魔法少女リリカルなのは~Nameless Ghost~   作:柳沢紀雪

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第十四話 Dis-

 

 アリシア、リーゼ姉妹と別れ次の仕事を処理するため本局の廊下を歩くクロノとエイミィに、リーゼ姉妹から『アリシアが無事に無限書庫の業務に就いた』と知らされ、二人はひとまずホッと一息吐いた。

 

「ちょっと心配だった?」

 

 本局の空気は地球とは違う。風の流れは空調の流れ。完璧に人の手によって制御され、あらゆる不純物を取り除いて流される空虚な風だとクロノは感じた。

 

「アリシアの優秀さは僕がよく知っているからね。母さんほどは心配していなかったさ」

 

 クロノは今まで気にならなかったその感触に少し眉をひそめながら、そのまま表情をぶっきらぼうな様子にシフトしてエイミィに答えた。

 

「あー、結構心配性だもんね。特にあの二人のことに関しては」

 

 エイミィには苦笑いをしながら出かけしなにリンディが浮かべていた表情を思い出していた。

 クロノのことに関しては割と放任主義的なリンディではあるが、それが事フェイトやアリシアのことになるとそれはまるで過保護な母親のような様子に一変してしまうのだ。

 

 それはおそらく、手のかからない(ようにしてしまった)クロノへの反動なのだろうとエイミィは推測しているが、やはり母親を知らない二人、特にフェイトに対してせめて親らしい事をしてあげたいという真摯な願いなのだろう。

 

(つい甘やかしたくなっちゃうのは分かるんだけどねぇ)

 

 とエイミィは思うが、彼女としてはその矛先がアリシアにも向かうことがどうにも理解が出来ない。

 アリシアはエイミィにとって守るべき対象と言うよりは、越えるべき壁としか感じられないのが現状だ。特に、アースラに逗留していた半年を含め、その後に受けたアリシアからの仕打ちを思えばそれも致し方がない。

 それでも、アリシアがいると楽しいと思えるのは彼女にしても不思議に思うところでもある。

 

「フェイトはともかく、アリシアに関しては一切心配する必要はないとは僕も言っているけどね。そのあたりは感情的な所なんだろう。実のところ、あまり理解は出来ないが」

 

「あっは、それ、同感。クロノ君ももうすぐお兄ちゃんになるんだから、やっぱり義妹の事は心配になっちゃう?」

 

「当たり前だ」

 

 エイミィはそう断言するクロノに「おっと」と二の足を踏むことになる。彼女の想定では、てっきり照れ屋よろしく「そんなことはない!」とムキになって反論するはずだった。

 しかし、それも仕方のないことなのかなとエイミィも思い直すことが出来た。

 

「うん、そうだね。クロノ君がお兄ちゃんだと、フェイトちゃんも安心だ」

 

 エイミィがあえてそこにアリシアの名前を出さないのは、どうしてもアリシアがクロノの義妹になる状況を思い浮かべることが出来ないのだ。

 

「アリシアちゃんは、どっちかというとお姉さんって感じだよねぇ。いつもはフワフワしてるけど、ここぞって時は有無を言わせない感じ? 不思議だよねぇ、あんなに小さな子なのに」

 

 フワフワしているというエイミィの例えをクロノは理解できないが、後半のことに関しては「当たり前だ」と声に出さす呟いた。

 エイミィはアリシアの事情を知らない。フェイトも、なのはもそうだ。

 アリシアが年相応ではない知識と思考能力を持っていることは、プレシアによって知識が与えられていたという説明にもなっていない説明でごまかしているが、それが今後の彼女に関する人間関係にどう影響してくるのかは予測が立たない。

 

 果たして、彼女が本来的に彼女自身ではないと言うことが明るみに出ればいったいどうなるか。

 

(アリシアなら、「そのときはそのときで、なるようになるだろう」と答えるだろうな)

 

 そう、クロノは口に笑みを宿した。

 

「さってと、午後からはなのはちゃん達も来るわけだし、お仕事頑張ろうか」

 

「仕事といっても、機能の作戦失敗の報告書と始末書に追われるだけのことだがな。ああ、司令部への弁明も入っていたか。全く、頭が痛くなるな」

 

 クロノはこの先に待っている煩わしい業務を思い額に手を当てた。

 

「あれは、ちょっときついよね。弁明の余地は無しか……」

 

 あれだけの作戦を構築し、人員を投入し、管理外世界での作戦行動というリスクまで背負ったのだ。作戦の目的である敵性勢力の捕縛、闇の書の拿捕、最低でも敵性勢力の逃避経路の割り出しと題打たれて行われたあの作戦。

 その結果が、そのすべてが果たされず終了では文字通り話しにならないのだ。例え、敵性勢力の戦力が未だ把握し切れていないことであっても、予期せぬ介入者の存在があったとしてもだ。

