妖精と白き夜叉   作:さとモン

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エドラス編、はじまります。
あと、遅くなってすいません


四章 もう一つの世界、もう一つの可能性
十六話 どこでもドアなんて便利なものはまだない


 

「雨…アルナ」

 

 

「ったく、辛気臭くてしょうがねーや。」

 

 

ざあざあと降る雨を、銀時と神楽は見つめていた。

二人は雨があまり好きではないのだ。

 

 

「新八は妙んとこだしな~」

 

 

「なんでメガネだけ帰ってるアルカ」

 

 

「そりゃあメガネだからだ」

 

 

「私も姉御に会いたいヨ!」

 

 

駄々をこねはじめる神楽。

銀時はうんざりしながらそれを聞いていた。

子供は扱いが難しい

 

 

「……暇ヨ!」

 

 

「じゃあ遊んでこい!」

 

 

暇だの会いたいだの言う神楽に、銀時はとうとう怒鳴った。

 

 

「お前は馬鹿か!こんな雨の日に遊べるわけないダロ!」

 

 

怒った神楽は、銀時の顔を殴った。

 

銀時は勢いのあまり、後方へ数メートル吹っ飛ぶ。

 

 

「痛ってぇだろーが!バカヤロー!」

 

 

殴られたところを抑えながら言う。

今日はこの喧嘩を止めるメガネがいないため、喧嘩はなかなかおさまりそうにない。

 

 

「銀ちゃんはヒジョーシキすぎるネ!もーいいわ!私、家出するから!」

 

 

「ちょっと待て!なんで最後お母さん!?」

 

 

だが、それが何故か引き金になったらしい。

 

 

「っ、…銀ちゃんの

バカヤロォォォ!!」

 

 

銀時を再度殴ってから、神楽は万事屋(仮)を出ていった。

 

 

「……痛ぇなコノヤロー」

 

 

確かに、 自分が悪かったのかもしれない。だが、あれだけで家(のようなところ)を出ていくのはどうだろうか。

 

 

こういうとき、俺から謝らなくてはいけないのだろうか。

わからない。

 

どうすればいいんだろうか。

 

 

「てかアイツ、傘…」

 

 

持っていかれず、置き去りになった番傘を見た。こんな雨の日だ。びしょびじょになってしまう。

 

 

「はぁ…」

 

 

銀時は溜め息をひとつ吐いた。

木刀を腰にさす。やはり、少し軽いと思うのは、まだ刀を必要としているからなのか、木刀を良しと思っていない自分がどこかにいるからなのか。

 

 

番傘を持った。

 

 

そして、外へ出た。

 

 

そのタイミングは、物凄くよかった。それは、後々に知ることなのだが、最初はアレだと思った。

 

 

 

ガチャ(江戸ではないため、扉はドアノブ式)

 

 

「神楽ー……って、アレ?え?は、いや…え?」

 

 

外へ出た銀時の眼前に広がっていたのは、マグノリアの町ではなかった。

一言で表すのなら、広野。

建物も人も、なにもかもなくなっていた。

 

 

「さっきのドア、どこでもドアだったの!?え、銀さん知らぬ間にドラ○もん呼んでたの!?」

 

 

そんなわけないが、なんでもありの世界だし、映画ではタイムスリップしてるし、あり得るのかもしれない。

 

 

「いやいやいやいやいやいや!?あり得ないから!だって、銀さんの後ろに万事屋(仮)ないもの!って、え?……ない?」

 

 

たらたらと冷や汗が流れる。

どういうことだ。

 

これはどこでもドアなんてものじゃない。

 

どちらかといえば、もしもボックスだ。

 

だが、もしも周りが広野になったら…なんて言ってない。

 

 

「…魔法?」

 

 

だとしたのなら。

 

 

こんな大きな魔法いったい誰が?

 

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だけが残された!!?」

 

 

そんな声が聞こえてきた。

こんな場所なのに、姿は見えない。

 

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)

 

 

いや。俺は滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)じゃない。だとしたのなら、俺がここにいる理由は…

 

 

滅鬼魔導士(デーモンスレイヤー)だから?

 

 

「まぁね。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の持つ特殊な魔力が幸いしたようね。よかったわ、あなたたちだけでも無事で」

 

 

「シャルル……」

 

 

「そりゃ聞き捨てならねえなぁ、他のみんなはどうでも…………って本当に消えちまったのか!!?」

 

 

火竜(サラマンダー)がそう聞いた。どういうことだ?消えただとか。

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の特別な魔力だとか。

 

 

「消えたわ。正確に言えば、アニマに吸い込まれて消滅した」

 

 

「アニマ……」

 

 

アニマ?

 

 

あっ、庭

 

 

悪魔

 

 

ANIMA?

 

 

なんだそれ

 

 

「さっきの空の穴よ。あれは向こう側の世界〝エドラス〟への門」

 

 

「お前さっきから何言ってんだよ!!!みんなはどこだよ!!?」

 

 

エドラス?

 

 

向こう側の世界?

 

 

この世には、たくさんの世界がある。それを平行世界、パラレルワールドというっていうことは聞いたことあるが…

 

 

まて、なぜネコは無事なんだ。そして、何でそれを知っているんだ。

 

 

何者なんだよ

 

 

遠いからか、あまり声は聞こえなかった。

 

 

だが、この声だけは確かに聞こえた。

 

 

「この街が消えたのは、私とオスネコのせいって事よ」

 

 

 

……

 

 

ドラ○もん?

 

 

なんていうことを、いっている場合じゃないんだろう。

 

 

アイツらにとっては仲間が

 

 

俺にとっては家族も同然のやつが

 

 

いきなり消えたのだから。

 

 

いや、家族も同然なんかじゃないな。

 

 

たとえ血が繋がってなくても、アイツは俺の家族だから。

 

多分だけど

 

 




まだ彼女たちが家族だと信じきれないんです。
怖いから。失うことを怖れているから

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