妖精と白き夜叉   作:さとモン

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接触。



十八話 馬鹿はどこにいっても馬鹿

「ここが王都……」

 

 

マグノリアよりも大きな都市だった。

江戸とは、どう比べればいいのか分からないため、そっちは比べない。

 

 

町を歩くと、国民であろう人々が、お祭り騒ぎで騒いでいた。

魔力抽出という、不吉な言葉も聞こえる。

 

2日。

 

もう、時間はない。

 

 

どうやら俺は"シルヴィア"というおそらくこっちの俺であろう人物に間違われているのか、人々から何故か遠ざかれている。

王国の砦とかいわれてただろ!?え!?

どうやら、俺のこの目が原因らしい。

 

 

血の瞳

 

 

それを聞いたとき、つい吹いてしまった。

 

久し振りに聞いたのだ。

 

 

広場に、魔水晶が置かれている。

大きな大きな水晶だった。

ここまで大きいものは初めて見た。

 

 

「エドラスの子らよ。我が神聖なエドラス国は、アニマにより10年分の〝魔力〟を生み出した」

 

 

それを聞いて、冷静でいられるほど、非情ではなかったことに、安心している自分がいた。

 

前に出て、あの王様を斬ってやろうと思った。

 

 

そのとき、突如 後ろから殺気に似た気配がして、俺は腰の木刀に手をかけた。

 

 

「何故、ここにいる?」

 

 

「!」

 

 

嘘だ

 

 

この低い声には、酷く聞き覚えがあった。

 

 

お前こそ何故ここにいる。

そう言おうとしたが、よくよく考えてみると、ここは違う世界だったことを思い出した。

 

 

「……高杉」

 

 

振り返ると、左目に眼帯をした紫がかった髪をした男がいた。

 

 

「シルヴィア…じゃないなお前」

 

 

睨む高杉が眼帯で、俺は本当につい、吹いてしまったw

いや、面白いわww

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、お前はアースランドのシルヴィアだと?」

 

 

「シルヴィアじゃねー、銀時だチビ。」

 

 

建物のなかは、万事屋より広い。

木刀を置いて椅子に座る。

 

 

「誰がチビ…「ちなみにお前は金持ちか?」

 

 

名前を間違えられた。チビごときに。

チビに。あー、ムカつく。なんでこのチビに俺は会ったんだ?そこは辰馬でいいわ。この際ヅラでもいい。このチビ助よりはマシだ。

 

 

「…親は王国と繋がってる。」

 

 

「チッ」

 

 

それを聞いたとたん、無意識に舌打ちをした。

 

 

「おい。なんで今、舌打ちした?」

 

 

「うるせーチビ。どうせこの家、親の金で買ったんだろ?どうせ、卵かけご飯なんて食べたことないんだろ?あー、だから嫌なんだよ。ミニ四駆のコースを段ボールで作ったこともねーんだから。俺なんかな!ゲームなんか買ってもらえなかったんだからな!?ジャンプしかなかったんだよ!金持ちのボンボンはズリィなー!」

 

 

「俺は親からは一人立ちして…」

 

 

「え?別に高杉くんだなんて言ってないけど?あ、もしかして高杉くん自分のことボンボンだと思ってた?」

 

 

思いきり高杉に蹴られるわ、踏みつけられるわ、斬られそうになるわ。

あの頃みたいでちょっと懐かしかった。

 

そうか。コイツ、あの時の高杉そっくりなんだ。

 

 

「で、ヅラとかいんだろ?どこ」

 

 

「……」

 

 

高杉は目を伏せた。手は、握りこぶしをつくっている。

 

 

う、嘘だろ?まさかアイツが…!?

 

 

「ヅラは二年前に、エクシードを探しに消えていった。」

 

 

「エクシード?」

 

 

聞きなれない単語を復唱する。

 

 

「空を飛ぶ猫だ。」

 

 

「!!それって…」

 

 

あの、青い猫や白い猫のことだ!

この世界には魔法はないが、アイツらは飛べる…

アイツらだけ魔法が使える。

まさか、ヅラはエクシードの謎を知るために?

 

 

「いや、肉球探しだ」

 

 

「こっちもかよっ!なんで変わらないの!?バカは世界跨いでも馬鹿なの!?」

 

 

どこにいっても変わらないアイツはやはり肉球がすきらしい。

 

 

「アイツを止められなかったのは今でも悔やんでる。今頃、殺されてるかもしれねぇ」

 

 

って

 

 

「本当にヤバイじゃねーか!」

 

 

「エクシードは人間より高位な存在として崇められてる」

 

 

「猫が?」

 

 

変な話だ。いや、人間様が偉いとかはないけどさ。

 

 

「だから、人間を殺そうがなんの罪にもならねぇはずだ。」

 

 

「……大丈夫だろ」

 

 

