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それでは第7話、お楽しみ下さい。
ロマリア連合皇国、ガリア王国の南部にある都市国家群だ。その国にある大聖堂の中に、ロマリア皇国の支配者たる聖エイジス32世、本名ヴィットーリオ・セレヴァレはいた。そして、一枚の紙を見ていた。
紙、というよりは手紙との表現が正しいだろう。差し出し人はロマリアの水上都市『アクイレイア』の市長。なんでも「最近、繁殖期でも無いのに火竜が頻繁に町の上空を飛んでいて、サラマンダーも出没しています。教皇陛下のお力で原因を探ってきてほしいです」と書かれていた。内心、この忙しい時に...と思ったが見過ごせるはずもなく、聖堂騎士隊(パラディン)の隊長、カルロに命じて火竜山脈の調査に向かわせた
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ヴィットーリオに命じられたカルロは一個小隊(20人)を引き連れまず、アクイレイアに向かった。成る程、アクイレイアの上空を火竜が飛んでいたり、サラマンダーが街の周りを歩いていたりと確かに異常だ。だが、攻撃はしていない。ドラゴン達は賢いため、怒りに我を忘れていない限り人間を襲うことはないだろう。サラマンダーも同様だ。
そこから聖堂騎士隊は火竜山脈に向かった。まず、アクイレイアに一番近い山の付近をペガサスに乗り、探索。これはめぼしい結果が出なかったが、山が妙に殺気だっていると聖堂騎士隊は思った
その後はペガサスを降り、火山内部の調査。聖堂騎士隊の目の前に広がっているのは火山内部に繋がる大きな洞窟。背後は断崖絶壁。この火山に入るにはこの洞窟からしか入れない
「では、これより火山内部の調査を始める」
シン...と聖堂騎士隊はカルロの言葉を聞く
「調査をするにあたって、一個小隊を半分に分けて探索をする。山の内部を見た後、再びここに合流。異議はあるか?」
沈黙。それは肯定を意味する
「では、行くぞ!!全ては始祖ブリミルのために!!」
「「「始祖ブリミルのために!!」」」
聖堂騎士隊独自の敬礼をし、火山の内部に入っていった。無論、生身では入れないため水の魔法で体を保護する。ペガサスは連れていけないため、入り口に置いていく
ボォン!!
火山が噴煙をあげた。聖堂騎士隊は少し驚くも、よくあることなので直ぐに興味を逸らした
しばらく歩き、大きな空間と分岐点に差し掛かった。周りはオレンジ色の溶岩の海。落ちれば、命はない
だが、聖堂騎士隊は下に目を向ける。
「これは...」
「酷いな...」
聖堂騎士隊が見たのは横たわっている一匹の頭部を失った火竜。状態から見てここ最近のようだ。
「一体だれがこんなことを?」
「人か?頭部が綺麗さっぱり潰されてるから相当な使い手か、それとも、火竜を殺せる生き物か...」
「火竜は火竜山脈の生態系の頂点だったはずですが」
「そんなことはわかってる。まあ、万が一の事があっても始祖ブリミルが我らを守ってくれるから心配はいらんがな」
そう一人の聖堂騎士が言った直後
ブチャア!!
