妖精と白き夜叉   作:さとモン

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お久しぶりです。
夏休みに世間は入りました。
このシリーズ を書き始めて、とうとう半年が過ぎようとしています。
なんだか驚きです。(@ ̄□ ̄@;)!!
と、驚いてみた。


二十一話 変わらない犬猿

 

「お前は…本当に坂田銀時なのか?」

 

 

シルヴィアは、訪ねようとしたわけではなかった。ただ、小さく呟いただけだった。

その微かな声を、銀時の耳は確かに拾っていた。

 

 

「それって、坂田銀時のことを知ってるってことか?」

 

 

「わからない。」

 

 

「なんでだよ。」

 

 

「俺が幼い頃にどこかの誰かに聞いた坂田銀時は、こんなことをするような人間じゃない。」

 

 

おかしい。

 

それを聞いて銀時は思う。

 

おかしいのだ。

シルヴィアの昔というのは、おそらく彼の幼い頃だろう。彼は二十歳前後だろうから、幼い頃というと、十年は昔のことになる。

十年といえば、思い浮かぶものは一つしかなかった。"攘夷戦争"だ。

だが、その当時の銀時の状況をシルヴィアに教えた誰かは、一体どうやって知ったのだろうか?

自由に二つの世界を行き来することは不可能な筈だ。

何故、その誰かは自分のことを知っていた?

 

 

「どうした?」

 

 

「…そうだな、じゃあお前の中の坂田銀時像に付け加えときな。

坂田銀時は、宇宙一馬鹿な侍だってよ」

 

 

シルヴィアはこのとき、表情には出さなかったが、久しぶりに呆れるということをした。

何が言いたいんだ。この男は。

本物にもう一人の俺なんだろうか。

 

信じられない。

 

というかなんだ。

 

 

「死んだ魚の目だな。」

 

 

「いいんだよ。いざってときに輝くから」

 

銀時はいつものようにそう言った。が、彼の見たシルヴィアの顔は、明らかにそれを信じているような顔ではなかった。

 

 

「ところで…」

 

 

「んぁ?」

 

 

「どこにいくつもりなんだ?」

 

 

銀時には、それを答えることができなかった。

 

 

そもそも、銀時の頭のなかには目的地なんてものは存在しなかったのだから。

彼に答えることなど、出来る筈がない。

 

 

「馬鹿だな。」

 

 

「ウッセェェェェ!!」

 

 

いや、確かに頭が爆発してるなど言われることはあった。だが、自分自身に言われていると思うと、普段以上に頭にくるのだ。しかも、シルヴィアは年下である。

 

 

なにが悲しくて自分に馬鹿にされなくてはいけないのかわからなかった。

 

 

「…こっちだ。」

 

 

シルヴィアは銀時の姿を確かめることなく、廊下をすすんだ。

 

静かに歩くその姿は、どこか寂しげだった。

 

 

銀時は、その小さな背中の後を追う。

 

 

「もう、俺にはわからないんだ。

なぜ、俺たちは魔力に執着するのか。

魔力がなくなる世界のなにが怖い?

なにに俺たちは怯えているんだ?

……お前にはわかるか?」

 

 

そんなこと、銀時にはわかる筈がない。

そんな状況にいないから。ということもあるが、想像がつかない。ということもある。

 

 

銀時は、その答えがわからず、悩むことになる。

 

 

 

「国家領土保安最終防衛作戦。エクシード・トータル・デストラクション 。"コードETD"

天使全滅作戦…。簡単にいうと、この世界で唯一魔力を持つエクシードたちを魔水晶にし、この世界に永遠の魔力を与える…。

おそらく、既にはじまっている。」

 

 

「なっ…」

 

 

シルヴィアは目を閉じ、耳を澄ませた。

そして、銀時に言う。

 

 

「敵が来たらしい。」

 

 

銀時達の目の前には、確かに敵が数名いた。

 

 

「シルヴィア様!?一体、何をしているのですか?」

 

 

仮にも軍の幹部であるシルヴィアに、敵兵は動揺を隠せずにいるらしい。

 

 

「見ての通りだ。俺は、アースランドの魔導師の味方だ。」

 

 

「血迷ったか!」

 

 

敵兵はシルヴィアに突っ込んでくる。

銀時は敵を睨み、腰の木刀に触れた。

 

だが、銀時をシルヴィアが腕を伸ばし、制した。

 

 

「!」

 

 

次の瞬間、敵兵の体は宙に舞っていた。

そして、宙に舞った兵達を

シルヴィアが峰打ちではあるが、斬ったのだ。

 

 

「…うら、ぎった…の、か」

 

 

シルヴィアは冷たく、そう吐いた倒れている敵兵を睨み付けた。

そして、刀の先をその敵兵に向ける。

ピリピリと感じる、この威圧感は、殺気を滲ませていた。

 

 

「裏切ってなんかいない。

俺は、最初から王国の味方じゃない。味方だと、お前たちが勝手に勘違いしていただけだ。」

 

 

シルヴィアは、お前達の味方になるはずがないだろう。と思った。

こんな奴等の味方になるぐらいならば、柄ではないが腹を斬ったほうがマシだ。と思うほどには彼は王国が嫌いだった。

 

 

「行くぞ」

 

 

銀時を少し見て、シルヴィアは足早にここから立ち去ろうとする。

確かに急がなければいけない。

だが、銀時は好奇心に負け、こんなことを言い出した。

 

 

「その性格ってさぁ…、作ってるわけ?」

 

 

「なにを言ってる。俺は最初から…」

 

 

「あー、はいはい。そうですか。

気にしないでおいてやるよ。」

 

 

それを聞き、少しばかり安心する。

だが、次の瞬間にそれは地に叩きつけられる。

 

 

「…なんて、言うと思ったか?

