妖精と白き夜叉   作:さとモン

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六魔将軍 ニルヴァーナ編はこれで終わりです!
短いし、やはり原作にいるだけの銀さんたちです。



十四話 光を知る

魔水晶(ラクリマ)を壊す時間まで、5分をきった。

なんとかたどり着いたが、本当に大丈夫だろうか。

 

木刀に力が入る。

 

ミシミシと悲鳴をあげているが、これは刀で斬れない木刀だ。この程度なら大丈夫だろう。

仙人もいたような気がするし。

 

 

魔水晶(ラクリマ)を見据えた。

これを、俺は壊さなくてはならない。

 

 

戦っているんだろうか。アイツは。

火竜(サラマンダー)は。

 

ジェラールが何をしに行ったのかはわからないが、少なくとも変なことはしに行ってはないだろう。

あの顔はそういう顔だ。

 

 

時間はどんどんと迫ってきていた。

 

 

頭のなかで、時計が動いているようだった。

 

 

アイツらはどうなんだろう。

まだ子供だが、あれでもS級並の実力者だ。なんとかなるだろう。

 

 

 

 

~~~~~

 

 

「……どーするアルカ」

 

 

「……僕、あんまり魔力残ってないし、そもそも攻撃系の魔法じゃないんだけど」

 

 

魔水晶(ラクリマ)を見て、新八はそう答えた。

 

 

「それ言ったら、私もヨ。」

 

 

「神楽ちゃんは出来るんじゃない?」

 

 

新八がそう言うと、神楽は黙って俯いてしまった。

不満そうな顔をしているのが、新八からでもわかった。

 

 

「……ここの想い、気を抜いたら簡単に持ってかれてしまうアル。だから、あんまり使おうと思わないネ。

だけど、私の傘、攻撃できる。お前の木刀、攻撃できる。私たち、まだ力になれるアル。」

 

 

ポツリ、ポツリと神楽は呟いた。

 

新八は自分は馬鹿だった。と、正直に思った。

 

自分より年下であるはずなのに、彼女はわかっているんだ。

 

 

「そうだね。僕たちでも銀さん達の力になれるね」

 

 

新八はまた魔水晶(ラクリマ)を見た。

不思議なものだ。さっきまで壊れそうになかったのに、今は触れるだけで壊れそうなほど脆く見える。

 

大丈夫だ。

 

 

新八は、不安をどこかに飛ばしてしまった。

 

 

 

*****

 

 

 

残り、一分をきった。

 

 

各、魔水晶(ラクリマ)の前では、それぞれが破壊するための行動をとろうとしていた。

 

 

やるべきことは、とっくにわかっている。

 

 

10.9.8.7.6.5…4

 

 

3

 

 

2

 

 

1

 

 

 

銀時たちは、目の前にある魔水晶(ラクリマ)を壊した。

 

銀時は木刀で。

 

新八も木刀で、神楽は傘で

 

 

うまくいっただろうか。

 

 

うまくいったんだろう。

 

 

信じるしかない。

 

 

そう思ったのだが…

 

 

 

 

がらがらと、周りが崩れ始めていた。

 

 

原因は誰もがわかっていた。

 

 

先程、ニルヴァーナの動力源の魔水晶(ラクリマ)を崩壊させたからだ。

 

 

落石が降り注いでいた。

 

 

 

「ヤバくね?これ」

 

 

銀時は落石を避けながら、急いで出口へと向かう。

 

 

目の前に、穴から外の光が見えた。

 

 

人一人がやっとのことで通ることのできるぐらいの大きさの穴だが、なんとかなるだろう。

 

 

銀時はスライディングをし、その穴をすれすれで通る。

その直後、その穴はがらがらと音をたて、崩れてしまった。

 

 

「銀ちゃん。」

 

 

「……よくやったな、おめぇら。」

 

 

銀時は新八と神楽の頭を撫でた。

 

 

二人は驚いて動けなかった。

 

 

「や、やめるアル!」

 

 

「そうですよ。子供扱いはやめてください。」

 

 

「甘えられるうちに甘えとかねーと、後々後悔するぞ。」

 

 