上から何か巨大な物が降ってきた。否、そいつは生物であった。
まず、聖堂騎士隊が抱いた第一印象は黒い悪鬼。頭部から生える二本の角。禍々しい黒い甲殻。白い毛。背中でバチバチと赤黒い雷が弾ける。紅く走るライン。血で染めた巨大な鎌のような爪。
地獄から召喚されたとしか思えない風貌だ。体長が15メイルあるというのがより一層恐怖を駆り立てる
獄狼竜 ジンオウガ亜種だ
聖堂騎士隊は言葉を失う。もちろんその禍々しい巨体も原因の一つだが、彼らにはもう一つ言葉を失う理由があった
それは、ジンオウガ亜種が落下してきた際、5人もの聖堂騎士を踏み潰したからだ。体長15メイルもの巨体に踏み潰されて人間が無事なはずもなく、臓器や血を辺りにぶちまけて他の聖堂騎士にも血をかけて、死んだ
それよかジンオウガ亜種は聖堂騎士隊に目もくれず自分が落ちてきた上の方を凝視している。その事がカルロを筆頭に聖堂騎士隊を怒らせ、冷静な思考能力を奪う
「皆の者!!賛美」
歌詠唱を放つぞ!!と言いかけた時、ジンオウガ亜種は唐突に後方にジャンプする。刹那、ジンオウガ亜種がいた場所に別の巨体が着地した
「ギアアアアアアアアァァァァァァァ!!」
そいつは上体を起こし、天に向かって吠えた。全身をメタリックな群青色の甲殻で包んでいて、特徴的な前脚と頭を覆うのは蛍光色の粘菌。こちらも体長15メイル以上。ジンオウガ亜種より若干大きい
砕竜 ブラキディオス。それが奴の名だ
聖堂騎士隊はさっきとは一転、二匹のモンスターに恐怖し、今すぐにでも逃げ出したかった。しかし、ジンオウガ亜種が入口の前に立ちはだかっているため、逃げられない。その上、背後にはブラキディオス。前門のジンオウガ亜種後門のブラキディオスとはまさにこのことよ
唐突に、ジンオウガ亜種が前脚に力を入れ、ブラキディオスに飛びかかった。聖堂騎士隊は巻き込まれかけたが、何とか避けて岩陰に隠れた。ブラキディオスは素早いフットワークでそれを避けて横フック。しかし、ジンオウガ亜種は後ろに飛び、これを回避する。
そもそもなんでこの二頭が争っているのかというと、ここはジンオウガ亜種の縄張りなのだがブラキディオスは平然と侵入。しかも、ジンオウガ亜種のこっちの好物、極楽鳥を食べるという暴挙を犯した。当然、ジンオウガ亜種がそんな横暴を許すはずもなく、火山の強者同士による争いが勃発した。つい先程まで火山の上の方で戦っていたのだが、狭かったため、ジンオウガ亜種が足を滑らせ、落ちた。ブラキディオスもそれを追い、下まで降りてきた。聖堂騎士隊は運が悪かったと言わざるを得ないだろう
その聖堂騎士隊は今の内に逃げ出したかったが、争いが激しすぎて出るに出られない。しかも、ジンオウガ亜種とブラキディオスにかなり近い所に隠れている。そのため、腰を浮かし、いつでも逃げれる準備をしておく。その時、カルロは周りに何かいることに気付いた
「...?なんだこれは?」
辺りに何か赤黒い球状の光が無数に浮かんでいる。近くで見ると虫だということが分かった。触れると、バチッとという音と共に手が弾かれた。ただの光ではない。何かのエネルギーだとカルロは解釈した
「ウオオオォォォォォォン...!!」
唐突にジンオウガ亜種が天に向かって長く、低く吠えた。すると、先ほど赤黒い光を放ってた虫がジンオウガ亜種に吸い込まれるように飛んでいく。
そして...