お前さぁ、本当はシルヴィアって名前じゃないんじゃねーの?」

 

 

それが引き金だったのだろうか。

シルヴィアは、勢いよく銀時に掴みかかり、目を大きく見開き、そして睨んだ。

 

フー、フー、と息が荒くなっていた。

これは御立腹だな。と、銀時はたいして動揺するわけでもなく思う。

 

図星だろうな。

本当のことでないのなら、お前は馬鹿か。と、呆れられていただろう。

 

 

「俺は俺だ。それ以外の何者でもない。」

 

 

「そりゃあ、お前はお前以外の何者でもないだろうよ。

でも、今のお前が本当のお前なのかはわからねーや。」

 

 

パッと、銀時から手を離す。

なんだコレは

 

本当に人間なのか?

 

 

得たいの知れない恐怖を感じた。

 

震えるからだを、抱き締めた。

 

 

「怖ぇだろう。今、お前がいるのは 真っ暗闇だ。何にも見えねぇ。だから怖いんだ。」

 

 

銀時は笑う。

 

もう一人の己に、偽りの笑みを向ける。

 

 

それが、彼の答えだった。

 

 

彼自身はとっくに気づいていた。

 

暗闇にいたのは、自分だと

 

 

だが、そこにいるときは分からないのだ。

藻掻いた癖に、諦めて。

 

そうして己に残ったのはなんなのか。

 

それを気づかせてくれたのは誰だったか…。

 

 

 

「行くぞ。――――。」

 

 

その声に、彼は顔をあげる。

 

 

己には届かない

 

 

嗚呼、これが夜叉なのか?

 

 

かつて戦場を駆けた

 

 

白夜叉だというのか

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

シルヴィアは、とある黒いものを見た。

 

 

「なるほど、前々から怪しいとは思っていたが…。漸く尻尾を出したなァ。シルヴィア」

 

 

「…お前には興味はない。消え去れトッシー」

 

 

なるほど。ここも変わらなかったのか。シルヴィアがふざけているのかはわからないが、確かにこれは変わらない。

 

 

「ふざけてんのかッ!」

 

 

「…お前の為になぜ真面目にならなければならないんだ。」

 

 

「やっぱりふざけてたんじゃねーか!」

 

 

鬱陶しい。五月蝿い。

表情からもそれが受け取れる。

いやいや、君の気持ちもわかるよ…。

でもさ、俺がお前の味方するわけないだろ?というか、この状況って、結構面白いんだよね。

 

 

「つーか、イラつく毛玉がなんで分裂してんだよ!?」

 

 

「誰が分裂だ!もっかい言ってみろ!ァア゙!?」

 

 

「…落ち着け」

 

 

シルヴィアが俺のことも呆れ顔で見るが、そんなことはそんなことはどうでもいい。目の前の黒髪サラサラロン毛に言われたのがムカつく。

 

なにが悲しくてあのマヨラーに言われなくちゃならねぇんだ!

 

 

「…坂田銀時。コイツは放っておこう。」

 

 

「聞こえてるぞシルヴィア!」

 

 

そんな声など聞こえてないかのように、シルヴィアは銀時を引っ張る。

俺もそれには賛同だし、こんな奴のために時間を割きたくない。

後ろでギャーギャーやかましいやつは、後で対処したほうが良いと思う。

 

 

「シルヴィア!聞いてんのか!」

 

 

これで何度目だろう。なんどシルヴィアを呼んでいるのだろう。

構ってほしいのか。なんなんだ。

 

 

「シルヴ…「さっきから五月蝿ぇんだよ!テメェは黙ってろ!」

 

 

「……て、え…?」

 

 

シルヴィア君が声を荒げた。

え、どういうこと?

シルヴィアくんはそういう性格じゃないと思ってたんだけど…!?

クールな無表情キャラだと思ってたんたけど!?

 

 

「…木刀貸せ。で、刀貸す」

 

 

無理矢理洞爺湖と、刀を交換する。

ずしりと感じる鉄の重さ。

何故だろう。妙に柄しっくりとする。

どこか、懐かしい

 

 

「おい、なんでわざわざ木刀に…」

 

 

「あいつを斬るのに、刀は要らない。それは、お前に返す」

 

 

「はぁ!?これはお前のだろ!」

 

 

手に持っていた刀を、シルヴィアに見えるように目の前にかざす。

そして、見覚えがあることに気づく。

おかしい。

 

鞘から刀身を抜く。

銀色に光る刃。

 

 

これは、見覚えがあるなんてものじゃない。

 

 

どうしてここに。

 

 

刀身を鞘におさめ、銀時は走った。

 

 

 




いつ終わるのか、だれか終わりを教えてほしい。
オリジナルに路線を脱線して、帰ってこれません。



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