「ここが王都……」
マグノリアよりも大きな都市だった。
江戸とは、どう比べればいいのか分からないため、そっちは比べない。
町を歩くと、国民であろう人々が、お祭り騒ぎで騒いでいた。
魔力抽出という、不吉な言葉も聞こえる。
2日。
もう、時間はない。
どうやら俺は"シルヴィア"というおそらくこっちの俺であろう人物に間違われているのか、人々から何故か遠ざかれている。
王国の砦とかいわれてただろ!?え!?
どうやら、俺のこの目が原因らしい。
血の瞳
それを聞いたとき、つい吹いてしまった。
久し振りに聞いたのだ。
広場に、魔水晶が置かれている。
大きな大きな水晶だった。
ここまで大きいものは初めて見た。
「エドラスの子らよ。我が神聖なエドラス国は、アニマにより10年分の〝魔力〟を生み出した」
それを聞いて、冷静でいられるほど、非情ではなかったことに、安心している自分がいた。
前に出て、あの王様を斬ってやろうと思った。
そのとき、突如 後ろから殺気に似た気配がして、俺は腰の木刀に手をかけた。
「何故、ここにいる?」
「!」
嘘だ
この低い声には、酷く聞き覚えがあった。
お前こそ何故ここにいる。
そう言おうとしたが、よくよく考えてみると、ここは違う世界だったことを思い出した。
「……高杉」
振り返ると、左目に眼帯をした紫がかった髪をした男がいた。
「シルヴィア…じゃないなお前」
睨む高杉が眼帯で、俺は本当につい、吹いてしまったw
いや、面白いわww
「で、お前はアースランドのシルヴィアだと?」
「シルヴィアじゃねー、銀時だチビ。」
建物のなかは、万事屋より広い。
木刀を置いて椅子に座る。
「誰がチビ…「ちなみにお前は金持ちか?」
名前を間違えられた。チビごときに。
チビに。あー、ムカつく。なんでこのチビに俺は会ったんだ?そこは辰馬でいいわ。この際ヅラでもいい。このチビ助よりはマシだ。
「…親は王国と繋がってる。」
「チッ」
それを聞いたとたん、無意識に舌打ちをした。
「おい。なんで今、舌打ちした?」
「うるせーチビ。どうせこの家、親の金で買ったんだろ?どうせ、卵かけご飯なんて食べたことないんだろ?あー、だから嫌なんだよ。ミニ四駆のコースを段ボールで作ったこともねーんだから。俺なんかな!ゲームなんか買ってもらえなかったんだからな!?ジャンプしかなかったんだよ!金持ちのボンボンはズリィなー!」
「俺は親からは一人立ちして…」
「え?別に高杉くんだなんて言ってないけど?あ、もしかして高杉くん自分のことボンボンだと思ってた?」
思いきり高杉に蹴られるわ、踏みつけられるわ、斬られそうになるわ。
あの頃みたいでちょっと懐かしかった。
そうか。コイツ、あの時の高杉そっくりなんだ。
「で、ヅラとかいんだろ?どこ」
「……」
高杉は目を伏せた。手は、握りこぶしをつくっている。
う、嘘だろ?まさかアイツが…!?
「ヅラは二年前に、エクシードを探しに消えていった。」
「エクシード?」
聞きなれない単語を復唱する。
「空を飛ぶ猫だ。」
「!!それって…」
あの、青い猫や白い猫のことだ!
この世界には魔法はないが、アイツらは飛べる…
アイツらだけ魔法が使える。
まさか、ヅラはエクシードの謎を知るために?
