妖精と白き夜叉   作:さとモン

1 / 25
プロローグ

とある酒場

 

 

 

「知ってるか?」

 

 

「なにをだよ」

 

 

「最近、闇ギルドが潰れていってるらしい。」

 

 

「闇ギルドが?誰だ、そんな馬鹿なことをしてる奴は」

 

 

「俺知ってるぜ。なんでもたった3人のギルドらしい」

 

 

「3人?馬鹿なことを言うなよ。たった3人で出来るわけないだろ。」

 

 

「いや、本当らしい。俺の知り合いが見たって言ってたんだよ。」

 

 

「正規ギルドじゃあねぇな」

 

 

「あぁ、独立ギルドらしい。」

 

 

「しかも、3人のうち二人がまだ餓鬼らしいぜ」

 

 

「ますます現実味がねぇじゃねぇか」

 

 

ガタッ

 

 

「隣、いいか?」

 

 

「おっ、にぃちゃん。いいぜ」

 

 

フードを被った男が、話していた男達の隣に座る。

 

 

「ところでにぃちゃん」

 

 

「なんだ?」

 

 

「滅法強い3人だけのギルドって知ってるか?」

 

 

「いや、知らねぇな」

 

 

「なら聞いてけよ!」

 

 

「ここからがすげぇのよ」

 

 

「マスターな。いるだろ?」

 

 

「当たり前だろ」

 

 

「あれがな、白髪でな」

 

 

「じいさんか?」

 

 

「いや、青年らしくてな」

 

 

「いや、銀髪だから」

 

 

「銀髪?そうか銀髪か」

 

 

「それで?」

 

 

「で、ソイツが鬼みてぇに強ぇわけよ」

 

 

「鬼じゃねぇって」

 

 

「鬼みてぇってだけさ。本当に鬼ならやべぇもんよ」

 

 

「でな、ソイツのことを誰が鬼といい始めてな?

異名をつけたんだ」

 

 

「白い鬼だから、白鬼とかか?」

 

 

「いや、鬼じゃ済まねぇのよ」

 

 

「【白夜叉】」

 

 

フードを被った男が言う。

 

 

「あり?にぃちゃん知ってたのかぃ」

 

 

「あぁ、それだけはな」

 

 

「なんだよー、それ」

 

 

「で、その白夜叉がなんなんだよ」

 

 

「そうそう、その白夜叉がな。」

 

 

「魔法を使わずに魔導師を倒すらしい」

 

 

「なんだよにぃちゃん。白夜叉のファンかぃ?」

 

 

「いや、白夜叉は敵さ」

 

 

「アンタ、まさか……闇ギルドの?」

 

 

「んなわけねぇよ。」

 

 

 

ドガァァン!

 

 

何かが壊れる音がする。

 

 

「なっ、なんだぁ!?」

 

 

「この店にある酒、全部よこせ」

 

 

ヤのつく職業のような男達がゾロゾロと入ってきた

 

 

「困ります!」

 

 

「ぁあ?アニキの言うことが聞けねぇのか!」

 

 

客はみんな怯えて店のはしによる。

 

 

だが、一人だけそれに屈しない者がいた。

 

 

「なんだよにぃちゃん。そこを退いてくれねぇか?

手荒な真似はしたくねぇんだよ」

 

 

「……」

 

 

「おーいにぃちゃん?」

 

 

フードを被った男は酒をひたすら飲んでいる

 

 

男に気づく様子はない

 

 

「聞いてんのか!!」

 

 

男はイラつき、酒をぶん投げた。

 

 

「………んだよ」

 

 

「聞こえねぇよ」

 

 

「ギャーギャー、ギャーギャーやかましいんだよ。発情期かテメェら」

 

 

フードを被った男は男達を睨んだ。

 

 

「なんだと?」

 

 

「さっきからうるせぇんだよ。静かに酒も飲めねぇのか?」

 

 

「てめぇはフードなんか被ってて視界の邪魔なんだよ」

 

 

「あぁ?」

 

 

子分の男(それなりに地位は高いのだろう)はフードを被った男の襟を掴む。

 

 

「てめぇらこそ酒場で暴れやがって、目障りなんだよ。」

 

 

「やんのかコラァ!」

 

 

「言ったな?」

 

 

ニヤッと笑った。

 

 

子分の男達は、目を疑った。

 

 

それなりにまぁ強い男が宙を舞っていた。

 

 

何が起きたのかとフードの男を見た。

 

 

だが、さっきまでいたはずの場所にいない。

 

気づくと、目の前にいた。

 

 

「なっ…」

 

 

男の視界は真っ黒になった。

 

 

「サートぅぅぅう!ヤーマァァァアア!」

 

 

「佐藤と山田じゃねぇか!」

 

 

そうしているうちにも、子分たちは倒れていく。

 

 

とうとう、アニキと呼ばれるリーダーだけになった。

 

 

「なっ、ターカ、スズキ、イート、ヤマモ!

貴様ぁぁぁあ!」

 

 

「だから田中、鈴木、伊藤、山本じゃねぇか!というか、てめぇらがやってきたんだろ!」

 

 

襲ってくるリーダーに、フードの男はサラッと避けた。

 

 

「ノットマジック!」

 

 

魔法を使っていると思った男は、魔法を使えなくする魔法を使う。

 

 

だが

 

 

「意味ねぇよぉぉお!」

 

 

フードの男には効いていないらしく、そのまま走ってくる。

 

 

いつのまにか持っていた木刀が、腹に当たっていた。

 

 

「ぐふぉおおぉお!!?」

 

 

男はぶっ飛び、地に伏す

 

 

パサッ……

 

 

「なっ、お前は……まさか!?」

 

 

「そーです。私が万事屋です。」

 

 

「誰だよ!?」

 

 

フードの男の髪は銀色に輝き、瞳は紅色に光っていた。

 

 

「じゃなくて、白夜叉だろ!?」

 

 

「いやいや、こんな眼が死んでるやつが白夜叉な分けねぇだろ?」

 

 

「確かに!」

 

確かに、男の瞳は紅色に光ってはいるが、死んだ魚の目をしている。

 

 

「じゃあお前何者だよ!」

 

 

木刀を肩に当て、男は言う。

 

 

「さっき言っただろーが。【万事屋】坂田銀時。侍だ。」

 

 

「サムライ!?サムライって、東の国の奴じゃねぇか!」

 

 

「いや、でも滅びたんじゃ……?」

 

 

「銀さん」

 

 

「おー、眼鏡」

 

 

銀時が振り返ると、眼鏡をかけた少年がいた。

 

 

「眼鏡じゃありませんよ。早く、帰りますよ」

 

 

「おー」

 

 

二人は酒場から出ようとしていた。

 

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

 

「なんだよ」

 

 

「助けてくれて、ありがとな。にいちゃん。」

 

 

隣に座っていた男だった。

 

 

「あぁ!」

 

 

銀時は確かに笑った。

 

 

「銀さん」

 

 

「おーおー、わかった」

 

 

銀時は、その場を去った。

 

 

 

「坂田銀時……」

 

 

また一人、夜叉に魅せられた者が増えた。

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。