「ウオオオオオオオオオン!!!」
今度は力強く天に向かって咆哮。ジンオウガ亜種から莫大な赤黒い雷が放出される。それが聖堂騎士隊にとっては地獄の雷が落ちたと錯覚させるのには充分だった。
しかし、聖堂騎士隊は今度はジンオウガ亜種の姿に驚く。
背中の甲殻が展開されて、角も上向きに展開される。全身から赤黒い光が迸り、先程よりも荒々しく、禍々しい。
ジンオウガ亜種の『龍光まとい状態』だ。最も、聖堂騎士隊はそんなこと知る由もないが
「グアオ!!」
ジンオウガ亜種はまた飛びかかる。ただ、先程とはスピードが段違いだ。
ブラキディオスは素早いフットワークを活かし、なんとか避けるが、ジンオウガ亜種はかわされたと見るや流れるようにバク転し、尻尾をブラキディオスに叩きつける。それくらいではブラキディオスは大したダメージを負わないが、ジンオウガ亜種は尻尾を叩きつける勢いで二つの赤黒い雷の塊、いわゆる『蝕龍蟲弾』を放つ。
それは、空中で止まり、ブラキディオスに狙いを定め、弾丸の如く動き出す
「ギャッ!?」
さすがのブラキディオスもこれは避けきれず、足に蝕龍蟲弾がぶち当たり、派手に転倒し、もがく
ジンオウガ亜種は右前脚を振り上げた。どうやらそのまま振り下ろし、ブラキディオスに叩きつけるつもりのようだ。当然、くらったら無事では済まない
だが、ブラキディオスもそうやすやすとはやられない。足を動かし、ジンオウガ亜種をキック。右前脚を振り上げていてバランスが悪いジンオウガ亜種はよろけてあらぬところに右前脚を叩きつけてしまう。
ドゴォン!!
地が、割れた。比喩でもなんでもなく、本当に地が割れた。その際、発生した振動が聖堂騎士隊にも伝わる。圧倒的パワーに聖堂騎士隊は絶句し、恐怖する。しかもジンオウガ亜種との距離、わずか5メイル。今出て行っても巻き込まれるのがオチなので結局、金縛りにあったように聖堂騎士隊は動かず、息を殺すので精一杯だった
ブラキディオスはジンオウガ亜種がよろけてる隙に立ち上がる。しかし、ジンオウガ亜種は左前脚を振り上げて、ブラキディオスに迫る
「ギャアッ!?」
ブラキディオスは避けれず、ジンオウガ亜種の尖爪に斬り裂かれ、背中から後脚にかけて白い傷が三本ついた。ブラキディオスはよろける
だが、いつまでもやられっぱなしのブラキディオスではない。ここから反撃に出る
「ギアアアアアアアアァァァァァァァ!!!!!」
土を引っ掻くように後脚を動かした後、咆哮。ブラキディオスの体全体が黄色がかり、口から白い息を吐く。ブラキディオスの『怒り状態』だ
ボゴォン!!ボゴォン!!ボゴォン!!
ブラキディオスは一瞬の溜を作った後、右前脚、左前脚を交互に地面に叩きつけながら突進してくる。しかも、叩きつけた瞬間爆発を起こすため、インパクトが半端ではない。もちろん、くらったら爆殺されるだろう
ジンオウガ亜種は近い距離にいたが、避けられないスピードではない。ブラキディオスの進行方向から外れるように走り、回避した
だが、ジンオウガ亜種の背後には、聖堂騎士隊15名
「逃げろ!!」
カルロがそう叫び、一斉に聖堂騎士隊が岩陰から飛び出る。
「「「ぎゃああああああ!!!!!」」」
ただ、出るのが遅すぎた。3人もの聖堂騎士がブラキディオスの剛拳に巻き込まれ、消し炭と化す。更に4人が爆風で吹っ飛ばされて溶岩の中に落ちた
「手を伸ばせ!!」
一人の若い聖堂騎士が溶岩の中に落ちている仲間に向かって手を伸ばす。しかし、いくら水魔法の保護を受けているとはいえ、摂氏1000℃もある溶岩の中に人が落ちて無事なはずもなく、燃えながら沈んでいった。
「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「待て!!」
先ほどの若い聖堂騎士が目に涙を浮かべ、無謀にもブラキディオスに魔法を放とうとするが、もう一人の割と年配の聖堂騎士が首根っこを掴み、引きずり、ジンオウガ亜種に殴りかかるブラキディオスから距離をとる
「放せ!!仲間の仇を取るんだ!!」
引き摺られながらそう喚き散らす
「何を言う!!この化物達の存在を教皇陛下に伝える事が我々の義務だ!!」
この言葉に、今度はカルロが反応した。
「お前こそ何を言う!!あいつらを倒さずして何が騎士隊だ!?倒して名をあげようとは思わないのか!?」