 

 グレアムの後ろ盾が無ければ、今頃自分たちはこの事件から下ろされていただろうとクロノ達は認識している。

 

(だけど、僕たちは無事で生還できた。かなわない相手じゃない)

 

 クロノはそう心に言い聞かせ、本局施設の一角にある執務室の扉をくぐった。

 

 なのは達が本局を訪れるまでおよそ6時間。そのときにはデバイスの調整を兼ねた戦闘訓練という密度の濃いスケジュールが待っているのだ。

 

「それまでにへばってしまわないように。エイミィにもデータ取りを頼むつもりだからね」

 

 クロノは一言エイミィにそう伝え、仕事に取りかかった。

 

*****

 

 夢を見ている。そう錯覚してしまいそうになる。

 いや、人の見る夢が記憶の整理を役割としているのなら、あながち今自分が見ているものも夢の一環に違いないとアリシアはふと思った。

 

 そして、その感情も流れてくる情報の奔流に流されて消えてしまった。

 

 まるで、今の自分はただの情報機器の端末のようだとアリシアは考える。

 広大な空間にひしめく膨大な情報。ただ無造作に垂れ流されるだけの情報の波を摘みとり、そしてその流れを整えるのに必要なもの。

 人間一人の機能ではとても足りず、それを何とか補うためにアリシアは自分自身の自意識の枠を広げ、自我を保てるギリギリまで発散させることで対応した。そして、それは同時に自信にはそぐわない両の魔力を制御する助けにもなっている。

 

 今のアリシアには、自分自身を定義づける身体というものが認識できず、自分の感覚や感情、理性といったものでさえ単なる情報の海の淀みとしか感じられない。

 

 こんな事が出来るのは、この身体と自分という意識が一度は死んでしまったモノだからなのだろうかとアリシアは考察をする。

 今ひとたび、自分が自分であると定義しているこの自意識を手放してしまえば、自分もこの海の中のただ一つの情報へと還元されてしまうかもしれない。

 ひょっとすれば、それこそが魂という情報体であり、それこそが死後の世界というものなのかもしれないとアリシアは考察するが、それを試す欲求は浮かんでこない。

 

 カートリッジより送られてくる魔力の固まりが、自身の構築する術式に供給された。アリシアの視界は外界を投影していないため、自分の周囲に広がる術式の構成式がどのような変化を遂げたのかは視認できない。しかし、その魔力は確実に自己の認識できる術式の強度を上げ、一瞬だけではあるが流れ込む情報の勢いが増したように感じられた。

 

《警告。カートリッジマガジンが空となりました》

 

 空間に浮かび上がるその文字を認識し、アリシアは「またか」と呟いた。

 

 朝から始めてこれで都合4マガジン目。およそ2時間で9発のカートリッジを消費し尽くすため、アリシアは空の弾倉の交換をするため二時間おきに覚醒を余儀なくされるのだ。

 

(今何時だろう)

 

 とアリシアは術式に対して終了のシークェンスを流し込みながらそんなことを考える。先ほど弾倉を交換するために目覚めた時にはミッド標準時間で14時を示していたはずだった。

 あの時から正確に2時間経っているのなら、現在は16時そこそこのはず。

 この空間にいるとそう言った感覚が実に曖昧になる。

 認識できない自分の身体がどの程度の疲労を感じているのかさえも分からない。

 

(起きたら医務室、というのは勘弁だね)

 

 アリシアは「ふう」とため息を吐きながら、自身の意識の広がりをゆっくりと収束させ始める。

 この作業で何が最も疲れるかと聞かれれば、アリシアは間違いなくこの覚醒処理だと答えるだろう。意識を広げること。それを持続させることにはそれほど労力を必要としない。自意識とは常に拡大していくものであり、それを自力で広げるためには自意識の枠を取り外してやれば良いだけだ。後は、自己の認識を消したくないという自己防衛本能がそれの過多な拡散を防いでくれる。

 

 徐々に収束し、自分の形を取り戻していく意識を感じアリシアはようやく戻ってきた人間らしい感覚に安堵の息を吐き出し、未だ鈍い身体感覚を接続し身体をモゾモゾと動かした。

 

 意識によらず自律する領域にはこの発散は適応されていない。そのため、意識を失った身体は無意識の自律作用により身体機能を保持し続ける。何度か眠り目覚めを繰り返すたびにプレシードにモニターさせていた自身の身体的コンディションは常にグリーンを示していたため、アリシアはそれに関しては全く心配していない。

 

 ただし、この状態の間に大規模な魔力攻撃を受けた場合、情報収集シークェンスの破壊と共に自分の意識もそれと共に霧散してしまう可能性が高いことも示唆されているためあまり笑えない話しではあるのだ。

 

(ともかく、この状態をあの子達には見せられないか)

 

