俺のガンプラが擬人化した。何を言ってるかわか(ry 作:高坂ミチル
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「......マスター、お風呂が、沸きました」
「おっ。悪いな、ユニコーン。風呂の掃除までしてもらったあげくに湯の監視までしてもらって」
いえいえ、と小さく呟きながら、『料理』をしにキッチンへと向かう元ガンプラのユニコーン。
『料理』。
いや、実をいえば俺自身すごく驚いている。まさか元ガンプラのユニコーンが料理をできるだなんて。しかも俺なんかより相当上手く、材料も安いものばかりだ。つまり低コストでありながら美味しいご飯を作っているのだ、ユニコーンは。一人暮らしで料理スキルはかなり上の方だと自負していた俺が恥ずかしい。
「いやぁにしても......ユニコーンが来てから、この部屋も随分と綺麗になったな」
ユニコーンが擬人化してから、実に三日。その三日間でこのアパートの一室は、見違えるほど綺麗になっていた。散らかっていた物などは分かり易いようにまとめられており、誇りなども全くない。ユニコーンの家事力には頭が上がらないよ。
「......風呂に入るか」
そう思い、風呂場に向かう。ユニコーンはキッチンで料理を作っているから、今のうちに風呂を済ませておこう。
☆☆☆
「ふぅ......んー、湯加減最高っ」
脱衣所で服を脱いだ俺は、早速風呂に入ることにした。何とも言えない絶妙な湯加減さに、感激の言葉を漏らす。この湯加減が俺の一番好きなやつだからだ。......まぁ、どうしてそんなことをユニコーンが知っているかは聞かないが。うん。ユニコーンだからだよ。
「......あと一週間で、冬休みも終わりかぁ」
そう考えると、感慨深いものがあるなぁ。夏休みとかでも、終わりが近づいてくると、無性に悲しくなったり。まさにあんな感じだ。
俺も来年からは二年生になる。まぁそもそも、明日から来年なのだが。父さんも母さんも、今頃海外で元気に働いているんだろうが、せめて正月くらいには戻ってきてほしい。悲しくて何が悪い。こちとらまだ高校生なんだよ子供なんだよ。
「あー何考えてんだか。正月にユニコーンもいるだろ。一人じゃないっての」
そうだ。俺は今一人じゃない。ユニコーンがいる。それに、今は旅行でここにいない多恵も、明後日には戻ってくる。いつもの日常に、ユニコーンが加わっただけ......ん?
「......多恵にユニコーンのこと、なんて説明すれば?」
そ、それを完璧に忘れていた。どうしよう。あの幼なじみにユニコーンのことをなんて説明しよう。
生き別れの妹です。ダメだ、似てなさすぎる。
俺の恋人だ。ユニコーンと俺じゃ見合ってなさすぎだろ図に乗るな。
コスプレの会場で知り合って。じゃあなんで俺の家で暮らしてんだよってなるだろ。
正直にガンプラが擬人化した子なんだ。痛い目で見られて今後が気まずくなりそうだ。
......考えつかない。どうしようか。なんて説明すればいいんだろうか。下手すれば俺は実の幼なじみに通報されそうだ。幼なじみが白髪の美少女をコスプレさせて監禁してます、と。それだけはいかん。俺の人生に幕を降ろすわけにはいかないんだ。
「考えろ、考えるんだ。こんな時お前ならどうする、バナージ」
まぁ、俺の名前はバナージではありませんがね。こうやってふざけてないとやってられないからだ。やけになって酒を飲むのと一緒。いや飲んだことないけどね。
「......まぁとりあえず上がって、ユニコーンに多恵の話をしてーー「......私がどうか、しましたか、マスター」ーーいやだから、お前に多恵のことを、ってうぉぉぉぉぉいっ!?」
湯船から上がろうとした体を瞬時に下げ、湯船に勢いよく浸かる。そんな俺の目の前には、キョトンとした顔をしているユニコーンが。
「なっ、なななっ、なんでお前入ってきてるの!?ねぇなんで!?」
「......あ、いえ、そう言えばシャンプーを、切らしていたので」
つまりは詰め替えをしにきたってことか。そこはいい。それは嬉しいんだ。その気遣いは嬉しいんだ。......でも!
「おまっ、じゃあ服は!?」
そう。服だ。どうして目の前にいるこの元ガンプラは、バスタオル一枚でこの場にいるのだろうか。おかしい。おかしすぎる。
「......少し前にマスターから、お風呂は、服を脱いで入るもの、と教えられたので」
「時と場合によるだろ!」
い、いかん。普段の服ーーユニコーンの手足のアーマーは取り外しが可能だったので、普段は外して白いワンピースなどを渡している。頭の角は取り外し不可能だったがーーとは違い、今はその体にバスタオル一枚。しかもこの風呂場の湿気でバスタオルが少し濡れ、体のラインが......。
「......マスター、流石に、そんなに見つめられると、恥ずかしいです」
「え?あっ、ご、ごめん!」
指摘されて気付き、恥ずかしさから慌てて目を逸らす。
「......もしかして、マスター、私の体に興味が?」
その問に俺は、答えることができない。ここでイエスと答えれば、これからの生活に支障が生じるし、ノーと答えれば、傷付くかもしれない。
「......」
「......あ、そっ、そうだったの、ですか。......あ、ーーーッ!」
などと考えていたため黙っていた俺を肯定と感じたのか、ユニコーンは突然バスタオル一枚しか着ていない自分の体を両手で隠すように抱きしめながら、真っ赤な顔をして風呂場から走り去ってしまった。
「......き、気まずくなりそう、だなぁ」
一人ぽつんと呟いた俺の声は、途中で恐らくユニコーンがこけたであろうゴスッと言う音にかき消されたのであった。
☆☆☆
「......」
「......」
カチャカチャと、食器の音だけが虚しく響く。俺の予想通り、気まずくなってしまった。せっかくの美味しいご飯も、これでは美味しさ半減だ。誰だってご飯は静かに食べるより、楽しく食べた方が美味しく感じる。......しかし。
「......ユニコー」
「ーーーッ!?」
名前を呼ぶ度に顔を真っ赤にして体をびくりと震わせるこの子を、俺はどうやって落ち着かせればいいんだ?
「......ええと、そこのマヨネーズ、取ってほしいんだけど?」
「......これですね、わかりました」
そう言ってユニコーンは、先ほどの慌てぶりなどなかったかのように平然とした態度で目の前にあったマヨネーズを手に取り、こちらへと差し出してきた。当然差し出されたそのマヨネーズを取るために手を伸ばす俺。しかしマヨネーズを取る瞬間、俺の指とユニコーンの指が接触した。
ぴとっ。
「ーーーッ!?」
「ゆ、ユニコーン!?」
と思った瞬間だった。顔を前よりもさらに真っ赤にしたユニコーンは、バッと立ち上がり、瞬時に自分の部屋ーーユニコーンの部屋は今まで何も使っていなかった部屋だ。一応掃除もしてあるーーに走って戻っていってしまった。
一人ポツンと食卓に残っているのは、呆然としている俺だけ。
「......女の子って、いろいろと難しいんだな」
改めてそう思う出来事であった。
いいですよね。純粋な子ほど女の子(意味深)として見られてると認識してしまったときの慌てようって。ええ、興奮します。作者は変態ですが何か(^ω^ ≡ ^ω^)?