その言葉でハッとする騎士隊。いつの間にか逃げ出そうとしていた自分を恥じた。そう、彼等は騎士隊。逃げ出すなんてもってのほか。この前の『ヨルムンガンド』戦でルイズの『爆発(エクスプロージョン)』が効かなかったと見るや彼等は直ぐに逃げ出した。その後、何とか取り繕ったが、その後彼等は恥ずかしかった。貴族なのに、メイジなのに、自分たちは逃げてしまったと
だから、彼等は人知れず心の中で誓った。もう逃げないと
その間に、ジンオウガ亜種vsブラキディオスの勝負は佳境へと向かっていた。
「グワオオオオ!?」
ブラキディオスの剛拳が遂にジンオウガ亜種にヒットし、爆発を起こす。何枚かの甲殻が弾け、鱗が舞、血が飛ぶ。クリーンヒットでは無いのにこの威力。ジンオウガ亜種が悲鳴をあげた
勝負はこれで終わったかと思ったが、まだだ。
ジンオウガ亜種の体を、赤黒い雷が包み込む。ユラユラと揺れる赤黒いオーラはまるで人魂のようだ
ジンオウガ亜種は一度大きく後ろに下がり、息を吸い込む
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!」
地獄の亡者の声を慟哭させる凄まじい咆哮が火山に響く。ジンオウガ亜種の『怒り状態』だ。聖堂騎士隊は思わず耳を抑え、ガタガタと体が震えるのを無理矢理封じ込める
ジンオウガ亜種が四肢に力をこめ、ものすごいスピードでブラキディオスに向かって赤黒い雷を放出しながら突進する。ブラキディオスは間一髪で躱す
だが、ジンオウガ亜種の攻撃はこれで終わりではない。
今度は前脚に力を入れ、無理矢理体の向きを180度反転、前脚に力を入れ、一気に跳躍。空中で身を捻り、背中を地面に向ける。そのまま、ブラキディオスめがけて、落ちてくる
しかし、ブラキディオスは前脚を地面に叩きつけたときの反動と身軽な体を活かし、かわした。ブラキディオスが元いた地面にジンオウガ亜種の巨体が落ちてきて、ドグシャア!!という爆音が響く。地面に激突した際の衝撃のせいか、蝕龍蟲弾が二つ出てきて、ブラキディオスに狙いをつける
だが、ブラキディオスにとってこれはチャンスであった。なにせ、目の前には腹をさらけ出して仰向けに寝っ転がっている犬っころ(ジンオウガ亜種)。これをチャンスと呼ばず何と呼ぼうか
ブラキディオスは大きく、右前脚を振り上げ、ジンオウガ亜種の顔面めがけて、振り下ろす。蝕龍蟲弾がぶち当たるが、堪えた
「ウオオ!!」
しかし、ジンオウガ亜種はガバッと起き上がり、右前脚を軸に回転。サマーソルト尻尾攻撃を繰り出す
先に届くのは、拳か、尻尾か
先に届いたのは尻尾の方であった。
ジンオウガ亜種の尻尾が、ブラキディオスの顔面を捉え、吹っ飛ばす。
吹き飛ばされたブラキディオスは壁に叩きつけられ、横たわる。オマケと言わんばかりにサマーソルト尻尾攻撃の際放たれた蝕龍蟲弾が二つ追撃をかける。すると、赤い雷がブラキディオスの体を覆いはじめた
「ギイィィ....」
ブラキディオスは立ち上がり、ジンオウガ亜種に向かって吠えるが、直ぐに自分の体に異変を感じたようだ。困惑したように自分の体を見た後、ジンオウガ亜種に背を向けた。
最初は少々ふらついていたが、やがてしっかりとした足取りで走り去っていった
「ウオオオオオオオオオオン!!」
ジンオウガ亜種は力強く吠え、勝鬨をあげる。
その時、岩陰から人影が出てくる。言わずともがな、聖堂騎士隊である
「!!」
ジンオウガ亜種は「今気付いた」とばかりにゆっくりと、聖堂騎士隊に顔を向ける。次いで、体を向ける。
「ウオオオオオオオオオオン!!」
今度は先程とは違う、宣戦布告の咆哮。『怒り状態』は終わっているが、『龍光まとい状態』は依然継続中だ
「行くぞ!!賛美歌詠唱!!」
カルロの号令で聖堂騎士隊は一度、水の保護魔法を『解く』。この魔法は『フライ』と同じく重ね掛けが出来ないからである。
火山の熱で体力が消耗していき、額には汗が浮かぶ。
『賛美歌詠唱』 聖堂騎士隊が得意とする合体魔法だ。血の吐くような訓練と統率の果てに使える奇跡の技。
そして、この賛美歌詠唱で聖堂騎士隊が繰り出したのは、荒れ狂う巨大な炎の龍。それは天を(実際には火山内部だが)駆け巡った後、口を開け、ジンオウガ亜種に襲いかかった
そして、消えた....
