ゼロの使い魔 竜の乱   作:くたしん

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どうも、文を纏める能力がほしいくたしんです。

今回は魔法学院side。ド・オルニエールとモンスターは後編に出てきます。


8話 トリスティン魔法学院、そしてド・オルニエールへ 前編

 

リオレウスがトリスティン魔法学院を襲撃してから何時間か経ち、惨劇の処理が始まった。

 

まず、死体の処理と怪我人の保護。これはアニエスの連絡によって来た王軍や軍医が行った。

 

「うっ....」

 

「酷いな..」

 

火球で右半身が消し飛んでたり、頭部を失ってるなど数々の惨い死体を見て、思わず顔を顰め、こみ上げる吐き気を抑える兵士たち。歴戦の勇者達でも流石に無理があるのだろう。

 

次に、王立生物研究所が学院を襲ったモンスターの調査を行う。これは実際に脅威を体験している生徒や教師に聞き出すことになったが、そのモンスターがこの甚大な被害を生み出したのにその直後で事件をフラッシュバックさせるような事をするのは学生にとってあまりに酷な仕打ちであった。事実、学生や教師達は全く言葉を発さず、ただ幽霊のようにぼんやりとして王立生物研究所のメンバーの質問にも全く答えなかった

 

例外としてギーシュとマリコルヌ、一部水精霊騎士隊のメンバーが答えることができた。いつもは自分の武勇伝を増長して言うギーシュもこの時は真剣な顔で真面目に質問に答えていた。

 

そして、一連の惨劇を間接的に起こし、シエスタにフライパンで頭を殴られ、床にのびていたミスタ・アギルはアニエスの手によって拘束。ひとまずチェルノボークの監獄に留置され、後に判決を言い渡されることになった。

 

そして、ルイズとサイトだが...サイトは大怪我の状態で発見。すぐに水系統を操るメイジ達によって治療が始められた。

 

「ミス・ヴァリエール」

 

シエスタが保健室の扉の前でウロウロしているルイズに話しかける

 

「なによ」

 

ルイズは不安そうな..今にも泣き出しそうな声で返事をした

 

「サイトさんの容体は?」

 

「急所は外れてるけど...毒が体内に入ってるらしいって、さっき軍医の人が」

 

「毒!?」

 

サイトがリオレウスの爪での攻撃を受けた時に注入されたものだ。リオレウスが持つ毒は『出血毒』。血液が凝固し、止血するのを阻止して、細胞を壊すという恐ろしい毒だ。今もサイトは細胞が壊されることにより、耐え難い痛みが彼を襲っている。

最悪の場合は死に至る。仮に助かったとしても恐ろしいのは細胞を壊されたことによる『壊死』であろう。壊死とは細胞が死ぬことで体が腐っていくというものだ。こうなると、その部分を切り落とすしかない。今回、サイトが毒を注入されたのは左腕。つまり、彼は左腕を無くすという危機にも直面していた。

 

「出血性の猛毒らしい。傷口がなかなか塞がらないですって」

 

「そ、そんな...」

 

シエスタの顔に絶望が宿り、全身から力が抜け、床にへたり込む。

 

「...」

 

ルイズも顔に影を落とす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええい、離しなさい!!私もサイト殿の治療をします!!」

 

その時、廊下の突き当たりから声が聞こえてきた。高貴な白ドレスを身に纏い、可憐な容姿を持つが、威厳のある女性。言わずともがな、アンリエッタ女王である

 

彼女も事態を聞きつけ、サイトの治療をしようとしているのだ。彼女の得意系統は水。怪我の治療にはうってつけの系統だ

 

「なりません!!一国の女王がたかが平民上がりの騎士に治療を施すなど他の者に示しがつきませんぞ!!」

 

その女王の肩を掴んでいるのは高そうな衣服を身にまとい、ぽっちゃり腹を揺らす中年の男性貴族。そして彼もまた、平民上がりが嫌いなのだ

 

「その汚らわしい手で女王陛下に触るのはやめなさい」

 

