あと、遅くなってすいません
十六話 どこでもドアなんて便利なものはまだない
「雨…アルナ」
「ったく、辛気臭くてしょうがねーや。」
ざあざあと降る雨を、銀時と神楽は見つめていた。
二人は雨があまり好きではないのだ。
「新八は妙んとこだしな~」
「なんでメガネだけ帰ってるアルカ」
「そりゃあメガネだからだ」
「私も姉御に会いたいヨ!」
駄々をこねはじめる神楽。
銀時はうんざりしながらそれを聞いていた。
子供は扱いが難しい
「……暇ヨ!」
「じゃあ遊んでこい!」
暇だの会いたいだの言う神楽に、銀時はとうとう怒鳴った。
「お前は馬鹿か!こんな雨の日に遊べるわけないダロ!」
怒った神楽は、銀時の顔を殴った。
銀時は勢いのあまり、後方へ数メートル吹っ飛ぶ。
「痛ってぇだろーが!バカヤロー!」
殴られたところを抑えながら言う。
今日はこの喧嘩を止めるメガネがいないため、喧嘩はなかなかおさまりそうにない。
「銀ちゃんはヒジョーシキすぎるネ!もーいいわ!私、家出するから!」
「ちょっと待て!なんで最後お母さん!?」
だが、それが何故か引き金になったらしい。
「っ、…銀ちゃんの
バカヤロォォォ!!」
銀時を再度殴ってから、神楽は万事屋(仮)を出ていった。
「……痛ぇなコノヤロー」
確かに、 自分が悪かったのかもしれない。だが、あれだけで家(のようなところ)を出ていくのはどうだろうか。
こういうとき、俺から謝らなくてはいけないのだろうか。
わからない。
どうすればいいんだろうか。
「てかアイツ、傘…」
持っていかれず、置き去りになった番傘を見た。こんな雨の日だ。びしょびじょになってしまう。
「はぁ…」
銀時は溜め息をひとつ吐いた。
木刀を腰にさす。やはり、少し軽いと思うのは、まだ刀を必要としているからなのか、木刀を良しと思っていない自分がどこかにいるからなのか。
番傘を持った。
そして、外へ出た。
そのタイミングは、物凄くよかった。それは、後々に知ることなのだが、最初はアレだと思った。
ガチャ(江戸ではないため、扉はドアノブ式)
「神楽ー……って、アレ?え?は、いや…え?」
外へ出た銀時の眼前に広がっていたのは、マグノリアの町ではなかった。
一言で表すのなら、広野。
建物も人も、なにもかもなくなっていた。
「さっきのドア、どこでもドアだったの!?え、銀さん知らぬ間にドラ○もん呼んでたの!?」
そんなわけないが、なんでもありの世界だし、映画ではタイムスリップしてるし、あり得るのかもしれない。
「いやいやいやいやいやいや!?あり得ないから!だって、銀さんの後ろに万事屋(仮)ないもの!って、え?……ない?」
たらたらと冷や汗が流れる。
どういうことだ。
これはどこでもドアなんてものじゃない。
どちらかといえば、もしもボックスだ。
だが、もしも周りが広野になったら…なんて言ってない。
「…魔法?」
だとしたのなら。
こんな大きな魔法いったい誰が?
「
そんな声が聞こえてきた。
こんな場所なのに、姿は見えない。
いや。俺は
「まぁね。
「シャルル……」
「そりゃ聞き捨てならねえなぁ、他のみんなはどうでも…………って本当に消えちまったのか!!?」
「消えたわ。正確に言えば、アニマに吸い込まれて消滅した」
「アニマ……」
アニマ?
あっ、庭
悪魔
ANIMA?
なんだそれ
「さっきの空の穴よ。あれは向こう側の世界〝エドラス〟への門」
「お前さっきから何言ってんだよ!!!みんなはどこだよ!!?」
エドラス?
向こう側の世界?
この世には、たくさんの世界がある。それを平行世界、パラレルワールドというっていうことは聞いたことあるが…
まて、なぜネコは無事なんだ。そして、何でそれを知っているんだ。
何者なんだよ
遠いからか、あまり声は聞こえなかった。
だが、この声だけは確かに聞こえた。
「この街が消えたのは、私とオスネコのせいって事よ」
……
ドラ○もん?
なんていうことを、いっている場合じゃないんだろう。
アイツらにとっては仲間が
俺にとっては家族も同然のやつが
いきなり消えたのだから。
いや、家族も同然なんかじゃないな。
たとえ血が繋がってなくても、アイツは俺の家族だから。
多分だけど
まだ彼女たちが家族だと信じきれないんです。
怖いから。失うことを怖れているから