炎の龍が
「「「は?」」」
聖堂騎士隊がそう口を揃えて言う。目の前で起きた事に驚愕したからだ。炎の龍がジンオウガ亜種を飲み込んだ瞬間、『一瞬で』消えたからだ。徐々に、ではなく『一瞬』で、だ。
ジンオウガ亜種は体を回転させ、蝕龍蟲弾を4つ放つ。ジンオウガ亜種と近かった慌聖堂騎士隊4人が、あわててシールドを展開。4つの蝕龍蟲弾は狙いをつける間も無く、4人の聖堂騎士隊にぶち当たる。
ガイィィン!!
「くっ...」
4人は無事だったが、威力の強さに完全にガードは出来なかったようだ。吹っ飛ばされて、先程のブラキディオスと同じく赤い雷が体を覆う
「うわっ、何だあれ!?」
聖堂騎士達は慌てるが、特に体調に異常はない。直ぐに賛美歌詠唱の準備に入る
続いて聖堂騎士隊が繰り出したのは風系統の荒れ狂う竜巻。溶岩も巻き込んだ赤い竜巻が、ジンオウガ亜種に襲いかかるが、ジンオウガ亜種に触れた瞬間、まるで何も無かったかのように竜巻が消えた
「嘘だろ...?」
カルロがそう呟く。魔法が効かない。メイジにとって悪夢以外の何者でもない。
何故、ジンオウガ亜種に魔法が効いていないのか?実は、背中で爛々と輝いている龍属性エネルギーに秘密がある。
真正の龍属性エネルギーは、属性を全てシャットアウトするという恐るべき性質をもつ。
つまり、『龍光まとい状態』のジンオウガ亜種に...
魔法は通用しない。メイジにとってこれは絶望と呼ぶほかない
だが、当然聖堂騎士隊は龍属性なんてもの知らないし、ましてやその特性など知らない。最も、背中ではなく腕などを狙えばいいのだが、賛美歌詠唱は威力が強すぎるため否応なしに背中に当たってしまうのが現実だが
その後もがむしゃらに賛美歌詠唱を放つが、当然、効かない。
ジンオウガ亜種がまた蝕龍蟲弾を4つ放つ。それは、赤い雷を纏っていない残りの4人に当たる。シールドを展開し、ダメージはないが、やはり赤い雷がその身を覆う
「ひっ....」
絶望が襲う。ただ、立ってるだけのジンオウガ亜種が更に恐怖と絶望を与える。
「う、わ...」
削られる精神力。魔法を行使する際に使うものとはまた違う。恐怖によるもの
「「「「うわああああああああああああああああああああああ!!!」」」」
さっきまでの威勢は何処へ行ったのやら。元来た道を全力で走り、逃げる。そう、竜の前に人はひれ伏すしかないのだ
「グルルル...」
ジンオウガ亜種は唸りながら逃げる聖堂騎士隊の背を見る。ブラキディオスにやられた傷が痛むため、直ぐにでも休みたかったが、聖堂騎士隊が縄張りを犯してることに変わりはない。
去る者は追わず。別に放っておいてもいいが、洞窟を抜けた先は断崖絶壁の行き止まり。逃げたくても逃げられない。つまり、自分の縄張りから出られない。そう考えたジンオウガ亜種はゆっくりと聖堂騎士隊の後を追い始めた
その聖堂騎士隊は薄暗い洞窟の中をひたすら走っていた
「ひぃ、ひぃ、ひぃ」
「(くそっ、何なんだよあいつ...)」
カルロは心の中で今にも泣きそうな顔でそう呟く。神の技であるはずの魔法が全く通用しなかったからだ。
そして、洞窟の出口が見える。ペガサスにまたがって逃げよう。錯乱する心でそう考える
洞窟を出た。そして、ペガサスが...