まぁ、どんな世界でもアイツだしな。

多分生きてるだろ。

 

 

「ヅラだからなァ」

 

 

どこにいっても変わらないやつがいるっていうのも、なんだか良いもんだな。

 

 

「……まぁ、確かにヅラのことよりも、お前の方が今は大事だろ。」

 

 

「……」

 

 

あー、調子狂う。

目の前にいるのは確かに見た目は高杉だが、中身が高杉じゃないからいや、確かに高杉なんだけど。俺が知ってる高杉じゃないから。微妙に若いし。

 

 

「お前、自分に会いたいんだろ?」

 

 

「……まぁ、な」

 

 

あぁ、案外高杉だ。

俺に敵対心がないのは、ちょっと寂しいような気もするが、コイツは確かに高杉だ。

 

 

「シルヴィアなら、スラム街にでもいると思う」

 

 

「スラム街……王国軍だろ?」

 

 

「あぁ。でもアイツは、華やかな街なんかよりも、うす汚ねぇ街のほうが好きらしい。」

 

 

どんな理由?俺ならどっちでもいいと思うけど。

そーいうところは俺とは違うんだな。性格も違うみてぇだし

高杉とも仲は悪くねぇみたいだしな。

 

 

「シルヴィアは、身体能力の高さだけを理由に王国軍に入れられた。

俺たちは勿論それを止めようとしたが、シルヴィアは頑なに首を横に振ろうとはしなかった。それどころか、縦に振った。」

 

 

「…なんか、理由があるのか?」

 

 

「さぁな。アイツのことなんか、俺にわかるわけないだろ。」

 

 

「え…」

 

 

違う。

 

わからないんじゃない

 

 

わかる。

 

 

高杉は高杉で、その思考を否定したくて、だから、わかろうとしない。わからないんじゃない。わかりたくないんだ。

 

こっちの俺もこっちの俺で、ある一つの線を引いて、誰にもわからないように。悟らせないように。自分がいることで、誰かが不幸になると思ってる。

 

 

そして、それがわかってしまう俺も

 

 

「あははっ」

 

 

俺は、少し笑った。

 

 

「あはははははははははっ!!」

 

 

少しから、腹を抱え、思いきり笑った。

 

 

高杉は、拍子抜けた顔で凝固しており、戸惑いながらも、確かに俺を見つめていた。

 

 

なにしてんだろ

 

 

 

 

「そいつの名前、シルヴィアじゃないんだろ?」

 

 

「なっ…!?」

 

 

高杉は、絶句した。

だが、何故それを知っている。そういっているかのように、高杉は俺を見つめていた。

 

 

ただ、俺が言いたかったのはそんなことじゃなかった。そんなことじゃなかったのに、俺はそれ以外のことが口に出るどころか、頭に浮かばなかった。

 

 

「……シルヴィアっていうのは、名前がないアイツが、適当に考えた名前だ。俺達もしぶしぶそう呼んでる。」

 

 

「名前がない……ね」

 

 

どうしてこんなところまで同じなんだろう。

 

 

懐かしさを感じさせるこの空間。

違和感を感じるこの世界。

 

 

この世界の俺と、話してみたい。

会いたいから、変わってしまった。

 

 

なんだかこの場にいたくなくなって

 

 

この世界の高杉に背を向け、俺は建物をでた。

 

 

見上げた空はやっぱり青くて、懐かしい筈なのに、全然懐かしさは沸いてこなかった。

それは、この世界が違うということを、ちゃんとわかっているからなんだろうか。

 

 

なら、この世界に来たときに感じたあの懐かしさはなんだったんだろう。

 

 

それはまだ、この時点ではわからなかった。

 

 

 

 

 

 

「おい!木刀忘れてんぞ!」

 

 

「……高杉」

 

 

「何回呼んだと思ってんだこの天パ!」

 

 

「チビだから気がつかなかったわ。」

 

 

7㎝も俺よりちっちぇやつは黙ってろよ。

 

 

「俺も行く。文句あるか」

 

 

「あるー。ありありですー。」

 

 

ふざけていうのは、よくあることだ。

ちなみにこういう風に言うと、大抵高杉は怒る。

 

 

「お前、一回斬っていいか」

 

 

「無理」

 

 

それだけは勘弁

 

 

 




新キャラは高杉くんでした。
さて、次はどうなるのか!
先にいっときますが、作者は戦闘描写がギャグより苦手です


エド高杉


目は"眼帯"で、原作の高杉というよりは、攘夷戦争時の高杉の方が性格的には近い。
ここでは説明キャラになっているが、多分活躍するところもあるはず。王国には不満を持っている。
シルヴィア(エド銀時)とは原作よりは仲は良好。桂(エドヅラ)とは幼馴染みだが、肉球好きと電波についていけなくなり、喧嘩。それ以来、ヅラはエクシード探しに消えていったため、ロクに話していない。
21歳。

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