 死んだように眠る自分を見て、過保護なフェイトなら卒倒する程驚くだろうし、冷静なユーノも下手をすれば取り乱してこの術式を解除してしまうかもしれない。

 

 正直それは仕事の邪魔になる。ただでさえこの無限書庫は長年放置されていたため、そのセキュリティーも酷く甘いのだ。今のうちに、こちらが認めた人物以外の立ち入りを禁止するセキュリティーを構築するべきだなとアリシアは考えた。

 

「ふう……」

 

 ようやく身体に馴染んだ感覚にアリシアは一息吐き目を開いた。

 

「やっぱり、ここは暗いな」

 

 書物を保管するための適切な環境を作り出すためか、重力のない書庫には赤系統の暗い光の照明しか無く、湿度も極小、温度も体感では随分低く抑えられている。

 

 本来なら、気圧も下げる必要があるのだが、これだけ広大な空間の空調を制御する機構は流石に設けられないらしく、特に重要な書物以外は半ば野ざらしにされているという状態だった。

 

 バリアジャケットを着ていれば、寒さに震えることはない。アリシアは再度マリエルに感謝の念を送り、プレシードより空になった弾倉を引き抜き、それと入れ替えに腰のパウチから予備の弾倉を取り出した。

 

《ハイネス、通信が入りました》

 

 弾倉のヘッドを膝で軽く叩きながらアリシアはプレシードの報告に耳を寄せた。

 

「クロノ?」

 

《いいえ、お嬢様からです》

 

 お嬢様、といえばアリシアは頭に浮かぶ人物を何人か想像するが、プレシードの言うお嬢様といえば一人しかいないかと思い立ち、プレシードの通信回線を開いた。

 

『あ、お姉ちゃん? やっと繋がった』

 

 空間上にモニターとして投影された【Sound Only】という表示を少し怪訝に思いながら、アリシアはスピーカーから聞こえてくるのが妹のフェイトであると確認する。

 

「ゴメン、少し立て込んでて繋がらなかったみたいだ。ところで、フェイト。顔が見えないんだけど、何かあった?」

 

 デバイス間同士の通信なら地球にいてもモニター回線で通信が可能のはずだ。となれば、今フェイトは見られては問題のある場所から通信をしているということなのだろうかとアリシアは思うが、自分でそんなところからは掛けないだろうと思い少し疑問に思った。

 

『顔? あ、そうか。ゴメンね、説明不足だった。今、携帯電話から掛けてるんだ。本局で使えるかどうか試したくて』

 

「けいたいでんわ? ああ、地球の通信端末だね」

 

 そう言えば、友人達に進められて購入したと先日嬉しそうに話していたなとアリシアは思い出した。さしずめ、ようやく携帯電話の改造が終わったついでに通話テストをしたかったのだろう。

 なのはやユーノの持つ電話もそうなのだが、彼女達の携帯電話は少し特殊な改良がしてあり、管理局の通信網にアクセスして異世界間通信が出来る仕様となっているのだ。

 通信費やそのた云々は国際電話と認識されるため、少し割高になってしまうのがネックだと彼女は言っていたが、それも最近はやりの”掛け放題”の定額プランを採用したため問題は解消しているらしい。

 

 まあ、それはあくまで地球での問題であって、異世界間通信を構築する費用であるとかそのための通信費は実際の所ハラオウン家が負担している状態であるのはなのは達には秘密となっている。

 実質的に個人レベルで払える値段ではないということぐらいはアリシアも推測することが出来るが、まったく、ハラオウン家の資産とはいったいどうなっているのだとたまに疑問に思ってしまう。

 

『お姉ちゃんは、今忙しい?』

 

 忙しいか、と聞かれれば忙しいと答えるしかないだろう。なにぶん、アリシアが今受け持っている仕事は非常に緊急性の高いモノであり、本来ならチームを組んで数ヶ月単位で取りかかるべき事をたった一人で受け持っているのだから、時間などいくらあっても足りないのが現状だ。

 

 だが、休息は必要にかとアリシア思い、ちょうど良いとフェイトに答える。

 

「少し休憩しようと思ってた所。一緒にお茶でもしようか? なのはとユーノは?」

 

 確か今日は、三人でデバイスの調整ついでに訓練の予定が入っていたはずだ。デバイスの調整中はユーノは暇だろうが、何かと暇つぶしに彼なら問題はないだろう。

 

『うん、二人とも一緒。迎えに行った方が良い?』

 

「あー、こっちから行くよ。本局の食堂? ラウンジの方が眺めは良いけど」

 

 詳しいことは分からないが、なのはとユーノには無限書庫に立ち入る許可は出されていないだろうとアリシアは思った。フェイト一人だけならもしかしたら大丈夫かもしれないが、無限書庫までの道は何かと入り組んでいるので、フェイだけを来させるのはそこはかとない不安がある。

