妖精と白き夜叉   作:さとモン

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ちょっと触れます。
銀時の魔法。
それは、最も彼に似合い、最も似合わない魔法だった。


十一話 白き鬼は

 

「……」

 

 

鬼は歩いていた。

人の気配のする方へと着実に近づいていた。

 

黒いは柱が見える。あれが己をこうしたのだと。しっかりとわかっている。

 

 

消えない。

まだ、消えない。

 

 

耳鳴りのように聴こえていた声は聞こえなくなったというのに、あの声だけは消えてくれない。

 

 

だが、この声が誰の声なのかがわからない。

懐かしい声であるはずなのに、思い出せない。

 

 

鬱陶しい。けど、心地いい。

安心する。いや、安心なんかしない。

 

 

途中、なにやらたくさんいたが、弱かった。すぐに蹴散らしてしまった。

 

 

「お前、誰だ?」

 

 

男がいる。

禍々しい闇の力を持っている。

 

 

「……まさか、貴様がいるとは。」

 

 

知っているのか。俺のことを。

 

 

「失われた、鬼の魔法の使い手。」

 

 

……そうだ。

 

 

「お前は、敵か?」

 

 

「敵ではないが、味方でもない。」

 

 

「そうか」

 

 

なら、興味ない。

俺に害をもたらすわけでもない。

味方でもない。

 

 

「だが、うぬの敵を倒そう。」

 

 

「何……?」

 

 

どういうことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

魔導師がたくさんいる。

 

みんな、敵なのだろうか。

 

プラインとやらが言っていた、俺の敵というやつに

 

 

「オラァァァァ!!」

 

 

木刀で目の前にいる魔導師を蹴散らした。

 

 

「魔法を使わずして、これほどまでとは。」

 

 

ブレインが呟くが、彼の耳には聞こえてなどいない。

 

 

銀時の目には、一人の少女がうつっている。

 

 

「……銀ちゃん」

 

 

そこにいるのは誰だ?

 

 

天人。

 

 

夜兎か。

 

 

天人は俺に害しかもたらさない。

 

 

「銀ちゃん!」

 

 

銀ちゃん…?

 

 

何故、俺に向かって言っている?

誰のことだ。

俺は"屍を喰らう鬼"なのに。

ソイツはなんで

 

 

「ア゙ア゙アアァァァァァ!!」

 

 

刀を振り上げた。

 

神楽はまさか銀時が自分に向かってそんなことをするとは思っておらず、一瞬動きが止まる。

 

 

「神楽ちゃん!」

 

 

神楽の体が吹き飛ぶ。

彼女の視界に、メガネにかけられた人間の新八が映った。

 

新八の背に、刀がぶつかろうとしていた。

 

 

「新八ィィィィ!!」

 

 

新八は覚悟をした。

 

 

己は斬られるのだ。この人に。

 

 

グシャッ!

 

 

「あれ……?」

 

 

思っていた程の痛みが来ない。

 

しかもこれは、斬られた時の痛みではない。

どちらかといえば、何かにぶつかったときの…

 

 

そこで新八は神楽の目が、大きく見開かれていることに気付く。

 

 

ゆっくり。そして、そうであってほしくないと思いながら、後ろを向く。

 

 

「銀、さ…」

 

 

ポタポタと、血が流れていた。

誰の血だ?

 

 

「よか、…った」

 

 

銀時のものだった。

 

銀時の手に、木刀が突き刺さっていた。

 

 

「あっ、ぎ…銀ちゃ」

 

 

「にげ、ろ」

 

 

何から逃げろというんだ。

アンタから逃げろというのか。

 

 

「いやヨ!私たちは三人で万事屋ネ!銀ちゃんが苦しんでるのに、なんで私たちが逃げなくちゃいけないアルカ!」

 

 

「逃げろ!…はやく、はやく…」

 

 

また、あなたを置いていかなくてはならないのか。

あなたはまた、突き放そうとするのか。

 

 

「何故、何故止まる!貴様は闇に堕ちたのではないのかァァァァ!!」

 

 

「どーいうことですか!?銀さんは

そんなに凄い人なんですか!?」

 

 

新八が叫んだ。

 

 

「知らぬのか?こやつは…」「アアアアアアアアアアア!!」

 

 

銀時が叫び、ブレインの声を遮る。

 

 

「言わせるか!何があっても知られるか!」

 

 

鬼の形相でブレインを睨む銀時。

そこには、子供たちに過去を知られたくないという想いがあった。

 

 

そして、血だらけの手から木刀を抜き差し、ブレインに斬りかかった。

 

 

「うっ、うぅ。あっ、うわァァァァァァ!!」

 

 

新八は未だに動揺している神楽を手をとり、走っていく。

 

 

また、なにもできない。

いつも。

 

 

この人は、いつもそうだから。

 

 

なんで、護らせてくれないんだ。

 

 

 

「さて、と。俺は俺の好きにさせてもらうぜ」

 

 

これが、俺の魔法。

けして、触れてはならぬ

 

 

  古き鬼

 

 

「なっ……!」

 

 

「消え失せろ」

 

 

「うあ"あ"ああァァッ!」

 

 

ブレインは断末魔をあげるが。

 

 

目を開いたとき、そこに白き鬼の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その魔法は

 

 

俺が不幸にも手にいれてしまった魔法だった。

 

 

 

 

 

 




次は、銀さんの回想です。

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