先程の泣きそうな声とは一転し、凛とした表情と声で年が二倍以上も離れてる男性貴族を圧倒する。呆然としている男性貴族の手を女王の肩から外す

 

「女王陛下、行ってください」

 

「ルイズ...」

 

「サイトを...お願いします」

 

「お願いします」

 

頭を下げるルイズ。その横ではシエスタも頭を下げる

 

「...任せなさい」

 

一層表情が引き締まり、保健室の扉を開けて、中に入るアンリエッタ

 

「女王陛下!?」「陛下!?」

 

突然の女王の乱入によりざわつく軍医達。全員、精神力が切れかかっているのか息が荒い。それほどまでにリオレウスの毒が強力で、解毒しにくいのだ

 

「これからは私も加わります。全員、気を引き締めなさい」

 

「「「はっ!!!」」」

 

女王の声で励まされたのだろう。先程よりも生気に溢れた顔で再び魔法を唱え始め、女王もまた、呪文を唱えはじめるのだった

 

 

ルイズとシエスタはその声を聞いて、何故かは知らないがサイトが助かると確信した。まったく根拠が無いが、気持ちの問題だろう

 

「おい、小娘」

 

横から不愉快な声が聞こえてきた。さっきの男性貴族だ

 

「さっきの私への口の利き方はなんだ?小娘、私を誰と心得る?かの名門、フール家の当主であるぞ。小娘、貴様の家の名を聞かせろ。取り潰してくれる」

 

そんなことを言って家名を教えるバカはいないが、ルイズはあえて言った

 

「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ド・ラ・ヴァリエール」

 

「ふん、そんな家...何?ラ・ヴァリエール...?」

 

フール家の当主はルイズのフルネームを聞くと、表情が固まった。続いて、顔が風竜の鱗よりも青くなっていく

 

ラ・ヴァリエール家。トリスティンの名家中の名家だ。フール家も名家だが、ラ・ヴァリエール家の足元にも及ばない。オマケに、ラ・ヴァリエール家は王家との繋がりも持っているのだ

 

そう、『格』が違う

 

もしこの小娘が今の事を父にでも告げ口したら...そこから先の男の行動は早かった

 

「も、申し訳ございませんでしたああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

男はぽっちゃりな体からは考えられないようなスピードで、しかしドスドスという重々しい音と共に走り去っていった。

 

ルイズはふん、と鼻を鳴らす。彼女にとって取るに足らない相手だったからだ

 

そして、そんなルイズを羨望の眼差しで見つめるのはシエスタ。

 

「なによ?」

 

「か、かっこいいです!!フール家といえば名家の...しかも今のは当主様

じゃないですか!!それをあんなあっさり追い返せるなんて...」

 

ルイズは嘆息して答えた

 

「あんな貴族、名家でもなんでもないわよ。それに...」

 

ルイズの脳内に浮かんだのは学院を襲ったリオレウス。

 

「あんなやつと比べるならここを襲ったあのドラゴンの方がよっぽど貴族らしいわ」

 

天を駆け、炎を吐き、教師や水精霊騎士隊をねじ伏せた謎のドラゴン。そして、そいつは多くの罪も無き生徒を殺した。だが、容赦なく敵を狩る姿は...不謹慎ながらかっこいいと思ってしまった。

 

ルイズはいけない、と思い。頭を左右に振る。何を言ってるんだ自分。あんなやつ全然貴族らしくないじゃないか。ただの暴力の塊。自分達人間に仇なす者。ルイズはそう結論した

 

ただ、奴は何故こんなにも突然現れたのだろうか?

 

何かとんでもないことが起こっている...ルイズは保健室を見ながらそう思った

 




アギルがやられた時のダイジェスト

シエスタ、扉の前でガタガタ震えてるアギルを発見

シエスタ、説得する。アギル、これに応ぜず

シエスタ、フライパンで殴る

こんな感じでアギルはやられました。それとリオレウスの毒は現実の蛇毒を参考にしています。皆さん、お気をつけて。次回はモンスターが出てきます。お楽しみに

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