 問題は、許可されていない人間でも入るだけなら出来ることなのだが。

 

『そうだね。ユーノもそうしようって言ってるし。じゃあ、先に行くね』

 

「ん、後で」

 

 その言葉を最後に、フェイトは携帯電話の通信を切り、アリシアの眼前のモニターも消滅した。

 

「プレシード。今までのデータをサーバーに移して休憩にしよう」

 

《了解》

 

 休憩から戻ったら、一度蒐集した情報のまとめをしないといけないなとアリシアは後のスケジュールを何となく決め、プレシードの本体に残っていたカートリッジからの魔力を拡散させた。

 予備の弾倉はそのまま本体に装填せず、そのまま腰のあいたパウチに差し込んでおくことにした。

 まだ、管理局ではカートリッジの安全規則は定められていない。しかし、戦闘時以外に実装されたカートリッジを装填したまま持ち歩くのは何かと体裁が悪かろうとアリシアは思い、プレシードの排莢スライドもオープンにしておくことにした。

 

 そして、アリシアは腰のポーチに入れてあったフックショットを取り出し、それを最も近い出口付近に狙いを付け太さ三ミリ程度のワイアーが取り付けられたフックを射出した。

 フックとってもその先端に取り付けられているのは0.5テスラほどの強力な電磁石で出口付近に設えられた鉄を基調とした軟磁性体によって捕らえられるようになっている。

 また、射出速度もゆっくりに設定できるため万が一それが書架に衝突しても書物を傷めることはほとんど無く、出入り口付近の書架にはそれほど重要な書物も置かれていないため特に気を張る必要もない。

 先端の磁石と接合されているワイヤもカーボン・ナノチューブ拵えであるため、強度も完璧だ。この細いワイヤ数百本あればL級時空航行艦一隻が係留できるというのだからたいしたものだろう。

 魔法技術全盛のこのミッドチルダであっても、こういったアナログな装置は単純で信頼性があるのでなかなか重宝されており、研究も現在でも盛んに行われているのだ。

 

 十メートルも離れていない出入り口のキャッチャーに上手くフックが固定され、アリシアは念のため何回か引っ張ってそれを確認すると、手元の装置のボタンを押して最低速でワイアーを巻き上げた。

 

 歩く程度の速さでふわふわと移動し、アリシアは無重力空間と通常重力空間の境目である書庫の隔壁にたどり着き何とか浮き上がる身体を支え、地面に脚を付いた。

 

「プレシード、転送装置にコネクト。戻ろう」

 

《了解。接続開始》

 

 無限書庫は本局内の施設ではあるが、それには少しだけ語弊がある。無限書庫はその空間の特殊性から直接本局と空間を繋いではいない。それは、同一平面上に異なる重力場を形成することを禁止した物理法則のせいだろうとアリシアは考察するが、それも確かな情報ではない。

 ともかく、無限書庫と管理局本局は転送という手段を用いてでしか行き来が出来ないのだ。その転送に必要なエネルギーは管理局本局の動力と無限書庫が保有する独自の動力でまかなわれているため、転移者が魔力を消費する必要はない。

 アリシアは、次第に活性化する転送魔法陣に慌ててサングラスをかけ目を閉じた。

 流石に二の舞はゴメンだ。次やったら確実に失明すると医者の太鼓判を押されてしまえば従うしかない。

 

「……っ!」

 

 サングラスをかけ、きつく目を押し閉じても僅かに光が差し込むほど転送の光は強い。いっそのこと、30°ごとに六層になった偏光板で作られたグラスでも購入しようかとアリシアは考える。光を一切遮断してしまえば、こうして光に恐怖する必要もない。

 

 しかし、眼球に痛みが来ないのはまだマシであることは確かだ。

 アリシアは消える光を前にため息を吐き、突如襲いかかった強い加重に思わずプレシードを取り落とし、そのまま姿勢を保つことも出来ず頭から地面に倒れ込んでしまった。

 

「痛っっ!」

 

 思わず出してしまった手の平が床にあたり、じんわりとした熱い感触が痛みと共に腕を昇ってくる。そして、その腕もその勢いを殺しきれず、アリシアはそのままばったりと床に突っ伏してしまう。

 

「あーーー、重力って重い」

 

 何となく矛盾しているような言葉を吐いているなとアリシアは自覚しながらも、床に倒れ込んだままサングラスを外し、落としてしまったプレシードを何とかたぐり寄せ、「よいこらしょ」とかけ声を上げながらプレシードを杖について何とか立ち上がった。

 

 立ち上がってぱんぱんと服に付いた埃を払いながら、アリシアはもう一度ため息を吐いた。

 

「次は、座るか寝転がってから転送しよう……」

 

