それでは3話です。モンモランシーが考えた作戦とは?
モンモランシーは早速行動を起こした。まず、アンロックを使い誰かの学生部屋に入り(※今回はアンロックを見逃してくれた)その窓から『フライ』を使って降りて、ヴェルダンテの元に駆け寄り『作戦』を伝える。ヴェルダンテは頷き、すぐに取り掛かる。
ドォン!!
竜の放った火球が学院にぶち当たり、壁を穿つ。水精霊騎士隊は傷だらけ、学院は穴だらけだ。時間は、ない。そう思ったモンモランシーはヴェルダンテを手伝う。全ては逆境を打ち破るために。
一方その頃、水精霊騎士隊
「グギャアッ!」
「ぐあっ!!」
サイトがホバリング中の竜に飛びかかるが、蹴りで逆に弾き返された。
「どうした相棒。動きが悪いじゃねえか」
立ち上がるサイトにデルフリンガーが喋り掛ける。確かに、今日のサイトの動きは鈍い。普通の人より少し速いレベルだ。それもそのはず、今のサイトの心にあるのは恐怖だ。恐怖で心は震えるかもしれないが、所詮恐怖だ。簡単に言おう。要するに『足がすくんでいる』のだ。
心が震えていても動かす足がダメなら当然、動きも鈍る。サイトのいつも後ろで聞こえていた、心が芯から震えて勇気がでるあの古代のスペルが今日は聞こえてこないからだろう。
「うるせえ。くそっ、目の前がボヤけてきやがった」
サイトの頭から血が流れ出る。どうやら頭を打ったようだ。ボヤける視界で辺りを見ると、皆ボロボロだ。全員、流血していて、酷いものは骨まで折れている
「悪いが相棒、来てやがるぜ」
デルフリンガーの言う通り、竜がこちらに滑空突進してきていた
「くそっ....!?」
サイトは避けようとするが、ダメージが足にきていたようだ。膝をついてしまった
「(やばい...避けられねえ)」
サイトは来たるべく衝撃に備えて目を瞑る。竜はぐんぐんとサイトに近付き...
ボォン!!!!
凄まじい爆発で『竜』が吹き飛ばされ、地面に叩き落された。サイトも爆風に煽られるが、不思議と既視感があった。すると、桃髪の少女がゆっくりと、こちらに歩いてくる。
「私の...使い魔に...
その少女は、サイトの愛しい愛しいご主人様である...
何してんのよこの馬鹿ドラゴンーーーーーーーーーーーーー!!!」
ルイズ・フランソワーズだ。烈火の如く怒り狂う彼女を見て、サイトは思わず目頭が熱くなる。そして、勇気がでる、不思議と視界が晴れる。
「エオルー・スーヌ・フィル...
ルイズが『爆発(エクスプロージョン)』のスペルを唱えはじめる。だが、サイトはここで思い出す。そう、虚無の呪文は強力だが、同時に、唱えるまでの隙が大きい。そして、竜はその隙を見逃さなかった。
「グオオオオオォォォォォォ!!」
竜は立ち上がり、ルイズめがけて火球を発射した。
だが、サイトは竜が火球を発射すると同時に動き出していた。さっきまでの動きが嘘のようなスピードでルイズのもとに駆け寄り、俗に言うお姫様抱っこでその場を離脱、火球は学院の外壁にあたり穿つが、二人には当たらなかった
ベオークン・イル」
ルイズが爆発(エクスプロージョン)のスペルを唱え終わり、杖の先から小さな光の玉がでて、竜めがけて飛んでいく。『爆発(エクスプロージョン)』は破壊対象を自由に選べる魔法で、ルイズの全力の一撃は人間に何の被害も出さず何十隻もの艦隊を撃沈させれるほどの力を持つが、さっき一発放ったのでそれよりもパワーは劣るだろう。しかし、竜を塵にさせるには充分の威力のものを放つ。
竜の眼前で『爆発(エクスプローション)』が炸裂し、光がルイズとサイトを包み込むが、破壊対象は竜のため爆風だけが襲う。
光と爆風が収まり水精霊騎士隊やルイズの視界も晴れてくる。先ほどいたところに竜はいない。水精霊騎士隊やルイズは歓喜し、抱きあうものまでいる。そう、竜はこの場、いやこの世からいなくなったのだ
バサ、バサ、バサ
「嘘だろ...」
そんな考えを打ち砕く羽ばたきが全員の耳に届く。上を見ると竜が遥か上空で羽ばたいていてこちらを見ていることだけが分かる。竜は『爆発(エクスプロージョン)』が炸裂する寸前に身を翻し、大空に逃れていたのだ。
その竜はホバリングしながら優れた視力でサイトとルイズを見据える。爆発を起こしたのはあの少女だ。くらえば死ぬと直感が告げる。だが、その少女は満身創痍で今にも気を失いそうだ。竜は勝算を推し量り...勝てると判断したのだろう。羽ばたきながら降りてくる。その時、何故か土まみれのモンモランシーがサイトとルイズのもとに駆け寄ってきた