「いや、肉球探しだ」
「こっちもかよっ!なんで変わらないの!?バカは世界跨いでも馬鹿なの!?」
どこにいっても変わらないアイツはやはり肉球がすきらしい。
「アイツを止められなかったのは今でも悔やんでる。今頃、殺されてるかもしれねぇ」
って
「本当にヤバイじゃねーか!」
「エクシードは人間より高位な存在として崇められてる」
「猫が?」
変な話だ。いや、人間様が偉いとかはないけどさ。
「だから、人間を殺そうがなんの罪にもならねぇはずだ。」
「……大丈夫だろ」
まぁ、どんな世界でもアイツだしな。
多分生きてるだろ。
「ヅラだからなァ」
どこにいっても変わらないやつがいるっていうのも、なんだか良いもんだな。
「……まぁ、確かにヅラのことよりも、お前の方が今は大事だろ。」
「……」
あー、調子狂う。
目の前にいるのは確かに見た目は高杉だが、中身が高杉じゃないからいや、確かに高杉なんだけど。俺が知ってる高杉じゃないから。微妙に若いし。
「お前、自分に会いたいんだろ?」
「……まぁ、な」
あぁ、案外高杉だ。
俺に敵対心がないのは、ちょっと寂しいような気もするが、コイツは確かに高杉だ。
「シルヴィアなら、スラム街にでもいると思う」
「スラム街……王国軍だろ?」
「あぁ。でもアイツは、華やかな街なんかよりも、うす汚ねぇ街のほうが好きらしい。」
どんな理由?俺ならどっちでもいいと思うけど。
そーいうところは俺とは違うんだな。性格も違うみてぇだし
高杉とも仲は悪くねぇみたいだしな。
「シルヴィアは、身体能力の高さだけを理由に王国軍に入れられた。
俺たちは勿論それを止めようとしたが、シルヴィアは頑なに首を横に振ろうとはしなかった。それどころか、縦に振った。」
「…なんか、理由があるのか?」
「さぁな。アイツのことなんか、俺にわかるわけないだろ。」
「え…」
違う。
わからないんじゃない
わかる。
高杉は高杉で、その思考を否定したくて、だから、わかろうとしない。わからないんじゃない。わかりたくないんだ。
こっちの俺もこっちの俺で、ある一つの線を引いて、誰にもわからないように。悟らせないように。自分がいることで、誰かが不幸になると思ってる。
そして、それがわかってしまう俺も
「あははっ」
俺は、少し笑った。
「あはははははははははっ!!」
少しから、腹を抱え、思いきり笑った。
高杉は、拍子抜けた顔で凝固しており、戸惑いながらも、確かに俺を見つめていた。
なにしてんだろ
俺
「そいつの名前、シルヴィアじゃないんだろ?」
「なっ…!?」
高杉は、絶句した。
だが、何故それを知っている。そういっているかのように、高杉は俺を見つめていた。
ただ、俺が言いたかったのはそんなことじゃなかった。そんなことじゃなかったのに、俺はそれ以外のことが口に出るどころか、頭に浮かばなかった。
「……シルヴィアっていうのは、名前がないアイツが、適当に考えた名前だ。俺達もしぶしぶそう呼んでる。」
「名前がない……ね」
どうしてこんなところまで同じなんだろう。
懐かしさを感じさせるこの空間。
違和感を感じるこの世界。
この世界の俺と、話してみたい。
会いたいから、変わってしまった。
なんだかこの場にいたくなくなって
この世界の高杉に背を向け、俺は建物をでた。
見上げた空はやっぱり青くて、懐かしい筈なのに、全然懐かしさは沸いてこなかった。
それは、この世界が違うということを、ちゃんとわかっているからなんだろうか。
なら、この世界に来たときに感じたあの懐かしさはなんだったんだろう。
それはまだ、この時点ではわからなかった。
「おい!木刀忘れてんぞ!」
「……高杉」
「何回呼んだと思ってんだこの天パ!」
「チビだから気がつかなかったわ。」
7㎝も俺よりちっちぇやつは黙ってろよ。
「俺も行く。文句あるか」
「あるー。ありありですー。」
ふざけていうのは、よくあることだ。
ちなみにこういう風に言うと、大抵高杉は怒る。
「お前、一回斬っていいか」
「無理」
それだけは勘弁
新キャラは高杉くんでした。
さて、次はどうなるのか!
先にいっときますが、作者は戦闘描写がギャグより苦手です
エド高杉
目は"眼帯"で、原作の高杉というよりは、攘夷戦争時の高杉の方が性格的には近い。
ここでは説明キャラになっているが、多分活躍するところもあるはず。王国には不満を持っている。
シルヴィア(エド銀時)とは原作よりは仲は良好。桂(エドヅラ)とは幼馴染みだが、肉球好きと電波についていけなくなり、喧嘩。それ以来、ヅラはエクシード探しに消えていったため、ロクに話していない。
21歳。