「しませんよ。」

 

 

はやく、追い付きたいから。なんてことは、絶対に言わない。

 

 

「……僕ら、なんでこんなことしてるんですか。」

 

 

「頼まれたんだよ」

 

 

新八が問えば、銀時は頭を掻き撫でながら言った。

 

 

「誰にアルカ?」

 

 

「お前らに言ってもわかんねーやつですー」

 

 

ふざけたように言う銀時を、神楽は勢いよく殴り倒した。

 

 

「ぶへらっ!」

 

 

「ふざけてんじゃねーヨ。ァア!?」

 

 

胸ぐらを掴み、揺さぶる。

 

銀時は目を回した。

 

 

「ちょちょ、神楽ちゃん!?銀さん死んじゃうから!教えるどころか話せなくなるから!」

 

 

新八が神楽を止めにはいる。

神楽が銀時を放したとき、銀時は地面に倒れた。

 

 

「……」

 

 

「これでも話さないってことは、特別なことアルカ」

 

 

見下した神楽は、銀時を睨んだ。

 

 

「……知らねー」

 

 

「……ケッ」

 

 

それを見て何を思ったかわからないが、神楽は不貞腐れた顔で銀時を見て、その後難しい顔をした。

さらには頭を抱え始め、ついにはしゃがみこんだ。

 

 

「なにしてんのコイツ」

 

 

「さぁ……?」

 

 

そんな神楽を見て、銀時はため息をついた。

 

 

「……行くぞ」

 

 

「え、どこにですか?」

 

 

「アイツらんとこ。」

 

 

銀時が指差す方には、正規ギルドの面子が見えた。

 

 

 

*****

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)青い天馬(ブルーペガサス)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)、そしてウェンディ、シャルル。よくぞ六魔将軍(オラシオンセイス)を倒し、ニルヴァーナを止めてくれた。地方ギルド連盟を代表して、このローバウルが礼を言う。ありがとう、なぶらありがとう」

 

 

 

化猫の宿(ケット・シェルター)のマスター。ローバウルが礼をのべていた。

 

なぶらって、意味わかんねーんだけど。未だにわかんねーんだけど。

 

 

つーかなに?なんか違和感があるんだけど。こーなんつーか、人の気配が少ないっていうか。

 

 

新八はともかく、神楽は薄々気づいているだろう。

俺がここに来た理由。

 

 

「「「ワッショイワッショイワッショイ」」」

 

 

顔に似合わねーことしてやがんの。

まぁ祭り騒ぎも、酔狂な奴も、嫌いじゃねーけど。

 

だが、温度差が激しい。

化猫の宿(ケット・シェルター)の奴等が暗い理由を、俺だけは知っていた。

だから、なにも言わなかった。

 

 

「皆さん……ニルビット族の事を隠していて本当に申し訳ない」

 

 

言うつもりなのか。

決意をしたのか。

 

 

「皆さん、ワシがこれからする話をよく聞いてくだされ」

 

 

聴きたかった。アンタのその口から

 

 

「まずはじめに……ワシらはニルビット族の末裔などではない。ニルビット族そのもの。400年前ニルヴァーナを作ったのは、このワシじゃ」

 

 

それを聞いて、俺以外の奴等はポカーンとしている。

まぁ、当然か。

 

 

「400年前……世界中に広がった戦争を止めようと、善悪反転の魔法、ニルヴァーナを作った。ニルヴァーナはワシ等の国となり、平和の象徴として一時代を築いた。

しかし、強大な力には必ず反する力が生まれる。

闇を光に変えた分だけ、ニルヴァーナは〝闇〟を纏っていった。

バランスをとっていたのだ。人間の人格を無制限に光に変える事はできなかった。

闇に対して光が生まれ、光に対して必ず闇が生まれる」

 

 

「そう言われれば……」

 

 

闇と光は正反対にあって、紙一重。

アイツが言ってたことに似てる

 

 

つーか、400年前……ゼレフが生きていた時代。だったか?

 

 

