妖精と白き夜叉   作:さとモン

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アニメが気になってしょうがない
更新遅れてすいませんでした。


二十話 銀と銀の出会い

 

「……」

 

 

「………」

 

 

「「なんで俺が?」」

 

 

二人は、目の前の鏡のようなその姿を見て、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時は、シルヴィアの服を着て、城に向かっていた。

歩くたびに感じる視線。

今でこそ少ないが、幼い頃は当たり前のように感じていたそれに、銀時は苦笑していた。

 

 

しかし、どこに城があるかはわかるのだが、道がわからなかった。

高杉は、流石に城までは行けない。と、ついては来なかった。

 

 

人に聞こうにも、畏怖を感じているのか、自分に怯えている人々には、どうも聞く気には なれなかった。

 

 

「どうしたもんかね」

 

 

今はもう、誰も頼れない。

一人でしなければいけないのだと。

 

 

よし、これでいこう。

 

 

「すっ、いませーん!」

 

 

大きな声でそう言った。

その声に、周りにいた人々は反応し、俺の方を見た。

おそらく、意外だったんだと思う。シルヴィアという奴が、そんなことをしないから。

 

だが、人々は怯えきったような顔をして、さっさと逃げていってしまった。

未知の恐怖。ってやつかもしれない。

理解してくれないんだな。

それを見て、目を背けたくて。だから目を閉じて。そしたら何故か口角があがった。

 

 

「……あの」

 

 

声をかけられた。

だけど、その声がなんだか懐かしい気がした。

心地が良かった。

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

その笑顔が、あの人と重なった。

 

 

誰なんだコイツは

 

 

でも、あの人よりは小柄だろう。

それに、女のようだった。

 

 

「いや、城に行きてーんだが」

 

 

「道がわからないんですか。…あははっ」

 

 

そう言い終えると、いきなり笑い出した。

それが何でなのか俺には分からなくて、きょとんとした顔でいたんじゃないだろうか。

 

 

「なんだよ」

 

 

不機嫌な顔で言ったのだが、女は余計に笑うだけで、火に油を注いでしまっただけだったのだと思った。

それでも、あの人とまた重なったのが悔しかった。

 

 

「この道を真っ直ぐ行くんですよ。」

 

 

「それだけ?」

 

 

「えぇ、それだけですよ」

 

 

なんですと?

 

 

え、どんな方向音痴?

あのマヨラーと同じ声優の、某海賊漫画の主人公の右腕じゃん!

三刀流じゃん!銀さん、三刀流なんかできないよ!?刀咥えることなんか出来ないからね!?

俺はCV.中井さんじゃないから!

銀さんはCV.杉田だからね!

 

 

絶対にねぇ!何があっても信じねぇ!

そうだよ、初めてくる場所だからパニクッててわかんなかっただけだから!迷子なんかじゃないから!

 

 

コツン

 

 

その音が聞こえたとき、気付いたときには頭に激痛とまではいかないが、痛みが走っていた。

その痛みに、頭をおさえた。

 

 

現実逃避を続けていた俺を止めたのは、やはり目の前にいる女だった。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

心配そうに見つめているが、この頭を殴ったのはアンタだ。と言いたかった。だが、俺はその言葉を口に出すことができず、ただ息だけを吐いた。

その時、体が動かなくなったのだ。その姿を見たとたんに、体中が硬直し、なにもできなくなった。

 

ただ、それだけのことだった。

 

 

「シルヴィアさん…?」

 

 

だが、一瞬にしてその硬直は治まった。

 

おそるおそる差し伸ばされたその腕を、俺は咄嗟に叩き、払ってしまった。

怖かったのかもしれない。

あの人に似た顔をしたこの女が

 

それとも、違うとわかったのかもしれない。

あの人は俺のことをシルヴィアとは呼ばないし、俺の名前は銀時だから。

 

 

この時、俺はまだ、気づかなかった。

気づくことができなかった。

 

 

「何を、迷っているのですか?」

 

 

「俺が、迷っ…てる?」

 

 

「えぇ、私にはそう見えます。」

 

 

何が言いたいんだ。コイツは

俺が何を迷ってるって?

 

違う。迷ってるんじゃない、お前が。お前が要らないんだ。

 

そう思って、ハッとした。

今、俺は何を思った?

