妖精と白き夜叉   作:さとモン

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秘密を暴いていきましょう。
オリキャラ注意!です!


十二話 闇を知り

戦場。

 

ここには、己以外に動くものなどない。

屍が山をつくり、死臭を漂わせる。常人は来るはずのない場所だ。

 

辺りを見回す。今は誰もいないようだ。

 

屍の懐を探る。

目当てのものはない。

また別の屍の懐を探る。

残念ながら、ここにもない。

そんな行動を繰り返し何度もする。

目当てのものは、2つ見つかった。

 

キョロキョロと周りを見て、死体の山を見つけた。そして、その頂上に腰かけた。

竹皮を捲る。

中から、握り飯が出てきた。

また、腐ってはいない。

涎がでてきたので、それに思いきりかぶりついた。

美味しいといえば、正直なところ不味い。口のなかに鉄の味がして、気持ち悪い。

こんなもの、食べたくない。

しかし、生きるためには食らわなければならなかった。

こんなことをしてるから、鬼と呼ばれていることには気づいていた。

 

気づけばおにぎりは、全て食べ尽くしてしまっていた。

 

 

そんな生活を送っていたある日。

 

俺の目の前に、一人の男が現れた。

 

 

「だれだ」

 

 

殺気を出して睨んでやった。大抵の奴は、これでビビるのだ。が、この男は全くもって動じなかった。

こんな奴は初めてだった。

逆に、こちらが驚いた。というか、ビビった。

 

 

「人に名を聞くときは、自分から名乗りな。」

 

 

荒々しい口調で、男はそう答えた。

 

残念ながら、その時にはまだ名前がなかったので、なにも答えられなかった。

 

 

「…なにか話せよ。」

 

 

「あ」

 

 

なにか話せと言ってきたので、仕方なく一言だけ話してやった。

 

 

「そういう意味じゃない。」

 

 

すこし苛つきながら、男はこちらを睨んできた。

何故だかわからなかったので、こちらも睨んでやった。

 

 

「お前、ずっと一人?」

 

 

いきなり話題を変えてきた。

ずっと。というのは、ながく続いてる。ということらしい。

気づいたら一人だったので、ずっとと言われれば、ずっとなんだろう。

俺は男に頷いた。

 

 

「そうか、名前…ないのか」

 

 

「屍を喰らう鬼って呼ばれてる」

 

 

「それは名前じゃないよ」

 

 

男は笑った。

でも、心から笑ってはいなかった。

 

 

「俺も、一人。」

 

 

「そうか」

 

 

「……お前の名前は」

 

 

名前を聞いていないことに気づいた。

 

 

「ナキ…」

 

 

口を開いた男。

悲しそうに答えた。

 

 

「なき?」

 

 

「そう呼ばれてる」

 

 

「俺と一緒だな。」

 

 

ナキと答えた男は、俺の顔を見て、いきなり笑い出した。

 

 

「君はいつか、大切なものを知るんだろう。」

 

 

「……は?」

 

 

大切なもの?大切なものってなんだ。

 

ない。わからない。

 

俺には、なにもない

 

 

「なぁ、お前は生きろよ。」

 

 

「当たり前」

 

 

いきなり何を言うんだろう。

俺は生きるためにここにいるというのに。

でも、そろそろそれもしんどかった。

変な術?を使うやつが増えてきた。

あれを使うやつに出くわしたら、正直危ない。

 

男は、俺の目の前にいた。

 

 

「古き鬼の魔法。太古の魔法(エンシェントスペル)

滅鬼魔法」

 

 

「…は、ま、ほう?なんだよ、それ」

 

 

男は俺の額に手を当てた。

なんだ。これ。体が震えた。

 

初めて感じるこの感情が、怖い。ということには、あとから気づいた。

 

 

「ごめんな」

 

 

なにかが流れてくる。

 

変な気持ちだ。

なんもわかんねぇ

これ、なんだよ

 

色んなもんが頭のなかに流れてきて

なにがなんなのかわかんなくて。

なんでコイツが謝ってんのかわかんなくて

泣きたいのはこっちなのに、ナキは泣いていた。

 

 

「お前は、ちゃんと魔法を使えよ」

 

 

俺の視界は、真っ黒になった。

 

 

 

 

夢を見た。

 

 

真っ暗なところに俺はいた。

前も後ろも見えない。

自分の姿だけが、くっきりと闇のなかに見えた。

 

 

ここはどこなんだろう。と、考えるよりも、もう人を斬らなくていいのか。そう思った。

自分がいかに臆病なのかわかった。

 

 

どこにもいない。

誰もいない。

暗い。寒い。怖い。

怖い?そうか、これが怖いか。

人が怯えているのは、怖いからか。

 

 

光が見える。

遠くの遠くに

その光に走って寄ると、少しの光の奥には、また深い暗闇が広がっていた。

なんなんだろう。

光を通りすぎようとすると、なにかが話しかけてくる。

 

『お前は鬼だ』

 

そう、今更なんなんだ。

鬼なんだ。そう自分に言い聞かせてきた。

 

『そう言いたいが、お前は人だ。』

 

は?いや、お前さっき鬼っていったじゃん。

嘘つき。

ほんとなんなの?

 

 

『なぁ、鬼になる気はあるか?』

 

 

元々、鬼だ。

 

今さら鬼になったって、かわらねーよ。

 

 

 

それが、間違った判断だった。

そんなことに気付いたのは、随分と後のこと。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

『ナキよ、何故あの童なんぞに…?』

 

 

『彼は人だ。しかし、鬼に近しい。』

 

 

ナキは、穏やかに笑いながらいう。

それはなぜか、不気味に見えた。

 

 

『まさか…』

 

 

影は彼を疑った。まさか、そんなはずは

 

 

『彼は何れ、選択を迫られる。鬼となり生きるか、人となり死ぬか。』

 

 

彼に与えたのは、なんでもないことだった。

彼は元々そうだった。

 

 

『それとも、案外逆だったりするのかな?』

 

 

*****

 

 

 

 

「……」

 

 

何故、完全に闇に飲み込まれなかったかわかった。

 

 

そうか、俺の魔法が闇だからだ。

完全に光ではない俺は、闇でもあったんだ。

 

 

 

太古の魔法(エンシェントスペル)

 

 

夜の滅鬼魔導師(デーモンスレイヤー)

 

 

本当に、俺にピッタリすぎて笑えてくる。

 

 

自傷的に、銀時は笑った。

そして、銀時は自分の右手を見た。

 

 

「……まだ、いけるか?」

 

 

スッと立ち上がり、木刀に触れる。

己が侍であるために、あの人は何て言ったっけ

 

 

敵を斬るためではない

己の弱き心を斬るために

己を護るのではない

 

 

己の魂を護るために

 

 

別に、侍であるべきじゃなかったけど

 

 

「俺の手は、まだアイツらを護れる…」

 

 

聴こえる

 

 

耳鳴りのように煩く聴こえていたあの声が。

 

 

囁いている

 

 

助けてくれと

 

 

そう、これは依頼だ。

 

 

万事屋銀ちゃんへの

 

 

魂の依頼

 

 

 

銀時の瞳に、光が宿った。

闇夜に輝く、銀色の光。

 

 

 

仲間を護るために剣を奮い

 

 

その銀色の髪を血に染めた

 

 

鬼がいた

 

 

 




はい、一つ目の魔法をバラしました。
というか、何の滅鬼魔法にするかムチャクチャ悩みました。どうやって手にいれようかも悩みました。
でも、もう一つは決まっています!
さてさて、いったいどんな魔法なのか…。
それは、まだ先のお話です。

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