくんっ!!」

 アリナの声に我を取り戻したヴェルデだったが、もう遅い。着地したリオレイアはヴェルデに向かって突進し、その巨体でもってヴェルデを吹き飛ばす。

 

 リオレイアに吹き飛ばされたヴェルデは勢いよく転がり、痛みで悶絶して転げ回った。

 ヴェルデが吹き飛ばされた動揺で、しばし呆然としていたアリナだったが、リオレイアがこちらを向いたことで我に返る。

 幸いヴェルデはすぐに立ち上がり、リオレイアの背後で回復薬を飲んでいた。

 ならば、ここは自分の仕事、とアリナは、リオレイアから弾丸をリロードして遠ざかる。

 しかし、彼女はただリオレイアから遠ざかったのではない。

 装填したLv2拡散弾をリオレイアの顔面に放った反動で、遠ざかったのだ。

 飛来したLv2拡散弾は、リオレイアの顔面に着弾し、辺りに4つの小型の爆弾をばら撒く。

 ドドドドッッッ!!という4つの爆音が響き、直後、リオレイアの悲鳴が響いた。

 

 Lv2拡散弾によって怯んだ隙を逃さず、再びリオレイアの懐に潜り込んだヴェルデは思う。

(今まではきっと、自分の事しか考えていなかったんだ。)

 アリナの放ったLv2拡散弾により、さらにボロボロになった脚を斬りつけながら、さらに思う。

(そう、俺が何も逃げの戦いを覚えなければいけない、という訳じゃなかったんだ。)

 ランポスクロウズの鋭い刃がリオレイアを襲う。リオレイアも尾を振って対抗するが、それを難なく避け、さらに思考する。

(俺が攻めることしかできないなら、ほかの事はアリナに任せればいい。その分俺がアリナの分も攻めればいいんだ!)

 そうして一つの答えを見つけたヴェルデは、今度こそ迷わない。鬼人化し、掲げた両腕を目にも止まらぬ速さで動かし、リオレイアの剥き出しの肉を斬り裂いていく。

 リオレイアは、懐に潜り込んだヴェルデに対し、足踏みして的を絞らせないようにするが、構わずヴェルデはリオレイアの脚を斬りまくる。

 足踏みを無駄だと見たリオレイアは、尾を振り回して、今もなお脚を斬るヴェルデを邪魔しようとする。

 だが、もはや手慣れた様子でそれをしゃがんで回避したヴェルデに、苛立ちの色を隠せなかったリオレイアは、大音量の咆哮を発する。

「ぐ...ッ!?」

 たまらず耳を塞ぎ、咆哮に耐えるヴェルデ。しかし、リオレイアの咆哮が終わり様に再び斬ると考えていたヴェルデは、その直後、後方へと退避する。

 理由は単純明快。リオレイアがヴェルデへ向き直ることすらせず、その場でサマーソルトを繰り出したのだ。

 ヴェルデを狙っていたサマーソルトならば、ただ後方へと回避していたのならば駄目だろう。しかし、真横を向いていたリオレイアは、サマーソルトをしても、後方へ回避すればヴェルデは十分避けられたのだ。

 何故、リオレイアは意味のない行動をとったのか。

(こんな事をする程コイツは怒り狂っていた...?いや、流石にそこまでコイツは馬鹿じゃないはず。だとするならば...ッ!!)

 ――弱っている。

 そんな考えがヴェルデの脳裏をよぎる。

 既にリオレイアに余裕は無く、ただただ必死に抵抗しているならば。

 ――あと少し。

 このまま攻め続ければ、いつかはリオレイアを倒すことが出来るかも知れない。

 しかし、流石に陸の女王と呼ばれるだけあって、そうそう簡単に勝たせてはくれない。いつまでも脚に張り付いているヴェルデに対して、リオレイアは翼を羽ばたかせて飛翔する。

「アリナ!ペイント弾をッ!」

 瞬間的にそう判断したヴェルデは、アリナに指示を出す。しかしその直後、

 突然翼を閉じたリオレイアが、足元のヴェルデを吹き飛ばしながら着地した。

(な―――ッ!?)

 言葉にする事すらできずに吹き飛ばされるヴェルデ。

(甘かった...ッ!!いくらうまくいっていた所で、リオレイアがそう簡単に倒れるとでも思ったかッ!?俺ッ!!)

 何度か、重低音の足音が響いた。

(やっぱり思い上がってたのか...ッ!?奴はまだ攻撃手段を残していたというのに...ッ!!)

 その重低音の足音が止まり、ズルズルと、足を地面と擦らせるような音が聞こえた。

(そもそも今の俺じゃあ、やっぱり奴を倒す事なんて―――)

「ヴェルデくんっ!?」

 アリナの驚愕したような声に反射的にヴェルデが顔を上げると、

 サマーソルトを繰り出したリオレイアの尾が眼前に迫っているのを理解する間も無く、ヴェルデの意識が暗転した。


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