要らないなんて。

 

 

「俺、もういかねーと」

 

 

急いでこの場から離れようとした。

もう、いたくなかった。

自分の心を乱すこの女のそばに、いたくなかった。

 

 

「あの」

 

 

「なんだよっ!」

 

 

女の姿を見ずに、ただそう怒鳴った。

後先なんか考えないで。

ただ、無意識のうちに言っていた。

 

 

「そこに、道なんてないですよ」

 

 

道?道ならある。

目の前に。俺の、目の前に

城へと続く、この道が

 

 

「あるのは、ただの地獄です」

 

 

「地獄…?」

 

 

地獄など、いくらも見てきた。

目の前で消えていく命。

救おうとして伸ばしても、届くことのないこの手。

どんなに叫んでも、悔やんでも、足掻いても、なにも護れなかった。

これ以上の地獄なんて、あるはずがない。

 

 

「あなたがまだ、その怨念を背負っていると思っているのなら。の話ですがね」

 

 

まぁ、仕様もない独り言ですよ。

女はそう言って、ニコニコと笑いながら手を振っていた。

 

 

 

というのが、数時間前のこと。

 

 

「……あんた、誰」

 

 

「お前から名乗れ」

 

 

これが、シルヴィアだということはわかる。

なんせ、俺にそっくりだ。

 

銀色の髪、はねまくってる天パ。

今の俺よりはおそらくマシだが、死んだ魚のような眼。

 

ただ違うことは、身長と言動。

 

 

どこか幼いような気がする。

 

 

「…シルヴィア。あんたは?」

 

 

「坂田銀時」

 

 

名乗ると、シルヴィアは小さいながらも唖然として俺の姿をまじまじと見つめてくる。

何に驚いているのか。

俺が名乗って驚いているのだから、名前に驚いたのだろうか。

それとも

 

 

「…これを門番に見せろ。怪しまれずに行ける」

 

 

紙らしきものをつきだしてきた。

内容は見ない。

何故、さっき会ったばっかりの人間に、手を貸すのかがわからない。

それが、同じ人間だったとしてもだ。

 

 

「お前、なんで…」

 

 

「もう一人の自分に、何かをかけたいだけだ。

こんな腐った世界、もう飽きた」

 

 

自分だ。

 

銀時は、それを理解した。

少し、疑っていたのだ。本当に自分なのかと。

だが、その言葉を聞いて分かった。

あぁ、コイツは自分なのだと。

 

 

腐った世界。

 

 

あの時、何度も思ったことだったし、自分の世界の高杉がよく言う言葉でもあった。

腐った世界に飽きて、腹を切ろうとしたこともある

その都度あの約束が、あの笑顔が頭を過って、その手をとどめた。

 

 

ようするに、コイツは過去の自分なのだ。世界に絶望し、ただもがいているだけの。

 

 

「いいのか?」

 

 

「なにが」

 

 

本当にわからないんだろうか。

シルヴィアは表情を変えずにそう言った。

ここまで表情を変えないと、逆に不気味だと思った。

確かに無表情だった時期もあったが、ここまでではなかったと思う。そこは自分ではないな。と思い、再度自分なのだろうか。と考えた。

 

どっちなんだ。

 

 

「お前は行かないのか?」

 

 

「……なんで?」

 

 

声の調子は疑問を表しているが、表情は変わらなかった。

なにがあったんだ。さっきの驚いた顔はなんだったんだ。

 

 

「お前のことでもあるだろーが。俺だけ行くのはおかしいだろ。」

 

 

「同じ人間が二人いると怪しまれる。」

 

 

「そーいうのは良いんだよ!」

 

 

「何故だ?お前は仲間を助けたくないのか?」

 

 

調子が狂う。

自分が目の前にいることなんて、普通は体験できないことだ。

 

 

「おい、誰だお前達!」

 

 

遠くからその声が聞こえた瞬間、俺の手はシルヴィアの腕を掴んでいた。

何故なのか、わからない。

 

 

「!」

 

 

「にーげるんだよ!」

 

 

微かに変わった表情。それは、確かに驚いている。

強引にでもしないと、動かないということは、不思議とわかっていた。

 

 

いまなら、まだ間に合うと信じたかった。

 

 

 

俺はまだ、誰かを救えるだろうか。

 

 

 




文章の量が少ないのはいつものこと。あまり気にしません。
オリジナルが多いなーと思いました。

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