 まだ体重が軽いおかげで骨にも関節にも異常はなかったが、もしもこれが背の高い人や肥満体質の人だったら、下手をすれば脚の骨を折るかもしれないとアリシアはブルッと背筋を震わせた。

 

(ついでに言うと、お腹すいた)

 

 無重力空間では色々と身体的な代謝機能に異常が走る。やはり、人は重力がないと上手く生きていけないようだ。無限書庫ではカスの飛ぶものは口に出来ないし、水分も取りにくい。さらに言えば、ものを食べても上手く食堂を通過してくれないし、三半規管にも異常が走って何もしなくても車酔いのような症状が訪れる。

 ついでに言えば、食欲も減衰するし喉の渇きも感じにくくなるのだ。

 

 あんな空間に一週間もいたらそれだけで身体を壊しそうだとアリシアは思い、震える膝に鞭を打ちながら本局の廊下を歩き始めた。

 

 途中でプレシードを杖代わりにしながらアリシアは何とか本局の展望台付近のラウンジに顔を出した。

 

 来る途中、何かと難儀そうに杖を突くアリシアを怪訝な顔で見る局員も何人かいてアリシアは少し居心地の悪さを感じていた。ついでに言えば、20メートル歩くたびに駆け寄ってくる親切な局員もいて、託児所に連れて行かれないよう対処するのにも骨が折れた。

 迷子のアナウンスが本局中に流れるなどしゃれにもならない。今度所属を示すネームタグを作ってもらおうとアリシアは堅く心に誓い、既に到着して自分を待っていた馴染みの三人の姿を探した。

 

 今の時間帯はこれから残業を迎える局員が束の間の休憩を取っている様子だ。就業中にはまばらなラウンジも、今の時間帯が昼休みと同じぐらいに忙しいらしく、厨房や給仕をするウェイター、ウェイトレスが忙しそうにフロアを駆け回っている。

 少し割高だが軽食もここで出されるため、夕食代わりに食事を取っているグループも多数確認できる。

 

(少しだけ何か食べようかな)

 

 アリシアはそう思いながら、ラウンジの奥喧噪からは少しだけ離れた場所に目的の三人を見つけた。三人はそれぞれ好みの飲み物を口にしながら仲良く会話を楽しんでいる様子だった。

 

 アリシアは身長よりも長いプレシードを引きずるようにして奥の席へと向かっていく。途中、すれ違った人からは『こんなところでデバイスを出しっぱなしにするとは』といった視線を貰うが、そのあたりは身体の都合と言うことで許して欲しいとアリシアは思う。

 どうも、プレシードは正規起動させる際もカートリッジを消費しているらしく、一度待機状態に戻してしまえばセットアップにも余計な労力を使うことになるのだ。

 

「お待たせ」

 

 ずりずりという斧杖の石突きを引きずる音と共に顔を見せたアリシアに、三人は少し驚き一瞬会話が止まってしまった。

 しかし、お互いに視線を交差させて、アリシアのことだ何か理由があるのだろうとお互いに納得した上で三人はアリシアを歓迎した。

 

「お疲れ……みたいだね、アリシアちゃん」

 

 お疲れ様と通例通りの挨拶をしようとしたのだろうが、なのははアリシアの心底疲れた様子を見て苦笑いと共にアリシアを労った。

 

「そんなに疲れた顔してる?」

 

「してるよ、アリシア。無限書庫ってそんなに大変なんだ」

 

 そう答えるユーノに、「快適だけど疲れるのは確かだね」という返答に困るような答えを返しつつアリシアはプレシードを床に置いて席に着き、近くを通りかかった給仕に「アールグレイをホットで」と頼んだ。

 ふと、ここで『りんでぃ・すぺしゃる』を頼んだら給仕はどのような対応をするのだろうかという悪戯心が湧いたが、本当にそれが運ばれてきた時のことを考えるとぞっとしないので挑戦するのはよっぽど頭が狂った時だけにしようと心に誓った。

 

(いや、それ以前にこの子達が止めてくれるか)

 

 どういった経緯かは恐ろしくて聞けないが、リンディの”アレ”を経験済みの三人なら顔を真っ青にして

 

「お姉ちゃん、お仕事ご苦労様」

 

 と、アリシアの隣に座るフェイトはそう言って彼女の側に砂糖の容器を差し出した。

 

「うん、ありがとうフェイト」

 

 アリシアは早速砂糖をスプーンですくい、この混雑の割には早く運ばれてきたアールグレイに適量振りかけるとごくりと一口飲んだ。

 

 身体的な疲労はそれほどもでもないが、やはり脳が随分と酷使されていたらしく、砂糖の甘みがことのほか美味に感じられた。

 アリシアは時折周囲から流れ込んでくる「何で、こんな所に子供が?」「親はどうしたのかしら」という何となく無粋に感じられる視線を無視してひとときのティータイムを堪能した。