「人々から失われた闇は、我々ニルビット族に纏わりついた」

 

 

もう、なにもかもわかってる

 

 

「地獄じゃ。ワシ等は共に殺し合い、全滅した」

 

 

場にいた全員が、言葉を失った。

神楽が言った、怖い。それは、これが原因だった。

 

 

仲間同士の殺し合い。

そんなもん、ロクなもんじゃねぇ。

 

 

「生き残ったのは、ワシ一人だけじゃ。いや……今となってはその表現も少し違うな。我が肉体はとうの昔に滅び、今は思念体に近い存在。ワシはその罪を償う為……また…力なき亡霊(ワシ)の代わりにニルヴァーナを破壊できるものが現れるまで、400年……見守ってきた……今……ようやく役目が終わった」

 

 

まるで、まるで…

 

 

だが、俺はその次にくる言葉を思い出すことができなかった。

 

 

「う…うそだ……」

 

 

ウェンディ…だったか、が体をふるわせていた。

 

 

その時、周りにいた化猫の宿(ケット・シェルター)のメンバーが消え始めた。

 

 

それを見て、ウェンディは戸惑う。

 

 

「騙していてすまなかったな、ウェンディ…。ギルドの者は皆…ワシの作り出した幻じゃ……」

 

 

!?

 

 

え…幻?

 

 

そうか、だからか。

 

 

どうりで違和感があったはずだ。

 

 

幻に魂があるはずねーんだから。

 

 

「ワシはニルヴァーナを見守る為に、この廃村に一人で住んでいた」

 

 

住んでるっておかしいだろ。

 

 

死んでるのに

 

 

「7年前、一人の少年がワシの所に来た」

 

 

『この子たちを預かってください』

 

 

それが、誰なのか。俺は知らない。

 

 

 

「いやっ、そんな話聞きたくない!!!バスクもナオキも消えないで!!!!」

 

 

ウェンディは目を閉じ、耳を塞ぎ、首を左右に振る。

 

 

「ウェンディ…シャルル…」

 

 

ローバウルは優しく穏やかに微笑む。

 

 

「もうお前たちに偽りの仲間はいらない…本当の仲間が、いるではないか」

 

 

そう言い指差したのは、連合軍のメンバーだった。

 

 

なんでだ

 

 

重なる、笑顔が

 

 

ローバウルはウェンディとシャルルに対し笑みを浮かべた。

 

 

それが俺には、

 

 

「お前たちの未来は始まったばかりだ」

 

 

辛かった。

 

 

そして、ローバウルも消え始めた。

 

 

「マスターー!!!!」

 

 

ローバウルに駆け寄ろうと、手を伸ばすウェンディと猫。

 

 

「皆さん、本当にありがとう。ウェンディたちを頼みます」

 

 

しかし、ウェンディのその手は、ローバウルに届くことはなかった。

 

 

消え去っていたのだ。

 

 

それと同時に、ウェンディの肩にあったギルドマークも、初めから存在しなかったかのように消えていた。

 

 

 

あぁ、なんで

 

 

なんで重なるんだろう。

 

 

『ありがとう』

 

 

あの笑顔と、姿と

 

 

 

泣き叫ぶ少女。

 

 

そこに、妖精女王(ティターニア)……エルザが肩を叩き、声をかけた。

 

 

「愛する者との別れのつらさは…仲間が埋めてくれる」

 

 

これが

 

 

仲間という名の

 

 

光だ

 

 

「来い。妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ」

 

 

 

 




いろいろあるので、銀さんたちの年齢を捏造します。

銀さんは二十代前半~半ば?
新八は14
神楽ちゃんは12
沖田などの18歳組は16
土方さんは二十代前半
近藤さんは27
高杉、桂は今より(年齢がわからないので)2歳ほど若く。

まぁ、ようするに皆2歳ぐらい若いってことで。

銀さんがハテナなのは、個人的な考えで。

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