「サイト!!ルイズ!!」
耳打ちをし、例の『作戦』を伝える。モンモランシーはちょうどその準備が終わったのだ。その『作戦』を聞いたサイトは思わずほくそ笑む。
「ルイズ、『爆発(エクスプロージョン)』はあと何発うてる?」
「一発が限度ね...」
「すまん、もうちょっと頑張れるか?」
「ええ、当然よ。あのドラゴンを倒せれるならね」
「じゃあ、行くわよ!!」
モンモランシーに連れられ、ルイズとサイトが走り出す。いや、サイトがルイズを再びお姫様抱っこして走り出す
その一連の会話の間に竜は着地して、ルイズ達を猛ダッシュで追いかける。ルイズ達は本塔と土を表す塔を繋ぐアーチ式の廊下の下を駆け抜ける。その約3秒後に竜も同じ場所を駆け抜ける。
すると、唐突にルイズ達が立ち止まり竜に向き直る。竜はその行動を不思議に思うが、特に考えずにルイズを噛みちぎらんとばかりに口を開く。牙が、ルイズに迫り...
「グオオオ!?」
竜の下半身が、地面に埋まった。
そう、モンモランシーが考えた『作戦』とはヴェルダンテが作った落とし穴である。だが、ただ地面を掘っただけのような落とし穴ではない。そもそも、ただ大きな穴を作るだけではせいぜい一瞬動きを止めるだけだろう。しかし、ここでミス・シュヴルーズの存在が重要となる
ミス・シュヴルーズがやったことは『錬金』で土を粘着質の赤い粘土に変化、落とし穴の底に敷き詰める。これにより、落とし穴に竜がはまった際、足に赤い粘土が絡みつき簡単には抜け出させない構造になっているのだ。
そして、この大きな隙があれば...『爆発(エクスプロージョン)』を問題なく当てれる
「エオルー・スーヌ・フィル...
古代のスペルを詠唱するルイズ。虚無の呪文は精神力の消費が凄まじい、それに先程二発も大きめの『爆発(エクスプロージョン)』をうったルイズは今にも倒れそうだが、何とか堪える
ベオークン・イル」
そして、『爆発(エクスプロージョン)』を放つ。光はさっきのよりも更に規模は小さいが、竜の体を包みこむには充分な大きさだ。辺りに爆風が吹き荒れる
光が晴れ、風が収まると...そこには、倒れ伏せた空の王者がいた。
「やっ.....た....」
ルイズは竜が倒れたのを確認すると、意識を闇に落とした
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「ん...ここは...?」
ルイズが目を覚ます。知らない天井だ....ではなく、辺りを見ると、自室だということが分かった。自分は制服姿でベットで寝てたようだ。土や汗塗れで気持ち悪いが、気分は爽快だ。だってそうでしょう?大人のドラゴンでさえ10メイルにいくかいかないかなのに、自分は15メイル越えのものを倒したのだ。もちろんみんなの協力もあってのことだが、それでも誇らしいものは誇らしい。
さて、今はどうなってるのかしら?と、ルイズがベットから降りようとするが右手に違和感を感じそちらを見る
自分の右手には、自身の使い魔であるサイトの左手が重ねられていた。サイトは椅子に座り、顔をベットに埋めてる。彼もあれだけの激戦を繰り広げたのだ、疲れていて、寝落ちしても文句は言えない。それに、この状況をもうちょっと楽しみたい。と、ルイズは顔を真っ赤にさせながら思う。そう、これは頑張った使い魔へのご褒美。ええ、そうよと素直じゃないことを心の中で呟く
だが、ここで違和感に気付く。右手が妙に生温かいのだ。ちょっとだけ重ねている手を外して、手のひらを見ると...真っ赤に染まっていた。
「え?」
思わず間抜けな声が出て、考えるよりも先に慌てて身を乗り出す。サイトが座っている椅子はよくよく見るとドス黒い赤に染まっていて、足元では紅の池ができていた
「ひっ......」
ドサッ、とサイトが力なく床に倒れる
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオオオオオオオォォォォ!!!!」
ルイズが頭を抱えて叫ぶ中、頭の中で竜の咆哮が木霊するが、それが現実なのかは分からない。ただ、落とし穴に竜の姿はなかった。
※=アンロックを使うのは重大な校則違反
3話、いかがでしたか?楽しんでもらえるなら幸いです。