 

「おいしい? お姉ちゃん」

 

 アリシアがあまりにもくつろいだ様子で紅茶をすするので、フェイトはよっぽどその味が満足のいくものだと思った。

 

「いや、実に適当な味だね。出来合のものか、インスタントのどちらかだろうね」

 

「そりゃあ仕方がないよ。アリシアの舌を満足させられるものなんて、それなりのティーハウスでもないと」

 

 こんな大衆向けのラウンジで何を言っているのかとユーノは苦笑してコーヒーを口にする。

 

「こういう所だからこそ最高のものを出さないと思うんだけどね。局員の憩いをその程度に見られているなんて少し残念だな」

 

 安い葉っぱでもそれなりに気を遣えば美味に入れられるのだ。それをしないのは、ラウンジのマスターの怠慢かそれが出来る人員を投入しなかった人事部の無精だろうとアリシアは断じる。

 

「こういう細かいところを充実させれば、自動的に局員のモチベーションが高まって、結果的に仕事の効率が上がって事件の解決率にも貢献すると思うんだけどね。時航艦の食事が陸とか空に比べると比較的味が良いのも閉鎖された空間でのストレス解消の意味合いが強いし。食が人に及ぼす影響って言うのはかなり大きいと思うよ?」

 

 アリシアは紅茶のマグカップでユーノを指しながら風が吹けば桶屋が儲かるような理論を展開した。

 

 アリシアの横ではフェイトがしきりに頷いている。それが果たして理解して納得していることなのか。それとも「アリシアの言うことには間違いはない」という盲目的な信頼のなせるものなのか。

 ユーノはおそらく後者だろうと判断しつつアリシアに反論を返す。

 

「じゃあ、例えばアリシアの言うと入りになったとして、本局のラウンジや食堂の質が向上したとするよ? それにかかるコストがどれくらいになるのかな? たぶん、多くの局員の人は――僕が判断するのは失礼かもしれないけど――それに予算を割くぐらいならもっと他に掛けるものがあるって思うだろうね。それに、そうなったとしたら食事の値段がどうしても高くなっちゃう。それは、局員の人にとってはかえって負担にならないかな?」

 

「その負担に勝るだけの改善が出来ればなんの問題もないだろう」

 

「だったら、初めからそんなコトしなくてもプラマイ・ゼロって事じゃないか」

 

「味が良くなった上で±0なら言うことなしじゃないか!」

 

「それは! 食事だけのことだろう!? その予算を他に回せば良いんじゃないかって言ってるんだよ! 僕は」

 

 決闘で打ち合う剣のごとくマグカップを当て合う二人に、それまで防戦としていたなのはとフェイトは慌てて二人を止めにかかる。

 

「ユーノ君、アリシアちゃん! こんなところで喧嘩しないで。特にアリシアちゃん!」

 

 普段は優しくて、誰とも喧嘩などしそうにもないユーノがどうしてことアリシアに関してはこうけんか腰になってしまうのだろうか。なのはは、どこか釈然としない感情が胸にざわめかせるのを感じながら、レイジングハートに助言を求めようとする。

 しかし、肝心のレイジングハートは訓練後の調整のためメンテナンス・ルームに拉致されているためそれも不可能だった。

 肝心なときに役に立たないとなのはは思いそうになるが、この場にレイジングハートがあれば、火に油を注ぐ事になっていたかもしれないと思いつき、少しだけ背筋を震わせた。

 

 レイジングハートがいなくて良かった。と、主にさえこのような感情を持たれるデバイスとは実にあっぱれである。

 

「お姉ちゃん、ちょっと冷静になって。ユーノもあんまりお姉ちゃんを困らせちゃダメだよ」

 

 この半年で重度のシスコンになってしまった親友を眺め、ユーノはため息を吐きながら、今にも接吻をかましそうになるほど近づけていた上体を引いた。

 

「この続きは今度だね。アリシア」

 

「受けて立つよ、ユーノ」

 

 二人はお互い威嚇するような笑みでにらみ合い、この場を終わらせた。

 

(最も、半日もすれば綺麗さっぱり忘れるだろうけどね)

 

 と二人とも同時にそう考えていたのは、今更確認し合うまでもないことだ。

 実際、ユーノとアリシアにとってはこういった議論のぶつけ合いはそれほど珍しいことではなく、これは一種の暇つぶしであり、趣味の一環のようなものになっている。これらはベルディナの生前にはよく行われていたものであり、二人をよく知るものにとっては放置しておいても問題のないことと認識されている。

 どれだけ後に引いても最長で半日。それだけあれば、二人ともケロッとしていつもの調子に戻ってしまうのだ。

 

「そ、そう言えば、今日の訓練は凄かったよね!」

 

 どことなく悪くなってしまった空気を払拭するようにフェイトはにこやかに、少し頬に汗を浮かべながら話題を転換しようとする。

 