いなかった
あったのはおびただしい量の血痕。何者かの襲撃だろう。だが、そんなこと聖堂騎士隊には関係なかった。心が絶望で凍りつく。
「そ、そうだ!!『フライ』がある!!」
一人の聖堂騎士がそう叫び、周りの聖堂騎士も慌ただしく『フライ』のスペルを唱える。賛美歌詠唱で精神力を大きく消耗したものの、『フライ』を使う余力はある。あの地獄の覇者から逃げられる。聖堂騎士隊は安堵した。再び心に希望の灯がポッと、燃え出す
だが、現実は無情である
『フライ』を使っても体が浮き上がらない。何度スペルを唱えても、何も起こらない。
今度こそ聖堂騎士隊は絶望のどん底へ叩き込まれる。彼等は知らない。自分たちが『龍属性やられ』を発症し、魔法が使えなくなっていることを
聖堂騎士隊は地面にへたりこみ、天を仰ぐ。もう一度言う。竜の前では人はひれ伏すしかないと。
加えてこうも言っておこう
竜の前では人は逃げることさえできないと
ズシン...
聖堂騎士隊の心を芯まで凍りつかせるにはこの足音だけで充分であった。
ギギギと音が鳴りそうなほどゆっくりと振り返ると、洞窟の奥からジンオウガ亜種が地面から紅い雷を放出しながらゆっくりと聖堂騎士隊に迫る。
自分たちの命を地獄へ誘うのは地獄の番犬ケルベロス。いや、死神と言うべきか
「うっ...」
彼等はもう、ジンオウガ亜種の縄張りに入った瞬間、運命は決まっていた
「「「「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」」」」
「アオオオオオオオオオン!!!」
ジンオウガ亜種が吠えた瞬間、聖堂騎士隊の目の前は真っ赤になり、そして、暗くなった
彼等は人生で初めて、始祖ブリミルを恨んだ
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そして、その様子を見ていたのはペガサスを襲撃した張本人。いや、張本竜とも言うべきか。その巨影は先程仕留めた一頭のペガサスを足で掴み、空を征す巨大な翼で悠々とホバリングしているのは本種の飛行能力の高さを伺える。
「....」
ジンオウガ亜種もそちらに気付き、血の海の上でジッと見つめる
バサッ
やがてその巨影は飛び去っていった
その竜は藍より蒼い甲殻を身に纏っていた
今回はブラキディオスさんはちょっと控えめにさしてもらいました。だって、ゲームの方ではメチャクチャ暴れてるじゃないですか。あと、龍属性やられは3G以降の効果を蹈襲しました。それでもちょっと無理があったか...?とも思ってますが杖を属性オンリーの武器と仮定すると龍属性やられで攻撃を封じられても無理はないとも思えます
え?ジョジョブラキ?JUMP獄狼?さあ、なんのことやら...
それはそうと活動報告へのコメントや投票、感想どしどし待っております
次回はトリステイン魔法学院sideです。では、また次回