「う、うん! クロノ君があんなに強かったなんて知らなかった」

 

 なのははフェイトの配慮を正確に理解し、彼女の話題に乗った。

 

「確かにクロノは執務官だから、並大抵じゃないだろうね。私は直接は知らないけど、そんなに強かった?」

 

 口では自分とエイミィに絶対勝てないクロノを思いやりながらアリシアはそう口を挟んだ。

 

「強いね。クロノは。僕たち三人係でもちょっとかなわなかった。まあ、時間切れで引き分けだったけど……」

 

 無制限で戦っていたらどうなっていたか分からない、とユーノは言外にそう示唆するように言葉を切った。

 

「ふーん。あのクロノと引き分けたんだ。結構やるね、三人とも」

 

 アリシアとしては、ドは付かないにせよ素人であるはずの三人がいわゆるプロであるクロノと引き分けまで持って行けたと言うことの方が純粋な驚きと感じられた。

 クロノが執務官試験を合格したのが正確には覚えていないが、おそらくなのは達と同じぐらいの年頃だろう。

 その頃から常時鍛錬と実践を繰り返してきた彼に、まだその僅かにも満たない時間しか魔法に触れていない彼らが至ることが出来たのだ。

 

(凄まじい成長速度だな。まさに、戦うために生まれてきたと言うべきか)

 

 アリシアはPT事件の事件資料を作成する際に目にした戦闘記録を思い出し、少し身震いを感じた。

 確かに、稚拙で荒削り。膨大な魔力にものを言わせるしかできないような効率の悪い戦術。決闘まがいの単独戦闘しか行えないような経験不足。それでも、まだ二桁の年齢にも至っていない少女達が互いに互いを削り合い、我を貫き通すための決闘を演じたのだ。

 

「ん? なぁに? アリシアちゃん」

 

 アリシアはなのはに少しだけ鋭い視線を向けた。

 その視線を感じたのか、和気藹々と先ほどの訓練に関して意見を交わしていたのをやめ、なのははアリシアに向き直った。

 

「なんでもないよ。それにしても、なのははよっぽど戦うことが好きなんだね。私にもそれだけの力があったらいいのになぁ」

 

 にこやかに、それでいて鋭く。そのあたりのさじ加減に細心の注意を払いながらアリシアはスルッとその言葉を口よりはじき出した。

 

「えっ?」

 

 突然投げかけられた言葉になのはは驚愕と困惑の声を漏らした。

 

「なのはやフェイト、ユーノみたいな力が私にもあったら、私も戦えるのに。残念だよ」

 

 アリシアのそれは本音だ。そして、あまりにも自然に紡ぎ出されたその言葉にフェイトとユーノは少し苦笑を浮かべる。

 

「アリシアは無限書庫で調べ物をしてくれてるじゃないか。むしろ、その方が有り難いってクロノも言っていたよ」

 

「そうだよ、お姉ちゃん。私がお姉ちゃんの代わりに戦うから、安心してね?」

 

「頼りがいのある妹達だね」

 

 アリシアは肩をすくめながら、それでも自分は戦いたいという雰囲気を僅かに示しながら紅茶を傾けた。

 

「あ、あの。アリシアちゃん。私は……そうじゃなくって……」

 

 まるで心臓に突き刺さった小さなナイフを引き抜くようになのはは言葉を紡ごうとするが、アリシアはプレシードに届いた通信の音にそれを遮り、プレシードに対して通信を開けと命じた。

 

 なのはの狼狽を横目で見ながら、アリシアは特になんの感情も浮かべずに通信モニターに目を直した。

 

《アテンザ主任からです》

 

 プレシードはそう伝え、回線をオープンに設定した。

 

『あ、休憩中? もう少し後の方が良かった?』

 

 モニターに現れたマリエルはアリシアの前に置かれたマグカップとその隣に座るフェイトの姿に気がつき、そう聞いた。

 

「いいえ、ちょうど話題も捌けたところですから」

 

 アリシアはなのはの存在をあえて無視してマリエルに笑みを送った。笑顔は相手の心の壁を薄くする。そして、正論以上に相手を黙らせる武器ともなるのだ。

 アリシアはよく微笑む。その笑顔の中にはそう言った思惑があることを知るの人間はそれほど多くはない。

 

『そう? ありがとう。ちょっとお願いなんだけど、またプレシードを貸して貰えないかなって思って。バルディッシュの調整に必要になりそうなんだ。プレシードの調子も確かめたいし、出来ればレイジングハートのメンテナンスも手伝って欲しくて』

 

 マリエルはアリシアが別件で仕事を任されていることを知っている。それでも、なのは達の命に関わることであるため、それを承知での頼みだった。

 アリシアは少し考え、無限書庫の探索も重要だが、フェイト達の安全には変えられないと判断し、それを快諾した。

 

『そう? ありがとう』

 

 マリエルはホッと息を吐く。

 

「今すぐの方が良いですか?」

 

 気分転換にもなるからむしろ助かりますとアリシアは伝えながらマリエルに確認をする。

 

『うん、出来れば早めに来てくれると助かるわ』

 

 アリシアはチラッとモニター右下に移るミッド標準時刻を確認した。

 休憩終了にはちょうどいい時間だとアリシアは判断する。よく見渡せば、周辺の席に座って談笑していた局員達もそろそろ席を立ち上がろうとする頃だ。

 ラウンジは先払い方式ではないため、少し時間をおくと出るのに時間がかかるなとアリシアは判断し、

 

「分かりました。すぐに向かいます」

 

 と答えた。

 

「僕たちも一緒の方が良いですか?」

 

 レイジングハートとバルディッシュのメンテナンスと聞けば、自分たちにも関係のあることだとユーノは考え、そう提案した。

 

『みんなはまだいいよ。調整が終わるまでもう少し時間が掛かるから、もうちょっとそこでゆっくりしていて』

 

 マリエルの言葉にフェイトは頷いた。

 

「じゃあ、お姉ちゃん。また後で」

 

 後がいつになるか分からないけどとアリシアは思いながら、アリシアは頷きながら席を立ち、テーブルの伝票を手に取った。

 

「あ、アリシア。それ、僕たちの分もあるよ?」

 

 ユーノは慌てて伝票を分けて書いて貰おうとウェイターを呼ぼうとするが、アリシアはそれを制した。

 

「給料を貰っているから、ここは私が払うよ」

 

 アリシアは手違いで呼び出されてしまったウェイターに三人分の飲み物の追加を注文し、更新された伝票を貰い席を離れようとする。

 

「あ、ありがとう。お姉ちゃん」

 

 正直なところ、フェイトの小遣いではここの支払いは割ときつかったのかアリシアの配慮に素直に感謝をした。

 

「少しは姉らしい事が出来たかな?」

 

 と笑いながらアリシアは三人に手を振ってその場を離れた。

 

「あ、あの、アリシアちゃん」

 

 それまで口を閉ざして俯いていたなのははそう言ってアリシアを引き留めようとするが、

 

「何? 出来れば早くしてね」

 

 アリシアの微笑みの前に口を噤んでしまう。

 

「何でも、ないです……」

 

「そう? まあ、後で時間が出来れば聞くよ。それじゃあ、ごゆっくり。ユーノ、私がいないからってフェイトを口説いちゃダメだよ?」

 

「しないよ!!」

 

 ムキになって言い返すユーノに、「HAHAHA」と上品とは言えない笑い声を上げながらアリシアはレジスターで支払いを済ませラウンジを後にした。

 

「まったく、アリシアは! 僕がそんなことするわけじゃないか! ねえ、なのは」

 

 プンスカと擬音を立てそうな勢いで憤るユーノに、なのはは「そ、そうだね」と弱く答えを返すことしかできなかった。

 

「どうしたの? なのは。気分でも悪い?」

 

 アリシアの雰囲気に流され、なのはが少し気落ちしている様子にようやく気がついたフェイトは心配げになのはの顔をのぞき込む。

 

「あ、えへへ。ちょっと疲れちゃったかも」

 

 なのはは友人達からこぞって鈍いと言われているユーノでさえも分かるような、無理をしている笑みを浮かべ、運ばれてきた追加の飲み物を口にした。

 

「あの、気分が悪いなら……」

 

 ちょっと看ようか? というユーノの言葉を遮るようになのはは両手をパンと打ち鳴らし、

 

「そう言えば、クロノ君達にちょっと聞きたいことがあったんだった!」

 

 と叫び、慌てて席を立ち上がった。

 

「えっと、なのは?」

 

 なのはの突然の行動に面食らい、フェイトはどうにも行動がとれなくなってしまう。

 

「ゴメンね、二人とも。ちょっと、行ってくるね。あ、お金は後でちゃんと払うから」

 

 なのはは拝むように合掌して二人に詫び、

 

「あ、別にそんなこと気にしないで良いんだけど」

 

 というユーノの言葉に、最後に「ゴメン!」と謝りながら何をそんなに急ぐのか、まるで何かから逃げる課のような足取りでラウンジを後にした。

 

 アリシアの言葉によって変わってしまったなのはの様子。

 よく冷静に見ていれば簡単に気がつくことを、アリシアの話術に陥った二人では気がつくことが出来なかった。

 

 理由も分からず姿を消してしまったなのはの跡を目で追いながら、二人は呆然とその場にたたずむ。

 人が引き始めてもなお賑わいを残すラウンジの喧噪がどこか白々しい雑音のように二人には感じられた。

 

 

 

 


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